顧問弁護士は本当に必要?法務に強い企業を作る頼もしい味方

顧問弁護士は本当に必要?法務に強い企業を作る頼もしい味方

この記事では弁護士と顧問契約を結ぶメリットを紹介しています。企業法務にお困りの経営者の方や、今後企業法務に力を入れていきたい経営者の方は、ぜひ最後まで読んでみてください。正直、顧問契約するデメリットはほとんどありません。

会社を経営していると、規模の大小を問わず日々さまざまなトラブルに遭遇するものです。たとえば、取引先から売掛金が回収できない、販売した商品に欠陥があって顧客に与えられた、管理職が一般社員に対してパワーハラスメントに該当する行為をした、など。
もしかすると、本業に費やす時間よりトラブル対応に費やす時間のほうが多いかもしれないというくらいトラブルが発生することもあるかもしれません。

そしてときには、自社で対応できないほどにトラブルが大きくなり、急いで弁護士に相談するころには紛争(訴訟)に発展していた……ということもあるでしょう。

これではただでさえ忙しい経営者が、本業に費やす時間をなかなか取れないですよね?そんな悩みを解決する手段が弁護士との顧問契約です。

この記事では顧問弁護士や企業法務の必要性について解説しています。日々のトラブル対応に追われて本来の仕事ができない経営者の方、あるいはこれまで弁護士に相談せずに対応してきた経営者の方はぜひ最後まで読んでみてください。

弁護士と顧問契約を結ぶ大きなメリットを理解していただき、より充実した会社経営ができるようになるでしょう。

顧問弁護士とは?

顧問弁護士とは何でしょうか?通常の弁護士とは何が異なるのでしょうか?

通常、弁護士は困った人(個人・法人)から相談を受けて、弁護活動(法的な対応)をします。弁護士と契約を結ぶのはその弁護士に依頼しようと決めてからです。しかし、それでは日々の細かい法律相談をするとき、その度に契約を結ばなくてはならず手続きが非常に煩雑になります。また、困ったときに迅速に対応してもらうこともできません。

そこでトラブルが起きる前に弁護士と契約しておくのです。これを顧問契約といいます。顧問契約を結んでおけば、実際にトラブルが起きる前から継続的に関わることで、異変を感じた段階で気軽に弁護士に相談できます。
問題に早く気付いた方が対応策の選択肢が広がるため、企業側にとってありがたいものです。

トラブル回避のためには早く問題に気付くことが大切ですが、残念ながら経営者を含めて社内の人間からはわかりづらいこともあります。そのようなとき、顧問弁護士がいれば第三者として客観的に会社を見てもらえるのです。

「第三者の目なら、必ずしも弁護士でなくてもよいのでは?」と思う方もいるかもしれません。たしかに問題に気付くだけなら必ずしも弁護士でなくてもよいでしょう。しかし、きちんとした法律の知識を持っているのは法曹三者(裁判官、検察官、弁護士)だけであり、中でも気軽に法律相談ができるのは弁護士だけなのです。
また、弁護士資格を持たない者が法律知識を使って弁護活動すると、非弁行為といって法律違反となります。問題に気付いてもらい、法的に的確なアドバイスをもらうには弁護士と顧問契約を結ぶしかないのです。

トラブルが起こってから弁護士に相談すると「日頃の対応が悪い」と指摘されたり叱責されたりすることもあります。しかし、顧問弁護士なら普段からの信頼関係があるため、あくまでも会社や経営者の見方になってくれるでしょう。弁護士と顧問契約を結べば、気持ちの面でも安心感を得られます。

経営者の中には比較的法律に詳しい方もいるでしょう。しかし、特定の法律分野に詳しかったとしても弁護士と同等以上に詳しい方はなかなかいないでしょう。一口に法律といって会社経営に関する法律はいろいろあります。

  • 労働基準法
  • 会社法
  • 特定商取引法
  • 景品表示法
  • 著作権法
  • 商標法
  • 特許法
  • 民法
  • 割賦販売法
  • 電子帳簿保存法

会社経営に時間を割きながらでは、いくら優秀な経営者でもこれらすべてに精通するのはなかなか難しいはずです。そのようなとき、顧問弁護士が頼もしい味方になってくれるのです。

会社はいきなり大きくなるわけではありません。創業当初は数人でも、時間をかけて業績を伸ばしていき、事業規模を大きくしていくものです。法令遵守も同じです。創業当初からすべての法律を完璧に守れている企業はないといわれています。しかし、そういった企業であっても顧問弁護士がいることで徐々に法律を守れる企業になるのです。契約書や利用規約、雇用契約書や就業規則を少しずつ整えていき、法令違反が会社の成長の足かせにならないようにします。考え方によっては、顧問弁護士は経営者の伴走役にもなってくれるのです。

顧問契約すると費用はどれくらいかかる?

顧問契約の費用は弁護士事務所や契約内容によって異なります。また、地域差もあるため、東京都など三大都市圏の方が地方に比べて高額になることもあるのです。ただし、相場となる金額はあります。弁護士に行ったアンケートによると顧問弁護士費用は平均42,363円/月、最も多い回答が5万円/月、次に多い回答が3万円/月でした(※1)。

最近の弁護士事務所はHPで顧問料を公開していることが多々あります。顧問内容別にプランを組んだり、プラン別に料金を設定しています。予算とニーズに合わせてプランを選ぶようにしましょう。

ただし、顧問契約料は法律や業界のルールで一律に決まっているわけでなく、弁護士が自由に決められます。中には金額に見合わないサービス内容となっていることもあるかもしれません。弁護士の人柄とサービス内容、それに顧問契約料をきちんと見比べて、顧問契約そのものが法律トラブルに発展しないように気を付けましょう。

※1:日本弁護士連合会「1-2.すぐに回答できる相談を顧問契約の範囲とする場合の月額顧問料はいくらか?

顧問契約するメリット、デメリット

弁護士と顧問契約を結ぶメリットやデメリットには、どのようなものがあるのでしょうか?

メリット

いつでも相談できる

弁護士と顧問契約を結ぶ最大のメリットは、いつでも気軽にメールや電話で相談できることでしょう。

通常、弁護士に法律相談をするときは予約しないといけません。しかし、労働分野に詳しい弁護士は複数の企業と顧問契約を結んでいることが多くあるため、顧問契約先の仕事が優先となりなかなか予約できないこともあります。また、弁護士に相談するということは社内の情報を社外に持ち出すことになります。その際、決裁権限のない一般社員だと、「弁護士に相談すること」の決裁を社長や役員に取る必要があるのです。

しかし、社長や役員も暇ではありません。社内にいない場合や移動中・打ち合わせ中ですぐに会話できない場合もあるでしょう。このような状況では、弁護士に相談するまでに時間がかかりすぎてしまうのです。時間が経つごとに問題はどんどん悪化していきます。

弁護士と顧問契約していなくても「困ったことがあれば、すぐに弁護士に相談しよう」と思う経営者はまだよいかもしれません。しかし、中には「大事にしたくない」「弁護士費用がもったいない」と思って社内で対応しようとする方もいるでしょう。はじめは小さな芽であっても交渉が長引いたり、交渉のやり方を間違えることで相手の態度が硬直になることも十分予想されます。そうなってから弁護士に依頼しても対応できる手段が限られていたり、場合によっては「そもそも初期の対応が悪い」と叱責される場合もあるでしょう。

弁護士と顧問契約していれば、異変を感じたときにすぐに相談できます。

トラブルに強い会社を作れる

トラブルに強い会社とはどのような会社でしょうか?普段は何も考えずに会社を経営し、何か問題が起こったときに急いで顧問弁護士に相談する会社のことでしょうか?

本当にトラブルに強い会社は普段からトラブルに対する考え方が異なります。「問題が起こってから対応すればよい」ではなく「問題を起こさない、あるいは起こっても被害を最小限にとどめるには事前に何をすればよいか」という思考を持っているのです。なぜ、そのような考えを持っているのでしょうか?

