建設業法とは?2024年の改正ポイントや建設業界の将来性について解説します!

建設業法とは?2024年の改正ポイントや建設業界の将来性について解説します!

2024年に建設業法が改正されるに伴い、建設業界は新たな変革期を迎えます。 今回は、今一度建設業法における重要なポイントをおさえるとともに、違反した場合の罰則等についてもご紹介していきます。

建設業法とは?

建築業法とは、1949年に制定された建設業の健全な発展を目指すための法律であり、各建設業者は建設業法に基づき業務を遂行するものとなっています。

建築業法が制定されていなかった時代には、欠陥工事や工事代金の未払いなどのトラブルが発生しており、これらを解消し建設業界で正しく働く人を守るために制定されたのが建設業法なのです。

(目的)

第一条 この法律は、建設業を営む者の資質の向上、建設工事の請負契約の適正化等を図ることによつて、建設工事の適正な施工を確保し、発注者を保護するとともに、建設業の健全な発達を促進し、もつて公共の福祉の増進に寄与することを目的とする。

建設業はこの法律に基づき、各種工事の施工や請負契約等を結ぶ必要があり、仮に違反した場合には営業停止等の行政処分や刑事罰則の対象になる可能性もあります。

したがって、建設業者が業務をおこなうにあたっては、建設業法の正しい理解と建設業法にのっとって進める必要があります。

建設業法の内容

建設業法は大きく分けて3つのルールのもとで構成されています。3つのルールとは下記のとおりです。

1,建設業の許可制

2,建設工事の請負契約に関する規制

3,主任技術者・監理技術者の設置

それぞれについては次の項目以降で詳しく説明します。

建設業の許可制

建築業法において、建築業の許可に関しては下記のとおり定められています。

(建設業の許可)

第三条 建設業を営もうとする者は、次に掲げる区分により、この章で定めるところにより、二以上の都道府県の区域内に営業所(本店又は支店若しくは政令で定めるこれに準ずるものをいう。以下同じ。)を設けて営業をしようとする場合にあつては国土交通大臣の、一の都道府県の区域内にのみ営業所を設けて営業をしようとする場合にあつては当該営業所の所在地を管轄する都道府県知事の許可を受けなければならない。ただし、政令で定める軽微な建設工事のみを請け負うことを営業とする者は、この限りでない。

記載されている通り、建設業をおこなうにあたっては、国土交通大臣もしくは都道府県知事の許可が必要になります。

複数の都道府県に営業所を設けるという場合には国土交通大臣の許可が、1つの都道府県にのみ営業所を設ける場合には都道府県知事の許可が必要となります。

なお、許可に関しては業種別にそれぞれ取得する必要があります。

建築業における業種とは土木工事業、建築工事業、鉄筋工事業等の分類のことです。同じ業者であったとしても、取り扱う業種が複数になる場合には取り扱う業種の数の許可を必要とします。

また、発注者から直接請け負う1件の建設工事が4,000万円(建築一式工事の場合には6,000万円)を超える場合には特定建設業(※)の許可が必要になります。

特定建設業の許可は一般建設業の許可と比べると要件が厳しくなっています。

続いては、一般建設業と特定建設業の要件を比較して、共通点や違いを見ていきましょう。

一般建設業と特定建設業の違い

ここで説明している建設業の許可制に関しては、一般建設業の許可のことを示しています。

それに対して、特定建設業というものもあり、双方の違いは発注者から直接請け負った工事を下請けに出すか否かの違いです。

直接下請けに出すことのない場合、または下請けに出す場合でも下請け工事の発注額が先述の通り4,000万円(建築一式工事の場合は6,000万円)を超えない場合には、一般建設業が適用となります。

一般建設業と特定建設業の要件

1,経営業務管理責任者が必要

一つ目の要件に関しては一般も特定も関係なく同様に求められる内容です。

本社や本店など主たる営業所には経営業務管理責任者を1名以上配置する必要があります。

法人の場合には、役員、個人事業主の場合には本人もしくは支配人が該当となります。また、役職だけではなく、一定以上の経験についても求められます。

  • 許可を受けようとしている業種で5年以上の経営業務管理責任者の経験がある
  • 許可を受けようとしている業種で、5年以上の経営業務管理責任者に準ずる役職に就き、経営業務の管理に携わった経験がある
  • 許可を受けようとしている業種で6年以上の経営業務管理責任者に準ずる役職に就き、経営業務の管理責任者を補佐した経験がある

2,専任技術者が営業所ごとに必要

二つ目の要件である、専任技術者の要件に関しては、一般と特定で違いがあります。

特定建設業の専任技術者になるには、一般建設業よりも要件が厳しくなっています。

まずはじめに、一般建設業許可の場合には、

  • 許可を受けようとする建設業にかかる国家資格を保有している
  • 指定学科の大学卒業後、3年以上の実務経験がある
  • 指定学科の高校卒業後、5年以上の実務経験がある
  • 指定学科の専門学校卒業後、5年以上の実務経験がある
  • 許可を受けようとする建設業にかかる建設工事で10年以上の経験を持つ(指定学科を卒業していない場合でも申請可能)
  • 複数業種にかかる実務経験を持つ

のいずれかに該当する必要があります。

一方、特定建設業許可に関しては、

「許可を受けようとする建設業にかかる国家資格」に関して、ハードルが上がります。

例えば一般建設業の場合なら2級でも良かったものが、特定建設業の場合は1級を取得している必要があるという具合です。

さらに実務経験を有する必要もあり、一般建設業の専任技術者の要件に該当し、許可を受けようとする建設業において発注者から直接請け負う4,500万円以上の工事で2年以上指導監督した経験を問われます。

また、指定建設業に当てはまる、土木工事業・建築工事業・電気工事業・管工事業・鋼構造物工事業・舗装工事業・造園工事業に関しては1級の国家資格を有する必要があります。

