このページは、交通死亡事故と相続放棄について、死亡事故・労災死亡事案の遺族支援を多数取り扱う弁護士法人ブライト(代表:和氣良浩弁護士)が、相続実務とリンクさせて整理した解説記事です。
📝 この記事の3秒結論
- 相続放棄しても近親者固有の慰謝料(民法711条)は請求できる
- 本人慰謝料・逸失利益は相続財産なので相続放棄で失う
- 相続放棄の期限は熟慮期間3ヶ月(伸長可)
- 借金が多い場合は限定承認も選択肢
- 判断は被害者の借金・賠償見込み額の比較で決める
死亡事故・労災事故のご遺族からのご相談は無料です
(※お電話での受付は平日9:00~18:00となっております、それ以外の時間はメールやLINEでのお問い合わせをお願いします。)
はじめに:相続放棄と賠償請求権の関係
交通死亡事故の被害者が亡くなったあと、相続人であるご遺族は、被害者の借金(住宅ローン・消費者金融・連帯保証債務など)と、加害者への損害賠償請求権の両方を相続することになります。被害者に多額の借金があり「相続したくない」と考える場合、相続放棄という選択肢があります。
しかし「相続放棄したら、加害者への賠償請求もできなくなるのか?」という不安は多くのご遺族が抱えるものです。結論から言えば、相続放棄しても、ご遺族固有の慰謝料請求権(民法711条)は別途請求できます。本記事では、その仕組みと判断のポイントを解説します。
本人の損害賠償請求権と遺族固有の請求権の違い
死亡事故では、賠償請求権が大きく2つに分かれます。
| 区分 | 具体例 | 相続放棄での扱い |
|---|---|---|
| 被害者本人の請求権(相続) | 本人の死亡慰謝料(赤本基準2,000〜2,800万円)、逸失利益、葬祭費、治療費 | 相続財産なので相続放棄で失う |
| 遺族固有の請求権(民法711条) | 近親者慰謝料(配偶者・父母・子) | 相続放棄しても別途請求可能 |
被害者本人が亡くなる前の苦痛に対する慰謝料や、生きていれば得られたはずの収入(逸失利益)は、被害者本人の権利として発生し、相続によってご遺族に承継されます。一方、ご遺族が大切な家族を失ったことに対する精神的苦痛への慰謝料は、ご遺族「固有」の権利なので、相続とは別に発生します。
近親者固有の慰謝料(民法711条)の相場
民法711条に基づく近親者固有の慰謝料の相場は以下のとおりです(赤本基準)。
- 配偶者:200〜300万円
- 父母:100〜200万円
- 子:100〜200万円
- 祖父母・兄弟姉妹:被害者と同居・扶養関係などの特別な事情があれば認容(赤本記載なし)
これらは「本人慰謝料」とは別枠で請求できる金額です。本人慰謝料を相続放棄で諦めても、近親者固有慰謝料だけで配偶者なら200〜300万円、両親と子3名なら合計500〜800万円程度の請求が可能です。
相続放棄の手続きと期限
相続放棄は「自己のために相続の開始があったことを知った時から3ヶ月以内」に家庭裁判所へ申述する必要があります(民法915条)。
期限内に判断できない場合は、家庭裁判所に「熟慮期間の伸長」を申し立てれば3ヶ月延長可能です。死亡事故では加害者の保険会社からの示談提示まで時間がかかることが多く、伸長申立てを活用するご遺族が少なくありません。
注意点:被害者の財産(預金・不動産)を処分したり、賠償金の一部を受領したりすると、相続を「単純承認」したとみなされ、相続放棄ができなくなることがあります(民法921条)。判断に迷う段階では、遺産・賠償金には一切手をつけず、まず弁護士にご相談ください。
死亡事故・労災事故のご遺族からのご相談は無料です
(※お電話での受付は平日9:00~18:00となっております、それ以外の時間はメールやLINEでのお問い合わせをお願いします。)
限定承認という選択肢
「借金は相続したくないが、本人慰謝料・逸失利益は受け取りたい」という場合、限定承認(民法922条)を検討します。
- 相続財産の範囲内でのみ被相続人の債務を弁済する
- 賠償請求権を相続したうえで、加害者から得た賠償金で借金を返済し、残額をご遺族で分配可能
- 相続人全員で家庭裁判所に申述する必要あり(一部の相続人だけでは不可)
限定承認は手続きが複雑で、弁護士・税理士のサポートが必要なケースが大半です。ブライトでは死亡事故の賠償請求と並行して限定承認の手続きもサポートしています。
相続放棄 vs 限定承認 vs 単純承認 の判断軸
3つの選択肢の判断軸:
| 判断要素 | 相続放棄 | 限定承認 | 単純承認 |
|---|---|---|---|
| 借金が賠償金より明らかに多い | ◎ | ○ | × |
| 借金額が不明・不確定 | △ | ◎ | × |
| 借金が少ない・賠償金が多い | × | △ | ◎ |
| 手続きの簡便さ | ○(本人のみで可) | ×(全員で) | ◎(不要) |
| 遺族固有慰謝料 | ○(別途請求可) | ○ | ○ |
判断は被害者の借金額と賠償見込み額のバランス、ご遺族の人数・家族構成によります。早期に弁護士へご相談いただくことで、3ヶ月の熟慮期間を有効に使えます。
死亡事故・労災事故のご遺族からのご相談は無料です
(※お電話での受付は平日9:00~18:00となっております、それ以外の時間はメールやLINEでのお問い合わせをお願いします。)
まとめ:迷ったら必ず弁護士に相談を
交通死亡事故で被害者に借金がある場合、ご遺族は「相続放棄」「限定承認」「単純承認」の3択を熟慮期間3ヶ月以内に選ぶ必要があります。
- 相続放棄しても近親者固有慰謝料は請求可
- 限定承認なら借金リスクを抑えつつ賠償金を受け取れる
- 判断には被害者の財産・債務の正確な把握が必須
判断を誤ると数百万円〜数千万円の損失につながりかねません。死亡事故の賠償と相続を一括サポートできる弁護士に早期に相談されることを強くお勧めします。
同じテーマの関連記事
監修:和氣 良浩 弁護士(弁護士法人ブライト 代表弁護士・登録番号30856)
死亡事故・労災死亡のご遺族支援を多数担当。「賠償請求権の相続」「相続放棄との関係」「労災遺族年金の損益相殺」「海外在住相続人の対応」など、賠償交渉と相続実務(戸籍調査・遺産分割・遺言)を一人の弁護士で完結できる体制でご家族をお支えしています。
▶ ご相談・お問い合わせ
死亡事故・労災事故のご遺族からのご相談は無料です
(※お電話での受付は平日9:00~18:00となっております、それ以外の時間はメールやLINEでのお問い合わせをお願いします。)