弁護士と顧問契約をすると、普段から法律関係の指導を受けます。会社を経営するうえで気をつける法律や書類はたくさんあるのです。取引先や顧客との契約書、就業規則、雇用契約書などの書類の整備にはじまり、会社法、労働基準法、特定商取引法など遵守すべき法律は数多くあります。これらすべてにいきなり対応することは不可能です。そのため、顧問弁護士に協力してもらいながら、少しずつ法令に対応した会社を作っていけばよいのです。弁護士と顧問契約していれば契約書のリーガルチェックや日々の労務管理へのアドバイスなどを的確にもらえます。

しかし、普段から法的に杜撰な経営をしていると、トラブルが起きやすくなるばかりでなく、トラブルによる損失も大きくなるのです。普段まともな経営をしていない会社がトラブル時だけうまく立ち回ることはできません。

債権や売掛金の回収も同じです。回収リスクのありそうな顧客のピックアップ、定期的な連絡(催促)など、普段からトラブルを未然に防ぐ対策をとっておくことが大切です。

未然にトラブルを防ぐにはやはり第三者の目が必要です。誰でもよいわけでなく、きちんと資格をもって労働に関する法律に詳しい顧問弁護士が必要なのです。もし、第三者の目がなければ、経営者が気付いていないところで問題の種がどんどん大きくなっているかもしれません。

自社の意向に沿うトラブル解決が可能

前述の通り、トラブルが発生してから弁護士に依頼すると、すでにそのときには取れる手段が少なくなっていることもあります。しかし、被害を最小限に留めないといけないとなると、自社の意向と異なる手段で対応しなければならない場合もあります。
もちろん、最悪の事態になるよりはよいでしょう。相談が遅くなってしまったがゆえに、問題解決のために犠牲にしなければならないこともあるかもしれません。しかし、それぞれの会社には文化や考え方があります。未だトラブルが発生する前、あるいは発生直後で損害が小さい内なら自社の意向を反映した対策も取れるでしょう。

法改正情報を教えてもらえる

法律は毎年改正されます。業界内でホットな話題になっている場合は法改正の情報をキャッチできると思いますが、あらゆる業界にまたがって影響のあるような法改正を見落とすこともあるでしょう。自社に関係するすべての法改正の情報をキャッチするのはなかなか難しいものなのです。

たとえば、2022年には以下の法律が改正されました。あなたはいくつ知っていますか?

  • 育児介護休業法:男性従業員の配偶者が妊娠・出産したとき、男性従業員自身が育児休暇を取得するか確認が義務付けられた
  • 個人情報保護法:プライバシーポリシー(個人情報の取扱に関する規定)の改正が必要になった
  • 公益通報者保護法:内部通報の窓口整備が必要になった(従業員数301人以上の企業)
  • 特定商取引法:EC業者がECサイト作成時に、顧客が購入する商品の情報を最終確認する画面の作成が義務付けられた(表示項目についても定めあり)

このように特定の業界に関係なく改正される法律は、なかなか経営者の仲間内で話題にならないこともあるでしょう。しかし、公益通報者保護法以外は会社規模によらず適用される法改正です。そのため、知らず識らずのうちに法律に違反し、従業員や顧客の権利を侵害していた……なんてこともあるでしょう。その際、従業員や顧客が不満を感じて弁護士(顧問弁護士ではない)に相談すると、場合によっては訴訟に発展する場合もあります。

トラブルが起きてもスムーズに依頼できる

弁護士と顧問契約を結んでいれば、実際にトラブルが起きてもスムーズに相談できます。顧問弁護士は、ただ労働問題に詳しいだけでなく顧問企業についても十分に内部事情を把握しています。そういった事情を踏まえて最善の対策を考えてくれるでしょう。あとは、経営者がその対策を実行すると決断するだけで、スポットで弁護士に依頼する場合と比べてはるかにスムーズに、トラブルを解決できるのです。

経営者のよき相談相手になる

「法律に困っている」というほどでなくても、日々の細かい判断の中には長年会社を経営していても迷うものもあるでしょう。しかし、従業員や家族にはなかなか相談できず、経営者仲間にも相談しづらいこともあります。そのようなとき、顧問弁護士がよき相談相手になってくれるのです。

顧問弁護士はあなたの会社のことをよく知っています。そのため、法的にもあなたの会社にとっても的確なアドバイスをくれるのです。また、経営者個人のことであっても、法的なことであれば相談できます。顧問弁護士は孤独な経営者のよきパートナーとなり得るのです。

自社HPに顧問弁護士名を記載できる

弁護士と顧問契約を結ぶと、自社HPなどに掲載する会社概要に顧問弁護士の名前を記載できます。このことは法務対応やコンプライアンスに対して一定以上対応しているという信頼にもなるため、顧客や取引先(外注先)と新規取引を開始するときに信用されやすくなるでしょう。また、掲載する企業としても顧問弁護士の名前を掲載する以上、下手な対応ができなくなるというメリットがあります。

ただし、顧問弁護士の名前を掲載してよいか必ず掲載前に確認してください。契約締結後とはいえ、勝手に掲載すると思わぬトラブルに発展する場合があります。

従業員の福利厚生にもなる

顧問契約の内容によっては、従業員の私的な相談に対応してくれることもあります。社会に出ると離婚や交通事故、遺産相続などさまざまな法律問題に遭遇することが多くなるでしょう。しかし、一般の人が弁護士事務所に相談に行くには、経済的にも心理的にもハードルが高いもの。そのようなとき、勤務先の会社の福利厚生で弁護士に相談できるサービスがあれば便利でしょう。

しかし、従業員が会社との間で法律トラブルを抱えたときにはやや注意が必要です。従業員は会社の顧問弁護士には相談しづらいでしょう。また、顧問弁護士からすると、もし従業員からそういった相談を受けた場合には利益相反となってしまうため対応に困る可能性があります。

デメリット

反対に、弁護士と顧問契約を結ぶデメリットはあるのでしょうか?

費用がかかる

当然ですが、弁護士と顧問契約を結ぶと弁護士費用がかかります。もちろん経費処理できる費用ですが、実際にキャッシュアウトするのは変わりません。ただ、弁護士費用と言っても月数万円程度から依頼できる場合もありますので、予算とニーズに合わせて一度検討するのもよいでしょう。

顧問契約ですべての弁護士業務に対応できるわけではない

顧問契約の内容は、契約金額によって異なります。気軽に相談できるといっても相談回数に目安(制限)があったり、既に作ってる契約書のリーガルチェックは無料でも一から契約書を作るために別途費用がかかることもあります。また、交渉や訴訟になればもちろん別途費用がかかるのです。
弁護士と顧問契約する際には、必ず契約内容を確認しましょう。そのほかにも、契約書には細かい条件が書かれています。たしかに契約書の文章は分かりづらく、文量も多いためすべてを読むのは大変かもしれません。しかし、これからトラブルに強い会社を作ろうとしているなら、自分がお金を払う契約書の内容くらいは、すべて読んで把握できるようになったほうがよいでしょう。表現や意味がわからないときは、弁護士に聞けば教えてくれます。

顧問弁護士との相性はある

残念ながら顧問弁護士は弁護士である前に一人の人です。もちろん顧問契約を結べば仕事として対応するため、一定程度よい対応をしてくれるでしょう。しかし、人どうしなのでどうしても相性があります。もし、顧問契約を結んでしまっても「合わない」と思ったら早めに申し出るのがお互いのためでしょう。経営者はお金を払ってまで相性の合わない弁護士に依頼する義務はありません。また、弁護士もいくらお金をもらっているからといって、相性の合わない顧問企業と付き合い続けるのは辛いでしょう。

ただし、多少相性が悪くても弁護士の判断の方が正しい場合も多々あります。しかし、相性が悪いと弁護士の判断一つひとつが信じられなくなるかもしれません。そのようなとき、別途費用はかかりますがセカンドオピニオンとして別の弁護士に意見を聞くことも可能です。ただし、セカンドオピニオンの相談をするときはきちんとその旨を話した方がよいでしょう。依頼される弁護士(顧問弁護士ではない)も、セカンドオピニオンであることがわかっている方が気持ちよく受任できるでしょう。

顧問弁護士がすべて正しいと信じてしまう

ある法律問題が起こったとき解決へのアプローチは複数あるでしょう。大筋は決まっているにしても、細かいところで判断がわかれてきます。しかし、法律の知識がない経営者(法曹三者以外)にとってはその大筋すらわからないものです。そのため、顧問弁護士に解決方法をきくのですが、前述のような細かい部分の判断は弁護士によって変わってきます。顧問契約はあくまでもサービスのため、クライアント(経営者)が納得していればそれでよいという考え方もあるでしょう。しかし、場合によってはほかの弁護士の意見を聞くと、よりよい意見を持っている場合もあるのです。

弁護士はあくまでも一人の人間であり、より経営者に合った意見をくれる弁護士がほかにいないとは限りません。顧問弁護士のアドバイスやサポートに納得している場合であっても、たまにはほかの弁護士に(スポットで)相談することにより、新しいことに気付く場合もあります。

顧問弁護士の必要性について

メリットの多い弁護士との顧問契約ですが「本当に必要なのか?」と思っている方もいるでしょう。ここで、日本弁護士連合会が顧問弁護士を抱える企業に対して実施したアンケートを紹介します。

まず弁護士と顧問契約している企業へ「顧問弁護士の満足度合い」をきいたアンケートでは、「大変満足した」と「満足した」と回答した企業の割合を合わせると64.4%、「納得した」と回答した企業の割合が16.2%でした。このことから、弁護士と顧問契約を結ぶと約80%の経営者が何らかのメリットを感じていると考えられます。