3,誠実性がある

請負契約の締結の際などに不正行為や詐欺や横領といった法律違反にあたるようなことがあっては、建設業取得はできません。こちらに関しては、一般も特定も共通で求められるものです。

4,財産的基礎がある

一般と特定との違いの2つ目が、財産的基礎に関してです。

財産的基礎とは、建設業をおこなうにあたっては一定の財産を保有していなければ、資材の購入や賃金の支払いなどができないことから、一定以上の財産を保有していることが必要とされるというものです。

一般建設業の場合には、

  • 自己資本が500万円以上
  • 500万円以上の資金調達能力がある
  • 許可申請前の過去5年間許可を受けて継続して営業していた実績がある

のうち、いずれかの要件を満たすことで財産的基礎があるとみなされます。

一方、特定建設業に関しては、

  • 資本金が2,000万円以上
  • 自己資本が4,000万円以上
  • 欠損額が資本金の20%以下
  • 流動比率が75%以上

これら4つの要件すべてに該当することで財産的基礎をクリアしたとみなされます。

5,欠格要件に該当しない

  • 破産者
  • 暴力団員
  • 建設業法違反等により許可を取り消されてから5年未満である
  • 営業禁止処分を受けている
  • 精神障害等により意思疎通などができなかったり認知能力に欠ける

上記の要件に該当する場合には、一般特定どちらの場合も許可を取得することができません。

6,社会保険への加入

事業所の規模や、従業員の人数等により対象となる社会保険の種類は異なりますが、2020年の法改正に伴い、社会保険への加入が許可を受けるにあたっての必要要件となっています。

自社が必要となる社会保険の内容を事前に確認のうえ、漏れのないように対応する必要があります。

ただし、建設に関わる業務であったとしても下記に該当する工事に関しては許可は不要となります。

1,工事1件の請負代金が500万円未満の工事の場合

2,建築一式工事の請負代金が1,500万円未満の工事の場合

3,建築一式工事のうち、延べ面積が150㎡未満の木造住宅工事の場合

建設業の請負契約の規制

建設工事の請負契約に関して、明確なルールが定められています。

発注者及び受注者双方の権利がルールで保護されていることで、両者に不利益の生じないような契約を結ぶことが求められます。

(建設工事の請負契約の原則)

第十八条 建設工事の請負契約の当事者は、各々の対等な立場における合意に基いて公正な契約を締結し、信義に従つて誠実にこれを履行しなければならない。

具体的な内容として、

  • 請負契約に定めるべき内容
  • 現場代理人の選定に関する通知
  • 発注者の禁止行為
  • 建設工事の見積もり
  • 後期等に影響を及ぼす事象に関する情報提供
  • 契約の保証
  • 元請け人の義務
  • 一括下請負の禁止
  • 下請負人の変更請求
  • 工事監理に関する報告

などの内容が定められています。

また、建設工事の請負契約には以下の事項を定める必要があると建設業法で定められています。

第十九条 建設工事の請負契約の当事者は、前条の趣旨に従つて、契約の締結に際して次に掲げる事項を書面に記載し、署名又は記名押印をして相互に交付しなければならない。

一 工事内容

二 請負代金の額

三 工事着手の時期及び工事完成の時期

四 工事を施工しない日又は時間帯の定めをするときは、その内容

五 請負代金の全部又は一部の前金払又は出来形部分に対する支払の定めをするときは、その支払の時期及び方法

六 当事者の一方から設計変更又は工事着手の延期若しくは工事の全部若しくは一部の中止の申出があつた場合における工期の変更、請負代金の額の変更又は損害の負担及びそれらの額の算定方法に関する定め

七 天災その他不可抗力による工期の変更又は損害の負担及びその額の算定方法に関する定め

八 価格等(物価統制令(昭和二十一年勅令第百十八号)第二条に規定する価格等をいう。)の変動若しくは変更に基づく請負代金の額又は工事内容の変更

九 工事の施工により第三者が損害を受けた場合における賠償金の負担に関する定め

十 注文者が工事に使用する資材を提供し、又は建設機械その他の機械を貸与するときは、その内容及び方法に関する定め

十一 注文者が工事の全部又は一部の完成を確認するための検査の時期及び方法並びに引渡しの時期

十二 工事完成後における請負代金の支払の時期及び方法

十三 工事の目的物が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない場合におけるその不適合を担保すべき責任又は当該責任の履行に関して講ずべき保証保険契約の締結その他の措置に関する定めをするときは、その内容

十四 各当事者の履行の遅滞その他債務の不履行の場合における遅延利息、違約金その他の損害金

十五 契約に関する紛争の解決方法

十六 その他国土交通省令で定める事項

上記項目のうち、特に気を付けるべきポイントについていくつかピックアップして見ていきましょう。

請求代金の額

請求代金の額に関しては、請負契約の中でも最も重要な要素であり、確実に正しく明記しておく必要があります。

請負代金の定め方に関していろいろな方法があるというのが、注文者および請負人両者の認識の差を生む場合があります。代金の総額を定めるのが一般的ではありますが、請求代金が何を示しているのかについては、契約時に共通認識を持つことが必須だといえます。

(不当に低い請負代金の禁止)

第十九条の三 注文者は、自己の取引上の地位を不当に利用して、その注文した建設工事を施工するために通常必要と認められる原価に満たない金額を請負代金の額とする請負契約を締結してはならない。

このように工事の内容や請負金額などに関して明確に定めておくことで、トラブルの発生を未然に防ぐほか、仮にトラブルが起こってしまった場合にも契約書に基づき話し合いを進めていくことが出来るようになります。

支払い時期及び方法

建設工事請負契約において、請負代金の支払いは前払い金、出来形部分に対する支払いがおこなわれるケースが一般的となっています。支払い方法は、現金のほか、手形での支払い、銀行振り込みなどが選択肢として挙げられます。

