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授権資本制度

読み方
じゅけんしほんせいど

授権資本制度とは

授権資本制度(じゅけんしほんせいど)とは、株式会社が定款に、発行することができる株式の総数(発行可能株式総数)を規定しておき、その枠内であれば、会社の機関の決定(※)により、適宜新株を発行することができるという制度です。
株式譲渡制限制度が取られていない株式会社(「公開会社」)であれば、原則として、取締役会決議

この制度は企業運営を柔軟に行うために非常に重要です。株式の発行は企業が資金調達を行うための一手段ですが、無制限に株式を発行することができると、既存株主の利益が希薄化する可能性があります。このため、授権資本制度は、発行可能な枠を定め、これを増減させるには株主総会特別決議を必要とすることとして既存株主の利益を保護しながら、その枠内であれば、取締役会決議といった機関決定での機動的な新株発行を可能にして、資金調達を円滑に進めるための枠組みを提供しています。

このようにして既存株主の利益を図りつつ、経営陣による機動的な資金調達を可能にしているのです。

授権資本制度の具体的な運用方法

株式会社を設立する際、定款において発行可能株式総数が定められます。ただし、公開会社では、既存株主の持株比率が希薄化しすぎないように、発行可能株式総数は、発行済株式数の4倍を超えてはならないとされています。

新株発行をする場合は、公開会社では、原則として取締役会決議により新株発行をすることができ、資金需要や出資者の意向を踏まえ、発行可能株式総数の枠内での機動的な資金調達が可能となります。

また、発行可能株式総数という枠そのものを増減させたいときは、株主総会特別決議による定款変更手続きによるべきこととされています。これにより、株主の多数の同意を得て透明性を高めることができます。

授権資本制度は、既存株主の権利保護を確保しつつ、企業が成長や拡大のために必要な機動的な資金調達を実現するための重要な手段です。

授権資本制度の利点と課題

授権資本制度には多くの利点がありますが、同時にいくつかの課題も存在します。その代表的な点を挙げて解説します。

利点

  1. 柔軟な資金調達
    発行可能株式総数の枠内であれば、新株を迅速に発行できるため、資金調達の機動性、柔軟性が高まります。これにより、資金需要時や投資をうける機会が訪れたときに迅速に対応することが可能です。
  2. ガバナンスの強化
    発行可能株式総数という枠を変更する際は株主の同意を得ることとなるため、企業のガバナンスが強化されます。透明性が確保されることで、株主の信頼を獲得することができます。

課題

  1. 複雑化する法的手続き
    発行可能株式総数の枠内での新株発行手続きには、適切な会社機関による決定手続きが、授権資本の枠(発行可能株式総数)の変更を行う際は、定款変更や株主総会の決議がそれぞれ必要となり、適法な手続きを執る必要があります。これは企業において法務部門の負担が増す要因となります。
  2. 市場の反応
    新株が大量に発行されると、既存株主の持ち株比率が希薄化する可能性があり、市場の反応がネガティブになることもあります。このため、新株発行に際しては市場の動向や株主の意向を十分に考慮する必要があります。

授権資本制度に関する最新情報と具体例

最近は、テクノロジー企業やスタートアップ企業が積極的にこの制度を活用していることが挙げられます。

例えば、AI技術を利用したあるスタートアップ企業は、取締役会の決定により、機動的に新株を発行し、迅速な資金調達を実現しました。これによりAI技術の開発を加速させ、市場でのプレゼンスを高めることに成功しました。

また、大手テクノロジー企業では、発行可能株式総数の枠内での新株発行により研究開発費を調達し、新しい製品ラインへの設備投資を実現しました。このように授権資本制度は、企業の成長やイノベーションを支える重要な要素となっているのです。

授権資本制度を理解し、適切に運用することで、企業はより効率的で効果的な資金調達を行うことができるでしょう。

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