また、弁護士と顧問契約しておらずスポットで依頼した場合の満足度合いのアンケートでは、「大変満足した」と「満足した」と回答した企業の割合を合わせると33.2%、そして「納得した」と回答した企業の割合が28.0%でした。スポットでも約60%の経営者が何らかのメリットを感じているとわかります。

しかし、両者の割合を比較すると明らかに弁護士と顧問契約を結んだほうが、高い満足度を得られるということが結果から見て取れます。また、前述のように顧問弁護士の方が社内事情をよく理解しており、普段からサポートしてくれたり自社の意向に沿った対応をしてくれたりするでしょう。そういった意味では、たとえば同じ「大変満足した」でも、顧問弁護士とスポットで依頼した弁護士の間には、大きな満足度の差があるのかもしれません。

顧問契約を結ぶと、経営者自身が法対応に強くなったという事例もあります。法律が関係する経営判断で迷わなくなったり、反対に「これは相談しなくてはいけない」とすぐにわかるようになり、顧問弁護士に相談して大きなトラブルに発展するのを防いだ事例もあるようです。顧客や取引先、あるいは従業員の中には残念ながらクレーマー気質の方がいます。そういった方と問題になったときでも、顧問弁護士がいれば間に入ってくれるのです。顧問契約を結ぶ意味は、未然に大きなトラブルを防ぐことです。そのため、顧問弁護士は訴訟に持ち込ませず交渉で終わらせる手段を模索してくれます。それは、訴訟になると負担が大きく、会社経営という本来の仕事に時間を割けなくなると知っているためです。

顧問弁護士との契約時に気をつけるべき点は?

顧問弁護士は会社のさまざまなサポートをしてくれますが、弁護士からするとあくまでも仕事です。仕事である以上、サポートは契約書に則る形で行われます。そのため、契約書の中身を一言一句確認し、自社に不利な条件はないか、あるいは自社のニーズに合わない条件はないか確認しましょう。

顧問料の金額

一番大切なのは顧問料の金額です。事前に弁護士事務所のHPなどで料金を確認していると思います。しかし、契約内容によってはその料金を基準に金額が変更になっている可能性があります。事前に提示された、あるいは説明された金額と契約書の金額が異なる場合、契約書の金額が正しい金額となるのです。そのため、必ず契約書に記載されている金額を確認するようにしましょう。

受けられるサービス

サービス内容も金額と同様に、契約書にて再度確認する必要があります。事前に弁護士事務所のHPで顧問契約の内容を確認し、自社に必要なサービスを見つけたため顧問契約をしたとしましょう。しかし、そのサービスが実はオプションだったとします。そうなった場合、オプションが反映されていない契約内容だと、そのサービスを受けられません。また、所望のサービスを受けるためにオプションを追加すると顧問料の金額も変更になります。その場合、事前に組んでいた予算を超過しないか確認することも必要になってしまいます。

中には定常的なオプション扱いにできず、トラブル発生時に別途料金がかかるサービスもあるでしょう。たとえば、外部(トラブルの相手)との交渉や訴訟を起こされたときの対応、あるいは、こちらから訴訟を起こすときの対応などは別途料金となることが多いようです。債権回収において相手の資産を差し押さえる場合もそうでしょう。このような対応を希望する場合、オプションとして定額の範囲内で対応してくれるのか、あるいは別途料金の場合はどの程度の金額なのか確認しておきましょう。

契約解除の条件

どのような状態になれば契約解除となるのか確認しておくことも大切です。それには2つの意味があります。

1つ目はこちら側が「弁護士と相性が悪いな」と感じた場合です。顧問料を支払うのはこちら側なので、不満があって契約解除したいと思ったときには、すぐに対応してくれるのがよいでしょう。しかし、契約解除するための告知期間が必要な場合もあるかもしれません。こちらから契約解除できる条件をよく確認しましょう。

2つ目は弁護士側から契約解除される場合です。弁護士との顧問契約は法律上の「委任契約」となります。そのため、双方が契約を解除する権利を持っているのです。契約書には契約解除の条件が記載されている場合もありますので、自社がそれに(今後も含めて)該当しないか確認しておきましょう。

解約時の顧問料の処理や違約金

契約は1か月毎に更新されるなど、一定期間効力を持つ場合があります。契約期間の途中で解約した場合、どのような費用や精算が必要になるのか確認しておきましょう。場合によっては今すぐ解約するより、次の更新時期まで契約を続けたほうが良い場合もあるでしょう。

契約更新の条件

契約書によっては、顧問契約を自動更新する旨が記載されている場合もあるでしょう。自動更新とは、双方から解約の申し出がない限り特段の手続きを経ずに契約が更新されることです。スマートフォンのサブスクなど使ってもいないのに使用料金だけ払っている場合もあるでしょう。もちろん、同じことが顧問契約においても発生するとは考えにくいですが、解約したいと思ったときに何もしないと自動更新される場合もあることは覚えておいて下さい。

顧問契約料の支払い方法

顧問契約料の支払い方法にはいくつか種類があります。銀行振込や自動引落、あるいは請求書が届く場合などがあります。どの方法がよいか希望はあるかもしれませんが、基本的には弁護士事務所が提示する方法から選ぶことになります。また、1年分まとめて契約料を支払うなどの条件が課されている場合もあります。特に中小企業の場合、少しでも多くのキャッシュを手元に残しておきたいでしょう。クレジットカード払いに対応している弁護士事務所もあるため、希望する決済手段の用意があるか事前に確認してみてください。

その他割引など

顧問契約を結んでいても、交渉や訴訟の対応には別途費用がかかる場合もあります。しかし、顧問契約を結んでいるとこれらの費用が割引になる場合があるのです。

また、個別事件の着手金無料などのサービスや、契約書などのリーガルチェックの割引サービスもあります。もちろん割引は弁護士個人や弁護士事務所の善意によるものです。顧問契約を結んでいるからといって、必ず割引しないといけないわけではありませんので注意して下さい。

顧問弁護士が相談を受けられない場合も!利益相反の問題とは?

顧問弁護士でも相談を受けられない場合があります。その前に利益相反について簡単に説明します。

利益相反とは利害が一致しない双方に対して利益を供与しようとしたときに、バッティングすることをいいます。たとえば、ある民事訴訟が起こったとき原告であるA社と、被告であるB社の弁護を一人の弁護士が同時に行ったとします(日本ではできません)。本来なら、A社・B社それぞれの主張を別の代理人(弁護士)が主張すれば、それぞれの利益が侵害されることはないでしょう。しかし、一人の弁護士の場合、A社の主張を行えばB社の不利益になり、B社の主張を行えばA社の不利益になるため、公平な主張ができません。これを利益相反といいます。

弁護士の利益相反は法律で禁止されています(※2)。そのため、利益相反になるような事案については相談を受けられないことになっているのです。トラブルの具体的な相手がわかっている場合は、まず相手の氏名などを確認されるでしょう。顧問弁護士は利益相反にならないことを確認したうえで、弁護活動をはじめます。ただし、相談時には具体的な相手の氏名がわかっていない場合もあります。そのような場合は、利益相反になるとわかった時点で今後の進め方を顧問弁護士側から相談されるかもしれません。

特に顧問弁護士の場合、トラブルの相手企業とも顧問契約を結んでいる場合があります。このような場合、どちらかの企業が対別の弁護士に別途依頼しない限り、顧問弁護士は何もできない状態になってしまいます。

ただ、利益相反になりにくい状況を経営者が作るという努力も必要です。たとえば、地方などそもそも弁護士の数が少ないエリアの弁護士と顧問契約を結ぶと、それだけで利益相反のリスクが高くなることがあります。また、同業者の集まりや同じ地域の経営者の集まりなどで知り合った弁護士と顧問契約を結ぶ場合も同様のリスクがあります。そのため、顧問弁護士を探す場合は、インターネットなどで探して地元以外のエリアの弁護士に依頼するのもよいかもしれません。

離れた土地の弁護士に依頼するのは不安もあるかもしれません。しかし、近年ではEメールやチャットツールなどのテキストコミュニケーションだけでなく、テレビ会議ツールを用いた会話も可能です。直筆のサインなどが必要な書類は郵送する必要がありますが、それ以外はオンラインで済むことが多いでしょう。
それでも不安な場合は、初回のみ対面で相談するという方法もあります。場合によっては、弁護士の方から訪ねてきてくれる場合もあります。

※2:e-Gov「弁護士法(昭和二十四年法律第二百五号)

中小企業と大企業の顧問弁護士の違い

一口に顧問弁護士といっても、顧問契約を交わす企業の規模はさまざまです。中小企業と大企業の顧問弁護士には、どのような違いがあるのでしょうか?

