労災における第三者行為災害とは、労災保険給付の原因である災害が第三者(他人、職場の他の従業員など)の行為などによって生じたもので、第三者が損害賠償の義務を有しているものを意味します。被災者は、労災保険から給付を受けられると同時に、第三者に対し損害賠償請求することも可能です。場合によっては第三者との示談交渉になることもあり、弁護士に相談した方がよいケースも多いでしょう。この記事では、第三者行為災害の概要や手続きの進め方、注意点などを解説します。

(※お電話での対応は平日9:00~18:00となっております、それ以外の時間はメールやLINEでのお問い合わせをお願いします)
⚠️ 第三者の過失でケガを負っていませんか?
第三者の行為による労災(通勤中の交通事故、他者の重機や暴行、動物による負傷など)では、労災給付に加え加害者・会社へ損害賠償請求が可能な場合があります。請求漏れ・示談ミスを防ぐには、初動で弁護士へ相談することが重要です。
このページは労災保険の手続きの解説です。次の3つに1つでも当たる方は、手続きとは別に会社へ損害賠償を請求できる可能性があります。
- ☑︎ 事故で入院または手術をした
- ☑︎ 後遺症(後遺障害等級)が残る見込みがある
- ☑︎ 亡くなった方のご家族である/事故の原因が会社の設備・指示・安全対策の不備にある
▶ 重いけがを負った方・ご家族へ(会社への損害賠償請求の進め方)
▶ 会社が労災申請に協力しない・労災ではないと言われている方へ
労災のご相談窓口:☎ 0120-934-867(通話料無料)(労災のご相談)
ご家族からのご相談も受け付けています。
労災保険の給付手続きそのものについてのお問い合わせは、労働基準監督署または厚生労働省の労災保険相談ダイヤル(0570-006031/月〜金 8:30〜17:15)へ。
第三者行為災害のほとんどは交通事故|ブライトは労災と交通事故をワンストップで対応
📋 会社への損害賠償・3問チェック
労災の申請とは別に、会社に対して損害賠償を請求できる場合があります。下記の質問に答えると目安が表示されます(法的な最終判断ではありません)。
Q1. どのような状況でしたか?
通勤中の事故ですね。相手の有無でご相談窓口が異なります。
相手がいる事故(追突・接触など)は交通事故のご相談窓口へご案内しています。相手のいない単独事故(転倒・踏み外しなど)は、そのまま労災の損害賠償のご相談を続けられます。
Q2. 今の状態を教えてください
Q3. 会社側に、次のような事情はありましたか?
会社への損害賠償請求ができる可能性があります
安全配慮義務違反が認められれば、労災保険の給付とは別に、会社に対して慰謝料・逸失利益などの損害賠償を求められることがあります。時効や証拠の散逸の問題があるため、早めのご相談をおすすめします。労災事故部統括・笹野皓平弁護士が無料でご相談をお受けします。
※ご相談は無料・成功報酬制(実費は別途)です。結果を保証するものではありません。
※労災保険から支給された給付(休業補償・障害補償等)は、二重取りを避けるため損害賠償額から調整(控除)される場合があります。
ご家族を亡くされたこと、心よりお悔やみ申し上げます
安全配慮義務違反が認められれば、労災保険の遺族給付とは別に、会社に対して損害賠償を求められる可能性があります。ご家族の状況が落ち着かれてからで構いません。労災事故部統括・笹野皓平弁護士が無料でご相談をお受けします。
※ご相談は無料・成功報酬制(実費は別途)です。結果を保証するものではありません。
※労災保険から支給された給付(遺族補償等)は、二重取りを避けるため損害賠償額から調整(控除)される場合があります。
「第三者行為災害」とは、業務上または通勤中に、被災者本人と会社以外の第三者の行為によって発生した労災事故をいいます。代表例は、業務中・通勤中の交通事故です。実務上、第三者行為災害として処理される労災のうち大多数(一説には8〜9割)が交通事故とされています。
第三者行為災害の典型例
- 営業先への移動中・配送中・通勤中に交通事故に遭った(最多)
- 業務中、他社の運転する重機・車両により負傷した
- 業務中、利用客や第三者から暴行を受けた
- 業務中、第三者が管理する動物(犬等)により負傷した
「労災手続き」と「加害者対応」の両方を進める必要がある
第三者行為災害では、被害者は2つのルートを並行して進めることになります。
| ルート | 窓口 | 受け取れるもの |
|---|---|---|
| 労災手続き | 労働基準監督署・会社 | 療養補償・休業補償・障害補償・遺族補償・各特別支給金 |
| 加害者対応 | 加害者本人・自賠責保険・任意保険会社 | 慰謝料・治療費・休業損害・逸失利益・物的損害 |
労災手続きだけ進めても慰謝料は受け取れず、加害者対応だけ進めても過失相殺で減額されたり治療費を打ち切られたりするリスクがあります。両方を最適に組み合わせることで、被害者の手取りの最大化を目指します。
弁護士法人ブライトは労災と交通事故の両方に対応
第三者行為災害の処理には、労災実務(様式16号・第三者行為災害届・特別支給金)と、交通事故実務(過失割合・慰謝料赤本基準・後遺障害等級認定)の両方の専門知識が必要です。労災と交通事故のどちらか片側だけだと、調整漏れや控除主張への対抗が不十分になる場合があります。
弁護士法人ブライトは、労災事故と交通事故の両方に注力する弁護士が在籍しており、第三者行為災害について両ルートを一気通貫でサポートできる体制を整えています。
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第三者行為災害(交通事故)に関連する解説
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労災における第三者行為災害とは
労働災害(労災)における第三者行為災害とは、仕事中や通勤途中のケガや病気などの労災保険給付の原因である災害が第三者の行為などによって生じたものを指します。第三者行為災害は、労災保険の受給権者(被災労働者または遺族)に対して、第三者が損害賠償の義務を有していることが特徴です。
第三者とは
当該災害に関する労災保険の保険関係の当事者以外の者のことです。具体的には、政府、事業主、労災保険の受給権者のいずれにも該当しない者をさします。
