業務中に指を切断してしまった場合、「労災として扱えるか」「どのような補償があるのか」「全額補償してもらえるのか」と気になる方もいるでしょう。本記事では、業務中に指を切断した際に対象となる労災保険の給付内容とあわせて、損害賠償が請求できるケースや種類などを紹介します。
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業務中に指を切断した場合は労災保険の給付申請をしよう
業務中に指を切断してしまった場合、まずは治療を受け、労災保険の給付申請を行いましょう。労災と認定されると、労災保険によって必要な給付を受け取れます。例えば、切断してしまった指の縫合やその後の治療のために必要となる診療費は、「療養(補償)等給付」の対象です。また、休業や残ってしまった障害に対する補償も給付対象となります。
具体的な補償について、見てみましょう。
指を切断した場合に対象となる補償とは
業務中の指の切断が業務災害(労災)と認められた場合、治療のための補償として「療養(補償)等給付」が、4日以上の休業がある場合は休業期間の収入の補償として「休業(補償)給付」が給付されます。さらに、治療後も一定の障害が残れば、障害等級に応じて、障害(補償)年金または一時金が給付されます。それぞれの保険給付については以下の通りです。
療養(補償)等給付
療養(補償)等給付は、業務災害等により療養を必要とするときに給付されます。給付は傷病が治ゆ(症状固定)し、療養を必要としなくなるまでが対象です。
症状固定とは
治療などの医療措置後に、傷病の症状が安定し、医学上一般に認められた医療を行っても、その医療効果ができなくなった状態(その傷病の症状の回復・改善が期待できなくなった状態)のこと
休業(補償)等給付
休業(補償)等給付は、業務災害等による傷病の療養のため、労働することができず、賃金を受けられないときが対象です。休業4日目から、休業1日につき基礎日額の60%相当額が給付されます。
あわせて、休業4日目から休業1日につき給付基礎日額の20%相当額が「休業特別支給金」として給付されます。
傷病(補償)等年金
傷病(補償)当年金は、業務災害等による傷病が療養開始後1年6カ月を超過した日、またはその日以後において、(1)傷病が治ゆ(症状固定)していないこと、(2)傷病による障害の程度が傷病等級の第1級から第3級に該当すること、のいずれにも当てはまる場合、対象となる年金が給付されます。両手の手指の全部を失った場合は、障病等級3級に該当するため、給付基礎日額の245日分の年金が給付対象です。
また、傷病等級3級の場合、「傷病特別支給金」として100万円の一時金、「傷病特別年金」として算定基礎日額の245日分が給付されます。
障害(補償)等給付
障害(補償)等給付は、傷病が治ゆ(症状固定)と診断されたのちに、残存した障害の程度(障害等級)に応じて給付されます。下の図のように、障害等級に応じて「障害(補償)等年金」および「障害特別支給金」のほか、「障害特別年金」または「障害特別一時金」の給付が行われます。
障害等級とは
指の切断は、以下の第3級から第14級の障害等級に該当します。けがの程度に応じて等級は異なります。
障害等級 | 後遺障害の内容 |
第3級 | 両手の手指の全部を失ったもの |
第4級 | 両手の手指の全部の用を廃したもの |
第6級 | 一手の五の手、または母指を含み四の手指を失ったもの |
第7級 | 一手の母指を含み三の手指、またはは母指以外の四の手指を失ったもの 一手の五の手指、または母指を含み四の手指の用を廃したもの |
第8級 | 一手の母指を含み二の手指、または母指以外の三の手指を失ったもの 一手の母指を含み三の手指、または母指以外の四の手指の用を廃したもの |
第9級 | 一手の母指、または母指以外の二の手指を失ったもの 一手の母指を含み二の手指、または母指以外の三の手指の用を廃したもの |
第10級 | 一手の母指、または母指以外の二の手指の用を廃したもの |
第11級 | 一手の示指、中指、または環指を失ったもの |
第12級 | 一手の小指を失ったもの一手の示指、中指、または環指の用を廃したもの |
第13級 | 一手の小指の用を廃したもの一手の母指の指骨の一部を失ったもの |
第14級 | 一手の母指以外の手指の指骨の一部を失ったもの 一手の母指以外の手指の遠位指節間関節を屈伸することができなくなったもの |
労災保険の申請方法について
労災保険から各給付を受けるには、本人から所轄の労働基準監督署に請求書および添付書類を提出します。申請書には事業主の証明欄もあるため、必要項目の記載をお願いしましょう。
給付ごとに必要な請求書や添付書類は異なるため、給付内容に沿った書類を提出することに注意が必要です。必要な請求書などについては、労働基準監督署で受け取るほか、「厚生労働省」のホームページでダウンロードできます。
労災保険と合わせて会社に損害賠償を請求できる場合も
労災保険による補償だけでは、実際に受けた損害の全額をカバーすることができません。ただし、会社の安全配慮義務または使用者責任の違反が認められるなど、労災の発生が会社の責任である場合は、損害賠償の請求が可能です。
損害賠償を請求する方法とは
損害賠償を請求するためには、まず会社と任意交渉を行います。その際は、会社側に責任があることの立証が必要です。また、どのような損害賠償を請求できるか個人で判断するのは難しいため、交渉を行う段階から専門的知識を持つ弁護士に相談することをおすすめします。
