2024年の貨物自動車運送事業法改正が運送業界に与える変化と対策すべきことを徹底解説

2024年の貨物自動車運送事業法改正が運送業界に与える変化と対策すべきことを徹底解説

2024年の貨物自動車運送事業法の改正により、運送業の効率化、安全性の向上などが強化されます。 持続可能な運送業務が推進され、業界全体のサービス品質が向上します。 物流効率の向上とともに、ドライバーの労働環境も改善が見込まれます。

貨物自動車運送事業法の改正とは

貨物自動車運送事業法は、貨物運送を行う事業者が遵守すべき日本の法律です。

今回の改正法の正式名称は「流通業務の総合化及び効率化の促進に関する法律及び貨物自動車運送事業法の一部を改正する法律」です。そのため、物資流通効率化法の内容も含めた理解が必要です。

貨物自動車運送事業法は、事業者に対して安全な運送操作、適正な労働環境、公正な競争を促す規制を設けることで、運送業界の秩序を保つことが目的です。

具体的には、運送許可の要件、運送安全基準の遵守、労働条件の整備などが規定されており、違反した場合には罰則が適用されます。(貨物自動車運送事業法70条から79条)

貨物自動車運送事業法の歴史的背景

貨物自動車運送事業法は、戦後の高度経済成長期に、運送業界の急速な拡大とそれに伴う安全問題や労働問題に対応するために制定されました。

元々は運送業の質の確保と公共の安全を守ることが主な目的であり、以来、社会の変化や技術進化に合わせて何度かの改正が行われています。

これにより、環境規制への対応やデジタル技術の利用促進など、時代に合わせた規制の更新が進められてきました。

改正法の公布日・施行日

貨物自動車運送事業法の改正案は、2024年に国会で可決され、2024年5月15日に公布されました。改正法の具体的な施行日は、法律の公布から数ヶ月後に設定されており、事業者はこの期間を利用して新しい規制に適応する準備をする必要があります。

改正の目的

貨物自動車運送事業法の改正は、軽トラック運送業での死亡、重傷事故の増加や「2024年問題」による人手不足、流通の停滞を懸念したことによります。

法改正によって、運送業界における安全対策や規制を強化し、物流の効率化を達成することが目的となっています。特にドライバーの労働条件の改善、過重労働の解消、そして運転中の安全対策の強化、物流全体の効率化が重点的に行われました。

2024年の法改正の概要

今回の改正は、以下の3つに分類されます。

1.物流事業者への規制

物流事業者(荷主を含む)に、物流効率化のための努力義務が課されました。該当する措置については、国が判断基準を策定し、指導、調査などを実施します。事業者で、一定の規模以上の場合は、特定事業者となり、定期的な報告が義務付けられました。

2.トラック事業者への規制

元請事業者は、実運送体制管理簿(実運送事業者の名称等を記載)の作成が義務となりました。運送契約の際には、実際の業務内容と料金を記載した書面の交付などが義務付けられています。料金には、付帯業務や燃料サーチャージなどが含まれます。

また、トラック事業者、利用運送事業者が他の運送事業者へ下請けに出す行為の適性化が努力義務となっています。一定以上の規模の事業者は、適正化の管理規定の作成と、責任者の選任も義務付けられました。

3.軽トラック事業者への規制

軽トラックの事業者に対しては、業務に必要な法令知識を担保することを目的とした貨物自動車安全管理者の選任と講習の受講が義務付けられました。事故が発生した場合には、国土交通大臣への事故報告が義務となっています。

また、軽トラック事業者の事故報告や安全確保命令にかかわる情報は、国交省の公表対象に追加されました。

貨物自動車運送事業法の改正に至った背景

貨物自動車運送事業法の改正に至った背景には主に七つの大きな要因があります。

1.「2024年問題」と労働力不足

「2024年問題」とは、特に日本国内での労働力人口の減少が予想されることに関連しています。これにより、運送業界は運転手の不足、効率の低下、配送遅延などの問題に直面することが予測されています。