参考:「労災保険 第三者行為災害のしおり」厚生労働省 都道府県労働局 労働基準監督署
第三者行為災害の例
第三者行為災害にはどのようなものがあるのでしょうか。例を挙げながらみていきましょう。
【通勤災害のケース】通勤や業務での移動中に交通事故に遭った
通勤や業務上で必要な移動中に交通事故に遭った、通勤災害のケースです。自動車やバイク、自転車、徒歩に加え、電車やバスなどの公共交通機関での事故も対象になります。
ただし、自分の過失が100%の事故(自損事故)の場合は、第三者行為災害になりません。
【業務災害のケース1】他の従業員が運転する重機により負傷した
業務中に、他の従業員が運転するフォークリフトが急旋回して轢かれた場合や、他の従業員が操作しているクレーンの吊荷と体が接触してケガを負った場合など、自分以外の従業員の行動が原因となりケガを負ったケースも該当します。
| 【会社に責任を追及できる場合は、会社に対しても損害賠償請求が可能】 こういったケースの場合、作業指揮者が適切に配置されていない、会社が運転者に必要な運転資格を取得させず作業に従事させたなど、会社に責任を追及できる場合は、会社に対して損害賠償請求ができます。会社との交渉を行うには、弁護士に相談するとよいでしょう。 |

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【業務災害のケース2】他人から暴行を受けた
タクシーやバスの運転手が乗客から一方的に殴られたり、飲食店の従業員が酔った客から蹴られたりと、業務中に他人から暴行を受けた場合も第三者行為災害に当たります。
ただし業務中とはいえ、従業員同士の私的な争いが原因の場合は対象から外れます。
【業務災害のケース3】他人が飼育・管理する動物により負傷した
外回りの営業の際、訪問した一般宅で飼っている猫に噛まれたなど、業務中に他人が飼育・管理する動物により負傷した場合も含まれます。また、徒歩で出勤途中、散歩している犬に噛まれたといった通勤中の負傷も対象になります。
ただし、飼育しているペットがゲージに入れられ対策がされているにもかかわらず、労働者自らが柵に手を入れて噛まれたなど、飼い主の過失がないと判断された場合は対象外になることもあります。
労災請求手続きをするには「第三者行為災害届」が必要
第三者行為災害に遭い、労災保険の給付を受ける場合、手続き自体は基本的には通常の労災保険の請求手続きと同様になります。ただし、保険給付の請求に必要な書類に加え、「第三者行為災害届」を被災者の所属する事業場を管轄する労働基準監督署に提出します。
この届けは、支給調整を適正に行うために必要なものです。支給調整については、後で詳しく説明します。
| 提出先 | 提出部数・時期 | 出さないとどうなるか |
|---|---|---|
| 被災した労働者の所属事業場を管轄する労働基準監督署 | 1部。原則として、労災保険給付の請求書に先立って、または請求書と同時に提出します | 正当な理由なく提出しないままでいると、労災保険給付が一時差し止められることがあります |
第三者行為災害届は誰が書くのか|本人が書く欄と、会社が証明する欄
「この書類、会社が書いてくれるものなのか、自分で書くものなのか」——ここで手が止まる方がとても多い欄です。結論からいえば、第三者行為災害届を書いて提出するのは、労災保険給付を請求する本人(被災した労働者。亡くなられた場合はご遺族)です。会社が用紙を預かって代わりに労基署へ持っていくことはありますが、それは使いであって、書かれている内容の責任は請求する本人に残ります。
会社が関与するのは、様式の末尾にある「事業主の証明」欄です。しかもその文言は「1欄の者については、2欄から6欄、13欄及び14欄に記載したとおりであることを証明します」となっており、会社が証明するのは届のうち一部の欄だけです。残りはすべて、被災した本人が自分の言葉で書きます。
| 欄 | 書く人・証明する人 | 注意点 |
|---|---|---|
| 表題部 (提出年月日・保険給付請求権者の住所・氏名) | 本人(遺族請求のときはご遺族) | 「業務災害/通勤災害」「交通事故/交通事故以外」のいずれかに○をします |
| 1 第一当事者(被災者) | 本人 | 職種は「作業員」では足りません。どんな作業をしていたか分かる粒度まで書きます |
| 2 被災者の所属事業場 | 本人が記入/会社が証明 | 労働保険番号は給与明細には載っていません。会社の労務担当者か管轄の労働基準監督署に確認します。建設業の下請に所属している場合は、元請の事業場名を別紙で添付します |
| 3 災害発生日 | 本人が記入/会社が証明 | 場所は「○○町○丁目○番地 ○○ストア前歩道」のように具体的に書きます |
| 4 第二当事者(相手方) | 本人が記入/会社が証明 | 交通事故証明書の記載どおりに。相手方が2名以上いるときは別紙、当て逃げなどで不明のときはその旨を記入します。相手方が業務中だった場合は、相手方の勤務先の名称・所在地・代表者も記入します |
| 5 災害調査を行った警察署/6 現認者 | 本人が記入/会社が証明 | 6欄(現認者)は、警察の調査が行われていない場合にだけ記入します |
| 7〜12 (あなたの車両/事故現場の状況/事故当時の行為・心身の状況/相手方の自賠責・任意保険/運行供用者/あなたの人身傷害補償保険) | 本人 | 8欄・9欄には「歩行者であった場合に記入」する欄もあります。歩行中・自転車のときは記入しない欄が出るので、使わない欄は空欄にせず斜線を引きます。12欄の人身傷害補償保険は、相手方が無保険のときに頼りになる欄です |
| 13 災害発生状況 | 本人が記入/会社が証明 | 届の中でいちばん重要な欄です。どんな目的でどこへ向かう途中、どのようにして事故が起きたかを、事故に至るまでの経緯・行動まで書きます |
| 14 現場見取図 | 本人が記入/会社が証明 | 進行方向・信号・横断歩道・接触点まで。書ききれないときは「届その4」の見取図欄を使います |
| 15 過失割合 | 本人 | あなたの判断で記入して構いません。理由も書きます。断定できないときは、判断できる事実だけを書き、提出時に労基署へ申し出ます |