前提として、支払い時期や方法に関しては、契約当事者が自由に決めることができるのが原則となっています。

それゆえに、金銭に関する事象がトラブルの発端となるケースも多いことから、支払いの時期や方法については確実に定めておく必要があります。

建築工事の見積もり

建築工事の請負契約の締結においては、工事内容に応じて建設工事の見積もりが必要となります。

(建設工事の見積り等)

第二十条 建設業者は、建設工事の請負契約を締結するに際して、工事内容に応じ、工事の種別ごとの材料費、労務費その他の経費の内訳並びに工事の工程ごとの作業及びその準備に必要な日数を明らかにして、建設工事の見積りを行うよう努めなければならない。

詳細を見積もりに提示することで、トラブルの回避や注文者の安心感につながります。

天災や天候などの不可抗力が生じた場合

建設業では天災や天候による影響を強く受けやすいものです。したがって、何らかの不可抗力により工期が遅れたり損害が発生した場合の規定はあらかじめ定めておく必要があります。

民法上においては、不可抗力による増加費用は請負人が負担するというのが原則ではありますが、建築工事約款ではその限りではありません。

したがって、損害額や追加費用に関する取り決めのほか、工期の延長の取り決めや履行不能となった場合の損害額負担について確実に定めておくようにしましょう。

その他請負契約に定めると良い事項

上記に加えて、工事請負契約書に定めておくとトラブル発生時や協議が必要な際にスムーズに進められる事項についてご紹介していきます。

1,工事内容の変更

請負人が発注者に対して、工事内容や請負金額の変更を提案することができるとするものです。

発注者と協議のうえ、必要に応じて変更を加えます。

2,工期の延長

理由としては、追加工事、天災等の不可抗力、その他やむを得ずに工期を延長せざるを得ない状況になった場合に、必要期間延長することができるというものです。

理由となる内容に関しては、詳細を明記しておくことでトラブル発生時に対象になるか否かを判断する材料となります。

3,発注者による工事の中止

  • 契約時条項に違反した場合
  • 工期の着工日を過ぎても着手しない場合
  • 正当な理由なく、工期が大きく遅れ、工期内に完成の見込みがない場合
  • 建設業の許可が取り消しまたは失効した場合

上記に該当する場合には、工事の中止及び契約を解除することができるというものです。

現場代理人の法的責任とは?

現場代理人とは、工事の請負人に代わって、工事現場の運営や取り締まり、契約内容の変更や契約解除等以外の工事施工に関する事項を取り扱う役割を担います。

代金の請求や発注者との交渉、さらに現場全体の最終判断など取り扱う業務はさまざまです。

工事請負人に代わってという文言ではありますが、基本的には請負業者の従業員が担う役割であり、外部の人間が務めるというケースはまれです。

現場代理人の配置に関しては、民間工事の場合は契約内容によって配置するか否かが決まりますが、公共工事の場合は必ず現場に配置する義務があります。

(現場代理人及び主任技術者等)

第十条 受注者は、次の各号に掲げる者を定めて工事現場に設置し、設計図書に定めるところにより、その氏名その他必要な事項を発注者に通知しなければならない。これらの者を変更したときも同様とする。

一 現場代理人

(中略)

2 現場代理人は、この契約の履行に関し、工事現場に常駐し、その運営、取締りを行うほか、請負代金額の変更、請負代金の請求及び受領、第十二条第一項の請求の受理、同条第三項の決定及び通知並びにこの契約の解除に係る権限を除き、この契約に基づく受注者の一切の権限を行使することができる。

公共工事において現場代理人の配置は義務付けられていることから、法律で定められていると勘違いするかもしれませんが、実際は建設業法に定められているということはありません。

あくまでも、現場代理人の配置は契約の中で取り決められるものであるため、仮に配置しなかったということがあったとしても、契約違反であり法律違反には該当しないということです。

とはいえ法律違反に当たらないから配置してもしなくてもよい、という扱いにはなりません。

契約の中で配置を明記している場合には、契約違反となりそこから契約解除や違約金の発生などのペナルティが課せられる可能性があるので、きちんとした認識と対応が必要と言えるでしょう。

現場代理人になるには

さまざまな判断や対応を求められる現場代理人になるには、資格等は必要になるのでしょうか?

結論から申し上げますと、特に必要な資格などはありません。

ただし、契約によっては現場代理人となる人が工事の元受け会社との直接的な雇用が3か月以上であるといった条件を定めている場合もあります。

現場代理人はこの後ご紹介する主任技術者や監理技術者が兼任するというケースも多くあります。上記2つの立場に関しては資格が必要となってくることから、結果的に資格を有している人が配置されるということも多くあります。

主任技術者と監理技術者に関しては、次のコンテンツで詳しくご紹介します。

資格は不要であるものの、現場全体を統括する役割を担う現場代理人には、統率力や交渉力、段取りの良さや先を読む力などが求められます。

自社の従業員のほか、さまざまな工事関係者が出入りする工事現場では、多くの人とのコミュニケーションや連携が必要となります。

現場のやり取りをスムーズに進めることが、現場代理人の腕の見せ所でしょう。

また、工事現場ではトラブルもつきものです。トラブル発生時に、迅速かつ的確な判断を下し、指示を出すことができる決断力は必須だといえます。

さらに工事に関する知識や経験を兼ね備えていることで、現場をより効率的に回すための的確な指示やアドバイスが可能になります。

現場の信頼を得て、いざというときに頼りになる存在であることが、現場代理人に求められるスキルだと言えるでしょう。

現場代理人に求められる法的責任とは

工程、安全、お金の管理のほか、工事全体の統括など現場代理人の業務内容や役割は多岐に渡り、工事現場の責任者としてさまざまな責任を担うこととなります。

たとえば、工事が契約に基づき正しく進められているか、完成は契約通りのものであるかどうかなどに関して、その責任を負うこと。

建設業法や関連法令に関して法令順守のもとで工事を施工できているかなどについては、現場代理人に責任が求められます。

また、現場に常駐しているのが基本である現場代理人に求められるものとして労災事故の対応が挙げられます。

労災事故の責任に関しては統括安全衛生責任者が担うものですが、現場代理人と兼務することが多いことから、労災事故に対する責任を現場代理人が追うというケースも少なくありません。

