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取引基本契約や業務委託契約、売買契約、雇用契約など、企業活動はさまざまな契約のもとで進められます。一度契約書を取り交わすと、後で契約内容を変更するのは難しくなる場合もあるため、慎重に内容を確認したうえで契約を締結することが大切です。 契約締結後のトラブルを避けるためにも、契約ではどのような点に注意すればよいか知りたい法務担当者もいるのではないでしょうか。今回の記事では、契約の注意点や契約にまつわるQ&Aを紹介します。
契約とは、当事者間における権利と義務に関する合意です。一方の当事者の申し込みに対し、他方の当事者の承諾により成立する法律行為であり、違反に対して法的なペナルティが生じる約束といえます。契約の締結は、大きく以下の流れで進みます。
ステップ①:契約すべき内容の確認
ステップ②:契約書案の作成
ステップ③:契約書案の修正
ステップ④:契約書の取り交わし
契約書を作成する前に、当事者間で行うのが契約内容の確認です。「契約書に記載する項目」と、具体的な契約内容や金額、条件などの「合意事項」を念入りに確認し、契約書を作成していきます。
作成した契約書(案)は当事者間で確認し、必要に応じて加筆・修正します。仮に契約締結後に契約書を修正したいと思っても、修正に応じてもらえないことが多いです。また、修正に応じてもらえたとしても「当事者間の合意により契約書を直接修正」または「変更覚書の取り交わし」といった手続きが必要となり煩雑となるため、記載事項に誤りがないか慎重に確認しましょう。契約の注意点については、この後のブロックで詳しく解説していきます。
契約書の内容に当事者が合意した後、契約書の取り交わしとなります。
日本の民法では、原則(※)として口頭の約束のみでも契約は成立します。しかし、口頭だけで契約を交わすと「そもそも契約を締結した、していないの争いになる」「契約内容について、相手方と齟齬が生じやすい」「予期しない問題が起きたときに、お互いに責任の押し付け合いになる」といったトラブルが起こりやすくなるでしょう。誰との間で、いつ、どのような内容の合意をしたのかを確実に確認できるように、企業間取引では契約書の作成が必須といえます。
※重要な例外である「保証契約」については後述します。
契約書とは、取引当事者の契約内容を書面に整理したもので、取引当事者が記名・押印、または電子署名することで完成します。契約書が必要な理由は、「契約内容の明確化」「紛争予防」「当事者間で争いになった際の証拠」「リスクの認知」の4つです。
契約書を作成することで契約内容を明確化し、双方が合意した契約内容を確認できるようになります。口頭ではなく書面に残すことで紛争の予防となり、万が一訴訟になった場合には、自社の主張を根拠づけるための重要な証拠となるのです。
また、契約書により当事者間で決めておくべき事項を整理できるため、リスクの認知にもつながります。
契約書に必要な項目はさまざまありますが、紛争予防の観点から特に重視したいのが、両当事者の権利・義務関係を明示することです。まず、「誰が当事者となり、何の目的で、どのような内容の契約を締結するのか」を確認します。そのうえで、必要な権利と義務の規定や違反した場合の対応、契約関係からの離脱(解約など)について、過不足なく盛り込みましょう。
契約書がなければ成立しない契約も存在します。その身近な例が「保証契約」です。保証契約とは、債務を負う者(主債務者)がその債務の履行をしないときに、主債務者に代わって債務を履行する契約のこと。民法上、保証契約は書面または電磁的記録で締結されなければ効力が生じません(民法446条2項)。これは、意図しない保証債務を負わされないよう保証人を保護するために設けられた規定です。
このように、契約書の取り交わしは両者の認識をそろえるうえで重要な役割を果たします。契約後のトラブルを避けるためにも、契約書を作成しましょう。
契約書作成についての厳格なルールや様式はありませんが、作成した意義を失わず、相手方と良好な関係を築くために守っておきたい5つのポイントを紹介します。
契約書は、第三者が見てもすぐに理解できる内容であることが重要です。業界用語や社内で使っている言葉は使用せず、正式名称としたり、第三者でもわかる表現に置き換えます。また、当事者間の暗黙の了解で使用している言葉についても、そのまま契約書に記載するのは避け、一般的な表現を採用するか、説明をするようにしましょう。
契約書は「当事者間で合意した証拠」としての活用も想定されるため、曖昧な解釈が成立する表現は不適切といえます。複数の解釈を生じさせないためには、相手方や裁判所を含む第三者へ意図が明確に伝わるように、表現方法にも工夫が必要です。期限や個数、金額など数値で表現できるものは、できるだけ具体的に記載します。
法律は、当事者間で設定したルールや定義とは異なり、誰にでも適用される共通ルールです。そのため、法律用語として存在するものは、法律で定義されている意味で用いましょう。
例えば、取引基本契約において関連する法律用語として「契約不適合」「損害の範囲」「解除」「裁判管轄」などが挙げられます。