| 16 示談について | 本人 | 「成立した/交渉中/示談はしない/示談をする予定」から選びます。示談の前に必ず労働基準監督署へ連絡します(後述) |
| 17 身体損傷及び診療機関 | 本人 | 自己流の表現ではなく、診断書の傷病名のとおりに書きます |
| 18 損害賠償金の受領 | 本人 | 相手方からか保険会社からかを問わず、受け取ったものはすべて記入します。仮渡金や治療費の立替払いも対象です |
| 事業主の証明 | 会社 | 証明の範囲は2〜6欄・13欄・14欄です。通勤災害の場合、事業主の証明は必要ありません |
第三者行為災害では、3者がそれぞれ別の書類を出します
被災した本人(あなた)
第三者行為災害届(届その1〜4)
+念書(兼同意書)
+交通事故証明書 ほか
加害者(相手方)
第三者行為災害報告書
(労基署から提出を求められます)
勤務先の会社
事業主の証明(2〜6欄・13欄・14欄)
※通勤災害では不要
提出先はいずれも、被災者の所属事業場を管轄する労働基準監督署です。
会社や相手方が用意した第三者行為災害届に、そのまま押印していませんか
多くの記事は「第三者行為災害届は請求者が記入します」と書いて終わります。しかし実務でこわいのは、その先です。会社や相手方が下書きした届に、内容をよく読まないまま署名・押印してしまうケースが、実際に起きています。
私たちがお引き受けした事案でも、相手方が作成した第三者行為災害届に被災者側の過失を示唆する記載があり、被災者がそのまま押印していたために、その後の損害賠償請求の場面で「本人も自分の落ち度を認めていたではないか」と持ち出され、事故状況の主張の信用性そのものを争われたことがあります。労災の給付は受けられても、会社や加害者へ賠償を求める段階で、最初に書いた1枚が足かせになることがあるということです。
特に13欄(災害発生状況)と15欄(過失割合)は、あなたが自分の言葉で書ける欄です。事実と違う内容が書かれていれば、押印する前に修正を求めてください。
【ブライトの判断基準】
第三者行為災害届は、労災の窓口に出すためだけの紙ではありません。そこに書かれた事故状況と過失割合は、後で会社や加害者に損害賠償を請求するときに、相手方から「本人がそう書いていた」として持ち出されることがあります。
「ブライトは、第三者行為災害届を『損害賠償請求の最初の証拠』として読む。」
これが、ブライトが労災の書類作成の段階からご相談をお受けしている理由です。
加害者(相手方)が書くのは「第三者行為災害報告書」
被災者が書くのが「第三者行為災害届」、加害者側が書くのが「第三者行為災害報告書」です。名前がよく似ているため取り違えが起きますが、別の書類です。報告書は、労働基準監督署から加害者に対して提出を求められるもので、加害者側の氏名・保険加入状況・事故状況・過失割合の認識・損害賠償金の支払状況などを記載します。被災者であるあなたが報告書を書く必要はありません。
本人が書けない・書きたくない事情があるとき
重い受傷で手が動かせない、亡くなられてご遺族が請求する、といった場合のほか、実務では「相手方に自分の住所を知られたくない」という事情でご相談に来られる方もいます。相手方が同じ職場の人だったり、過去にトラブルがあった相手だったりすると、届に住所を書くこと自体が不安になるためです。
この点、弁護士が代理人として入ると、労働基準監督署・会社・相手方への連絡窓口を事務所に一本化できます。当事務所でも、身の安全の確保を最優先に、連絡先の扱いを含めて手続きの進め方をご説明しています。労災の請求は正当な権利ですが、そのために危険にさらされては本末転倒だからです。
書類の書き方でお困りの段階から、ご相談いただけます
労災のご相談ダイヤル 0120-934-867(通話料無料)(平日9:00〜18:00)
それ以外の時間はメール・LINEでお問い合わせください
第三者行為災害届の書き方・記入例|通勤災害・自転車事故・業務中の事故
ここからは、ひとつのケースを最後まで記入した例を、欄ごとに並べます。ご自身の状況に置き換えてお使いください。まず、様式は4枚(届その1〜その4)で1組です。
| 用紙 | 記入する内容 | 交通事故以外の場合 |
|---|---|---|
| 届その1 | 1〜7欄(被災者・所属事業場・災害発生日・相手方・警察署・現認者・あなたの車両) | 記入します(使わない欄は斜線) |
| 届その2 | 8〜12欄(事故現場の状況・事故当時の行為・相手方の自賠責/任意保険 など) | 提出不要 |
| 届その3 | 13〜18欄(災害発生状況・現場見取図・過失割合・示談・身体損傷・損害賠償金の受領)+事業主の証明 | 記入します |
| 届その4 | 記載上の留意事項/現場見取図の予備欄 | 見取図が書ききれないときに使用します |
第三者行為災害届の様式と入手方法
厚生労働省指定の「第三者行為災害届」を使用します。労働基準監督署の窓口で受け取るか、厚生労働省・各都道府県労働局のサイトからダウンロードできます。提出は1部です(控えが必要な場合は、提出前にコピーを取っておくと後の交渉で役立ちます)。
【記入例1】通勤中の交通事故(通勤災害のケース)
想定ケース:自宅から勤務先へ向かう通勤途中、県道の交差点で信号待ちのため停止していたところ、後方から相手方運転の普通乗用車に追突され、頸椎捻挫を負った(令和8年5月12日・午前8時40分頃)。
| 項目(欄番号) | 記入例 | つまずきやすい点 |
|---|---|---|
| 災害の種別 (表題部) | 通勤災害/交通事故に○ | 業務災害と通勤災害で、事業主証明の要否が変わります(通勤災害は証明不要) |
| 被災者の氏名・生年月日・住所・職種 (1) | ロウサイ タロウ/昭和60年4月2日/〒000-0000 ○○県○○市○○町1-2-3/営業事務 | フリガナ欄も忘れずに。年齢は被災日時点のものです |
| 労働保険番号・事業場名称 (2) | 00-0-00-000000-000/株式会社○○/〒000-0000 ○○市○○町4-5-6/代表取締役 ○○ ○○/担当者 総務課 ○○ | 労働保険番号は給与明細には載っていません。会社の労務担当者か管轄の労働基準監督署に確認します |
| 災害発生日・場所 (3) | 令和8年5月12日 午前8時40分頃/○○県○○市○○町○丁目○番地 ○○銀行前 県道○号線上 | 「○○市内」では足りません。目印になる建物名まで書きます |