労災が発生した場合には下記のような対応が求められます。

  • 労災発生後、被災者の救護や救急搬送、家族への連絡
  • 事故の二次災害予防
  • 事故状況の調査と原因究明
  • 労働基準監督署へ届け出
  • 再発防止策の検討及び実施

幅広い役割や権限を担う現場代理人だからこそ、その対象や範囲に関してはあらかじめ契約書に記載しておくことでトラブル等が発生した場合に責任の所在を明らかにすることができます。

主任技術者・監理技術者の設置

続いては、主任技術者および監理技術者について見ていきましょう。

先にも少しご紹介したとおり、現場代理人と異なり主任技術者と監理技術者は建設業法で設置が義務付けられています。

(主任技術者及び監理技術者の設置等)

第二十六条 建設業者は、その請け負つた建設工事を施工するときは、当該建設工事に関し第七条第二号イ、ロ又はハに該当する者で当該工事現場における建設工事の施工の技術上の管理をつかさどるもの(以下「主任技術者」という。)を置かなければならない。

2 発注者から直接建設工事を請け負つた特定建設業者は、当該建設工事を施工するために締結した下請契約の請負代金の額(当該下請契約が二以上あるときは、それらの請負代金の額の総額)が第三条第一項第二号の政令で定める金額以上になる場合においては、前項の規定にかかわらず、当該建設工事に関し第十五条第二号イ、ロ又はハに該当する者(当該建設工事に係る建設業が指定建設業である場合にあつては、同号イに該当する者又は同号ハの規定により国土交通大臣が同号イに掲げる者と同等以上の能力を有するものと認定した者)で当該工事現場における建設工事の施工の技術上の管理をつかさどるもの(以下「監理技術者」という。)を置かなければならない。

なお、請負代金が500万円未満で建設業許可を取得していない場合は、主任技術者の設置義務はありません。

ただし、請負金額が500万円未満であっても建設業許可を取得している場合には、主任技術者の設置が必要となるため注意が必要です。

主任技術者とは

まずはじめに主任技術者とは、建設工事現場において技術的な面において管理・監督を行う人のことです。

主な業務内容として、

  • 施行計画の作成
  • 品質管理
  • 安全管理
  • 技術面に関する監督

現場代理人との立ち位置で比較すると、現場代理人は主任技術者の補佐的役割を担い、主任技術者の指示のもとで現場を統括していくというものです。

したがって、主任技術者の方が大きな権限を持っているということが言えます。

主任技術者になるには、いくつかの条件をクリアする必要があります。

・資格要件

取り扱う業種に関する国家資格、1級または2級を有している。

・学歴要件

高校の指定学科卒業後5年以上、もしくは高等専門学校の指定学科卒業後3年以上、大学の指定学科卒業後3年以上、いずれにも該当しない学歴の場合には10年以上の実務経験を要する。

主任技術者の専任と兼任とは?

主任技術者の兼任が認められているのは、以下の条件に当てはまった場合です。

  • 密接な関係のある建設工事
  • 施工する工事が同一または近接する場所である

(専任の主任技術者又は監理技術者を必要とする建設工事)

第二十七条

2 前項に規定する建設工事のうち密接な関係のある二以上の建設工事を同一の建設業者が同一の場所又は近接した場所において施工するものについては、同一の専任の主任技術者がこれらの建設工事を管理することができる。

また、請負契約において主任技術者の選任が必要とされていない場合には、工事請負金額が4,000万円未満であれば、条件に関わらず兼任することが可能です。

このように、建設業法などによって主任技術者の兼任は認められているものではありますが、発注者との請負契約の中で選任が必要とされた場合などには、専任で担当する必要があります。

なお、建設業界では人手不足が続いていることから兼任の制度見直し案も検討されています。ただし、兼任の条件の緩和は技術力の低下や、技術者の負担の増大などの問題も懸念されることから、慎重かつ現場の実態を勘案して慎重に進めていく必要があるといえます。

主任技術者は現場に常駐する必要があるか

専任という言葉を聞くと、常駐の必要があるように感じるかもしれませんが、専任が示すのはあくまでもほかの現場を担当しておらず、1か所のみであるということです。

そのため、専任主任技術者であったとしても、常時現場にいるという必要はありません。

業務に関わる研修や試験の参加や有給休暇の取得等、合理的な理由であれば、現場を離れることが認められています。

とはいえ、理由が合理的であったとしても、不在時に現場の体制を整えておくことは必要です。これは、専任兼任に関わらず求められるものです。具体的には、主任技術者が不在の場合でも必要な資格を有する代理となる人員を配置するということや、緊急事態やトラブルが発生した場合に連絡を取ったり、必要に応じて現場に向かうことができる体制を取るといったものです。

そして、その体制に関しては、発注者や下請けの了解を得ていることが前提となりますので、一方的な判断によるものであってはいけないことを理解しておく必要があります。

そのうえで上記に配慮したうえであれば、常駐の必要はないということになります。

監理技術者とは?主任技術者との違い

監理技術者の役割

監理技術者は施工計画の立案のほか、工程や品質管理のほか、技術上の管理を取り扱うなど、建設現場において重要な役割を担っています。

監理技術者となるには、指定建設業か指定建設業以外かによって要件が異なります。

まずはじめに、指定建設業の場合には、一級国家資格または技能士認定・国土交通大臣認定が必要です。

※指定建設業とは・・・土木工事業、建築工事業、電気工事業、管工事業、鋼構造物工事業、塗装工事業、造園工事業の7業種

それ以外の22業種の場合には、実務経験でも申請可能となっています。

※それ以外の22業種とは・・・大工、左官、とび、土木、石、屋根、タイル・れんが・ブロック、鉄筋、しゅんせつ、板金、ガラス、塗装、防水、内装仕上、機械器具設置、熱絶縁、電気通信、さく井、建具、水道施設、消防施設、清掃施設、解体

