運送業の2024年問題|時間外上限規制・ドライバー不足・荷主の責任【弁護士解説】

運送業の2024年問題|時間外上限規制・ドライバー不足・荷主の責任【弁護士解説】

働き方改革に伴う法規制は、物流・運送業会においてはこれまで猶予期間となっていましたが、いよいよ2024年よりスタートとなります。 それに伴い生じる2024年問題とはどのようなものなのでしょうか?今回は、問題点や解決策などについてお伝えします。

和氣良浩 弁護士

この記事の監修者

和氣 良浩(わけ よしひろ)

弁護士法人ブライト|代表弁護士/パートナー弁護士

弁護士歴20年(2006年登録)/大阪弁護士会/大阪大学法学部卒

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2024年問題とは

2019年に働き方改革の一環として時間外労働に対する上限規制が適用されました。その際に、運送・物流業界、建設業、医療業界に関しては長時間労働を背景に5年間の猶予が設定されたことにより、2024年が猶予の終了期限となることに伴い、生じる問題のことを2024年問題と呼びます。

今回は、複数ある業界の中でも運送・物流業界の2024年問題について深掘りしていきます。

2024年4月1日からトラックドライバーの時間外労働においても上限規制が設けられ、月間45時間、年間960時間に制限されることになります。

それ以外にもさまざまな規制がありますので、一つずつ詳しく見ていきましょう。

時間外労働の上限が年間960時間

一般企業の場合には、特別条項付きの36協定により労働時間に関する規制が細かく設けられていますが、物流・運送業会のドライバーの関しては、年間960時間の上限のみが規制されています。

拘束時間の縮小

1日あたりの拘束時間は従来と変わらず13時間以内、1か月あたりは293時間から284時間以内に、1年間あたりは3,516時間から3,300時間以内に変更となりました。

ただし、労使協定により一定の条件の下、年間拘束時間を3,400時間の範囲で延長することが可能となっています。

勤務間のインターバルの延長

勤務終了後、次の勤務につくまでの間の休息時間について、これまでは8時間以上とされていたものが9時間以上が義務化され、11時間以上を努力義務として掲げられました。

これにより、従業員の休息時間の確保による健康維持や増進のほか生産性の向上、そしてライフワークバランスの実現を目指します。

仕事だけでなく私生活も充実させることのできる環境は、新規人材確保にも直結する重要なポイントとなります。

連続運転の規制

運転を開始し4時間以内もしくは4時間連続運転したのちに30分以上の休憩を取ることが義務付けられました。

また、これまでは、運転をしていなければ、荷積みや荷下ろしの作業については休憩を挟まずに行ってよいとされていましたが、2024年以降は運転しているしていないに関わらず、必ず休憩をはさむことが義務付けられました。

上記規制に関しては、どれもドライバー一人一人の負担を減らすことにより、健康と安全を守るためのものですが、それに伴い業界にとってはさまざまな課題が生じる可能性があります。

詳細につきましては、後のコンテンツで詳しくご紹介していきます。

運送・物流業界の時間外労働の上限規則に違反した場合の罰則は

規制によりさまざまな影響が懸念されますが、もし規制に違反した場合にはどのような罰則が与えられるのでしょうか?

結論から申し上げますと、規制を守らないと労働基準法違反となり、「6ヶ月以下の懲役もしくは30万円以下の罰金」が科せられる可能性があります。

とはいえ、上記罰則は1度破ったからと言ってすぐに科せられるものではなく、度重なる上限超過や、労働基準監督署の指示を無視したり従わないなどの悪質と判断される場合に適用される場合があるものであるため、指示があればまずはきちんと対処することを心掛ける必要があるといえるでしょう。

なお、時間外労働の上限規制だけではなく、割増賃金率や年次有給休暇の義務付けなどに関してもそれぞれ違反により罰則が科せられます。労働環境の改善や多様で柔軟な働き方を実現させるための働き方改革だからこそ、各種規定に違反することのないように取り組んでいく必要があります。

労働基準法違反で罰則が与えられた場合には、企業名および違反内容が厚生労働省のホームページに掲載されることとなります。これにより、企業イメージの低下を招くほか、売上の減少や取引先との関係解消などのリスクもあるでしょう。

したがって、時間外労働規定を順守することは、従業員の労働環境を守るほか、企業評価を維持するうえでも重要な役割を担うものだと言えます。

運送・物流業界の働き方改革関連法の改正で取り組むべきこと

続いては、運送・物流業界が働き方改革に伴う各種規制に対してどのように取り組んでいくべきか、法令を遵守しながら企業としての利益を上げていくにはどのような対策が必要となるのかについて解説していきます。