| 相手方の氏名・住所・電話・勤務先 (4) | ダイニ ジロウ/〒000-0000 ○○市○○町△-△-△/090-0000-0000/会社員・○○運輸株式会社 | 交通事故証明書の記載どおりに。相手方が業務中だった場合は勤務先の名称・所在地・代表者も記入します(相手方の勤め先にも賠償を求められる場合があるため、ここは省略しないでください) |
| 警察署 (5) | ○○警察署 交通課 | 警察に届け出ていないと交通事故証明書が発行されません。物損扱いのままになっていないか確認します |
| 相手方の自賠責・任意保険 (10) | 自賠責:○○損害保険株式会社/証明書番号 S0000000/任意:○○火災海上株式会社 ○○支社/証券番号 0000000000 | 相手方の保険会社から連絡が来ているなら、担当者名と証券番号を控えておきます。不明なら空欄のまま提出時に申し出ます |
| 災害発生状況 (13) | 「自宅から勤務先である株式会社○○へ出勤するため、普段どおりの経路である県道○号線を自家用車で走行していたところ、○○交差点の信号が赤に変わったため停止していた。その直後、後方から進行してきた相手方運転の普通乗用車に追突され、頸部を強く打ち負傷した。」 | この欄がいちばん重要です。通勤災害では「いつもの合理的な経路・方法だった」ことが分かるように書きます。寄り道の有無で通勤災害かどうかの判断が変わることがあります |
| 過失割合 (15) | 私 0%/相手 100% 理由「信号待ちで停止していたところに、相手方が前方不注視のまま追突したため」 | あなたの判断で構いません。謙遜して自分の過失を多めに書かないでください。後の賠償額に影響することがあります |
| 示談について (16) | 「示談はしない」に○(交渉が始まっていれば「交渉中」) | 示談の前には必ず労働基準監督署へ連絡します |
| 身体損傷及び診療機関 (17) | 頸椎捻挫/全治1か月(入院加療4日間)/医療法人○○病院 ○○市○○町7-8-9 | 診断書の傷病名のとおりに書きます |
| 損害賠償金の受領 (18) | 受領なし(受領していれば「令和8年6月1日/○○火災海上/治療費 ○○円」のように名目別に) | 相手方からか保険会社からかを問わずすべて記入します。仮渡金・治療費の立替払いも対象です |
| 事業主の証明 | — | 通勤災害では必要ありません。会社が証明を渋っていても、この点で止まる必要はありません |
通勤中の交通事故は、労災(通勤災害)としての手続きと、加害者に対する損害賠償請求が同時に走ります。労災保険からは慰謝料が出ず、休業補償も全額は補填されないため、その差額と慰謝料は加害者側に請求していくことになります。私たちがご相談を受けた事案でも、「通勤中の事故だから勤務先にも請求できるのでは」というご質問は多いのですが、通勤途中の事故で会社の安全配慮義務違反や運行供用者責任が認められるケースは限られており、実務では加害者への請求が基本線になります。
通勤災害そのものの認定範囲は通勤災害の逸脱・中断で、加害者側との示談交渉や慰謝料の考え方は交通事故の示談交渉で解説しています。添付が必須となる交通事故証明書の取り方は交通事故証明書の取得方法をご覧ください。
【記入例2】自転車事故のケース(自転車対自転車・自転車対歩行者)
想定ケース:通勤のため自転車で走行中、対向してきた相手方の自転車と接触して転倒し、左手首を骨折した(令和8年5月12日・午前8時20分頃)。相手方は自賠責保険の対象外(自転車)で、任意の個人賠償責任保険の加入状況が不明。
| 項目(欄番号) | 記入例 | つまずきやすい点 |
|---|---|---|
| 災害の種別 (表題部) | 通勤災害/交通事故に○ | 自転車同士・自転車対歩行者の事故も「交通事故」として扱います |
| 相手方の氏名・住所・電話 (4) | ダイニ ハナコ/〒000-0000 ○○市○○町△-△-△/090-0000-0000/学生 | その場で連絡先を交換しただけだと、後から連絡が取れなくなることがあります。相手方が未成年のときは保護者の氏名・連絡先も別紙で控えておきます |
| 警察署 (5) | ○○警察署 交通課 | 自転車事故でも警察に届け出れば交通事故証明書が発行されます。届け出ていない場合は「交通事故発生届(様式第3号)」を提出します |
| あなたの運転していた車両 (7) | —(斜線) | 車種欄に自転車の区分がありません。空欄にせず斜線を引き、自転車であることは13欄・14欄で明記します。迷う欄は提出時に労基署へ申し出れば足ります |
| 相手方の保険 (10) | 自賠責:無/任意(個人賠償責任保険・自転車保険):加入の有無を確認のうえ記入。不明なら「不明」 | 自転車に自賠責はありません。相手方が個人賠償責任保険・自転車保険・TSマーク付帯保険に入っていないか、火災保険や自動車保険の特約も含めて確認します |
| あなたの人身傷害補償保険 (12) | 加入している/保険会社・証券番号・保険金額を記入 | 相手方に保険がない自転車事故では、ご自身やご家族が加入している人身傷害補償保険が使えることがあります。「相手が無保険だから諦めるしかない」と考える前に確認したい欄です |
| 災害発生状況 (13) | 「自宅から最寄り駅へ向かう通勤途中、○○市○○町の市道を自転車で直進していたところ、対向車線から中央付近にはみ出して進行してきた相手方の自転車と正面から接触し、転倒して左手首を負傷した。」 | 「ぶつかった」だけでなく、どちらがどう動いたかまで書きます。自転車事故は過失割合が争いになりやすいためです |
| 現場見取図 (14) | 道路幅・進行方向・接触点を図示 | 様式に記号例が印刷されています。書ききれないときは届その4の見取図欄を使います |
| 過失割合 (15) | 私 0%/相手 100% 理由「相手方が中央付近にはみ出して進行してきたため」 | 相手方と言い分が食い違う典型的な場面です。断定できないときは、判断できる事実だけを書きます |