該当する建築工事において、指定学科の高校を卒業した場合には卒業後5年以上の実務経験、指定学科の大学・短大・高専を卒業した場合には卒業後3年以上の実務経験、特定の国家資格などを有している場合は実務経験の必要はなし、いずれにも該当しない場合には10年以上の実務経験を必要とし、さらに全ての場合において2年以上の指導監督的実務経験がある

なお、専任の監理技術者になる場合には、監理技術者資格者証の交付を受けることも条件に加わります。

専任技術者資格証の発行の実であれば、専任技術講習の受講は不要ですが、公共工事や重要な民間工事に配置される場合には講習の受講が必要となります。

講習の要不要についてはあらかじめ確認しておきましょう。

主任技術者と監理技術者の違い

似たような立ち位置のように見える主任管理者と監理技術者ですが、実際には役割や要件、建設工事内容などに違いがあります。両者を比較してその違いを見ていきましょう。

1,配置要件

主任技術者の場合、工事の金額等に関わらずすべての工事現場に配置が必要となっています。

(ただし、令和2年度10月1日以降、条件が一部緩和され、鉄筋・型枠工事かつ下請け金額が4,000万円未満の工事には必須ではないとなりました。)

一方、監理技術者の場合には、請負金額が4,500万円以上の工事現場(建築一式工事の場合には7,000万円以上)の場合には、主任技術者に代わり配置する必要があります。

したがって、小規模工事の場合には主任技術者、大規模工事の場合に監理技術者を配置する必要があります。

2,業務内容

それぞれの業務内容や役割については、主任技術者、監理技術者ともに違いはありません。

どちらも工事全体の管理業務に従事します。

ただし、監理技術者の場合には上記に加えて、下請負人の指導や監督の役割がプラスされます。

取り扱う工事内容が大規模でありより高度な技術や経験が必要とされる監理技術者には、より多くの権限や責任を持つことになります。

3,資格要件

先にそれぞれお伝えしたように、主任技術者と監理義技術者になるための要件には違いがあります。主任技術者よりも立場が上で権限のある監理技術者になるには、より高い資格要件が求められます。

監理技術者は兼任可能か?

結論から申し上げますと、監理技術者の兼任は可能です。

2020年10月1日の建設法業改正において、これまでは専任の必要があった監理技術者の配置が兼任でも可能となりました。

ただし、兼任するにはいくつかの条件をクリアする必要があります。

・専任の監理技術者補佐の配置

監理技術者補佐になるための要件として「請け負う工事現場の業種に関わる1級施工管技士もしくは1級施工管理技士補の資格を有する」「元請建設業者との3か月以上の直接雇用」が挙げられます。

・担当できる現場は2つまで

兼任と言っても、あくまでも担当できる工事現場は2つまでとなっています。ただし、工事が重複しており工作物が重なっている工事に関しては、複数であっても1つの工事とみなされることから、この場合には例外的に2つ以上の現場を兼務することができます。

・発注者との請負契約基準に基づく

建築業法においては監理技術者の兼任は認められる空と言って必ずしもすべての契約で兼任が可能ということではありません。発注者との契約において、監理技術者の兼任の範囲が限定されている場合にはその範囲内での工事でなければ兼任することはできません。

なお、主任管理者でご説明したとおり、専任は常駐を示すものではありません。

あくまでも、担当工事現場が1つであるという意味であることから、必ずしも現場に常駐する必要はないということを理解しておきましょう。

【2024年】建設業法改正のポイント

1949年に制定された建設業法は、これまでに工事現場の実態や時代背景に合わせて改正されてきました。今年2024年にも改正されるため、そのポイントを見ていきましょう。

時間外労働の上限規制が建設業において適用

2019年4月に施行された働き方改革における時間外労働の上限規制は、これまで大企業や中小企業ですでに適応されていましたが、2024年4月からいよいよ建設業においても適応されるようになります。

上限規制を守らなかった場合には、労働基準法違反として罰せられることとなります。

改正以前は特別条項付き36協定を締結していれば1年のうち6ヶ月までは上限規制を超えた時間外労働が認められていました。

しかしながら、改正後は特別条項付36協定であっても、上限規制がありそれを超過した場合には罰則が与えられることとなります。

ただでさえ、建設業の就業人数は年々減少傾向にある中で、一人当たりの労働時間が減ることになれば、人手不足はさらに加速することでしょう。

建設業法の改正内容

1,労働環境の改善

人員不足を解消するためには労働環境を改善して、働きやすい現場づくりや仕事と家庭のワークライフバランスの実現が必須だといえます。

時間外労働の規制により、必然的に労働時間は短縮されていくでしょう。

その他にも、深夜労働や休日労働の見直しをおこなうことで、従業員が働きやすい環境を整備することは、人員確保にもつながるものです。

2,現場の安全対策の徹底

現場の安全管理徹底のための人員配置や、事故を未然に防ぐための対策、また事故が発生した場合の対応などについて求められます。

従業員の安全に対する認識の強化や危機管理の徹底のための研修の実施なども必要となってくるでしょう。

3,人材確保に向けた取り組み

建設業に従事する若手の人数の減少は、建築業の将来を不安視する要因となっています。後継者の育成や若手の人材確保は今後の建設業の発展に必要不可欠だと言えるでしょう。

人材確保に関しては、労働環境の改善と並行して進めていく部分であり、働きやすい環境づくりが人材確保につながっていくものです。

それに加えて、資格制度の充実や研修の実施などにより、人材育成を図ることが求められています。

4,持続可能な開発

建設業の発展において、環境に配慮した、将来にわたっての持続可能な開発は非常に重要な要素です。

SDGsと呼ばれる持続可能な開発目標のもとで、人々の暮らしを支えたり、環境を配慮した開発を進めていくことは、建設業界が担う役割を果たすことに繋がっていくものです。