中小企業の顧問弁護士

中小企業では社内に法務部を設置できる余裕がないことが多く、また法律知識に詳しい従業員の配置も難しいでしょう。そのため、顧問弁護士は細かい雑多な法律問題から、訴訟に発展しかねない大きな法律問題まで、どのようなトラブルにも幅広く対応する必要があるのです。

弁護士事務所にもさまざまな種類があります。雑多な法律問題を数多く扱う「町弁」から、各々が専門分野を持った弁護士を数十人抱えるような大きな弁護士事務所までさまざまです。中小企業の顧問弁護士はいわば町弁のようなもの。問題の大きさや種類に関わらず、スピーディーかつ確実に解決する必要があるのです。

大企業の顧問弁護士

大企業では法務部を設置して担当社員を配置している場合がほとんどです。そのため、日々の細かな問題は法務部の社員が対応します。また、中にはインハウスロイヤーといって企業に雇用されている弁護士がいる場合もあります。このような企業なら、一定程度までの法律トラブルに対処できるでしょう。

しかし、想定以上に大きなトラブルに発展したり、特定の分野の深い法律知識を必要とするケースもあります。このような事態になった場合には、法務部の社員では手が足りない場合や、企業内弁護士では対処しきれない場合もあるでしょう。そういったときに顧問弁護士を活用するのです。

ちなみに顧問契約できる弁護士は一人ではありません。そのため、問題の種類や規模によって複数の顧問弁護士と契約している企業もあります。

顧問契約書作成の確認ポイントとは?

実際に弁護士と顧問契約を結ぶとなると、顧問契約書を作成して契約を締結することになります。契約書作成時には、どのようなポイントに気を付ければよいのでしょうか?

【業種別】IT企業における顧問弁護士の役割と依頼時のポイント

はじめはIT企業を例に取り、顧問契約書作成のポイントを紹介します。顧問弁護士の役割についても紹介しますので、参考にしてみてください。

契約内容のすり合わせ

依頼する側(IT企業)は、何らかの目的を持って弁護士と顧問契約を結ぼうとしています。創業間もないため会社の組織作りにアドバイスがほしいのか、新規事業を立ち上げるため法律面をサポートしてほしいのか、組織が一定程度大きくなってきて労務問題をクリアにしたいのかなど、目的はさまざまでしょう。まずは弁護士と顧問契約を結ぶ目的を明確にすることが大切です。

目的が明確になったら、会社に足りない部分を抽出していきましょう。それがそのまま弁護士にサポートしてもらいたい部分になります。とはいえ、一から百までサポートしてもらうとなると高額な顧問契約料が必要になってしまうでしょう。そのため、どの範囲までサポートしてもらうのかの線引きも大切です。

反対にサポートの必要のない項目を明確にすることも大切です。IT企業側は必要ないと思っていても、弁護士側はサービスの中に含めようとする場合もあります。顧問契約を結ぼうとしている弁護士はほかの企業とも顧問契約を結んでいるでしょう。数多くの企業(事例)を見てきているはずです。そのため、企業側が自覚していなくても必要なサポートを、弁護士は見抜いているかもしれません。

そのようなとき、もちろん弁護士のアドバイスを聞く必要はあると思います。その内容が、顧問契約料を積み増しても受けた方がよいサポートだということも考えられるからです。しかし、内容を確認して「今は必要ないかな?」と思ったり、「必要なのはわかるけど、今その費用は出せないな」と思うなら理由を添えて断りましょう。事情を理解してくれる弁護士であれば納得してくれるはずです。

ただし、顧問契約には含めなくてもスポットなら依頼したいというサービスもあるでしょう。そのようなサービスを別途依頼するときの金額も決めておくと便利です。弁護士によっては、顧問契約していないクライアントがスポットで依頼するときの価格から割引してくれることもあります。

顧問契約書のドラフト作成

契約内容のすり合わせが終わったら契約書のドラフト(草案)を作成しましょう。すり合わせた契約内容が網羅されていること、企業側が希望するサービスの範囲が織り込まれていることなどを確認しましょう。顧問契約料についても金額を確認しましょう。そしてドラフトが整ったら、それをもとに契約書を完成させます。

顧問契約書の記載項目

顧問契約書にはどのような項目を記載すればよいのでしょうか?ここでは一般的な記載項目を紹介します。

1つ目は契約書のタイトルです。シンプルに「顧問契約書」でも問題ありませんが、顧問契約の内容(サービス内容など)をタイトルに入れると管理しやすいでしょう。弁護士は複数の企業と顧問契約を結びます。そのため、サービス内容が入っていると弁護士の管理上助かるでしょう。サービス名を入れると助かるのは、IT企業側も同じです。顧問契約を結ぶのは弁護士だけではありません。税理士や社会保険労務士などほかの士業の先生と顧問契約を結ぶこともあるでしょう。そういったとき、契約書のタイトルにサービス名が入っていると管理しやすいでしょう。

2つ目は契約者の名称です。法律事務所の名称や自社の名称を記載し、誰と誰の契約なのかを明確にします。法人名を記載する場合は、◯◯株式会社や株式会社◯◯、あるいは◯◯法律事務所や弁護士法人◯◯など正式名称を記載するようにしましょう。

3つ目は顧問契約(サービス)の内容です。どのようなサービスを、どのような範囲で、どの程度の金額で受けるのか記載しましょう。契約書は双方の理解のうえ作られるものですが、表現が曖昧な場合(捉え方が複数できてしまう場合)は、契約当事者間のトラブルがあったときに揉める原因になります。双方で理解していることを言語化し、言語化した内容を再度双方で確認・納得したうえで契約書を作成するようにしましょう。

4つ目は契約期間です。どの程度の期間で契約を結び、契約更新の際の手続きについても記載します。中長期の顧問契約を前提にするなら自動更新が煩雑でなく便利ですが、更新の度に協議するような形でも問題ありません。ただし、必ず双方が納得してから契約書に記載するようにしてください。

5つ目は顧問料の支払い方法です。請求書払い、クレジットカード払い、銀行口座自動引落しなど企業側が希望する決済方法があるでしょう。弁護士側が対応できる決済方法の中から希望のものを選んで記載しましょう。また、弁護士側から顧問契約料の払い方(月払い、年払いなど)について希望があった場合には、それも考慮するようにしましょう。

6つ目は解約方法です。中長期的にサポートを受けられるのが顧問契約のメリットの一つですが、残念ながら途中で解約せざるを得ない状況になることもあるでしょう。そのようなときの解約方法についても事前に決めておくと、実際にそのときになってから揉めることはありません。解約希望日の何日前までに通知するか、解約した後の顧問料をどのように精算するかといったことを記載しておきましょう。

7つ目は管轄する裁判所です。顧問契約期間中に顧客や取引先、あるいは従業員と訴訟になったとき、どこの裁判所が管轄になるのか明記しておきましょう。

IT企業における顧問弁護士の役割

IT企業の顧問弁護士にはさまざまな役割があります。

1つ目は各種書類の整備です。IT企業を運営するにあたり、さまざまな書類が必要になります。特に利用契約書やプライバシーポリシーはプロダクトを販売する、あるいはサービスを展開するうえで顧客にとってもIT企業にとっても大切なものです。システム開発やWeb制作を行う会社では開発契約書や制作契約書が必要になります。また、EC事業を展開する会社では取引先と契約を結ぶ際に、売買契約書が必要になります。

現在では契約書の雛形をインターネット上から取得でき、無料で利用できるものもあります。しかし、こういった雛形はあくまでも一般的なことしか書かれていません。自社のプロダクトやサービス、あるいは事業環境に応じて変更する必要があるため、そのままでは使えません。また、内容を変更したとしても、それが法的に問題ないのか、あるいは後に問題に発展するような要素(項目や記述の抜け漏れなど)を含んでいないか顧問弁護士に確認してもらう必要があるのです。

2つ目は事業モデルの適法性チェックです。IT企業は非常に先進的な企業であるため、プロダクトやサービスだけでなく、事業モデルが斬新なケースもあります。そういったとき、法律が事業モデルに追いつかず、場合によっては新しい事業モデルが法律のグレーゾーンに入ってしまうこともあるでしょう。

そのような状態で事業を続けていると、顧客や取引先から指摘を受けることもあるかもしれません。そのため、事業モデルが適法かどうか検討段階から一定程度確認する必要があるのです。あるいは、経営者が気付いていないだけで明らかに違法である場合も考えられます。そのようなときは早めに顧問弁護士から指摘してもらうことで、無駄な検討せずに済むでしょう。

3つ目は広告の適法性チェックです。IT企業であればWeb広告を中心に、さまざまな広告を展開するでしょう。しかし、広告の記載内容は自由に決められるものでなく、景品表示法や薬機法、また医療法など各種法律の範囲内で決めなくてはなりません。細かな表現にも法律の規制がかかるため、広告の文言をチェックするのも今弁護士の役割の一つです。

顧問契約依頼時のポイント

弁護士の中にはさまざまな経歴の方がいます。可能であればIT企業での就業経験がある、あるいは会社を創業したことがあるなど、現状の自分たちの立場に近い経歴を持つ弁護士を選ぶ方がよいでしょう。その方が経営者の気持ちを理解してくれることが多いかもしれません。

ただし、自分で経験するのと顧問弁護士としてIT企業をサポートするのは、少し違う話かもしれません。経歴もそうですが、弁護士としての経験や実績も確認した方がよいでしょう。

IT業界は非常にトレンドの移り変わりが激しい業界です。新しい情報をキャッチアップしたり、トレンドに合わせてこまめにプロダクトの内容を変えたりと柔軟に対応する必要があるでしょう。そのため、古い考え方が染み付いた方ではなく、新しい考え方をどんどん取り入れるような柔軟な弁護士の方が相性がよいかもしれません。

弁護士もあくまでも人です。人対人である以上、どうしても相性はあります。最後の判断基準として相性を大切にしましょう。この部分だけは理屈ではなく、直感を大切にした方がよいかもしれません。

【業種別】不動産業・宅地建物取引業における顧問弁護士の役割と依頼時のポイント

不動産業や宅地建物取引業における顧問弁護士の役割や、依頼時のポイントは何でしょうか?