自転車事故でいちばん心配なのは、相手方が保険に入っていないと賠償金を回収できないのではないかという点です。この場合でも、労災保険(通勤災害・業務災害)からの給付は受けられます。賠償の見通しについては自転車事故の損害賠償、過失割合に納得できないときの進め方は過失割合に納得できないときの対処法で解説しています。ご自身やご家族の保険に弁護士費用特約が付いていれば、費用の負担を抑えて依頼できることがあります。
【記入例3】業務中の事故(社用車・構内のフォークリフト/移動式クレーン)
想定ケース:取引先の敷地内で荷物の積み込み作業をしていたところ、取引先の従業員が操作するフォークリフトに接触して負傷した(令和8年5月12日・午前10時30分頃)。
| 項目(欄番号) | 記入例 | つまずきやすい点 |
|---|---|---|
| 災害の種別 (表題部) | 業務災害/交通事故に○ | 意外に思われますが、構内における移動式クレーンによる事故のような場合も「交通事故」に含めて扱います(厚生労働省の記載上の留意事項2)。フォークリフト等での被災時に迷いやすい欄です |
| 相手方 (4) | フォークリフトを操作していた本人の氏名・住所・連絡先/勤務先=取引先の会社名・所在地・代表者 | 「第三者」とは労災保険の当事者(政府・事業主・受給権者)以外の者をいい、他社の従業員や取引先の従業員も第三者に当たり得ます。相手方の勤務先を書き落とすと、その会社への請求の足がかりを失います |
| 災害発生状況 (13) | 「株式会社○○の△△工場構内において、指示に従い荷台後方で積み込み補助作業を行っていたところ、後退してきた同社従業員操作のフォークリフトの爪が接触し、左下腿を負傷した。周囲に誘導者は配置されていなかった。」 | 「何が足りなかったか」まで書きます。誘導者の不配置・立入禁止措置の不備といった安全管理上の問題は、後の損害賠償請求の出発点になります。「自分の不注意で当たった」とだけ書くと、事実を立て直すのに手間がかかります |
| 現認者 (6) | 職長 ○○ ○○(○○市○○町・090-0000-0000) | 警察の調査がない事故では、この欄が唯一の目撃者情報になります。誰も見ていなければ、最初に報告した相手を書きます |
| 届その2 | — | 構内の重機事故でも「交通事故」として扱う場合は記入対象です。判断に迷うときは提出時に労基署へ申し出ます |
| 事業主の証明 | あなたの勤務先が証明します(相手方の会社ではありません) | 業務災害では事業主の証明が必要です。会社が証明を拒む場合は、その旨を申し出れば証明欄が空欄でも受け付けられます |
重機・機械にはさまれた、巻き込まれたという事故は、後遺障害が残りやすく、労災保険だけでは足りない損害が大きく残ります。相手方本人だけでなく、相手方が勤める会社(使用者責任)や、自社の安全配慮義務違反を検討する場面です。詳しくは機械・重機事故の労災で会社に損害賠償請求する方法、賠償の全体像は労災で会社に損害賠償請求する完全ガイドをご覧ください。
【記入例4】交通事故以外(暴行・動物による負傷など)
| 項目(欄番号) | 記入例 | つまずきやすい点 |
|---|---|---|
| 災害の種別 (表題部) | 業務災害/交通事故以外に○ | 交通事故以外の災害では、「届その2」の提出は不要です |
| 相手方 (4) | 判明している範囲で記入(氏名不詳なら「氏名不詳(男性・40歳代・○○店来店客)」など) | 相手方が特定できなくても労災請求はできます。分からない部分は空欄にして、提出時にその旨を申し出ます |
| 警察署/現認者 (5)(6) | 被害届を出していれば警察署名を、出していなければ現認者を記入 | 暴行のケースでは、被害届の受理票や診断書が事実を裏づける材料になります |
| 災害発生状況 (13) | 「○○店の店内において、レジ業務中に来店客から突然頭部を殴打され負傷した。」 | 動物によるけがの場合は、飼育者・管理者が誰かを書きます(飼い主に賠償責任が生じることがあるため) |
| 現場見取図 (14) | 作業場・店内の配置を図示 | 欄が足りないときは届その4の記載欄を使い、届その4もあわせて提出します |
記入例を書き写す前に確認したい5点
- 使わない欄は空欄にせず斜線:歩行中・自転車のときなど、記入対象外の欄には斜線を引きます。
- 分からない欄は空欄のまま、提出時に申し出る:不明な事項があっても提出を遅らせないでください。届が出ていないと給付が一時差し止められることがあります。
- 書ききれないときは別紙:相手方が2名以上いる場合、下請として現場に入っていた場合の元請事業場名なども、別紙を付けて提出します。
- 青字の記載例は見本、実際は黒字で:厚生労働省の様式記載例は見やすさのため青字で印刷されています。
- 念書(兼同意書)の氏名は自署:請求権者本人が署名します。
※本記入例は、書き方を理解していただくために作成した架空の事例です。実在の事案・企業・個人とは関係ありません。実際の記入内容は、傷病名は診断書に、労働保険番号や事業主証明欄は会社に、それぞれ合わせてください。判断に迷う欄は、提出前に管轄の労働基準監督署にご確認ください。
記入例どおりに書けない事情があるときは、書類の段階からご相談ください
労災のご相談ダイヤル 0120-934-867(通話料無料)(平日9:00〜18:00)
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第三者行為災害届に添付する主な書類
- 交通事故証明書(自動車安全運転センターで取得・必須)
- 念書(兼同意書)(加害者からの賠償と労災給付の調整に同意する書面)
- 第三者行為災害報告書(加害者側が労基署に提出する書面)
- 事故発生状況報告書(必要に応じて)
- 運転免許証・車検証・自賠責保険証のコピー
- 診断書・治療費の領収書
加害者と連絡が取れない・加害者が逃走したとき
ひき逃げ・当て逃げ、加害者が連絡を絶った等の場合でも、判明している範囲で記入し、空欄の理由を「行方不明」「連絡不能」と記載すれば労災請求は受け付けられます。労基署の判断で第三者行為災害届の一部省略が認められるケースもあります。
加害者不明の場合は、自賠責の政府保障事業(国土交通省)に対する請求も並行して検討します。
⚠️ 第三者行為災害届の書き方がわからない、加害者と連絡が取れない、保険会社の対応に不安がある——こんなお悩みはありませんか?