会社が交渉に応じない場合は、弁護士に相談しながら、訴訟を提起といった手続きに進みます。
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指の切断によって請求できる損害賠償の種類
先述したように、損害賠償は会社に安全配慮義務違反などが認められる場合に請求が可能です。損害賠償の種類は主に、「財産的損害」と「精神的損害」の2つに分けられます。
財産的損害
財産的損害とは、労災事故によって“財産的に被った被害”に対する金銭的な賠償のことです。業務中に指を切断して会社に責任を問える場合の財産的損害には、治療関連費や休業損害、逸失利益などがあります。
(1)治療関連費
治療関連費は、労災事故によるけがの治療にかかった費用などです。一般的に、労災が認められるけがの場合、治療費は労災保険が適用されます。しかし、入院にかかる日用品の購入費や入院期間中の付き添いといった費用は労災保険の適用外となります。後日まとめて請求できるよう、入院費など労災保険が適用されない費用が書かれた領収書は、必ず受け取り保管しておきましょう。
(2)休業損害
休業損害とは、業務災害によるけがによって仕事を休んでいた間に受け取れたはずの給料や賞与のことです。請求が行えるのは、事故発生日から傷病が治ゆ(症状固定)するまでの期間です。労災保険では休業(補償)給付として、給付基礎日額の60%が補償され、休業補償分を除いた残りの40%は、休業損害として会社に請求できます。
(3)逸失利益
逸失利益とは、けががなければ将来働いて得られたであろう収入のことです。先述した休業損害は、「症状固定前の収入減少を補償するもの」です。対して、逸失利益は「症状固定後の収入減少を補償するもの」となります。指の切断により、労働ができなくなったときや労働に制限が起こるときに請求が可能です。そのため、けがによる後遺障害があっても、実際の収入が減少しなかった場合は、原則として逸失利益を得ることは認められません。
後遺障害の逸失利益の金額は、けがを負った労働者の「年齢」「基礎収入」「後遺障害の重さ」で異なります。具体的には以下の計算式で逸失利益を求めます。
出典:『民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準』公益財団法人日弁連交通事故相談センター東京支部
「基礎収入」は、事故前の1年間の収入、もしくは厚生労働省調査に基づいた平均賃金で算出します。平均賃金は、年齢によって異なります。
「労働能力喪失率」とは、後遺障害によって労働能力がどの程度下がったかを数値化したものです。等級が重くなるほど、労働能力喪失率は高くなります。後遺障害等級に対する労働能力喪失率は以下の通りです。なお、指の切断による障害等級は第3級以降が該当します。
「労働能力喪失期間」とは、後遺障害によって労働能力が制限される期間のことです。原則として、症状固定時から67歳になるまでの年数で期間を算出します。
また、「ライプニッツ係数」とは、逸失利益に含まれる利息をあらかじめ除くために用いる数字です。逸失利益は原則として、全額が一括で支払われ、その後は全額における利息が毎年発生します。事故前は、1年間の収入に対して毎年利息が発生していました。しかし、事故によって逸失利益全額の利息が毎年発生するため、毎年収入を得る場合に比べて利息を多く受け取りすぎてしまいます。これを防ぐために、ライプニッツ係数を用いて調整します。
【関連記事】労災が発生したら会社に損害賠償請求はできる?相場や流れ、注意点を解説
精神的損害
精神的損害とは、労災事故によって“精神的に被った損害”に対する金銭的な賠償のことで、いわゆる「慰謝料」のことです。業務中に指を切断して会社に責任を問える場合、精神的損害として「障害(入通院)慰謝料」と「後遺障害慰謝料」の2つが請求できます。
(1)障害(入通院)慰謝料
障害(入通院)慰謝料とは、けがにより入通院が必要となったことの精神的苦痛に対する慰謝料のことです。1日以上の入院・通院があれば、原則として入通院慰謝料の対象となります。
入通院の期間を基礎に、以下の入通院慰謝料表を基準として請求が可能です。なお、けがの程度や治療の程度、通院期間・頻度などによって、通常の基準額から増減することもあります。
出典:『民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準』公益財団法人日弁連交通事故相談センター東京支部
(2)後遺障害慰謝料
後遺障害慰謝料とは、後遺障害が残ったことに対する慰謝料のことです。この慰謝料を請求するには、後遺障害認定を受ける必要があります。労災保険から認定を受けた後、後遺障害等級に応じて、以下を基準とした慰謝料の請求が可能です。
出典:『民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準』公益財団法人日弁連交通事故相談センター東京支部
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業務中に指の切断があり労災が認定された場合、療養や休業、残存する障害などの必要に応じて、労災保険からの補償が得られます。また、会社の安全配慮義務違反が認められるなど、労災の発生した責任を会社に問える場合は、損害賠償の請求が可能です。しかし、妥当な損害賠償を個人で判断するのは難しいとされているため、早めに弁護士への相談が望ましいです。
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