物流業界がこれらの問題にどう対処するかは、国の経済運営にとって非常に重要です。

運送業界の労働力確保と効率化は、持続可能な経済成長を支える基盤となります。

2. 軽トラック運送業における事故率の増加

軽トラック運送業において、死亡事故や重傷事故が増加していることも、法改正の大きな要因の一つです。この増加は、ドライバーの疲労や過密スケジュールなど、業界内の安全管理の問題を浮き彫りにしています。

これに対処するためには、より厳格な安全基準と労働条件の改善が必要とされました。

安全な運送業務の確立は、社会全体の安心と信頼を支えるために不可欠です。

3.適正な運賃と取引条件の確保

国土交通省は、運送業界の健全な発展のために適正な運賃の確保と取引条件の適正化を重視しています。元請と下請の間の適正な関係を確立し、適正な運賃の支払いや取引条件の改善が求められています。

これにより、運送業者が安定した経営を行い、安全かつ効率的な運送サービスを提供できる体制を整備できます。

5.荷主との関係強化

荷主企業との関係も重要な要素です。運送業者と荷主との間で適正な取引条件を確保することが、労働環境の改善と安全運行の確保に直結します。

国土交通省は荷主企業にも協力を求め、運送業者との連携を強化するための取り組みを進めています。

6.総合的な安全管理体制の強化

運送業界全体での総合的な安全管理体制の強化も法改正の重要なポイントです。

情報の共有や適切なリスク管理を行うことで、業界全体の安全性を高めることが求められています。

貨物自動車運送事業法の改正の影響

貨物自動車運送事業法の改正には流通業務総合効率化法の改正も含まれているため、運送業界に多方面にわたり影響を与えています。

以下に事業者への影響と消費者への影響についてまとめます。

事業者への影響

1.事業者と荷主の協力による効率化

法改正により、物流業務を円滑にし効率化を進めるための努力が義務付けられました。物流事業者だけではなく、荷主にも義務があることで、スムーズな効率化が期待されます。

物流効率化は、一度に運送できる貨物の量を増加させることが重要です。そのため事業者が輸送網や配送の集約をし、荷主は効率を高めるための協力をすることで、全体的な効率化をすすめることになります。

2.国からの指導

今回の改正により、物流効率化のための努力義務が課されましたが、効率化に該当する措置は国が判断基準を策定します。そのため国による判断基準に照らして、物流業務効率化の実施のために必要だと判断される場合には、国からの指導、助言が行われます。また、調査と調査結果の公表が定められました。※

該当する事業者が、一定の規模以上の場合には、報告が必要になるため、中長期計画の作成や定期報告等の作成業務が必要です。

3.安全管理による事故の減少

貨物自動車安全管理者の選任と講習の受講、国土交通大臣への事故報告などが義務となり、事故を防止する取り組みが定められました。事業者の事故報告や安全確保命令にかかわる情報が、国交省の公表対象に追加されたことで、事故を抑制する効果も期待されています。

4.「2024年問題」への対策

2024年問題への対策としての法改正のため、トラックドライバーの労働時間や待遇の改善を目指す規制が定められました。運送を依頼する荷主側や元請事業者への義務や規制ができたことで、これまでよりも効率的で適正な労働が可能になります。効率化と適正な労働は、2024年問題へ対応するための重要な布石となります。

消費者への影響

1.サービス品質の向上

改正法による安全基準の厳格化は、運送業界の事故率を低下させ、結果的に配送の信頼性と効率が向上します。消費者は、予定通りに、より安全に商品を受け取ることができるようになります。

2.コスト増加

新規制の適用にはコストがかかるため、これが運送コストに反映される可能性があります。消費者は、配送料の値上げがあるかもしれません。

3.サービス変更の混乱

法改正による運送方法の変更やシステム更新は、一時的にサービスの混乱を招く可能性があり、消費者が一部の商品の配送遅延や不便を経験することも考えられます。

貨物自動車運送事業法の改正から対策するべきこと

2024年の貨物自動車運送事業法の改正は、運送業界に多くの新しい課題と要件をもたらしました。これまでの改正や各省庁の規制を含めて対応する必要があります。

1. 労働時間の厳格な管理

新しい法律では、ドライバーの労働時間に対する規制が強化されています。

事業者は、勤務時間と休憩時間を正確に記録し、法律で定められた労働時間を超えないように管理するシステムの整備が必要です。

2. 安全教育の充実

ドライバーに対する定期的な安全教育の実施が求められています。事業者は、事故防止策としてドライバーの安全意識を高める教育プログラムを整え、継続的なトレーニングを実施しましょう。