弁護士法人ブライトでは、第三者行為災害届の作成サポートから、加害者・保険会社対応、損害賠償請求まで一括でお引き受けしています。
第三者行為災害届に添付する書類
第三者行為災害届を提出する際には、以下の表に示す書類を添付します。なお、念書(兼同意書)および交通事故証明書(または交通事故発生届)以外の添付書類については、下記表の備考欄に該当する場合のみ必要となります。

出典:「労災保険 第三者行為災害のしおり」厚生労働省 都道府県労働局 労働基準監督署
念書(兼同意書)について
念書(兼同意書)は、不用意な示談により労災保険給付を受けられなくなったり、すでに受け取った労災保険給付を回収されたりなどの損失を被ることを防ぐための書類です。以下のような注意事項が記載されていますので、内容をよく読み理解した上で、労災保険給付を受ける本人が署名します。
| 記入欄・条項 | 記入内容・同意する内容 | 注意点 |
|---|---|---|
| 災害発生年月日・発生場所 | 第三者行為災害届の3欄と同じ内容を記入します | 届と1文字でも食い違うと、確認のため差し戻されることがあります |
| 第一当事者(被災者)・第二当事者(相手方)の氏名 | 届の1欄・4欄と同じ氏名を記入します | 相手方が不明な場合は、その旨を記入します |
| 1(遵守事項) | 示談・和解をしようとするときは必ず前もって労働基準監督署へ連絡する/相手方に白紙委任状を渡さない/相手方から金品を受け取ったら、年月日・内容・金額を漏れなく連絡する | 白紙委任状は、相手方に交渉の中身を任せてしまう危険な書面です。求められても渡さないでください |
| 2(示談の効果) | 示談や和解の内容によっては、労災保険給付を受けられない・受け取った給付の返納を求められることがある点を承知する | この条項が、本記事でいちばんお伝えしたい点です(後述) |
| 3(政府の代位取得) | 労災保険給付を受けた場合、政府が給付額の限度で、あなたの損害賠償請求権・保険会社への被害者請求権を取得することに同意する | 「求償」の根拠になる条項です(労災保険法12条の4第1項) |
| 4・5(自賠先行の取扱い) | 自賠責保険等から先に支払を受けた場合、同一の事由の損害項目について、その額を差し引いて労災保険が給付されることに同意する | 自賠先行から労災先行へ切り替えたいときは、労働基準監督署と自賠責保険等の担当者の双方へ連絡が必要です |
| 6(個人情報の取扱い) | 労災保険の請求・決定・給付の状況などを、保険会社等との間でやり取りすることに同意する | — |
| 請求権者の住所・氏名 | 被災した本人の住所・氏名 | 氏名は本人の自署です。会社や保険会社に代筆させないでください |
示談してしまうと、労災保険給付が受けられなくなることがあります
被災者と相手方との間で、受け取る損害賠償のすべてについての示談(全部示談)が真正に成立し、被災者が示談内容以外の損害賠償請求権を放棄した場合、政府は原則として示談成立以後の労災保険給付を行いません。すでに受け取った給付の返納を求められることもあります。
相手方の保険会社は、治療がひと段落した頃に示談書を送ってきます。金額だけを見て署名してしまうと、その後の治療費や休業補償を労災保険に請求できなくなることがあります。示談を行う前には、必ず労働局または労働基準監督署へ連絡してください。
示談の内容が労災保険給付を含む全損害の填補を目的とするものかどうかを相手方に明確に示し、示談後に別途労災保険へ請求する予定があるなら、その内容を示談書に明記しておくことが勧められています。判断に迷う段階でご相談いただければ、示談書の文言から確認します。
交通事故証明書について
交通事故証明書は、自動車安全運転センターで交付証明を受けたものを提出します。なお、警察署へ届け出ていないなどの理由により証明書の提出ができない場合には、「交通事故発生届(様式第3号)」を提出します。
また、交通事故以外の災害で公的機関の証明書などが得られる場合は、その証明書などを提出します。
お問い合わせ、相談は無料です
(※お電話での受付は平日9:00~18:00となっております、それ以外の時間はメールやLINEでのお問い合わせをお願いします。また、お問い合わせいただいた事案について、SMSで回答させていただく場合がございますので、予めご了承ください。)
第三者(加害者側)は「第三者行為災害報告書」を提出
第三者行為災害報告書は、第三者(加害者側)が提出する書類です。第三者に関する事項、災害発生状況、損害賠償金の支払状況などを確認するために必要となります。労働基準監督署から提出を求められた場合には速やかに提出しなければなりません。
| 【書類について】 「第三者行為災害届」「念書(兼同意書)」「交通事故発生届」「第三者行為災害報告書(調査書)」は、厚生労働省の主要様式ダウンロードコーナー(労災保険給付関係主要様式)からダウンロードできます。 |
労災保険給付と損害賠償金の支給調整について
第三者行為災害の場合、被災者は第三者に対し損害賠償請求権を取得することになりますが、同時に労災保険に対しても給付請求権を取得します。ただし、同一の事由について両者から損害のてん補を受けることになれば、実際の損害額より多くが支払われ不合理と見なされます。
また、本来被災者への損害のてん補は、労災の原因となった加害行為などに基づき、損害賠償責任を負う第三者が負担すべきものであると考えられます。このため、両方が支給される際は、労働者災害補償保険法(第12条の4)に基づき第三者行為災害に関する労災保険給付と民事損害賠償との支給調整が行われます。
支給調整の方法として、求償と控除の2種類があります。労災保険給付と民事損害賠償をどちらを先に受け取るかによって、いずれかの方法が取られます。
求償【受け取りパターン:労災保険給付が先】
求償とは、労災保険給付を先に受け取る場合の支給調整方法です。政府が労災保険給付と引き換えに被災者が第三者に対して持っている損害賠償請求権を取得し、この権利を第三者(交通事故の場合は保険会社など)に直接行使する形で支給調整が行われます。

控除【受け取りパターン:損害賠償金が先】
控除とは、第三者の損害賠償(自動車事故の場合は自賠責保険などの支払い)が先に行われていた場合の支給調整です。政府は、労災保険の給付額から損害賠償の額を差し引いて補償します。

第三者行為災害における支給調整の対象となるもの
第三者行為災害における支給調整の対象は、労災保険給付と損害賠償が同一の事由のものに限られています。労災保険給付に対応する損害賠償項目については、下記のとおりです。