不動産用や宅地建物取引業における顧問弁護士の役割

1つ目の役割は不動産売買に関する相談に乗ることです。ビルや住宅(マンション)、土地などの不動産売買においては、さまざまな法律が関係してきます。そのため、必然的に相談事も多くなるのです。たとえば、次のような内容があります。

  • 越境、土壌汚染、境界、経年劣化などのリスクに対応した売買契約書や重要事項説明書の作成に関する相談
  • 瑕疵担保責任などのリスクに対応した売買契約書や重要事項契約書の作成に関する相談
  • 契約できなかった場合の違約金請求に関する相談
  • 瑕疵、土壌汚染、地盤沈下など購入後のトラブルに関する相談
  • 金融機関とのトラブル、仲介手数料のトラブルなどお金に関する相談

後に起こり得るトラブルを事前に防ぐには、売買契約書や重要事項説明書などの書類を綿密に作ることが対策の一つとなります。そのためには関連する法律に遵守している必要があり、それをチェックするのが顧問弁護士の役割の一つです。

どれだけきちんと書類を作成しても残念ながらトラブルが発生することもあります。そういったときの初動対応をサポートするのも顧問弁護士の役割です。

2つ目は不動産賃貸業や不動産管理業に関する相談に乗ることです。経営者の相談事として次のようなものがあります。

  • 賃貸契約書や重要事項説明書の作成に関する相談
  • 賃料滞納時の対応に関する相談
  • 悪質な入居者への退去要請に関する相談
  • 漏水事故や天災による破損など、物件のトラブルに関する相談
  • 敷金の返還や原状回復など、退去時のトラブルに関する相談

悪質な入居や退去時のトラブルなど、時間が過ぎれば過ぎるほど新たな損害(機会損失)を生む問題は、特に早急に対応する必要があります。問題が長期化すれば、会社の経営にも影響を及ぼします。

入居者に責任のない漏水事故や天災による物件の損傷なども同様です。早急に対応しないと入居者の不満が募り、空室が発生する事態を招きかねません。スピード感を持った対応が必要な場合ほど、冷静な目が必要になるのです。顧問弁護士をよきパートナーと思って難題を解決していきましょう。

3つ目はインターネット上の口コミサイトに関する相談に乗ることです。口コミそのものは昔から有効なマーケティング手段といわれてきました。基本的に信用のおける人から聞くため、情報の信憑性が非常に高いためです。その代わりよい口コミだけでなく、悪い口コミもすぐに広まってしまいます。

昨今インターネット上の口コミが盛んに利用されていますが、ときに悪い口コミが独り歩きしてしまう場合もあります。事実にもとづく口コミなら仕方ないかもしれませんが、そうでない場合は企業の品位を落としかねません。そういった口コミの削除要請などが必要になった場合に対応するのも、顧問弁護士の役割の一つです。

顧問契約依頼時のポイント

顧問契約依頼時のポイントは、基本的にIT業界の場合と同じ考え方です。業界経験があり、弁護士としての顧問経験が豊富で、相性が合う弁護士なら問題ないでしょう。また、不動産業界は土日祝日など世間の多くの人が休みの日にも稼働するものです。つまり、トラブルや相談事は曜日を問わず発生する可能性があります。そのため、土日祝日であってもきちんと連絡を取れる弁護士の方がよいでしょう。

スタートアップ企業に弁護士は必要?

スタートアップ企業はまだ事業領域が狭く、企業規模としても小さいです。弁護士費用の捻出が難しいこともあるため「スタートアップ企業に弁護士は必要か?」と思う経営者の方もいるかもしれません。

しかし、スタートアップ企業こそ、弁護士と顧問契約を結ぶメリットがあるのです。

障害を事前に把握できる

スタートアップが扱う事業はさまざまです。既存のビジネスを組み合わせたものから、まったく新しい商品やまったく新しいビジネスモデルを構築するものまでさまざまあるのです。そのため、既存の法律がビジネスに追いつかないこともあり、ビジネスがグレーゾーンに入る場合があります。

このようなとき顧問弁護士がいなければ、そもそもグレーゾーンにいることすら気付かないでしょう。そのままビジネスを発展させてあるときに、同業他社や顧客から指摘されて気付くということも十分考えられます。

あらかじめ弁護士と顧問契約を結んでいれば、法律のグレーゾーンに入らないように、あるいは適法の根拠となる法律を確認しながら事業展開できます。あとになって、同業他社や顧客から違法ではないか?と指摘を受けたときにも、顧問弁護士に相談することですぐに対策が打てるのです。

同業他社や顧客も法律に関しては素人という場合があります。そのため、指摘そのものが法律的に問題ないことであればその場で解決しますし、問題があってもこれまで自社の対策を一緒に考えてくれた顧問弁護士に相談すれば、すぐに次の対策を打てるでしょう。

以上は法律のグレーゾーンに該当するような話でしたが、はじめから違法な事業をそうと気付かずにはじめようとしている場合もあるでしょう。あるいは、ビジネスをはじめたころは適法でも、途中で法律が変わって違法になってしまう場合も残念ながらあります。そういったとき、顧問弁護士なら最新の法律情報をキャッチしているため、的確なアドバイスをくれるのです。

さらに残念なのは、法律知識のない経営者が勝手に違法だと思い込んで事業を断念してしまう場合です。たしかにそのままでは違法でも、少しやり方を変えて適法にすることもできるかもしれません。そういった細やかな対応を期待するなら、弁護士と顧問契約を結ぶのがよいでしょう。

交渉力がアップする

スタートアップには非常にパワーあふれる企業が多くある反面、歴史は浅く経営者の人生経験もそれほどない場合があります。そのような経営者が他の企業と契約を結ぼうとしても「どうせビジネスのことをわかっていない」「多少不利な契約書でも、わからず契約を結んでくれるだろう」と不当な扱いを受けることがあります。しかし、顧問弁護士がついているとわかると、相手企業は対応を変えることがあるのです。相手企業に顧問弁護士がついていない場合は、なおのことそのような対応になるでしょう。

ただし、契約の細かなことを経営者が把握していない傾向がスタートアップにあるのは事実でしょう。ある程度経営の経験があるなら、自社に不利な契約書を読んだとき「何かおかしい」と気付くこともできます。しかし、スタートアップの経営者の中にはそういったことに気付けない人もいるでしょう。また、不利な条件だとわかったとしても、契約を取りたいがために相手に言い出せない場合もあるかもしれません。

このようなとき、すぐに契約を結ぶのは得策ではありません。契約を結ぶ際は(特に相手が契約書を用意した場合は)法律知識を持った信頼できる第三者に相談するのがよいでしょう。世の中には多くの弁護士がいます。そのため、ただ法律知識がある人はたくさんいるのです。しかし、その中に信頼できる人はどれだけいるでしょうか?
もちろん、スポットで依頼する弁護士も顧問弁護士も、同じ弁護士です。スポットで依頼したとしても、最低限の仕事はしてくれるでしょう。しかし、より信頼できてより自社のためによいアドバイスをくれるのは顧問弁護士です。そのため、「法律知識を持った信頼できる第三者」として顧問弁護士がもっともふさわしいのです。

顧問弁護士がいると、契約書の変更をお願いするときのスタンスも変わってきます。ただ「契約内容をこう(自社に不利でないように)変えてほしい」と言っても、相手はなかなか承諾してくれない場合もあります。「他の会社ともこのような内容で契約しています」と言われてしまえば、確認する手段もなくなかなか反論できないでしょう。
しかし、顧問弁護士がいると現状の契約内容ではなぜだめなのか(何が不利なのか、何が違法なのか)指摘してくれたうえで、根拠とともに解決策(契約書の変更内容)を教えてくれるでしょう。これを相手企業に提案することで、相手企業が納得して変更に応じてくれやすくなるのです。