いざ裁判になった場合、業界用語や独自の用語は裁判官がわかる言葉ではないため、用語の意味についても相手と争いが生じる可能性があります。契約書の作成では、用語の使い方にも注意が必要です。
契約書の雛形が自社に適しているとは限りません。雛形に記載されている契約条項例でも、実際の取引内容に合致しないものは削除したり加筆修正したりします。自社の状況や今回の取引の内容、条件を踏まえて検討せずにそのまま流用すると、実際の取引の流れと齟齬が生じてしまいます。社内だけでの検討が難しい場合、企業法務を専門とする外部の弁護士を活用するなどして、必ず実際の取引内容や条件、手続きの流れを踏まえて各条項を見直し、必要に応じて加筆・修正することが重要です。雛形は、記載漏れの確認に用いるとよいでしょう。
契約書の偽造や改ざんを防ぐため、契約書が複数になる場合は印影がページをまたぐように「割印」を、複数ページにわたる契約書の場合は「契印」を押します。
割印は、押された契約書の関連性・同一性を示すためのものです。控えを作成する場合も同様に対応しましょう。一方、契印は契約書のページが連続していることを証明するものです。契約書の抜き取りや差し替え・改ざんを防ぐ効果があります。
なお、書類の抜き取りや差し替えがされていないことがわかるように袋とじ(製本)をして、製本テープなどの上に押印すれば、契印は不要です。袋とじしない場合と比べて、押印回数を減らすことができます。
契約書が書き換えられてしまっては、当事者間で約束した内容の証拠として意味をなしません。契約書が複数枚になる場合は、特に注意しましょう。どのような場合も割印や契印、袋とじをしなければならないといった厳密なルールまではありませんが、相手方や契約内容の重要性を踏まえて検討する必要があります。
契約締結にまつわる注意点をQ&A方式で紹介します。
契約書の契約条項は、必ず全てを確認する必要があります。契約締結後に「そんな条項は読んでいない、知らなかった」は通用しません。契約書案の段階から入念に確認し、自社に不利な条項があれば適用除外を依頼したり、特記事項として別途条項を定めたりなどの対応が必要です。契約書に記名・押印してしまうと、不利な条項が記載されていても、その内容が適用されます。たとえ裁判で訴えても、敗訴となる可能性が高いです。
法律に違反する条項の有効性については、その条項がどの法律のどの規定に反するかによって異なります。まず、法律には「任意規定」と「強行規定」があります。
任意規定とは、当事者の意思によって変更することが認められている法律の規定です。契約の内容については、当事者が自由に定めることができる「契約自由の原則」の考え方が基になっています。法律の規定どおりで良いときは特に契約条項を定める必要まではありませんが、任意規定の内容を変更したり修正したいというときは、契約条項においてその旨を明記しておく必要があります。
他方、強行規定とは、当事者の意思によっても変更することが許されていない規定です。当事者間で合意したとしても、法律の規定が優先されます。明示的に強行規定が含まれているものには、先ほどの保証契約の書面性、企業間取引では「個人情報保護法」「独占禁止法」「下請法」、また日常生活では「借地借家法」「労働基準法などの労働関係法規」など、消費者取引では「利息制限法」「特定商取引法」「消費者契約法」などにおける各規定があります。
どの条項が任意規定なのか強行規定なのか、また、任意規定だとしても今回の契約においてそれを修正する必要があるのかについては、法律専門家の助言が必要になることも多いでしょう。
契約書は当事者の数だけ作成するのが基本です。2当事者間であれば2通、3者間の契約であれば3通を作成し、契約当事者がそれぞれ原本1通を保持しておきます。
認印でも契約は成立します。ただし、契約書が偽造であるなどの主張があった場合、実印の方がそのような主張を排斥できる可能性が高いです。重要な契約では、なるべく実印を使用しましょう。
また、契約書に記名・押印するにあたり、代表取締役や本部長、部長など「誰の名前で締結するか」、「どの印鑑で押すか」も重要です。企業間での契約であれば、決裁権のない役職者には権限がないため、契約締結が後日無効と評価されることがあります。権限の有無に不安がある場合は、相手企業に対してその役職者がその契約についての決裁権限を有するのか確認することが重要です。
故意または過失により契約書に従わないと、契約の解除や終了の可能性に加え、相手側に損害を与えた場合は損害賠償請求をされ、賠償金を支払う可能性があります。「合意は守られなければならない」という格言があるように、契約締結後は、その契約書の内容に従う必要があるためです。
契約を締結する際は、当事者間のトラブルを回避するために契約書を作成します。契約は慎重に進めるものとはいえ、自社に適した契約であるかの判断は難しいケースもあるでしょう。両当事者が守るべき事項や権利義務関係を明確にするには、弁護士によるチェックを活用してみてはいかがでしょうか。その際は、契約内容の確認など契約の早い段階から弁護士が介在することで、よりニーズに即したアウトプットが期待できます。契約締結後のトラブルの芽を先に摘んでおくことで、結果的にコストを最小限に抑えることにもつながるでしょう。
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