将来にわたって建設業が発展するには業界全体が環境を配慮した業務遂行を考えていく必要があります。

5,コンプライアンスの徹底

長時間労働の是正や不正行為の防止などを徹底することは、最終的に社会的な信頼に繋がるものです。建設業に関わる法令違反の正しい理解や、役員・従業員への周知徹底は将来にわたって企業が発展していくうえで必須であると言えるでしょう。

建設業法改正が業界にもたらす変化

続いては、建設業法の改正に伴いどのような変化が生まれるのかについて具体的に見ていきましょう。

1,労働環境の改善

まず一つ目の労働環境の改善に関しては、

・完全週休二日制の導入

働き方改革の適用に伴い、週休二日制が実施されます。

それにより、現従業員の心身の健康状態の維持や、これから建設業を目指す人に向けて働きやすさをアピールすることにもつながります。完全週休二日制により、長時間労働の是正や業務の効率化も期待できます。

一方で、建設業は天候や取引業者との兼ね合い等によって工期が延長したり遅れたりするということが多くある業界です。そのため、完全週休二日制を実現するためにはある程度余裕を持った工期設定や人員配置が必要とされます。

・勤怠管理システムの導入

正しい労働時間の管理は長時間労働の是正や従業員の平等性を保つうえで必須です。

システムの導入により、労働時間の管理を一括でおこなうことで、労働時間の把握がしやすかったり、業務の効率化を図るための材料になるなどのメリットがあります。

・積算期間の見直し

積算期間とは、建設工事の工期を算定する際に考慮される期間のことです。

国土交通省が発表した「建設工事における適正な工期設定等のためのガイドライン」に基づき、きちんとした根拠に基づく積算期間の算出や現場の状況に応じた配慮が求められます。

2,現場の安全対策の徹底

業務上、事故やケガなどの割合が高い建設業では従業員の安全意識を高めるためのさまざまな対策が求められています。

具体的には、雇い入れ時に機械や原材料に関する知識や作業手順の把握、事故が発生した際の対処法などに関する研修を実施する

作業内容が変更となった場合に、変更箇所や機械設備について理解するための研修等を実施する

その他、建築業における安全衛生業務従事者である「統括安全衛生管理者」「安全管理者」「衛生管理者」「産業医」「作業主任者」「安全衛生推進者」の育成や設置が挙げられます。

3,人材確保に向けた取り組み

働き方改革に伴い、多様な働き方を取り入れるということも人材確保に結びつくカギとなるでしょう。具体的には、パートタイムや契約社員としての雇用です。間口を広げることによって正社員では難しいと躊躇していた人の応募が増えること、そして人員が増えることにより長時間労働を減らすことにもつながります。

その他にも、従来の建設業のイメージである3K(きつい、汚い、危険)のイメージを払拭し、新3Kと呼ばれる「給与・休暇・希望」を実現させる取り組みが求められます。

まずはじめに、給与については、月給制の導入です。

建設業では日給制で働いた分が収入になるという制度であることもまだ多いですが、日給制の場合は体調不良で休んだ場合やけがをした場合、また天候不良で工事が中止となった場合休んだ分給与が減ってしまいます。

月給制により収入が安定することは、従業員の生活の安定や心の安心感にもつながるものでしょう。有休制度などもきちんと確立されることで、従業員にとって働きやすい環境が整備されることにもなり、企業イメージの向上にもつながっていくものです。

次に休暇に関しては、労働環境の改善に加えて建設DXの導入による生産性の向上が大きく影響してくるでしょう。

建設DXとは、AIやICT(情報通信技術)などのデジタル技術を活用して建設業におけるビジネスモデルの変革を目指すものです。

従来の建設業はアナログ業務が多いこと、また高齢化によりデジタル技術の導入が遅れていました。しかしながら、今後建設業が発展するにあたっては、建設DXの導入によるデジタル化は必須だと言えるでしょう。

最後に希望については、従来の3Kのイメージを完全に払しょくし、建設業のやりがいや将来性、魅力などを理解してもらうということを示します。

先にご紹介したICTの活用は、希望の実現においても重要になってきます。

ICT施工により、施工時期の平準化や業務の効率化が進められることで、生産性の向上や給与のアップなどが実現され、建設業界の魅力の向上が期待できます。

4,持続可能な開発

SDGsに基づく建設業としての取り組みとはどのようなものなのでしょうか?具体的な例をいくつか見ていきましょう。

  • 使用する資材を環境に配慮したものにする
  • 土地の保全や植生の維持をおこなう
  • 建物の断熱性能を高め、冷暖房の省エネ化を実現する
  • 建設物の不具合を解決して、安全な状態で長く使えるようにする
  • 解体時の廃棄物を削減したりリサイクルしたりする
  • 太陽光発電システムの導入
  • 照明器具のLED化
  • 汚水の適切な処理による地が水汚染の防止

このような取り組みにより、建設業が将来にわたって持続的に発展していくことを目指すことができるのです。

5,コンプライアンスの徹底

建設業法では下記の項目について、規制が設けられています。

  • 無許可業者と下請契約をする場合の制限及び一般建設業者が下請契約をする場合の制限
  • 見積条件の提示
  • 書面による契約締結
  • やり直し工事
  • 一括下請負
  • 施工体制台帳・施工体系図の作成
  • 主任技術者等の配置義務違反
  • 経営事項審査の虚偽申請
  • 標識の掲示、帳簿の備え付け及び保存