もちろん、不利な条件で無理に契約する必要は一切ありません。どれだけ交渉しても相手が折れない場合、そのような会社とは契約しなければよいだけです。しかし、この契約が自社と相手企業の運命を変えるような協業につながることもあるでしょう。そういったチャンスを契約書の条件一つで無駄にしてしまうのは、両者にとって非常にもったいないことです。

そのため、契約書の条件交渉は非常に大切なのです。もちろん、お互い利益を上げる必要があるため、そう簡単には承諾できないでしょう。しかし、下げられるリスクを下げ、取れるリスクを取った先に両者が発展することもあります。

契約書の条件の交渉は、顧問弁護士に相談しながら慎重に行いましょう。

損賠賠償請求の対応に必要な労力を少なくできる

スタートアップは新しい商品・サービスを展開したり、新しいビジネスモデルを構築するため思いもよらない場面で損害賠償請求をされる場合があります。しかし、損害賠償請求といっても2つのパターンがあるのです。

1つ目は自社に商品・サービスや自社のオペレーションに落ち度がある場合です。この場合、損害賠償請求されることそのものは仕方ないにしても、適切に対処しないと余計に問題が多くなる場合があります。このようなときでもすぐに顧問弁護士に相談することで、対応にかかる時間や手間を最小化できるでしょう。
そもそも、顧問弁護士と普段から法務対応や事業の進め方について情報交換していれば、こういった理由で損害賠償請求されることはそれほど多くないでしょう。

2つ目は契約書の内容が自社にとって不利だったことが理由で、必要以上に損害賠償の範囲が広い場合です。損賠賠償の範囲をどこまでに設定するかは、業界の相場や個々の企業間の事情があるでしょう。しかし、スタートアップの場合、その辺がうまく理解できないまま契約を結んでしまい、実際に損害賠償請求されたときに予想外に高い費用を負担しなくてはならない場合もあります。
損害賠償請求の事項を記載する場合は、条件を制限したり金額を制限するのが一般的です。しかし、そういった記載がなかったために(契約締結時との思惑とは違う形で)損害賠償請求の責任を負わなくてはならない場合があるのです。

契約書をあらかじめ顧問弁護士に確認してもらえば、その時点で契約書を修正する必要があることに気付くでしょう。そして、根拠と改善案を相手に伝えて修正してもらえばよいのです。契約書は一度判を押すと、その内容を覆すのはいくら弁護士でも難しい場合があります(明らかに違法な場合を除く)。そのため、判を押す前に信頼できる法律知識のある第三者にチェックしてもらうのが有効なのです。

トラブル解決までの時間を短縮できる

法的トラブルは適切に対処しないと、瞬く間に大きな問題に発展します。問題が起こった時点ですでに大きな話になっていることも少なくないのが現実です。しかし、そのようなタイミングで新しく弁護士を探していては、その間に取り返しの付かないことになることさえあります。
また、運良く見つかったとしても「普段の対応が悪い」とわかりきっていることを指摘され、お金を払ったうえに嫌な思いをしなくてはならないこともあるのです。

弁護士と顧問契約を結んでいれば、トラブルが発覚したときはもちろんのこと、異変を感じた時点で相談できます。スポットで弁護士に相談する場合「こんなことで相談してもよいのかな?」と遠慮してしまうかもしれませんが、普段から信頼関係が築けている顧問弁護士であればそういった心配は必要ありません。むしろ、異変に気付いた時点で相談したからこそ、最小限の影響範囲で問題を食い止められることもあるのです。

顧問弁護士に日々の小さなトラブルを相談していると、未然に防げるトラブルが数多くあることにそのうち気付くでしょう。そうなれば、トラブルになりにくい経営や契約、それに労務管理を行うようになるため、より法律面において強い会社に成長するのです。

本業(会社経営)に集中できる

たしかに法律面で強い会社を作ることは大切です。不安定な世の中で会社を経営するにあたって心強い見方となるでしょう。しかし、スタートアップ企業の存在意義は法律面に強い会社になることではありません。今までになかった商品・サービスや新しいビジネスモデルを世に広めることで、人間の生活を豊かにしつつ自社を急成長させることが目的なのです。

目的達成のために資金調達やビジネスモデルの検討、市場との対話による商品・サービスの改良(PDCA)や従業員の確保・育成など、短期間のうちにやらなければならないことが非常にたくさんあります。このように本業のために費やす時間を作るために、法律面の対応になかなか手が回らないのが正直なところでしょう。そういった部分をサポートしてくれるのが、顧問弁護士なのです。

しかし、弁護士と顧問契約を結んだからといって、法律面のすべての仕事を代行してくれるわけでありません。経営者が内容を把握する必要があることや、中には経営者自身が対応しなくてはならないこともあるでしょう。あくまでも会社の舵取り役は経営者、法律面でのサポートを顧問弁護士が担当するという形になります。

資金調達トラブルを回避できる

スタートアップ企業は規模が大きくなく、資金も潤沢にはありません。そのため、投資家やベンチャーキャピタルから資金援助(投資)を募り、資金を集めて事業を行うのです。投資を受ける場合、当然契約書を結ぶことになりますが、その際スタートアップ企業側(企業家側)に不利な条件の契約になることがあります。スタートアップ企業はこれまでの歴史がありません。つまり、スタートアップ企業に投資するということは今後の可能性に期待することであり、通常の企業に投資する以上のリスクを孕んでいます。そのため、投資家やベンチャーキャピタルは、少しでも自分たちのリスクが小さくなるような契約条件を提示してきます。これをスタートアップ企業側から見たとき不利な条件になるのです。

このような場面に遭遇したとき、顧問弁護士がいないと法律面での後ろ盾がないため、契約内容の変更を申し出づらいでしょう。しかし、顧問弁護士がいれば「顧問弁護士に言われた」という切り口で修正をお願いしやすくなるのです。

さらに法的な根拠や修正案、そして修正することにより起業家やベンチャーキャピタルにもメリットがあることを提示できれば、お互い納得のいく契約ができるでしょう。仮に相手がこちらの契約条件に納得してくれなくても、それがわかったうえで契約を検討するのと、何もわからず(リスクに気付かず)契約するのとでは大きな差があります。仮にそのまま契約するしか方法がない場合でも、今後似たような契約を結ぶ際の勉強になるでしょう。

知的財産トラブルを回避できる

知的財産権は目に見えないものです。そのため、きちんと契約しておかないと誰が権利を有するのかはっきりしません。最悪の場合、自社で開発した技術の権利を他社が勝手に使用するだけでなく、自社が使用する場合に他社に権利使用料を支払う必要が発生する場合もあります。

知的財産権は著作権と異なり、技術が誕生した時点で発生するものではありません。特許や実用新案として出願して審査に合格し、一定のロイヤリティを負担してはじめて知的財産権を持てるのです。もちろん、知的財産権の審査に通るような技術開発を行うには、多額の費用と時間がかかっていることでしょう。それにもかかわらず、他社が先に出願して審査に通ってしまえば、無断でその権利を使用できなくなります。

知的財産権による売上はストック型の収入です。つまり、審査にさえ通ってしまえば何もしなくても他社が権利を使用した場合にお金が入ってくるのです。また、開発した技術を無闇に公表されるリスクも下げられます。自社のブランドとしても、収益源としても大きく成長する可能性のある知的財産権をほかの企業に取られてはいけません。IPO(新規上場)の審査にもかかわってくる話と言われています。

労使トラブルを回避できる

日本の労働に関する法律は、労働者を手厚く保護する形で設計されています。そのため、経営者側にとって圧倒的に不利な場合が多いのです。その代表例が解雇です。そもそも従業員数の少ないスタートアップ企業に、問題のある従業員を入社させてしまうとその後が大変です。

たとえば、遅刻グセにある問題社員Aがいるとしましょう。Aは新入社員のころから遅刻グセがひどく、就業時間までに出社することは月に数回しかないといいます。社内であれば指導すれば済む話ですが、顧客との打ち合わせなどはそうはいきません。遅刻のリスクがあるため、顧客との打ち合わせに出席させられないのです。

もちろんそのしわ寄せは他の社員にいくでしょう。本来社員Aがするはずの仕事を、ほかの社員がしなければならなくなるのです。しかし、会社員の雇用は法律で守られているため、簡単には解雇できません。十分な指導や配置転換など、本人の能力が発揮できる場所を提供する義務が企業側にはあるのです。そういった対策をいくら繰り返しても成果が出ない場合(社会通念上仕方ない場合)にのみようやく解雇できるのです。

大企業ならまだしも、成長を急ぐスタートアップ企業でこのようなことに時間を割いている暇はないでしょう。そうしているうちに、どんどんビジネスチャンスを逃すことになるのです。

