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2025年4月施行の東京都条例と今後施行されるカスハラ防止法について、企業が取るべき具体的な対策を徹底解説。カスタマーハラスメントから従業員を守るための基本方針策定から、対応マニュアルの作成、研修の実施まで、企業が今すぐ始めるべき実践的な対策をわかりやすく紹介します。顧客と従業員の健全な関係構築のために必要な施策と、法令遵守のポイントを網羅した必読ガイドです。
カスハラに対して企業はどのような対策を講じるべきでしょうか。本記事では、東京都の条例とカスハラ防止法の概要から、カスハラの定義、企業に求められる基本方針の策定、実践的なマニュアル作成法、従業員教育、発生時の対応フローまで、企業が今すぐ始めるべき具体的な対策を徹底解説します。
カスタマーハラスメント(カスハラ)対策が法制化される流れが加速しています。東京都条例の成立と厚生労働省の法改正の動きを踏まえ、企業が知っておくべき最新動向を解説します。
東京都議会では2024年10月4日、全国初となる「東京都カスタマー・ハラスメント防止条例」が可決・成立しました。この条例は2025年4月1日から施行され、3つの基本的な考え方を柱としています。第一に、「何人も、あらゆる場においてカスタマーハラスメントを行ってはならない」とカスハラの一律禁止を明記しています。第二に、カスハラ防止に関する基本理念を定め、都・顧客等・就業者・事業者の各主体の責務を規定しています。第三に、カスハラ防止に関する指針の作成・公表や、都の施策推進、事業者による措置等を定めています。罰則規定はありませんが、カスハラが違法である旨が条例上明記されたことにより、被害の減少・緩和が期待されています。
厚生労働省は2024年12月26日、カスハラ防止策を全企業に義務付ける報告書をまとめ、労働政策審議会分科会で了承を得ました。この報告書では、カスハラを「(1)顧客、取引先、施設利用者その他の利害関係者が行うこと、(2)社会通念上相当な範囲を超えた言動であること、(3)労働者の就業環境が害されること」の3要素を満たすものと定義しています。
その後、政府は2025年3月11日、全企業にカスハラ防止を義務付ける労働施策総合推進法の改正案を閣議決定し、国会に提出しました。この法案では、企業に対して対応方針の明確化や相談体制の整備を行うことを義務付けており、国の指針に基づいた対策を求めています。
具体的に企業に求められる措置としては、以下のようなものが含まれています。
また、対策を怠った企業には指導や勧告が可能で、従わない場合は企業名を公表することも盛り込まれています。この法改正では、就活中の学生へのセクハラ防止策も義務化されることになりました。
この法案は「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律等の一部を改正する法律案」として提出されており、今後国会での審議を経て、2026年度中の施行が予想されています。
近年、顧客からの著しい迷惑行為を指す「カスタマーハラスメント」が社会問題化しています。厚生労働省の「令和2年度職場のハラスメントに関する実態調査」によると、過去3年間にカスハラを一度以上経験した労働者の割合は15.0%にのぼり、これはパワハラに次いで高い割合です。また、2024年5月17日に公表された「職場のハラスメントに関する実態調査」では、他のハラスメントの相談件数が減少傾向にある中、唯一「顧客等からの著しい迷惑行為」についてのみ増加していることが明らかになっています。カスハラは従業員の尊厳を傷つけ、心身の健康を害するだけでなく、企業にとっても生産性の低下や離職率の上昇といった悪影響をもたらす可能性があるため、適切な対策が求められるのです。
カスハラは近年社会問題化している顧客からの迷惑行為です。2025年4月施行の法律や東京都条例を踏まえ、その定義と具体例を解説します。
カスハラとは、顧客、取引先、施設利用者その他の利害関係者が行う、社会通念上相当な範囲を超えた言動で、労働者の就業環境が害されるものと定義されます。厚生労働省によると、カスハラは以下の3つの要素をすべて満たすものとされています。
情報通信業では、製品に異常がないにも関わらず返品・返金を執拗に要求する行為や、「頭が悪い」「性格が悪い」といった人格否定の発言や脅迫的言動が報告されています。