これらに違反した場合に罰則が与えられるほか、企業のイメージダウン、さらには建設業界全体の信頼を落とすことにもなりかねません。

各々の企業がその責任をしっかりと認識したうえで、コンプライアンス対策を徹底していくことが求められています。

建設業法に違反した場合の罰則

ここまで建設業法について、その内容を深掘りしたり、改正のポイントなどについてご紹介してきましたが、続いては建設業法に違反した場合どのような罰則が科せられるのか、罰則の種類ごとにお話していきます。

1,3年以下の懲役または300万円以下の罰金

第四十七条 次の各号のいずれかに該当する者は、三年以下の懲役又は三百万円以下の罰金に処する。

一 第三条第一項の規定に違反して許可を受けないで建設業を営んだ者

二 第十六条の規定に違反して下請契約を締結した者

三 第二十八条第三項又は第五項の規定による営業停止の処分に違反して建設業を営んだ者

四 第二十九条の四第一項の規定による営業の禁止の処分に違反して建設業を営んだ者

五 虚偽又は不正の事実に基づいて第三条第一項の許可(同条第三項の許可の更新を含む。)又は第十七条の二第一項から第三項まで若しくは第十七条の三第一項の認可を受けた者

2,6ヵ月以下の懲役または100万円以下の罰金

第五十条 次の各号のいずれかに該当する者は、六月以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。

一 第五条(第十七条において準用する場合を含む。)の規定による許可申請書又は第六条第一項(第十七条において準用する場合を含む。)の規定による書類に虚偽の記載をしてこれを提出した者

二 第十一条第一項から第四項まで(第十七条において準用する場合を含む。)の規定による書類を提出せず、又は虚偽の記載をしてこれを提出した者

三 第十一条第五項(第十七条において準用する場合を含む。)の規定による届出をしなかつた者

四 第二十七条の二十四第二項若しくは第二十七条の二十六第二項の申請書又は第二十七条の二十四第三項若しくは第二十七条の二十六第三項の書類に虚偽の記載をしてこれを提出した者

3,100万円以下の罰金

第五十二条 次の各号のいずれかに該当するときは、その違反行為をした者は、百万円以下の罰金に処する。

一 第二十六条第一項から第三項まで又は第二十六条の三第七項の規定による主任技術者又は監理技術者を置かなかつたとき。

二 第二十六条の二の規定に違反したとき。

三 第二十九条の三第一項後段の規定による通知をしなかつたとき。

四 第二十七条の二十四第四項又は第二十七条の二十六第四項の規定による報告をせず、若しくは資料の提出をせず、又は虚偽の報告をし、若しくは虚偽の資料を提出したとき。

五 第三十一条第一項、第四十一条の二第四項又は第四十二条の二第一項の規定による報告をせず、又は虚偽の報告をしたとき。

六 第三十一条第一項、第四十一条の二第四項又は第四十二条の二第一項の規定による検査を拒み、妨げ、又は忌避したとき。

七 第四十一条の二第三項の規定による命令に違反したとき。

4,10万円以下の過料

第五十五条 次の各号のいずれかに該当する者は、十万円以下の過料に処する。

一 第十二条(第十七条において準用する場合を含む。)の規定による届出を怠つた者

二 正当な理由がなくて第二十五条の十三第三項の規定による出頭の要求に応じなかつた者

三 第四十条の規定による標識を掲げない者

四 第四十条の二の規定に違反した者

五 第四十条の三の規定に違反して、帳簿を備えず、帳簿に記載せず、若しくは帳簿に虚偽の記載をし、又は帳簿若しくは図書を保存しなかつた者

欠格要件に注意

前述の罰則を受けた場合、それで全て終わり。というわけではありません。

場合によっては建設業の許可が取り消しとなることがあります。

さらに取り消しとなった場合、建設業法における欠格要件に該当するため、5年間は新たに建設業許可が取得できないという厳しい条件があります。

第八条 国土交通大臣又は都道府県知事は、許可を受けようとする者が次の各号のいずれか(許可の更新を受けようとする者にあつては、第一号又は第七号から第十四号までのいずれか)に該当するとき、又は許可申請書若しくはその添付書類中に重要な事項について虚偽の記載があり、若しくは重要な事実の記載が欠けているときは、許可をしてはならない。

一 破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者

二 第二十九条第一項第七号又は第八号に該当することにより一般建設業の許可又は特定建設業の許可を取り消され、その取消しの日から五年を経過しない者

三 第二十九条第一項第七号又は第八号に該当するとして一般建設業の許可又は特定建設業の許可の取消しの処分に係る行政手続法(平成五年法律第八十八号)第十五条の規定による通知があつた日から当該処分があつた日又は処分をしないことの決定があつた日までの間に第十二条第五号に該当する旨の同条の規定による届出をした者で当該届出の日から五年を経過しないもの

四 前号に規定する期間内に第十二条第五号に該当する旨の同条の規定による届出があつた場合において、前号の通知の日前六十日以内に当該届出に係る法人の役員等若しくは政令で定める使用人であつた者又は当該届出に係る個人の政令で定める使用人であつた者で、当該届出の日から五年を経過しないもの

五 第二十八条第三項又は第五項の規定により営業の停止を命ぜられ、その停止の期間が経過しない者

六 許可を受けようとする建設業について第二十九条の四の規定により営業を禁止され、その禁止の期間が経過しない者

七 禁錮以上の刑に処せられ、その刑の執行を終わり、又はその刑の執行を受けることがなくなつた日から五年を経過しない者

八 この法律、建設工事の施工若しくは建設工事に従事する労働者の使用に関する法令の規定で政令で定めるもの若しくは暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律(平成三年法律第七十七号)の規定(同法第三十二条の三第七項及び第三十二条の十一第一項の規定を除く。)に違反したことにより、又は刑法(明治四十年法律第四十五号)第二百四条、第二百六条、第二百八条、第二百八条の二、第二百二十二条若しくは第二百四十七条の罪若しくは暴力行為等処罰に関する法律(大正十五年法律第六十号)の罪を犯したことにより、罰金の刑に処せられ、その刑の執行を終わり、又はその刑の執行を受けることがなくなつた日から五年を経過しない者