しかも、解雇への対処方法がよくなくAから訴えられるというケースも考えられます。訴えられると基本的には社員側の方が立場が強いため、企業側はなかなか思うように対処できないでしょう。
顧問経験の長い弁護士であればさまざまな企業を見てきているため、そのような社員を見抜く力もあるかもしれません。また、そのような社員への不適切な企業側の対応にも敏感です。

顧問弁護士がいると、社員の行動に異変や不安を感じた時点で相談できます。そのうえで、経営者(会社)を守るという意向に沿って、的確なアドバイスをくれるのです。誤解を恐れずいうと問題社員への対処の仕方(解雇の仕方)を教えてくれる弁護士もいるでしょう。問題社員には気の毒かもしれませんが、会社が急成長するためには必要なことなのです。それに一人の問題社員を理由に、ほかの社員の士気を下げるのはよくありません。

スタートアップ企業の目的に合わない社員とは別の道を歩んだほうが、お互いのためになることもあります。

イグジット(IPOあるいは事業売却)時のトラブルを回避できる

IPOや事業売却(M&A)は、起業家にとって一つのゴールでしょう。しかし、契約書をきちんと結んでいなかったことが理由で後で揉めたり、労働者や取引先とのトラブルが多いことを理由になかなかIPOできなかったり、事業売却する際に不当に安い金額がついたりしてしまうのです。起業家にとってスタートアップ企業の醍醐味は、大きなリスクを取って事業を急成長させる代わりに莫大なお金を手にすることでしょう。そのお金を元にふたたび新しい事業をはじめることもあります。
しかし、IPOや事業売却が失敗すると、これまでの苦労やリスクを取ってきたことが無駄になってしまいます。これでは、起業家の旨味が少なくなるでしょう。

最後の段階(イグジット)で後悔しないために、初期の段階から顧問弁護士が必要なのです。そうすれば、法律面で余計な失敗をするリスクを避けられます。費用面の心配があるかもしれませんが、たとえば月5万円で弁護士に一定程度の法的対応をお願いできるのは安いほうでしょう。法務担当社員を雇えば月5万円では済みません。ましてや弁護士を雇うとなると、一般社員以上の労務費負担が発生することになります。

弁護士もあくまでも人です。独立して事務所を開業した代表弁護士であれば経営者の気持ちを一定程度わかってくれるでしょう。顧問弁護士の必要性を感じながらも、どうしても弁護士費用を捻出できない場合は相談に乗ってくれることもあります。また、スタートアップ企業のストックオプションを与えれば、将来顧問料以上の利益を手にする可能性もあるでしょう。チャレンジ精神が旺盛な弁護士であれば興味を示してくれるかもしれません。

起業前からサポートしてくれる

昔に比べると会社設立は簡単にできるようになりました。株式会社であれば25万円ほど、合同会社であれば10万円ほどの資金があれば設立できるでしょう。しかし、スタートアップ企業は設立することが目的ではなく、その後きちんと成長できる基盤を整えてから設立する必要があるのです。「基盤を整える」とは必要事項を適切に決めることであり、その時点から弁護士と顧問契約を結ぶことでより多くのことをサポートしてくれます。

たとえば、会社を設立する際には次のようなことを決める必要があります。

  • 商号
  • 資本金
  • 取締役会設置の有無
  • 定款
  • 株式譲渡制限の有無  など

とにかく事業をはじめたい気持ちはわかりますが、こういった基本的なことを決めないまま事業をスタートさせてしまうと、経営陣の間で揉めて会社が空中分解する恐れもあります。基本的なことこそきちんと決めてから事業をスタートさせるようにしましょう。

会社設立前から顧問弁護士の意見をもらうことで、第三者の厳しい目にさらされることになります。そうすると、中途半端な形で会社がスタートすることがなくなり、より強い組織になるでしょう。

株式会社の場合、会社設立時に定款について公証人の認証を受ける必要があります。弁護士と顧問契約を結ぶと、こういった手続きを代行してくれるというメリットもあるのです。

労務管理の相談窓口を弁護士にすべき?

以下のようなケースでは、相談窓口を弁護士にした方がよいのでしょうか?

【ケース別】残業代トラブルの対応を相談

残業代トラブル対応の窓口は弁護士に任せたほうがよいでしょう。残業代を請求してくる従業員は十分な法律知識や法的な根拠のないままに残業代を請求してくる場合があります。そのため、すべての請求に対応して残業代を支払っていると必要のない残業代までキャッシュアウトすることになります。

一方、従業員の中には用意周到な人もおり、外部の弁護士に相談したうえで残業代を請求してくる場合もあります。そのようなとき、十分な法律知識がない状態で「従業員が勝手に言っていること」と判断して対応しなければ、のちのち大きな問題に発展するでしょう。

従業員が残業代を請求してきたとき、内容を見極めて支払う必要の有無を判断するには、顧問弁護士に依頼するのが最適でしょう。

【ケース別】業務上横領が起きたときの対応を相談

帳簿と口座の残高が合わない、経理担当社員がいつもと違う動き方をするなど、事前に横領の予兆を感じることがあるかもしれません。しかし、金額にもよりますが横領は非常にデリケートな問題です。もし、本当に横領されているなら刑事告訴や損害賠償請求を視野に入れて慎重に対処なければなりません。反対に横領が事実でなかったり、犯人とは別の人を疑っていた場合、反対にその人から訴えられることも考えられます。いずれにしても慎重に対処しないと、大きな問題に発展してしまうのです。

そして相手が横領を認めて損害賠償請求をしても、素直に払ってくれるとは限りません。このような場合は、給料や資産の差押など弁護士にしかできない手段を使うことも必要です。このような事態になることを想定して、はじめから顧問弁護士に相談しておくのがよいでしょう。

【ケース別】モンスター社員への対応を相談

モンスター社員の中にはただ感情的にわめくだけでなく、戦略的に目的を達成しようとしている人がいます。その目的は会社の信用を失墜させることなのか、会社側の事情による解雇に持ち込んで大きなお金を得ることなのか、それはモンスター社員にしかわからないことかもしれません。

こうした社員への対処は非常に厄介です。ときには、「お金を払って会社を辞めてもらったほうがよい」という判断になる場合もあるでしょう。しかし、経営者は自分が大切に経営してきた会社で問題を起こしたモンスター社員に対して感情的になり、払いたくなくても払ったほうがよいお金を渡すことに対して嫌悪感を抱くでしょう。このようなとき、顧問弁護士に相談すれば、法的に問題なく現時点でできるベストな対処方法をアドバイスしてくれるでしょう。

場合によってはその対処方法に納得がいかないかもしれません。しかし、大切に経営してきた会社や残された従業員を守るためには必要な決断かもしれません。そういった辛い決断の相談役に顧問弁護士がなってくれるのです。

【ケース別】クレームやクレーマー対応の代行を依頼

クレーマーの対応は非常に骨が折れるものです。精神的に疲弊し、時間を無駄にします。もちろんクレーマーに対応しても1円の売上にもなりません。そういった対応は顧問弁護士に任せると適切に対応してくれるでしょう。

あなたの会社の経営はあなたにしかできません。また、顧問弁護士の方がクレーマーの対応に長けているでしょう。限られた時間を有効に利用するためにも、顧問弁護士に任せた方がよいことは任せましょう。

【ケース別】債権回収の代行を依頼

債権回収もクレーマー対応と同様で売上になりません。しかし、放置しておくと自社の経営に大きな影響を及ぼします。また、債権回収はただお金の支払いを要求するだけでなく、相手の経済的事情を考慮したり、相手に返済計画を提出させたりといった調整が必要になります。一方、資産や売上金の差し押さえなど強硬な手段に出る場面もあります。特に差し押さえは裁判所を通じて行うため弁護士しか対応できません。そのような展開になる可能性を含むため、はじめから顧問弁護士に依頼したほうがよいでしょう。

【ケース別】ネット誹謗中傷・風評被害トラブルの対応を相談

インターネット上の掲示板や口コミサイトに自社の悪口や誹謗中傷を書かれると、対応に困りますよね?放置するとエスカレートしたり口コミが広がることがあり、そうかといっていちいちインターネット上で反論してもそれほどの効果があるとは思えません。

そのようなとき、顧問弁護士に依頼すれば削除要請などの対応を取ってくれます。また、特に悪質な場合(法律に抵触する可能性がある場合)は、プロバイダに問い合わせて書き込んだ人の個人情報を取得することも可能です(弁護士に許可された特権)。しかし、プロバイダにデータが残っているのは3か月程度といわれており、それを過ぎてしまうと弁護士でも取れる対応が少なくなってしまいます。手遅れにならないうちに、顧問弁護士に対応を依頼するほうがよいでしょう。

