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労災の見舞金とは?貰えない理由や貰うリスク、損害賠償請求との関係を解説

仕事中の事故(労災)でケガをしたとき、会社から「見舞金」が支給される場合があります。 一方で、「会社から見舞金が貰えないのはなぜか?」「見舞金を受け取ると損害賠償請求に影響するのか?」 といった疑問を持つ方も多いでしょう。

労災保険の給付や会社への損害賠償請求との関係も含め、労災見舞金について正しく理解しておくことが大切です。本記事では、労災見舞金の基本から、貰えない理由、受け取るリスク、損害賠償請求との両立可否までを詳しく解説します。

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労災の見舞金とは?

労災の見舞金とは、業務上の事故(労働災害)が発生した際に、会社が被災労働者本人やその遺族に支払う金銭のことです。 目的としては「事故を起こしてしまったお詫び」や「お見舞い」の気持ちを表すもので、法律上定められた賠償金ではなく任意の金銭です。支給されるタイミングは主に労災発生直後で、被災者の治療や生活の支援の意味合いがあります。

こうした見舞金は、企業によって就業規則の「慶弔見舞金規程」などに沿って支給されることもありますし、特に規程がなくても経営陣の判断で支払われるケースもあります。一方で、後述するように見舞金は法律で支給が義務付けられたものではないため、支給の有無や金額は会社ごとに異なるのが実情です。

なお、労災見舞金は性質上「被災者への見舞い」であり、慰謝料や損害賠償金とは本来別物です。たとえば会社に安全配慮義務違反など法的責任がある場合、会社はたとえ見舞金を支払っていても、それとは別に正式な慰謝料や損害賠償金を支払う義務があります。この点を踏まえ、次章では見舞金の金額相場について見ていきましょう。

労災の見舞金はいくらが妥当なのか?

労災見舞金の金額に明確な相場はありません。 前述の通り法律上の支給義務がなく各会社の裁量によるため、支給されるかどうかや金額は会社によってまちまちです。例えば、従業員に重大な過失がなく職場の安全管理に問題があったような事故では、高額の死亡弔慰金(数百万円規模)が支給される一方、軽傷で済んだ場合は数万円程度のお見舞い金に留まるなど、事故の重大さや企業の規模によって金額幅があります。

ただし繰り返しになりますが、見舞金は労働の対価としての給与ではなく会社に法定支給義務がないものです。そのため見舞金制度自体を設けていない企業もあり、一概に「いくらが妥当」と決まっているわけではない点に注意が必要です。会社側が任意で支給する好意的な金銭である以上、金額は各社の経済状況や社内規程、経営者の判断次第と言えるでしょう。

労災の見舞金が貰えない理由

労災事故に遭ったにもかかわらず会社から見舞金が支給されないケースもあります。ここでは、労災見舞金がもらえない主な理由を解説します。

理由1会社に見舞金を支払う義務がないため

労災見舞金は法律上の義務ではなく任意給付のため、会社として制度を設けていなかったり、支給しない方針の場合はそもそも支払われません。

つまり、見舞金は労働基準法や労災保険法で定められた保証ではなく、「慶弔見舞金」という福利厚生の一環に過ぎないためです。当然ながら見舞金制度がない会社では、従業員がどれだけ希望しても支給されないことになります。

理由2:会社が支給の必要性を感じていないため

見舞金はあくまで会社の善意に基づくものなので、会社側が「今回の事故では見舞金を出すほどではない」と判断した場合も支給されません。

例えば、事故の原因が従業員の重大なミスによるもので会社に責任がない場合や、被害が比較的軽微で労災保険だけで十分と考えている場合などです。また、残念ながら安全管理意識や従業員への配慮が乏しい企業では、見舞金を支払う発想自体がなく結果的にもらえないケースもあります。

いずれにせよ、見舞金は被災者側から法的に請求できるお金ではないため、会社が自主的に支払わない限り受け取ることはできません。

以上のように、「労災の見舞金がもらえない」のは会社側の任意性に起因するものであり、被災労働者に法律上の権利が無い点が根本理由です。では、仮に会社から見舞金を支払うと言われた場合、それを受け取ることに何かリスクはあるのでしょうか? 次章で詳しく見ていきます。

労災の見舞金を貰うリスクはあるのか?

会社から見舞金の支給提案があった場合、それを受け取ることで不利益やリスクが生じる可能性についても確認しておきましょう。ここでは、見舞金を受け取る際に注意すべきポイントを3つの観点から解説します。

ポイント1:見舞金が「損害賠償の一部」とみなされるリスク

労災見舞金は本来、慰謝料や損害賠償とは別の「お見舞い金」です。しかし支給目的や金額次第では、見舞金が実質的に損害賠償(慰謝料)の一部と判断される場合があります。例えば、会社が見舞金支給の際に「今後の慰謝料の一部として」と明示していたり、額が明らかに高額で賠償金に相当するようなケースです。その場合、後日正式に損害賠償を請求したときに既に受け取った見舞金分が差し引かれてしまう(損益相殺される)可能性があります。つまり、見舞金を事実上「示談金の前払い」として扱われ、結果的に被災者側の追加取得額が減るリスクがあるのです。見舞金受領時に会社から念書や同意書への署名を求められた場合も、内容によっては「これ以上請求しません」という示談合意とみなされる危険があるため注意が必要です。

ポイント2:労災保険給付への影響(基本的にリスクはない)

