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偏頗行為

読み方
へんぱこうい

偏頗行為とは

偏頗行為(へんぱこうい)とは、債務者が特定の債権者に対して、他の債権者よりも有利な扱いをする行為のことを指します。

具体的には、債務者が経済的に困窮している状況下で、特定の債権者にのみ担保を供与したり、債務を弁済したりすることを意味します。この行為は、債権者間の公平性を損なうものとして、破産法や民事再生法において規制の対象となっています。

偏頗行為は、債務者の財産状態が悪化し、全ての債権者に対して公平な弁済ができなくなった時点で問題視されます。このような状況下で特定の債権者だけを優遇することは、他の債権者の利益を害することになるため、法的に問題があると考えられているのです。

偏頗行為の具体例

偏頗行為には様々な形態がありますが、代表的なものとしては以下のようなケースが挙げられます。

  • 特定の債権者に対してのみ、債務の弁済を行うこと
  • 特定の債権者に対してのみ、担保の供与を行うこと
  • 特定の債権者の債権について、弁済期前に支払いを行うこと
  • 特定の債権者に対して、本来の債務の内容を超えて有利な条件で弁済すること

例えば、会社が経営難に陥り、複数の取引先に対する支払いが滞っている状況で、特定の取引先にだけ支払いを行うようなケースが典型的な偏頗行為に該当します。

偏頗行為の法的取り扱い

偏頗行為は、破産法や民事再生法などの倒産法制において、厳しく規制されています。これらの法律では、偏頗行為に対して「否認権」という制度を設けており、破産管財人や再生債務者が、偏頗行為の効力を覆すことができるようになっています。

否認権の行使

否認権が行使されると、偏頗行為によって債権者が得た利益は取り消され、その財産は破産財団や再生債務者の財産に戻されることになります。これにより、債権者間の公平性が回復されるのです。

ただし、全ての偏頗行為が否認の対象となるわけではありません。否認権の行使には一定の要件があり、主に以下の点が考慮されます。

  • 特定の債権者に対する返済等か
  • 支払不能になった後または破産手続申立てがあった後の行為であるか
  • 債権者債務者の支払い能力の悪化を知っていたか

偏頗行為と免責不許可事由

個人の自己破産手続きにおいて、偏頗行為は免責不許可事由の一つとされています。破産法第252条第1項第3号では、「特定の債権者に対する債務について、当該債権者に特別の利益を与える目的で、担保の供与又は債務の消滅に関する行為であって、債務者の義務に属せず、又はその方法若しくは時期が債務者の義務に属しないものをしたこと」が免責不許可事由として規定されています。

つまり、自己破産を申し立てる前に、特定の債権者だけに返済を行ったり、担保を供与したりすると、裁判所から免責が許可されない可能性があるのです。

偏頗行為の判断基準

裁判所が偏頗行為を判断する際には、以下のような点が考慮されます。

  • 行為の時期(破産手続き申立て後であるか)
  • 債務者の経済状態(支払不能に陥っていたか)
  • 特定の債権者を優遇する意図の有無
  • 行為の必要性や合理性

例えば、生活に必要不可欠な光熱費の支払いなどは、通常、偏頗行為とは判断されません。一方で、親族や知人への返済を優先的に行った場合などは、偏頗行為と判断される可能性が高くなります。

偏頗行為の防止と対策

債務者が経済的困難に直面した際、偏頗行為を避けるためには、以下のような点に注意する必要があります。

  • 全ての債権者に対して公平な対応を心がける
  • 特定の債権者への優先的な支払いを避ける
  • 新たな担保供与は慎重に検討する
  • 破産や民事再生などの法的手続きを検討する際は、早めに専門家に相談する

破産申立て後は、弁護士などの専門家の指示に従い、全ての債権者に対して公平な対応を取ることが重要です。

また、企業の経営者や財務担当者は、会社の経営状態が悪化した際に、偏頗行為に該当する可能性のある取引や支払いについて、十分に注意を払う必要があります。必要に応じて、弁護士や会計士などの専門家に相談し、適切な対応を取ることが求められます。

偏頗行為は、債権者間の公平性を害する行為として法的に規制されていますが、その判断には様々な要素が考慮されます。債務者の経済状態が悪化した際には、安易な判断で特定の債権者を優遇することを避け、全体的な状況を考慮しながら適切な対応を取ることが重要です。そうすることで、将来的な法的問題を回避し、円滑な債務整理や事業再生につながる可能性が高まるのです。

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