九 暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律第二条第六号に規定する暴力団員又は同号に規定する暴力団員でなくなつた日から五年を経過しない者(第十四号において「暴力団員等」という。)

十 心身の故障により建設業を適正に営むことができない者として国土交通省令で定めるもの

十一 営業に関し成年者と同一の行為能力を有しない未成年者でその法定代理人が前各号又は次号(法人でその役員等のうちに第一号から第四号まで又は第六号から前号までのいずれかに該当する者のあるものに係る部分に限る。)のいずれかに該当するもの

十二 法人でその役員等又は政令で定める使用人のうちに、第一号から第四号まで又は第六号から第十号までのいずれかに該当する者(第二号に該当する者についてはその者が第二十九条の規定により許可を取り消される以前から、第三号又は第四号に該当する者についてはその者が第十二条第五号に該当する旨の同条の規定による届出がされる以前から、第六号に該当する者についてはその者が第二十九条の四の規定により営業を禁止される以前から、建設業者である当該法人の役員等又は政令で定める使用人であつた者を除く。)のあるもの

十三 個人で政令で定める使用人のうちに、第一号から第四号まで又は第六号から第十号までのいずれかに該当する者(第二号に該当する者についてはその者が第二十九条の規定により許可を取り消される以前から、第三号又は第四号に該当する者についてはその者が第十二条第五号に該当する旨の同条の規定による届出がされる以前から、第六号に該当する者についてはその者が第二十九条の四の規定により営業を禁止される以前から、建設業者である当該個人の政令で定める使用人であつた者を除く。)のあるもの

十四 暴力団員等がその事業活動を支配する者

許可取消や建設業許可の再取得まで長期間要する場合、企業のダメージは計り知れないものであり、場合によっては廃業になってしまう可能性も十分あるでしょう。

会社としてコンプライアンスを順守することはもちろん、従業員一人一人にその意識を定着させることも非常に重要であるといえます。

監督処分とは

上記の罰則とは別に許可行政庁により監督処分が科せられる監督処分には3種類あります。

1,指示処分(業務改善命令)

建設業法に違反した場合や不適切な業務等があった場合に、それらを是正するために監督行政庁がおこなうものです。

監督処分の中では最も軽い処分となっています。

2,業務停止処分

前述の支持処分に従わなかった場合に、一定期間の営業活動が禁止されるのが業務停止処分です。

業務の停止期間は最長1年であり、処分を受けた場合には業者名や所在地が官報に公開されることから、処分の影響は支持処分よりもはるかに大きなものとなります。

なお、一括下請負禁止規定違反や独占禁止法などの他の法令に違反した場合には、指示処分なしで一発営業停止処分が下ることもあります。

3,許可取消処分

3つの中で最も重い処分である許可取消処分は、営業停止処分が科せられたのに営業を続けたり、建設業許可を不当な手段で取得した場合などに科せられるものです。

その他にも、脱税行為や会社の役員が傷害事件等を起こした場合なども許可取消処分の対象となります。

自社の将来的な発展や従業員の働きやすい職場環境を守るために、建設業法の順守は必須事項です。

法を犯していることを認識したうえで間違った行動をしてしまうのは論外ですが、建設業法を正しく理解しておらずに知らぬ間に違反行為をしてしまったということも起こり得ます。

したがって、建設業に携わるうえで、従業員を含めた建設業法の正しい理解はとても大切なことだと言えるでしょう。

建設業法の違反事例

続いては、建設業法違反の実例を処分ごとにいくつかご紹介していきましょう。

1,指示処分(業務改善命令)の対象事例

  • 主任技術者の配置が必要な建設現場に配置していなかった
  • 専任技術者を専任監理技術者として配置した
  • 労働安全衛生法に違反した
  • 営業停止処分となっている業者と契約を結んだ

2,業務停止処分の対象事例

  • 許可なしに建設工事を請け負った
  • 雇用関係のない人を自社の主任技術者と偽り配置した
  • 無許可の建設業者と下請け契約を結んだ
  • 建設業者による談合

3,許可取消処分の対象事例

  • 専任技術者が営業所から退職等の理由で不在となった
  • 経営業務の管理責任者が退職等の理由で不在となった
  • 役員等が暴力団員でなくなってから5年を経過していなかった
  • 主たる営業所の所在地が確認できない

まとめ

以上、建設業法の具体的な内容や現場代理人・監理技術者・監理技術者の定義や資格要件、そして資格要件等について解説してきましたがいかがだったでしょうか?

1949年に制定された建設業法は、時代の変化に合わせて必要な事項に関して改正が加えられ、進化してきています。

今回、2024年に新たに建設業法が改正されることで、建設業界にとっては大きな転換期となるでしょう。

新3K実現に向けて、従業員が働きやすい職場環境の整備や若い世代の人材確保、安全管理等、今後建設業が持続的な発展を遂げるにはさまざまな課題があります。

一つひとつを解決していくことで、企業として社会的な信頼を得られるようになるほか、建設業界全体のイメージの向上にもつながるでしょう。

まずは自社が抱える課題や問題を洗い出し、解決の糸口を見つけていく必要があります。

これまでの経験を活かし、課題解決に向けた多角的なアドバイスをすることが可能です。

是非お気軽にご相談ください。

本記事は、一般的な情報の提供を目的とするものであり、個別案件に関する法的助言を目的とするものではありません。また、情報の正確性、完全性及び適時性を法的に保証するものではありません。
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