結論から言えば、見舞金を受け取っても労災保険から支給される各種給付(療養補償給付、休業補償給付等)が減額されたり支給停止になるようなことは通常ありません。厚生労働大臣が定めた基準にも「単なる見舞金等、民事損害賠償の性質をもたないものについては、労災保険給付の支給調整を行わない」と明記されています。これは、会社からのお見舞い金のように賠償目的ではない金銭は労災保険の補償と重複しないという趣旨です。したがって、会社から見舞金を受け取ったことで労災保険の給付が減らされる心配は基本的に不要です。ただし、仮に見舞金が実質的に損害賠償(金銭補填)の意味を持つと判断される場合には、その部分について労災保険給付と調整され減額される可能性がゼロではない点には留意しましょう。

ポイント3:損害賠償交渉への影響(会社との関係性の問題)

見舞金を受け取ること自体に法的な問題はありませんが、その後の会社との交渉姿勢には影響し得ます。例えば、会社としては見舞金を支給したことで「ひとまず誠意を見せた」と考え、その後の損害賠償請求に消極的になるケースがあります。「見舞金を支払ったのだから、もうこれ以上は応じない」と主張してくる企業も実際に存在します。被災者に支払われる見舞金の額は、実際の損害額のごく一部に過ぎないケースが大半ですが、それにもかかわらず会社側がそれ以上の補償を拒む姿勢を示すことがあるのです。このような主張は本来不当であり、法律上も見舞金の支払いだけで「損害賠償責任が完了した」ことにはなりません。しかし現実問題として、会社との直接交渉では感情的な対立が生じたり話し合いが難航する恐れがあります。見舞金を受領してしまったことで被災者側も「もう強く言い出しにくい」と心理的な負い目を感じてしまうケースもあるでしょう。したがって、見舞金受領後に適正な損害賠償額を会社から引き出すには専門家のサポートが重要になります。

損害賠償請求を検討するなら貰わないほうがよい?

結論から言えば、労災について会社に損害賠償請求(慰謝料請求)を検討している場合は、見舞金をすぐに受け取ってしまわず慎重に判断することをおすすめします。 上述のとおり、見舞金の受領それ自体が法的に損害賠償請求権を失わせるわけではありません。

実際、会社に法的責任がある場合には、見舞金を支払っていても別途慰謝料や賠償金を支払わねばならないと法律上定められています。また労災保険からの給付と会社からの賠償金は併用できますので、「労災保険を使ったら会社に請求できない」あるいは「見舞金を受け取ったら労災保険が使えない」というものでもありません。

しかし、見舞金を受領するタイミングで不用意に会社側の提示する条件に同意してしまうリスクは看過できません。例えば、見舞金受領時に「これで解決とする」等の書面にサインしてしまうと、後から十分な損害賠償を求めることが難しくなる恐れがあります。また金額面でも、前述のように見舞金が実質的に賠償金の一部と評価されれば、結果的に会社から受け取る総額が変わらなくなってしまいます。

何より、会社との関係がこじれている場合には見舞金の受け取りによって問題解決が遠のくケースもあります。例えば見舞金を断ったことで会社側が責任を感じて本格的な賠償交渉に応じるようになるケースや、その逆に見舞金を受け取ったがために会社が「済んだこと」として開き直ってしまうケースも考えられます。

以上を踏まえると、労災の損害賠償を真剣に検討している場合には、一度専門の弁護士に相談した上で見舞金の受領是非を判断することが賢明です。見舞金を受け取らない選択を含め、今後の交渉方針についてプロの意見を聞いておけば、後々「受け取らなければよかった…」と後悔するリスクを減らせるでしょう。

まとめ:損害賠償との関係はプロに確認しよう

労災の見舞金は、会社からの好意的なお見舞いとして支給されるもので、法律上必ず支払われるものではありません。金額や支給有無は企業によって様々であり、支給されない場合も珍しくありません。また支給されたとしても、その法的性質は慰謝料・損害賠償とは原則別物であり、労災保険の給付にも基本的に影響はありません。したがって見舞金を受け取ったからといって、それだけで会社の責任追及や労災保険利用を諦める必要はないのです。

しかし一方で、見舞金の受領のしかた次第では損害賠償請求に影響しうる局面があるのも事実です。会社が見舞金を「示談の代わり」と位置づけていたり高額な場合には、最終的な賠償額の算定時にその分が考慮される可能性があります。また会社によっては「見舞金を払ったからもう終わりだ」と不当な主張をしてくる場合もありますが、そのような主張は法的に認められないため、泣き寝入りする必要はありません。適正な損害賠償を受け取る権利は見舞金とは別に守られています。

労災事故における会社からの補償(見舞金)と法的な損害賠償請求の関係は、ケースごとに状況が異なります。ご自身のケースで見舞金を受け取るべきか迷われている場合や、会社との示談交渉を控えて不安を感じている場合は、ぜひ一度労災案件に詳しい弁護士などの専門家に相談することをお勧めします。専門家であれば、労災保険と損害賠償の制度を踏まえて最善のアドバイスを提供してくれるでしょう。

適切なアドバイスを得ることで、見舞金と損害賠償を含めたトータルの補償を最大限確保することができます。遠慮せずにプロの力を借りて、納得のいく解決への一歩を踏み出しましょう。

  • この記事を書いた人

笹野 皓平

弁護士法人ブライト パートナー弁護士: あなた自身や周りの方々がよりよい人生を歩んでいくために、また、公正な社会を実現するために、法の専門家としてサポートできることを日々嬉しく感じています。

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TEL 0120-931-501(受付時間9:00~18:00)
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