労災保険給付と損害賠償項目の対比表
| 労災保険給付 | 対応する損害賠償の損害項目 |
|---|---|
| 療養(補償)給付 | 治療費 |
| 休業(補償)給付 | 休業により喪失したために得ることができなくなった利益 |
| 傷病(補償)年金 | 同上 |
| 障害(補償)給付 | 身体障害により喪失または減少して得ることができなくなった利益 |
| 介護(補償)給付 | 介護費用 |
| 遺族(補償)給付 | 労働者の死亡により遺族が喪失して得ることができなくなった利益 |
| 葬祭料(葬祭給付) | 葬祭費 |
支給調整の対象外となるもの
労災保険では被災者に対して、保険給付のほか特別支給金も給付されますが、特別支給金は保険給付ではなく社会復帰促進等事業として支給されるため、支給調整の対象とはなりません。
ほかにも、以下の損害賠償は労災保険と同一の事由によるものではないため、支給調整の対象外です。
- 被災者の精神的苦痛に対する慰謝料
- 労災保険給付の対象外のもの(例:自動車の修理費用、遺体捜索費、義肢、補聴器など)
第三者行為災害における支給調整の期間~求償は5年、控除は7年~
支給調整には期限があります。求償は、災害発生後5年以内に支給事由の生じた労災保険給付であり、災害発生後5年以内に保険給付を行ったものについて行うこととされています。控除は、災害発生後7年以内に支給事由の生じた労災保険給付であり、災害発生後7年以内に支払うべきものを限度としています。
出典:「労災保険 第三者行為災害のしおり」厚生労働省 都道府県労働局 労働基準監督署
参考:「第三者行為災害事務取扱手引」厚生労働省労働基準局
労災と自賠責、どちらを先に使うべきか|求償・控除の実務
第三者行為災害では、労災給付と加害者からの損害賠償が同じ損害項目(治療費・休業損害など)について重複しないよう、「求償」または「控除」による調整が行われます。どちらの方式になるかは「労災と自賠責のどちらを先に受給したか」で決まります。
2つの調整方式:求償と控除
| 方式 | 受給順序 | 調整の流れ |
|---|---|---|
| 求償 | 労災が先に給付 | 労災(政府)が、加害者・自賠責保険会社に対して給付した分を求償(取り戻し請求)する |
| 控除 | 自賠責・任意保険が先に給付 | その後の労災給付額から、すでに加害者側から受領した同種項目分を控除して支給 |
厚生労働省の事務取扱手引上は「自賠責先行(控除方式)」が原則とされていますが、被害者の選択により労災先行(求償方式)にすることも認められています。労基署からも「自賠責先行か労災先行か」の確認連絡があるのが通常です。
実務上「労災先行」が被害者にとって有利になる理由
結論から述べると、第三者行為災害(特に交通事故)では、多くの場合「労災先行」のほうが被害者の手取りが大きくなります。理由は次の4点です。
- 労災給付は被害者の過失で減額されない:交通事故で過失が争点になる場合、加害者からの賠償は過失割合分が減額されますが、労災給付は減額されません
- 自賠責120万円の傷害枠を慰謝料の原資として温存できる:治療費・休業損害を労災で賄えば、自賠責120万円の多くを慰謝料の原資として残せます
- 治療費打ち切り通告に強い:相手方の任意保険会社が治療費の対応を打ち切っても、労災の療養補償給付は継続します
- 労災特別支給金は損益相殺の対象外=「上乗せ」になる(後述)
「特別支給金」は損益相殺の対象外|被害者保護の決定的論点
労災保険には、通常の給付に加えて「特別支給金」という上乗せ給付があります。代表的なものは次のとおりです。
- 休業特別支給金:給付基礎日額の20%(休業給付60%に上乗せされ、合計80%相当となる)
- 障害特別支給金:後遺障害等級に応じた一時金(8〜342万円)
- 遺族特別支給金:300万円の一時金
これらの特別支給金は、最高裁判例(最高裁判所第二小法廷 平成8年2月23日判決(平成6年(オ)第992号・損害賠償請求事件/判例秘書 L05110018))により損害賠償との損益相殺の対象外と判断されています。理由は、特別支給金が「労働者の福祉の増進を図る目的」で支給されるものであり、損害の填補を目的とした給付ではないためです。
つまり、加害者側からの損害賠償を受けても、労災の特別支給金は控除されず、そのまま被害者の手元に残る「上乗せ」となります。これが、労災先行が被害者にとって有利になる構造的な理由です。
加害者側の保険会社が「特別支給金まで控除」と主張してくる典型パターン
実務上、加害者側の任意保険会社が損害賠償の提示書面で「労災休業特別支給金20%も損益相殺の対象として控除済み」と記載してくるケースが少なくありません。死亡事案では「労災遺族補償年金1000日分(特別支給金を含む)を満額相殺」といった提示も見られます。
これらは判例上認められない控除ですが、被害者ご本人ではこの控除主張を見抜くことが困難であり、結果として本来受け取れるはずの金額より少なく示談してしまうリスクがあります。
💡 ポイント:第三者行為災害(特に交通事故)の損害賠償提示書面が届いたら、控除項目に「労災特別支給金」「遺族特別支給金」が含まれていないかを必ず確認してください。含まれている場合、判例上の根拠を示して控除部分の回復を求められる可能性があります。
弁護士法人ブライトの実例|保険会社の控除主張への対応
事例1|50代女性・歩行中の交通事故
歩道を歩行中に車にはねられた依頼者の事案。相手方保険会社からの賠償提示書面に、「労災休業特別支給金(20%)も損益相殺の対象として控除済み」と記載されていました。被害者ご本人ではこの控除主張を見抜くことが困難なところ、弁護士が介入し、最高裁判例(最高裁判所第二小法廷 平成8年2月23日判決(平成6年(オ)第992号・損害賠償請求事件/判例秘書 L05110018))に基づき特別支給金は損害填補目的ではなく損益相殺の対象外であることを指摘し、控除部分の回復を進めました。
事例2|60代男性・業務中の死亡事故(第三者加害)
業務中の交通事故でご本人が亡くなられた事案。加害者側保険会社が遺族補償年金1000日分を満額損害から差し引く計算で提示してきましたが、その控除額に特別支給金が含まれており、遺族厚生年金との調整も適切になされていなかったことを弁護士側で精査・指摘。再計算のうえ正しい損害賠償額を主張しました。
─ 監修:笹野皓平 弁護士(労災事故部統括)
「自賠責先行」でも問題ないケース
- 軽症で自賠責120万円の枠内で完結する見込みの場合
- 加害者の任意保険会社が円滑に一括対応した状況で、被害者の手間を最小化したい場合