3. 車両の安全基準の確保

車両の安全性向上も重要です。これに対応するために、事業者は車両の定期的な点検とメンテナンスを徹底し、安全技術の最新の要件に適合するよう車両の更新が必須となります。

4. 環境負荷の低減

貨物自動車運送事業者は、環境に優しい運送手段への転換も促進されています。事業者は省エネルギー型車両の導入や代替燃料の利用も合わせて検討することが必要です。これにより、輸送コストの削減と環境への配慮が可能になります。

5. デジタル化の推進

運送業界では、高齢化や人手不足に対応し運送管理の効率化を図るため、デジタル技術の導入が重要です。GPSトラッキングシステムや運送管理ソフトウェアを活用することで、ルートの最適化や輸送効率の向上が図れます。

貨物自動車運送事業法に違反するとどうなるか

貨物自動車運送事業法に違反した場合、事業者は法的な責任、社会的制裁を負うことになります。具体的には、以下のような罰則が適用されることがあります。

  • 罰金制度

貨物自動車運送事業法の第70条には、具体的な罰金の対象が定められています。最も重い罰金が科される罪は無許可での営業です。300万円以下の罰金、もしくは3年以下の懲役、または併科されます。

そのほか名義貸しや貸渡しも同様に、300万円以下の罰金か3年以下の懲役、または併科となります。※

  • 行政処分

違反が重大または継続的である場合、運輸局は業務停止命令や運送事業の許可取り消しといった行政処分を下すことが可能です。これにより、事業者は一定期間、事業活動ができなくなったり、最悪の場合、事業を完全に停止しなければならなくなることもあります。

  • 民事責任

法的違反が原因で事故が発生した場合、事業者は民事訴訟による損害賠償責任を負う可能性があります。事故による物的損害や人的被害に対する賠償が該当します。

  • 信用の失墜

法違反が公になると、事業者の評判が大きく損なわれます。

これは長期的に顧客の信頼を失い、新規ビジネスの機会が減少する結果につながる可能性があります。

  • 業務取引の悪化

法違反は取引先からの信頼を失わせ、既存の契約の見直しや解除を引き起こすことがあります。これにより、事業の継続性が脅かされることがあります。

  • 従業員の士気低下

企業の評判が落ちると、従業員の士気にも悪影響を及ぼします。これは労働生産性の低下に繋がり、さらに企業のパフォーマンスの低下を招きます。

  • 投資家の関心喪失

法違反が投資家や市場に知られると、投資の撤退や資金調達の難しさに直面することがあります。これにより、事業の拡大や新規プロジェクトの実施が困難になることがあります。

まとめ

2024年の貨物自動車運送事業法の改正は、運送業界に対し厳格な安全基準と労働条件の改善を求めるものです。

この改正により、運転手の労働時間が厳しく規制され、休息が保障されることで、過労による事故を防ぐことが期待されます。

また、環境に配慮した運送手段への移行が加速されることで、持続可能な物流業界の発展が促されています。これにより、運送業者は環境負荷の低減に努めることが求められます。

改正法は、運送業界全体のサービス品質と安全性の向上に寄与し、消費者にも安心と信頼を与えてくれるでしょう。また、デジタル技術の活用が推奨され、運送業務の効率化とコスト削減が図られます。これらの改正により、運送業界全体のサービス品質が向上し、消費者と事業者双方にメリットがもたらされるでしょう。

ブライト法律事務所では、2024年の貨物自動車運送事業法の改正に関する専門的な法的支援をしています。この改正が運送業界に及ぼす影響を理解し、事業者が法的要件を遵守するための具体的な助言等をいたします。

詳細や法律相談については、ブライト法律事務所のウェブサイトをご覧ください。

本記事は、一般的な情報の提供を目的とするものであり、個別案件に関する法的助言を目的とするものではありません。また、情報の正確性、完全性及び適時性を法的に保証するものではありません。
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