労災における第三者行為災害とは、労災保険給付の原因である災害が第三者(他人、職場の他の従業員など)の行為などによって生じたもので、第三者が損害賠償の義務を有しているものを意味します。被災者は、労災保険から給付を受けられると同時に、第三者に対し損害賠償請求することも可能です。場合によっては第三者との示談交渉になることもあり、弁護士に相談した方がよいケースも多いでしょう。この記事では、第三者行為災害の概要や手続きの進め方、注意点などを解説します。

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⚠️ 第三者の過失でケガを負っていませんか?
第三者の行為による労災(通勤中の交通事故、他者の重機や暴行、動物による負傷など)では、労災給付に加え加害者・会社へ損害賠償請求が可能な場合があります。請求漏れ・示談ミスを防ぐには、初動で弁護士へ相談することが重要です。
第三者行為災害のほとんどは交通事故|ブライトは労災と交通事故をワンストップで対応
📋 会社への損害賠償・3問チェック
労災の申請とは別に、会社に対して損害賠償を請求できる場合があります。下記の質問に答えると目安が表示されます(法的な最終判断ではありません)。
Q1. どのような状況でしたか?
通勤中の事故ですね。相手の有無でご相談窓口が異なります。
相手がいる事故(追突・接触など)は交通事故のご相談窓口へご案内しています。相手のいない単独事故(転倒・踏み外しなど)は、そのまま労災の損害賠償のご相談を続けられます。
Q2. 今の状態を教えてください
Q3. 会社側に、次のような事情はありましたか?
会社への損害賠償請求ができる可能性があります
安全配慮義務違反が認められれば、労災保険の給付とは別に、会社に対して慰謝料・逸失利益などの損害賠償を求められることがあります。時効や証拠の散逸の問題があるため、早めのご相談をおすすめします。労災事故部統括・笹野皓平弁護士が無料でご相談をお受けします。
※ご相談は無料・完全成功報酬制です。結果を保証するものではありません。
※労災保険から支給された給付(休業補償・障害補償等)は、二重取りを避けるため損害賠償額から調整(控除)される場合があります。
ご家族を亡くされたこと、心よりお悔やみ申し上げます
安全配慮義務違反が認められれば、労災保険の遺族給付とは別に、会社に対して損害賠償を求められる可能性があります。ご家族の状況が落ち着かれてからで構いません。労災事故部統括・笹野皓平弁護士が無料でご相談をお受けします。
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※労災保険から支給された給付(遺族補償等)は、二重取りを避けるため損害賠償額から調整(控除)される場合があります。
「第三者行為災害」とは、業務上または通勤中に、被災者本人と会社以外の第三者の行為によって発生した労災事故をいいます。代表例は、業務中・通勤中の交通事故です。実務上、第三者行為災害として処理される労災のうち大多数(一説には8〜9割)が交通事故とされています。
第三者行為災害の典型例
- 営業先への移動中・配送中・通勤中に交通事故に遭った(最多)
- 業務中、他社の運転する重機・車両により負傷した
- 業務中、利用客や第三者から暴行を受けた
- 業務中、第三者が管理する動物(犬等)により負傷した
「労災手続き」と「加害者対応」の両方を進める必要がある
第三者行為災害では、被害者は2つのルートを並行して進めることになります。
| ルート | 窓口 | 受け取れるもの |
|---|---|---|
| 労災手続き | 労働基準監督署・会社 | 療養補償・休業補償・障害補償・遺族補償・各特別支給金 |
| 加害者対応 | 加害者本人・自賠責保険・任意保険会社 | 慰謝料・治療費・休業損害・逸失利益・物的損害 |
労災手続きだけ進めても慰謝料は受け取れず、加害者対応だけ進めても過失相殺で減額されたり治療費を打ち切られたりするリスクがあります。両方を最適に組み合わせることで、被害者の手取りの最大化を目指します。
弁護士法人ブライトは労災と交通事故の両方に対応
第三者行為災害の処理には、労災実務(様式16号・第三者行為災害届・特別支給金)と、交通事故実務(過失割合・慰謝料赤本基準・後遺障害等級認定)の両方の専門知識が必要です。労災と交通事故のどちらか片側だけだと、調整漏れや控除主張への対抗が不十分になる場合があります。