労働時間の適正管理

労働時間の上限を守るうえでは、適切な労働時間の管理が必須となります。

これまで時間管理が曖昧になっていたという場合には、早急にタイムカードや勤怠管理システム、またドライブレコーダーの導入などによる、労働時間管理が求められます。

また、従業員に対して労働時間管理の重要性や労働時間上限の理解を周知することで、自主的な時間管理を促すことも必要となるでしょう。仮に、従業員が自ら労働時間を守らなかったとしても、罰せられるのは企業となります。そのため、法律に基づいた働き方を徹底することは、企業の義務だといえるでしょう。

IT技術を活用した業務効率化

一人一人の労働時間を減らしながらも、利益を減らさないようにするためには、IT技術を活用した業務の効率化が有効となります。

運送・物流業界では、トラック予約システムや輸配送管理システム、配送ルート最適化アプリの活用などの活用が挙げられます。

「トラック予約システム」とは、ドライバーが倉庫に到着する時刻をスマホなどからあらかじめ予約することのできるシステムです。

このシステムにより、待機時間の削減や予約時間までの時間を有効に活用できるなどのメリットがあります。

また、物流拠点側にとっても、到着時刻を把握することでそれに合わせた人員配置をおこなったり、作業内容に応じて人員数を増減させるなどの配慮をすることが可能です。

「輸配送管理システム」とは、配車の位置情報や走行スピード、積載量や配送ルートなどについてリアルタイムに把握することができるものです。

これにより、効率的にトラックが走るにはどのルートを選べばよいかなどを適宜確認することができ、業務の効率化やコスト削減につなげることが可能です。

「配送ルート最適化アプリ」は、トラックが最も効率よく配送するためのルートを計算し作成するものです。ルートの作成のほか、到着時刻の予測をすることも可能です。

高齢化対策及び多様な人材確保

先にもお伝えしたとおり、運送・物流業界においては人材の高齢化が進み、若手の新規参入が不足している状況です。また、業界全体として男性中心となっている状況を打破し、女性を積極的に採用していくというのも人材確保をするうえで大きなカギとなるでしょう。

若い人材の確保、そして女性の積極的採用を実現するには、対象となる人材にとって働き安い環境の整備が求められます。

運送・物流業は力仕事が多くきついというイメージを払拭できるような環境の整備を進めるとともに、特に女性の採用に関しては、子育て世代でも働きやすいように、子供の体調不良時にも休みやすいように、配送を2人体制にするといった事例を参考にして取り組んでいく必要があります。

また、業務未経験であっても安心して仕事に就くことができるように、研修に力を入れたり、フォロー体制を強化するというのも人材確保につながる取り組みです。

適切な人員配置

勤務間インターバルが9時間を下回らないようにしなくてはならないことから、長距離輸送の場合には複数人を配置するなどの対策を取らなければならないなど、これまでとは違った人員配置が必要にもなってくるでしょう。

労働時間の縮小化に伴い、人材不足が懸念される中でいかにして効率的に人員を配置するか、また同時にIT技術を上手に活用しながら進めていくことが今後の企業発展を支えていくこととなるでしょう。

適正な取引環境の整備

これまでは、荷主の依頼により必要以上の業務を引き受けていることや、依頼先からの無理な要望にこたえなくてはならないというケースもあったかもしれません。

そのような状況が長時間労働や休憩時間が確保できないなどの一因ともなっていたといえます。

したがって、自社の従業員を守るためにも、企業として適正な取引環境を整備することが求められます。

まず企業がやるべきこととして、ドライバーが請け負っている業務をすべて把握することが必要です。その中に契約外の業務が含まれていないかどうか、含まれていた場合には取引先との契約内容の再確認や場合によっては取引停止を申し出るという対応も必要となるでしょう。

従業員が働きやすい環境を整備するために、また長期的な視点で取引先との信頼関係を築いていくうえで率先して取り組んでいくべき課題となっています。

働き方改革関連法の改正による影響

はあtら着方改革慣例法の改正に伴い、運送・物流業界で懸念されている課題として挙げられるのが、

  • ドライバー不足
  • ドライバーの収入減
  • 物流業界の収益の減少
  • 輸送能力不足
  • 運賃値上げ

などです。

一つずつ詳しく見ていきましょう。

ドライバーの収入減

労働時間に上限が設けられることにより、これまでよりも労働時間が減ることで自ずと収入が減ってしまうという問題が生じる可能性が高まります。

長時間労働のほかにも、働き方に関して制限が設けられるために従来のような働き方ができなくなり、ドライバーの収入に大きな打撃を与えることとなるでしょう。

労働時間の減少が必ずしも働きやすい労働環境や人材確保に直結するとは限りません。

したがって、企業としては収入面を補うことのできるような、労働環境の改善や従業員のモチベーションアップにつながる働きかけを検討していかなくてはなりません。

ドライバー不足

2024年問題以前からドライバー不足については問題視されており、その原因にはドライバーの高齢化や物流・運送業界への女性参入が未だ進んでいないということ、さらには指定日配達や即日配達など利用者にとっては便利が増える分、ドライバーへの負担が大きくなっていることで人材離れが進んでしまっているということが挙げられます。

