「個人再生」(こじんさいせい)と「破産」(はさん)の違いについて、正確に理解している一般の方は少ないように思います。これらの違いを正確に理解していないと、債務(借金など)を整理する際に誤った方法を選択してしまい、目的を達成できないおそれがあります。
両者の違いを理解しておく必要性は「個人」に限った話ではありません。たとえば、法人(会社)が存在する場合、法人(会社)については「破産」を選択する一方、その代表者(社長)については(「破産」ではなく)「個人再生」を選択するといったケースもあります。
そこで、以下では、倒産専門部に所属する弁護士が、両者の違いをわかりやすく解説したいと思います。
4つの債務整理方法の違いを解説
返済するお金が到底用意できないレベルに至っている場合
通常、「①破産」(はさん)を選択することが多いといえます(ただし、このことはあくまでも一つの目安にすぎないため、注意が必要です。)。「①破産」は、清算型手続とも呼ばれています。
一定の収入があり、毎月返済するお金を少しは用意できるレベルにとどまっている場合
通常、まずは「②個人再生」(こじんさいせい)、「③任意整理」又は「④特定調停」といった方法を検討することが多いといえます(ただし、このことはあくまでも一つの目安にすぎないため、注意が必要です。)。「②個人再生」は、再生型手続とも呼ばれています。
これら「①破産」と「②個人再生」は、いずれも裁判所が関与する法定の手続であるという点において共通しており、これらを含めて「倒産」(手続)と呼ぶことがあります。
「破産」と「個人再生」の違い
破産(はさん)
「①破産」(はさん)手続は、裁判所の関与のもと、法律で定められたものを除き、自宅や自動車といった債務者の財産すべてを手放してお金に換え、公平なルールに則って、債権者に対する配当に回す(分配する)手続です。破産手続開始後に得る給料などについては、「新得財産」と呼ばれ、債権者に対する配当に回す必要のない「自由財産」(じゆうざいさん)となります。通常合わせて用いられる「免責」(めんせき)手続を通じて、その許可決定を受けることにより、(法律で定められたものを除いた)全ての債務(借金など)を返済する責任から免れることが可能となります。この破産手続を利用した場合には、資格や就業に制限が生じ得るケースがありますので注意が必要です。
個人再生(こじんさいせい)
「②個人再生」(こじんさいせい)手続は、裁判所の関与のもと、自宅や自動車といった財産を保有し続けることが可能となる一方、作成した計画に従って、法律で定められた一定額まで(*例えば、5分の1相当額まで)、将来の収入のうち可処分部分から、債務(借金など)の分割返済(割合弁済)を続けなければならない手続です。事案によっては大幅な減額を受けた上で、残った債務(借金など)は、原則として免除されます。たとえば、1500万円あった債務(借金など)に関し、その5分の1に相当する300万円に減額した上で、3年間にわたって分割弁済していくケースもあります。この個人再生手続を利用するには、継続的又は反復した収入を得ていることが求められます(特に個人事業主の場合に、この条件を満たしているかどうかがよく問題となります。)。また、法律で定められた方法で算出される総債務額(借金などの合計額)が5000万円以下でなければなりません。破産とは異なり、個人再生を利用した場合には、資格や就業に制限は生じません。
個人再生で自宅は残せる?
先ほど述べたとおり、「①破産」手続の場合には、原則として自宅を含むすべての財産をお金に換える(換価する)ことになりますので、どうしても自宅を残したいという希望が強いときには、通常、「②個人再生」手続を検討すべきです。
「②個人再生」の場合には、住宅資金特別条項を利用することで、住宅ローン債務とそのほかの一般債務(借金など)とで、返済条件を別々にしてもらうことにより、自宅に住み続けたままで経済的なリスタートが可能となる機会が与えられます。
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