弁護士法人ブライトは、労災事故と交通事故の両方に注力する弁護士が在籍しており、第三者行為災害について両ルートを一気通貫でサポートできる体制を整えています。
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第三者行為災害(交通事故)に関連する解説
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労災における第三者行為災害とは
労働災害(労災)における第三者行為災害とは、仕事中や通勤途中のケガや病気などの労災保険給付の原因である災害が第三者の行為などによって生じたものを指します。第三者行為災害は、労災保険の受給権者(被災労働者または遺族)に対して、第三者が損害賠償の義務を有していることが特徴です。
第三者とは
当該災害に関する労災保険の保険関係の当事者以外の者のことです。具体的には、政府、事業主、労災保険の受給権者のいずれにも該当しない者をさします。
参考:「労災保険 第三者行為災害のしおり」厚生労働省 都道府県労働局 労働基準監督署
第三者行為災害の例
第三者行為災害にはどのようなものがあるのでしょうか。例を挙げながらみていきましょう。
【通勤災害のケース】通勤や業務での移動中に交通事故に遭った
通勤や業務上で必要な移動中に交通事故に遭った、通勤災害のケースです。自動車やバイク、自転車、徒歩に加え、電車やバスなどの公共交通機関での事故も対象になります。
ただし、自分の過失が100%の事故(自損事故)の場合は、第三者行為災害になりません。
【業務災害のケース1】他の従業員が運転する重機により負傷した
業務中に、他の従業員が運転するフォークリフトが急旋回して轢かれた場合や、他の従業員が操作しているクレーンの吊荷と体が接触してケガを負った場合など、自分以外の従業員の行動が原因となりケガを負ったケースも該当します。
| 【会社に責任を追及できる場合は、会社に対しても損害賠償請求が可能】 こういったケースの場合、作業指揮者が適切に配置されていない、会社が運転者に必要な運転資格を取得させず作業に従事させたなど、会社に責任を追及できる場合は、会社に対して損害賠償請求ができます。会社との交渉を行うには、弁護士に相談するとよいでしょう。 |

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【業務災害のケース2】他人から暴行を受けた
タクシーやバスの運転手が乗客から一方的に殴られたり、飲食店の従業員が酔った客から蹴られたりと、業務中に他人から暴行を受けた場合も第三者行為災害に当たります。
ただし業務中とはいえ、従業員同士の私的な争いが原因の場合は対象から外れます。
【業務災害のケース3】他人が飼育・管理する動物により負傷した
外回りの営業の際、訪問した一般宅で飼っている猫に噛まれたなど、業務中に他人が飼育・管理する動物により負傷した場合も含まれます。また、徒歩で出勤途中、散歩している犬に噛まれたといった通勤中の負傷も対象になります。
ただし、飼育しているペットがゲージに入れられ対策がされているにもかかわらず、労働者自らが柵に手を入れて噛まれたなど、飼い主の過失がないと判断された場合は対象外になることもあります。
労災請求手続きをするには「第三者行為災害届」が必要
第三者行為災害に遭い、労災保険の給付を受ける場合、手続き自体は基本的には通常の労災保険の請求手続きと同様になります。ただし、保険給付の請求に必要な書類に加え、「第三者行為災害届」を被災者の所属する事業場を管轄する労働基準監督署に提出します。
この届けは、支給調整を適正に行うために必要なものです。支給調整については、後で詳しく説明します。
| Q.第三者行為災害届は誰が書くのか? 第三者行為災害届は、請求者が記入し提出します。請求者が死亡した場合や傷病の状況によっては、代理人が対応することも可能です。 |
第三者行為災害届の記入例
第三者行為災害届の記入例は厚生労働省の「労災保険 第三者行為災害のしおり」の12~15ページに掲載されています。参考にご覧ください。
第三者行為災害届の書き方|交通事故・自転車事故の記入例つき