- 過失がほぼゼロで、自賠責の早期支払いを優先したい場合
これらのケースでは、自賠責先行でも被害者の手取り総額に大きな差が出ないことがあります。判断は症状の見通し・過失割合・保険会社の対応姿勢を踏まえて個別に行う必要があります。
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第三者行為災害に遭ったとき、特に気をつけること
第三者行為災害に遭い、損害賠償や労災保険給付の手続きを進める上で、特に気をつけるべき2点について説明します。
1.自賠責保険などに対する請求権がある場合
第三者行為災害が自動車事故の場合は、手続きの方法が2種類あります。どちらの方法にするかは、被災者が選べます。
- 自賠先行:自賠責保険や任意保険の保険金を先に受ける。自賠責保険などから支払われた保険金のうち、同一の事由によるものについては労災保険給付から控除され、さらに保険給付すべき金額がある場合のみ給付される。
- 労災先行:労災保険を先に受ける。同一の事由について自賠責保険などからの支払いを受けられない。
| 【自賠責保険の保険金上限額】 ・死亡:3,000万円 ・傷害:120万円 ・後遺障害:3,000万円(介護を要する場合は4,000万円) ※重過失(被災者側の過失割合が70~100%未満のとき)の場合を除き、保険金減額は行われない |
なお、自賠先行の場合に引き続いて「任意保険」(自動車保険または自動車共済)による保険金支払いを受けるか、または労災保険給付を先に受けるかについても、被災者が自由に選ぶことができます。
自賠先行の方が補償額が大きいことが多い
自賠責保険などは、仮渡金制度があり差し迫って必要になる当座の出費に対して速やかに保険金が支払われます。また、労災保険給付より支払いの幅が広いため、自賠先行の方が補償額が大きくなることが多いです。
【自賠責保険などのメリット】
- 慰謝料などが支払われる
- 療養費の対象が労災保険より幅広い
- 休業損害が原則として100%支給される。※労災保険は80%(休業(補償)等給付60%+休業特別支給金20%)
2.示談を行う場合
示談とは、当事者同士が損害賠償額について双方の合意に基づいて早期に解決するため、話し合いにより互いに譲歩し、互いに納得し得る損害賠償額を決めて和解することです。被災者と第三者との間の示談が、以下に該当する場合は、労災保険からの保険給付は行われません。
- 被災者が受け取る全ての損害賠償についての示談(いわゆる全部示談)としている
- 真正に(錯誤や強迫などではなく両当事者の真意によること)成立し、被災者が示談内容以外の損害賠償の請求権を放棄
示談を行う前には、必ず労働局または労働基準監督署に連絡します。また、示談を行ったときは、速やかに労働局または労働基準監督署に示談書の写しを提出します。
第三者行為災害届に関するよくある質問
Q1.第三者行為災害届は誰が書くのですか。会社が書いてくれるものですか。
書いて提出するのは、労災保険給付を請求する本人(亡くなられた場合はご遺族)です。会社が関わるのは末尾の「事業主の証明」欄で、証明の範囲も2〜6欄・13欄・14欄に限られます。会社が下書きしてくれた場合でも、署名・押印の前に事故状況(13欄)と過失割合(15欄)の記載を必ず自分で確認してください。
Q2.会社が事業主証明をしてくれません。それでも提出できますか。
通勤災害の場合は、そもそも事業主の証明は必要ありません。業務災害で会社が証明を拒む場合も、その事情を労働基準監督署に申し出れば、証明欄が空欄のままでも請求を受け付けてもらえることがあります。会社が労災の発生自体を認めようとしない場合は、届出以外の証拠(診断書・現認者の連絡先・作業指示の記録など)を早い段階で確保しておくことが重要です。
Q3.加害者が誰か分かりません(当て逃げ・ひき逃げ)。届は出せますか。
出せます。相手方の欄には判明している範囲で記入し、不明であればその旨を記載します。不明な事項がある場合は空欄のまま提出し、提出時に申し出る取扱いとされています。加害者が分からない交通事故では、政府保障事業への請求も並行して検討します。
Q4.相手が自転車で、保険に入っていないようです。労災は使えますか。
相手方に資力や保険があるかどうかにかかわらず、業務中・通勤中の負傷であれば労災保険の給付は受けられます。相手方が個人賠償責任保険・自転車保険・TSマーク付帯保険に加入していないか、火災保険や自動車保険の特約も含めて確認してください。ご自身側の保険に弁護士費用特約が付いていることもあります。
Q5.相手の保険会社から示談書が届きました。先に示談してよいですか。
示談の前に、必ず労働局または労働基準監督署へ連絡してください。全部示談が成立して損害賠償請求権を放棄したと扱われると、原則として示談成立以後の労災保険給付は行われません。示談を行ったときは、示談書の写しを速やかに提出します。
Q6.提出が遅れてしまいました。もう給付は受けられませんか。
第三者行為災害届は「災害発生後、すみやかに提出」とされており、原則として労災保険給付の請求書に先立って、または同時に提出します。正当な理由なく提出しないままだと給付が一時差し止められることがありますので、気づいた時点で速やかに提出してください。なお、労災保険給付そのものには請求権の消滅時効があり、療養補償給付・休業補償給付は2年、障害補償給付・遺族補償給付は5年とされています。
Q7.派遣社員です。派遣先の会社は「第三者」になりますか。
派遣労働者に発生した労働災害では、第三者の直接の加害行為がない場合でも、①派遣先事業主の安全衛生法令違反が認められ、②その違反が災害の直接の原因となったと認められるときは、派遣先事業主を第三者とする第三者行為災害として取り扱われます。派遣先の安全管理に問題があった事案では、賠償請求の相手方として派遣先を検討することになります。
第三者行為災害届の記載や、示談の可否でお困りではありませんか
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労災における第三者行為災害に遭った場合、労災保険を受け取るために必要書類が多かったり、労災保険給付と損害賠償金の支給調整が行われたりと、手続きが煩雑になりがちです。また、場合によっては第三者から示談の話がされることも考えられます。安易に示談に応じてしまうと、本来なら受け取れる補償金を受け取れなくなるケースもあり、個人だけで対応するのは限界があります。
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