それに、2024年問題によるドライバーの収入減が加わることでドライバー不足は一層加速することが懸念されています。

物流業界の収益の減少

ドライバーの労働時間減少に伴い、輸送できる量が減少することにより売り上げが減少することに繋がってしまいます。

また、既に2023年4月から適用されている割増賃金率の引き上げや人材不足に伴う人件費の高騰に伴い、人件費が利益を圧迫していくことが懸念されます。

ネットショップの普及拡大などの影響により、配送ニーズは高まっているにも関わらず、人材不足によって依頼を受けられないという状況に陥り、これは運送・物流業界に留まらない大きな問題として発展していくリスクがあるといえます。

輸送能力不足

ネットショップの利用拡大が進む昨今において、物流量は増加を続けています。その状態の中、労働時間の上限規制が適用されることで、輸送能力不足が発生し、物流が停滞して物流が停滞してしまう可能性が出てきます。

具体的には、2024年だけでも輸送能力が約14%不足する可能性が懸念されており、早急な対応が求められる状況だといえます。

運賃値上げ

一人一人の労働時間の上限規制により、請け負うことのできる輸送量が減り、そのままでは企業の収益が減ってしまうことから、運賃を上げることにより収益を減らさないようにしようとする企業もあるでしょう。

運賃の値上げは、取引先企業にとっては、輸送コストアップによる利益の減少に繋がるほか、普段気軽にネットショップを利用している私たちにとっても負担増となる大きな問題です。

まとめ

以上、今回は2024年問題が運送・物流業界にどのような影響を及ぼすのか、また人材不足や企業の収益の低下など懸念される各種問題にどのように対処していくべきなのかなどについてお伝えしてきました。

働き方改革は、従業員の心身の健康を保ち、将来にわたって展望をもって働き続けることを目的としています。一方で、労働時間の減少による収入減などは、必ずしも従業員にとってプラスに働くというものではないでしょう。

企業としては、働き方改革に伴う職場環境の整備や業務効率化、そして既存の従業員及びこれからの人材採用に向けて運送・物流業界がより魅力的であるものとするための取り組みが求められています。

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監修

和氣 良浩 弁護士(大阪弁護士会)

弁護士法人ブライト 代表弁護士。企業法務・顧問弁護士業務を中心に、中小企業の法的リスク管理をサポート。

⚖️ 運送業2024年問題・時間外労働規制に関する判例・法的根拠

  • 労働基準法36条(36協定・時間外労働上限規制):2024年4月1日より自動車運転業務に上限規制が適用。年間時間外労働960時間上限(休日労働含まず)。違反した使用者には6か月以下の懲役または30万円以下の罰金。
  • 貨物自動車運送事業法64条・65条(荷主への勧告・公表制度):荷主の違法な行為(過積載依頼・長時間の荷待ち)が運送事業者の法令違反を誘発した場合、国土交通大臣が荷主に勧告・命令できる(2024年改正で強化)。
  • 最高裁判決(康心会事件・平成29年7月7日):固定残業代制度(定額残業代)の有効性について、実際の時間外労働時間数が固定残業代の計算基礎を上回る場合は追加賃金の支払義務があることを確認。長時間労働管理の重要性を示す。
  • 労働基準法37条(割増賃金)・41条の2(高プロ適用外):自動車運転業務は改正労基法41条の2の高度プロフェッショナル制度の対象外。時間外・休日・深夜割増賃金の適用を免れない。

根拠条文:労働基準法36条・37条、貨物自動車運送事業法64条・65条

よくある質問

Q. 時間外労働が年間960時間を超えた場合、具体的にどんな罰則を受けますか?

A. 労働基準法違反となり、6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金に科される可能性があります。ただし度重なる違反や指示無視などの悪質性が認められた場合に適用されることが一般的です。加えて企業名が厚生労働省ホームページに掲載され、企業イメージ低下のリスクもあります。

Q. 2024年4月から対応するには、今からどんな準備を始めるべきですか?

A. タイムカードや勤怠管理システム、ドライブレコーダーの導入により労働時間の適正管理体制を整備することが急務です。同時に従業員への周知・教育も重要です。対応に不安がある場合は、弁護士などの専門家に相談することをお勧めします。

Q. 規制対応で費用がかかる場合、コンサルティング費用は誰が負担するのですか?

A. システム導入や業務改革の費用は基本的に企業負担となります。経営への影響が大きい場合は、助成金制度の活用やコスト削減策の検討が考えられます。具体的な対策については、顧問弁護士に相談することが効果的です。

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