第三者行為災害として労災請求する場合、通常の労災申請書類に加えて「第三者行為災害届」を労働基準監督署に提出する必要があります。書き方を誤ると差戻しや手続き遅延の原因となるため、項目ごとのポイントと記入例を整理します。
第三者行為災害届の様式と入手方法
厚生労働省指定の「第三者行為災害届」を使用します。労働基準監督署の窓口で受け取るか、厚労省公式サイトからダウンロードできます。提出は2部(正本・副本)が必要です。
記入欄ごとのポイント
| 記入欄 | 記入のポイント |
|---|---|
| 事故発生日時・場所 | 交通事故証明書と完全に一致させる。日付・住所表記の揺れに注意 |
| 第三者(加害者)の住所・氏名 | 交通事故証明書記載の通り。連絡先電話番号・勤務先も判明している範囲で記入 |
| 事故の概要 | 過失割合や責任所在を断定的に書かない。客観的事実のみを時系列で記載 |
| 加害者側の保険加入状況 | 自賠責保険会社・任意保険会社・証券番号を記入。不明な場合は「調査中」 |
| 示談・賠償の状況 | 未示談・交渉中・既受領の別を明確に。既受領がある場合は金額・項目(治療費/休業損害/葬祭費など)を内訳で記載 |
事故態様別の記入例
例1|業務中・通勤中の交通事故(最多パターン)
- 事故概要:「営業先○○に向けて社用車で移動中、信号停止していたところ後方から相手方乗用車に追突された」
- 必要添付書類:交通事故証明書(必須)、念書(兼同意書)、運転免許証・車検証コピー、相手方保険会社情報
- 注意点:相手方の任意保険会社が一括対応していて治療費を立替払いしている場合、その旨を「賠償の状況」に明記
例2|自転車事故(自転車対自転車・自転車対歩行者など)
- 事故概要:「通勤途中、自転車で走行中に相手方自転車と接触し転倒、骨折」
- 必要添付書類:警察発行の事故証明(または事故発生状況報告書)、念書、相手方の連絡先・保険加入状況
- 注意点:自転車の場合、加害者が個人賠償責任保険・自転車保険に加入しているかを確認。未加入の場合は加害者個人への請求になるため、回収可能性を見て労災給付を活用
例3|業務中の暴行・ハラスメント(非交通事故)
- 事故概要:「業務中、来店した客から突然暴力を振るわれ負傷」
- 必要添付書類:警察への被害届受理票、診断書、可能であれば刑事処分結果の写し
- 注意点:加害者が逃走・身元不明のケースでも労災請求は可能。第三者行為災害届の加害者欄は判明している範囲で記入
第三者行為災害届に添付する主な書類
- 交通事故証明書(自動車安全運転センターで取得・必須)
- 念書(兼同意書)(加害者からの賠償と労災給付の調整に同意する書面)
- 第三者行為災害報告書(加害者側が労基署に提出する書面)
- 事故発生状況報告書(必要に応じて)
- 運転免許証・車検証・自賠責保険証のコピー
- 診断書・治療費の領収書
加害者と連絡が取れない・加害者が逃走したとき
ひき逃げ・当て逃げ、加害者が連絡を絶った等の場合でも、判明している範囲で記入し、空欄の理由を「行方不明」「連絡不能」と記載すれば労災請求は受け付けられます。労基署の判断で第三者行為災害届の一部省略が認められるケースもあります。
加害者不明の場合は、自賠責の政府保障事業(国土交通省)に対する請求も並行して検討します。
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第三者行為災害届に添付する書類
第三者行為災害届を提出する際には、以下の表に示す書類を添付します。なお、念書(兼同意書)および交通事故証明書(または交通事故発生届)以外の添付書類については、下記表の備考欄に該当する場合のみ必要となります。

出典:「労災保険 第三者行為災害のしおり」厚生労働省 都道府県労働局 労働基準監督署
念書(兼同意書)について
念書(兼同意書)は、不用意な示談により労災保険給付を受けられなくなったり、すでに受け取った労災保険給付を回収されたりなどの損失を被ることを防ぐための書類です。以下のような注意事項が記載されていますので、内容をよく読み理解した上で、労災保険給付を受ける本人が署名します。
| 【念書(兼同意書)の主な注意事項】 ・示談、和解した場合の労災保険給付金受け取りについて ・第三者行為災害における求償および控除について(求償、控除については後ほど詳しく説明します) ・自賠責保険などに対する請求権を有する場合で自賠責保険などによる保険金支払いを先に受けることを希望した場合の取り扱いについて ・個人情報の取り扱いに関しての同意 |