宿泊業・飲食サービス業では、上役の従業員に対して名刺を出させ破いた上で正座を要求したり、顧客が自身の過失で落とした半額シール付き弁当を販売するよう騒ぎ続けたりする事例があります。
医療・福祉分野では、介護士が顧客から蹴られたり「胸を触らせろ」と言われる、病院の些細なミスについて1時間以上怒鳴りつけ医療費支払いを拒否するなどの事例が報告されています。
正当なクレームとカスハラの最大の違いは「要求の妥当性」と「行動の適切さ」にあります。正当なクレームは事実に基づき、合理的な解決策を求めるものですが、カスハラは顧客が威圧的な態度で感情的に攻撃をすることで、従業員に精神的・肉体的苦痛を与えるものです。
例えば、商品の不良を指摘し交換を求めるのは正当なクレームですが、些細なミスを理由に店員の謝罪を何度も要求するのはカスハラに該当します。また、注文した商品にごみが入っていたので作り直してほしいという要求は正当なクレームである一方、顧客の立場を利用した無理な要求や暴言、暴力はカスハラとなります。
カスハラ対策は、従業員を守るための重要な経営課題となっています。2025年4月施行の東京都条例と国の法整備により、企業の責務はさらに明確になりました。
カスハラ対策の第一歩は、企業としての基本方針を明確にすることです。経営者のトップが「お客さまは大切だが、従業員はもっと大切であり守る」という強い姿勢を示すことが重要です。
企業としてのカスタマーハラスメント対応ポリシーを策定・公表し、毅然とした姿勢を社内外に宣言することで、社員に対しては「会社として理不尽なカスハラから従業員を守る」という企業姿勢を示し、カスハラを行う顧客に対しては牽制・警告することができます。
基本方針の周知には、社内研修や定期的な啓発活動が効果的です。特に経営者・経営幹部・現場管理者の意識改革が最も重要であり、カスハラ対策を行わないという不作為の管理責任が問われる時代になっています。
カスハラ被害を受けた従業員のために相談窓口を設置し、心のケアをする必要があります。厚生労働省の指針では、事業主はカスハラについての相談先をあらかじめ定め、従業員に周知しておくことが望ましいとされています。
相談窓口の設置にあたっては、面談だけでなく電話やメールなど複数の方法で相談を受けられるようにし、プライバシー保護に必要な措置を講じることが重要です。また、相談を理由とした不利益な扱いを行わないことを周知しましょう。
相談窓口を設置するメリットとしては、従業員にとっては気軽に相談でき、カスハラ顧客への対応を上司や担当者に任せられる点、企業にとってはカスハラの実情を把握でき、迅速に対処することでトラブルの深刻化を回避できる点が挙げられます。
カスハラ相談窓口は被害を受ける現場職員を直接守ることができ、またカスハラを早期に発見し現場に情報をフィードバックすることで、施設事業所全体の安心感を作り出すことにも役立ちます。
カスハラ対策マニュアルは、従業員を守り健全な職場環境を維持するための重要なツールです。効果的なマニュアル作成のポイントを解説します。
カスハラ対策マニュアルの作成は、厚生労働省の「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」を参考にしながら進めていきます。まず企業としての基本方針を明確化し、経営者が「従業員を守る」という強い姿勢を示すことが重要です。
マニュアル作成では、カスハラの判断基準や具体例を整理し、ケースごとの対応方法を定めます。相談窓口の設置方法も明記し、最終的には弁護士によるチェックを受けると良いでしょう。
特に重要なのは、現場の従業員からの意見を取り入れることです。実際にカスハラを経験している現場の声を反映させることで、実用的なマニュアルになります。
業種や営業形態によって顧客の特性や職場環境は大きく異なるため、カスハラ対策マニュアルは業種別にカスタマイズしましょう。
サービス業のように顧客との対面が多い業務では、顧客からのカスハラを想定したマニュアル作りが必要です。個人顧客をメインに扱う企業では、顧客の属性や言動パターンを踏まえた対応が求められます。
一方、法人顧客を主な対象とする業種では、企業文化や決まり事による要求が存在することを想定したマニュアル作りが大切です。過剰な要求や違法行為には毅然と対応できるよう、明確な判断基準を設定しておきましょう。
効果的なカスハラ対策マニュアルには、対応マニュアルの目的、カスハラの定義と具体例、対応のフローチャート、過去の事例、警察への連絡方法などを盛り込みます。