【ケース別】著作権トラブルの対応を依頼

著作権は知的財産権のように申請して発生する権利ではなく、著作物が誕生した時点で自動的に発生する権利です。そのため、知らないうちに(たまたま)侵害していたこともあるでしょう。しかし、悪意の有無に関わらず著作権侵害はトラブルのもとです。顧問弁護士に依頼すれば、トラブル発生時の初期対応やその後のフォローだけでなく、そもそも著作権を侵害しないための対策についてもアドバイスしてくれるでしょう。

【ケース別】商標登録の出願・商標権侵害トラブルを相談

商標登録や商標権侵害も企業間においてトラブルになりやすい事例の一つです。自社の権利を守るため、また不要に他社の権利を侵害しないためにも、普段から顧問弁護士に相談しておくほうがよいでしょう。もし、トラブルに発展しそうな場合はなおのこと迅速に顧問弁護士に相談し、対応を相談するようにして下さい。

【ケース別】法人破産の手続き・相談

会社は人が作るものです。残念ながら人が作るもので未来永劫の存在が約束されたものはありません。会社(法人)もその一つで、いつか破産せざるを得ない状況に陥ることも覚悟しておかねばなりません。

法人の破産は個人の破産と異なり、破産管財人がつくなど同じ裁判所を通した手続きでもやや複雑です。また、債権者への支払いを少しでも多くするなど関係者への配慮が必要な場合もあります。経営者は破産させる自社のことで頭がいっぱいかもしれませんが、弁護士に依頼すれば関係者を含めてもっともよい形で破産できるようサポートしてくれるでしょう。

顧問弁護士についてのよくある質問

遠方の弁護士と顧問契約を結んでも大丈夫か?

遠方の弁護士と顧問契約を結ぶと、頻繁に顔を合わせて打ち合わせはできないでしょう。そういった点に不安を感じて、顧問契約を結ぶ弁護士の選択の幅を狭くしている方もいるでしょう。
近年はテレビ会議ツールの普及により、直接会って話すのと変わらないようなリアルなオンラインコミュニケーションが可能となりました。そのため、直接会えないと弁護士と顧問契約するメリットがなくなるということはありません。

一部の裁判では、オンライン対応も可能になったといわれています。もちろん、一度も会わないのは不安という気持ちもわかります。そのため、初回の一度だけ直接会うのもよいでしょう。こちらから出向くのが難しい場合、弁護士によっては訪ねてきてくれる場合もあります。

本人の了承を得ないで顧問弁護士に個人情報を渡すのは可能か?

個人情報保護法の概念が広まり、本人の了解を得ないで個人情報を第三者に提供することがいけないことという認識が一般的になってきました。しかし、これはあくまで相手が第三者である場合のみです。弁護士は個人情報保護法の中で定義されている第三者に該当しません。業務に必要な情報であれば、本人の了承を得ずに顧問弁護士に個人情報を渡しても問題ないのです。

たとえば、次のようなケースが該当します。

  • 退職者から残業代請求されたため、対応を相談するために退職者の個人情報を弁護士に提供する
  • 消費者からクレームを受けたため、対応を相談するために消費者の個人情報を弁護士に提供する

ほかにも、従業員が業務中に交通事故を起こしたため事故の相手方の会社(運送会社など)と交渉するために運転手(自社社員)の個人情報を提供したり、横領が疑われる自社社員の個人情報を提供したりすることは、問題がないといわれています。

顧問弁護士にストックオプションを与えても問題ないか?

回答の前にストックオプションについて簡単に説明します。ストックオプションとは、特定の企業(自社)の株式をあらかじめ決められた価格(権利行使価格)で取得するかどうか選べる権利(新株予約権)のことです。
この段階では該当の株式は市場で販売されていないため、市場で販売されたときに、権利行使価格を上回った段階で売却すれば利益を得られるというものです。特にスタートアップ企業の場合は数十倍、あるいは数百倍になる可能性があるものです。

2019(令和元)年の中小企業等経営強化法の改正により、弁護士や会計士などの国家資格を持ち、かつ3年以上の実務経験がある場合は税制適格のストックオプションを与えられるようになりました(社外高度人材活用新事業分野開拓計画制度)。

ただし、税制適格のストックオプションを与えるには条件があります。設立年数が浅いなど要件を満たした企業がファンドから出資を受ける場合、社外人材(顧問弁護士)を活用して新事業分野の開拓を行う際に適用されることがあるのです。

新事業分野の開拓は経営者にとってもそうですが、弁護士にとっても負担ややりがいの大きなものです。その成果に応える報酬の一つがストックオプションなのです。

夜間や休日などでも対応してくれるか?

会社経営はいつ何が起きるか分からないというリスクを常に抱えています。中には弁護士事務所が休みの日に、急いで相談する必要があるようなトラブルが発生することもあるでしょう。このようなとき、顧問弁護士は対応してくれるのでしょうか?

夜間や休日に対応してくれるかどうかは、弁護士の契約内容や弁護士のスタンスによります。契約書に記載があれば夜間や休日でもきちんと対応してくれるでしょう。反対に、中には夜間や休日は対応しないという弁護士もいるかもしれません。契約書の内容をよく確認し、弁護士の人柄も見たうえで、顧問契約するか決めましょう。

顧問弁護士のサービスの例を教えてほしい。

顧問弁護士のサービス内容は、弁護士事務所によりけりです。ここではサービスの例を2つ紹介します。

1つ目は5万円/月で次の対応をしてくれる例です。

  • 法律相談
  • 契約書のリーガルチェック
  • 会社への訪問相談や会議への出席

上記内容については時間制限なく対応してくれますが、上記以外の業務については別途費用が発生するということがあります。

2つ目は同じ5万円/月で、対応できる時間(制限時間)が3時間までと決まっているものです。1つ目と異なり時間が制限される代わりに、対応できる業務の幅を広げているようです。

  • 法律相談
  • 契約書のチェック
  • 会社への訪問相談・会議への出席
  • 簡単な契約書の作成
  • 相手方へ簡単な通知書の送付・交渉など

ただし、制限時間(3時間)を超えた場合は別途費用が発生します。3時間をどれほど厳密にカウントするかは弁護士のスタンス次第でしょう。

顧問弁護士の費用は本当に得なのでしょうか?

弁護士と顧問契約を結ぶメリットはわかっていても、手元のキャッシュアウトを気にしてなかなか弁護士費用を捻出できない経営者の方もいるでしょう。このようなときは、法務担当の社員を雇うケースと比べてみましょう。

たとえば、弁護士の顧問料を5万円/月とすると1年間に60万円の費用がかかります。サービス内容に制限はあるものの、弁護士資格を持っている人材に一定程度の法律相談ができるのはありがたいものです。

一方、法務担当の社員を雇うにしても年間60万円では雇えません。労務費削減のため、正社員以外の形態で雇用契約を結んだ場合、肝心なときに会社にいない(勤務日でない)という場合もあるでしょう。また、法務担当社員は必ずしも弁護士資格を持っているわけではありません。また、一度雇用契約を結ぶと相当な理由がない限り解雇もできません。

つまり、法務担当社員を雇うと、弁護士ほど法律知識がないにもかかわらず高い費用(労務費)が必要になり、もし能力が不足しているとわかった場合でも簡単に解雇できないのです。

はじめから顧問契約を結ぶのは不安です。

前述の通り、弁護士も一人の人間です。知識や経験のレベルに差があったり、能力は問題なくても相性が悪かったりということもあるでしょう。そのため、はじめから顧問契約を結ぶことに対して不安な気持ちを持つのは当然のことです。

そういった方は、スポットで数回同じ弁護士に依頼して様子を見るのはいかがでしょうか。ここまで読んでいただいたあなたは、顧問弁護士の必要性そのものは感じているでしょう。それならば、その弁護士と顧問契約を結ぶかは別として、顧問契約を結ぶことを前提としてスポットで依頼してみましょう。
そうすれば、弁護士の人となりや自社の弁護活動に対する姿勢が見えてくるでしょう。可能であれば、もう一人か二人くらい、スポットで別の弁護士に依頼してもよいかもしれません。いくらスポットとはいえ弁護士はあなたから費用をいただくため、顧問契約を結ばなくても、一定程度満足のできる対応をしてくれるでしょう。

弁護士は誰でもできるわけでない高度な職業です。しかし、あくまでもこの世に存在するサービスの一つであるという事実もあります。そのため、利用してしっくりこなければ、しっくりくる弁護士を探せばよいのです。

まとめ

この記事では弁護士と顧問契約する必要性を中心に、顧問弁護士について解説してきました。顧問弁護士に依頼するメリットは大きく、費用負担を考慮してもあなたの会社の経営に大きくプラスとなるでしょう。

弁護士自身の業界経験や、弁護士としての顧問契約の実績、そして人として相性がよい顧問弁護士を選ぶポイントです。ぜひ、あなたも弁護士と顧問契約を結び、自社の事業を発展させて世の中の役に立つ事業を行って下さい。

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