交通事故証明書について
交通事故証明書は、自動車安全運転センターで交付証明を受けたものを提出します。なお、警察署へ届け出ていないなどの理由により証明書の提出ができない場合には、「交通事故発生届(様式第3号)」を提出します。
また、交通事故以外の災害で公的機関の証明書などが得られる場合は、その証明書などを提出します。
お問い合わせ、相談は無料です
(※お電話での受付は平日9:00~18:00となっております、それ以外の時間はメールやLINEでのお問い合わせをお願いします。また、お問い合わせいただいた事案について、SMSで回答させていただく場合がございますので、予めご了承ください。)
第三者(加害者側)は「第三者行為災害報告書」を提出
第三者行為災害報告書は、第三者(加害者側)が提出する書類です。第三者に関する事項、災害発生状況、損害賠償金の支払状況などを確認するために必要となります。労働基準監督署から提出を求められた場合には速やかに提出しなければなりません。
| 【書類について】 「第三者行為災害届」「念書(兼同意書)」「交通事故発生届」「第三者行為災害報告書(調査書)」は、厚生労働省の主要様式ダウンロードコーナー(労災保険給付関係主要様式)からダウンロードできます。 |
労災保険給付と損害賠償金の支給調整について
第三者行為災害の場合、被災者は第三者に対し損害賠償請求権を取得することになりますが、同時に労災保険に対しても給付請求権を取得します。ただし、同一の事由について両者から損害のてん補を受けることになれば、実際の損害額より多くが支払われ不合理と見なされます。
また、本来被災者への損害のてん補は、労災の原因となった加害行為などに基づき、損害賠償責任を負う第三者が負担すべきものであると考えられます。このため、両方が支給される際は、労働者災害補償保険法(第12条の4)に基づき第三者行為災害に関する労災保険給付と民事損害賠償との支給調整が行われます。
支給調整の方法として、求償と控除の2種類があります。労災保険給付と民事損害賠償をどちらを先に受け取るかによって、いずれかの方法が取られます。
求償【受け取りパターン:労災保険給付が先】
求償とは、労災保険給付を先に受け取る場合の支給調整方法です。政府が労災保険給付と引き換えに被災者が第三者に対して持っている損害賠償請求権を取得し、この権利を第三者(交通事故の場合は保険会社など)に直接行使する形で支給調整が行われます。

控除【受け取りパターン:損害賠償金が先】
控除とは、第三者の損害賠償(自動車事故の場合は自賠責保険などの支払い)が先に行われていた場合の支給調整です。政府は、労災保険の給付額から損害賠償の額を差し引いて補償します。

第三者行為災害における支給調整の対象となるもの
第三者行為災害における支給調整の対象は、労災保険給付と損害賠償が同一の事由のものに限られています。労災保険給付に対応する損害賠償項目については、下記のとおりです。
労災保険給付と損害賠償項目の対比表
| 労災保険給付 | 対応する損害賠償の損害項目 |
|---|---|
| 療養(補償)給付 | 治療費 |
| 休業(補償)給付 | 休業により喪失したために得ることができなくなった利益 |
| 傷病(補償)年金 | 同上 |
| 障害(補償)給付 | 身体障害により喪失または減少して得ることができなくなった利益 |
| 介護(補償)給付 | 介護費用 |
| 遺族(補償)給付 | 労働者の死亡により遺族が喪失して得ることができなくなった利益 |
| 葬祭料(葬祭給付) | 葬祭費 |
支給調整の対象外となるもの
労災保険では被災者に対して、保険給付のほか特別支給金も給付されますが、特別支給金は保険給付ではなく社会復帰促進等事業として支給されるため、支給調整の対象とはなりません。
ほかにも、以下の損害賠償は労災保険と同一の事由によるものではないため、支給調整の対象外です。
- 被災者の精神的苦痛に対する慰謝料
- 労災保険給付の対象外のもの(例:自動車の修理費用、遺体捜索費、義肢、補聴器など)
第三者行為災害における支給調整の期間~求償は5年、控除は7年~