カスハラ対応のフローチャートでは、暴言や暴力などの判断基準と、従業員の安全確保のための手順を明確にします。東京都カスハラ防止指針に基づく事業者が講ずべき防止措置も参考になるでしょう。
マニュアルは誰でも読みやすく使えるように、シンプルでわかりやすい内容を心がけ、フローチャートや事例を効果的に盛り込むことが大切です。実際に使われるマニュアルを目指して、定期的な見直しと更新も忘れないようにしましょう。
カスハラ対策において、従業員教育は最も重要な取り組みの一つです。効果的な研修とトレーニングを通じて、従業員のカスハラ対応力を高めましょう。
カスハラ対応研修では、明確な目的設定が重要です。カスハラの定義や種類の理解、対応スキルの向上、組織全体の防止意識の醸成などの目標を明確にしましょう。研修内容は、カスハラとクレームの違い、判断基準、具体的事例、対応方法などを体系的に構成します。
研修形式は、集合研修、オンライン研修、ハイブリッド型から選択できます。研修効果を高めるには、身近な具体例を示し、定期的に実施することが大切です。半年に1回程度、少なくとも年1回の実施が望ましいでしょう。
カスハラ対応スキルを効果的に身につけるには、ロールプレイングが有効です。実際の状況に即したトレーニングを通じて、従業員は実践的な対応力を養うことができます。
ロールプレイングでは、職員・利用者・上長等の役割を演じることで、当事者の立場に立って心情や状況を想像し、自分事として考える力が養われます。これにより、相手の気持ちや言動の背景を理解し、柔軟な対応方法を身につけることができます。
管理職向けのカスハラ研修は、部下を守る立場として特別な内容が必要です。管理職研修では、カスハラの基礎理解に加え、報告体制の構築方法やエスカレーション時の判断基準について重点的に学びます。
研修内容には、自社で発生しやすいカスハラの洗い出し、基本的な対応方法の理解、対応ルールの策定などが含まれます。また、従業員の心身の健康を守るための予防策についても学びます。「裁判をしてでも従業員を守る」という経営層の決意表明も効果的です。
カスハラが発生した際の適切な対応は、その後の展開を大きく左右します。企業として効果的な対応フローを構築し、従業員を守る体制を整えましょう。
カスハラ発生時の初期対応は事態の悪化を防ぐ鍵です。まず落ち着いて冷静に対応し、丁寧な言葉遣いを心がけましょう。傾聴の姿勢で顧客の話を最後まで聴き、主張内容を正確に把握します。ただし、安易な謝罪や過剰な要求を認めることは避けるべきです。
状況把握と事実確認を客観的に行い、記録に残すことが重要です。不慣れな従業員の場合は、早期に責任者に引き継ぎましょう。暴力行為やセクハラ行為があった場合は、すぐに周囲の従業員の助けを求めるルールを確立しておきます。
深刻なカスハラには明確なエスカレーション体制が必要です。暴力行為があった場合や、悪質・常習的なカスハラはエスカレーションの対象となります。
報告先は直属の上司、人事部門、法務部門など、状況に応じて明確にしておきましょう。現場の従業員がエスカレーションする際には「私一人では判断できかねますので、施設内で協議したうえで改めてご連絡します」と伝え、後日落ち着いて対応します。
身体的・精神的な攻撃、威圧的言動、土下座要求、執拗な言動、不退去などは法的対応が必要となる場合があります。暴行罪、傷害罪、脅迫罪、名誉毀損罪などの犯罪が成立する可能性があるケースでは、警察通報や弁護士に相談をしてください。
法的対応の見極めには証拠確保が重要です。暴言や威圧行為があった場合は、録音やメールの保存を心がけましょう。悪質なケースでは弁護士に相談し、法的措置を通告することで解決するケースもあります。
カスハラ防止法と東京都条例の施行に備え、企業の法務体制強化が急務となっています。弁護士法人ブライトは、従来の受動的な顧問契約とは異なり、能動的・自発的に法務リスクを発見し改善策を提案。複数の弁護士とパラリーガルによる専門チームが、企業文化を深く理解した上で、まるで社内法務部のようにサポートします。チャットツールを活用した気軽な相談体制や、「企業の法務リスク診断」による予防的アプローチも特徴。月額5万円からスタート可能で、カスハラ対策を含む法務周りの悩みを一気に解決します。
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