支給調整には期限があります。求償は、災害発生後5年以内に支給事由の生じた労災保険給付であり、災害発生後5年以内に保険給付を行ったものについて行うこととされています。控除は、災害発生後7年以内に支給事由の生じた労災保険給付であり、災害発生後7年以内に支払うべきものを限度としています。
出典:「労災保険 第三者行為災害のしおり」厚生労働省 都道府県労働局 労働基準監督署
参考:「第三者行為災害事務取扱手引」厚生労働省労働基準局
労災と自賠責、どちらを先に使うべきか|求償・控除の実務
第三者行為災害では、労災給付と加害者からの損害賠償が同じ損害項目(治療費・休業損害など)について重複しないよう、「求償」または「控除」による調整が行われます。どちらの方式になるかは「労災と自賠責のどちらを先に受給したか」で決まります。
2つの調整方式:求償と控除
| 方式 | 受給順序 | 調整の流れ |
|---|---|---|
| 求償 | 労災が先に給付 | 労災(政府)が、加害者・自賠責保険会社に対して給付した分を求償(取り戻し請求)する |
| 控除 | 自賠責・任意保険が先に給付 | その後の労災給付額から、すでに加害者側から受領した同種項目分を控除して支給 |
厚生労働省の事務取扱手引上は「自賠責先行(控除方式)」が原則とされていますが、被害者の選択により労災先行(求償方式)にすることも認められています。労基署からも「自賠責先行か労災先行か」の確認連絡があるのが通常です。
実務上「労災先行」が被害者にとって有利になる理由
結論から述べると、第三者行為災害(特に交通事故)では、多くの場合「労災先行」のほうが被害者の手取りが大きくなります。理由は次の4点です。
- 労災給付は被害者の過失で減額されない:交通事故で過失が争点になる場合、加害者からの賠償は過失割合分が減額されますが、労災給付は減額されません
- 自賠責120万円の傷害枠を慰謝料の原資として温存できる:治療費・休業損害を労災で賄えば、自賠責120万円の多くを慰謝料の原資として残せます
- 治療費打ち切り通告に強い:相手方の任意保険会社が治療費の対応を打ち切っても、労災の療養補償給付は継続します
- 労災特別支給金は損益相殺の対象外=「上乗せ」になる(後述)
「特別支給金」は損益相殺の対象外|被害者保護の決定的論点
労災保険には、通常の給付に加えて「特別支給金」という上乗せ給付があります。代表的なものは次のとおりです。
- 休業特別支給金:給付基礎日額の20%(休業給付60%に上乗せされ、合計80%相当となる)
- 障害特別支給金:後遺障害等級に応じた一時金(8〜342万円)
- 遺族特別支給金:300万円の一時金
これらの特別支給金は、最高裁判例(最判平成8年2月23日)により損害賠償との損益相殺の対象外と判断されています。理由は、特別支給金が「労働者の福祉の増進を図る目的」で支給されるものであり、損害の填補を目的とした給付ではないためです。
つまり、加害者側からの損害賠償を受けても、労災の特別支給金は控除されず、そのまま被害者の手元に残る「上乗せ」となります。これが、労災先行が被害者にとって有利になる構造的な理由です。
加害者側の保険会社が「特別支給金まで控除」と主張してくる典型パターン
実務上、加害者側の任意保険会社が損害賠償の提示書面で「労災休業特別支給金20%も損益相殺の対象として控除済み」と記載してくるケースが少なくありません。死亡事案では「労災遺族補償年金1000日分(特別支給金を含む)を満額相殺」といった提示も見られます。
これらは判例上認められない控除ですが、被害者ご本人ではこの控除主張を見抜くことが困難であり、結果として本来受け取れるはずの金額より少なく示談してしまうリスクがあります。
💡 ポイント:第三者行為災害(特に交通事故)の損害賠償提示書面が届いたら、控除項目に「労災特別支給金」「遺族特別支給金」が含まれていないかを必ず確認してください。含まれている場合、判例上の根拠を示して控除部分の回復を求められる可能性があります。
弁護士法人ブライトの実例|保険会社の控除主張への対応
事例1|50代女性・歩行中の交通事故
歩道を歩行中に車にはねられた依頼者の事案。相手方保険会社からの賠償提示書面に、「労災休業特別支給金(20%)も損益相殺の対象として控除済み」と記載されていました。被害者ご本人ではこの控除主張を見抜くことが困難なところ、弁護士が介入し、最高裁判例(平成8年2月23日)に基づき特別支給金は損害填補目的ではなく損益相殺の対象外であることを指摘し、控除部分の回復を進めました。
事例2|60代男性・業務中の死亡事故(第三者加害)
業務中の交通事故でご本人が亡くなられた事案。加害者側保険会社が遺族補償年金1000日分を満額損害から差し引く計算で提示してきましたが、その控除額に特別支給金が含まれており、遺族厚生年金との調整も適切になされていなかったことを弁護士側で精査・指摘。再計算のうえ正しい損害賠償額を主張しました。
─ 監修:笹野皓平 弁護士(労災事故部統括)
「自賠責先行」でも問題ないケース
- 軽症で自賠責120万円の枠内で完結する見込みの場合
- 加害者の任意保険会社が円滑に一括対応した状況で、被害者の手間を最小化したい場合
- 過失がほぼゼロで、自賠責の早期支払いを優先したい場合
これらのケースでは、自賠責先行でも被害者の手取り総額に大きな差が出ないことがあります。判断は症状の見通し・過失割合・保険会社の対応姿勢を踏まえて個別に行う必要があります。
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第三者行為災害に遭ったとき、特に気をつけること
第三者行為災害に遭い、損害賠償や労災保険給付の手続きを進める上で、特に気をつけるべき2点について説明します。
1.自賠責保険などに対する請求権がある場合
第三者行為災害が自動車事故の場合は、手続きの方法が2種類あります。どちらの方法にするかは、被災者が選べます。
- 自賠先行:自賠責保険や任意保険の保険金を先に受ける。自賠責保険などから支払われた保険金のうち、同一の事由によるものについては労災保険給付から控除され、さらに保険給付すべき金額がある場合のみ給付される。
- 労災先行:労災保険を先に受ける。同一の事由について自賠責保険などからの支払いを受けられない。
| 【自賠責保険の保険金上限額】 ・死亡:3,000万円 ・傷害:120万円 ・後遺障害:3,000万円(介護を要する場合は4,000万円) ※重過失(被災者側の過失割合が70~100%未満のとき)の場合を除き、保険金減額は行われない |
なお、自賠先行の場合に引き続いて「任意保険」(自動車保険または自動車共済)による保険金支払いを受けるか、または労災保険給付を先に受けるかについても、被災者が自由に選ぶことができます。
自賠先行の方が補償額が大きいことが多い
自賠責保険などは、仮渡金制度があり差し迫って必要になる当座の出費に対して速やかに保険金が支払われます。また、労災保険給付より支払いの幅が広いため、自賠先行の方が補償額が大きくなることが多いです。
【自賠責保険などのメリット】
- 慰謝料などが支払われる
- 療養費の対象が労災保険より幅広い
- 休業損害が原則として100%支給される。※労災保険は80%(休業(補償)等給付60%+休業特別支給金20%)
2.示談を行う場合
示談とは、当事者同士が損害賠償額について双方の合意に基づいて早期に解決するため、話し合いにより互いに譲歩し、互いに納得し得る損害賠償額を決めて和解することです。被災者と第三者との間の示談が、以下に該当する場合は、労災保険からの保険給付は行われません。
- 被災者が受け取る全ての損害賠償についての示談(いわゆる全部示談)としている
- 真正に(錯誤や強迫などではなく両当事者の真意によること)成立し、被災者が示談内容以外の損害賠償の請求権を放棄
示談を行う前には、必ず労働局または労働基準監督署に連絡します。また、示談を行ったときは、速やかに労働局または労働基準監督署に示談書の写しを提出します。
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労災における第三者行為災害に遭った場合、労災保険を受け取るために必要書類が多かったり、労災保険給付と損害賠償金の支給調整が行われたりと、手続きが煩雑になりがちです。また、場合によっては第三者から示談の話がされることも考えられます。安易に示談に応じてしまうと、本来なら受け取れる補償金を受け取れなくなるケースもあり、個人だけで対応するのは限界があります。
そこで、頼りにしたいのが、弁護士です。弁護士法人ブライトは、労災問題に特化した「労災事故に注力するチーム」を擁しており、経験豊富な弁護士が複数在籍しています。
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