NDA(秘密保持契約書)の必須条項・締結場面・違反リスクと対処法【弁護士解説】

NDA(秘密保持契約書)の必須条項・締結場面・違反リスクと対処法【弁護士解説】

秘密保持契約は、自社の秘密情報を相手方に開示する際に、開示目的外での使用や第三者への開示を禁止するものです。秘密保持契約書を作成する法的な義務はありませんが、情報漏えいの予防や、相手方の故意または過失で情報が漏えいした場合の責任追及に備えて、契約書を交わしておくことが大切です。契約の締結にあたり、自社のビジネスに必要な条項や、押さえておくべきポイントを知りたい担当者もいるでしょう。今回は、秘密保持契約書を交わすタイミングや主な記載事項、契約のチェックポイントなどを解説します。

和氣良浩 弁護士

この記事の監修者

和氣 良浩(わけ よしひろ)

弁護士法人ブライト|代表弁護士/パートナー弁護士

弁護士歴20年(2006年登録)/大阪弁護士会/大阪大学法学部卒

専門:顧問弁護士・企業法務・M&A・経営権紛争・事業再生

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📌 この記事でわかること

  • 秘密保持契約(NDA)とは何か、なぜ必要か
  • どんな場面でNDAを締結すべきか
  • 契約書に盛り込むべき必須条項
  • 違反した場合の法的リスク・損害賠償の考え方(裁判例付き)
  • 不正競争防止法との保護範囲の違い

秘密保持契約(NDA:Non-Disclosure Agreement)は、ビジネスにおいて最も頻繁に交わされる契約のひとつです。しかし、「なんとなく署名している」「相手方が持ってきた書式をそのまま使っている」という企業も少なくありません。

適切なNDAを締結しなければ、自社の技術情報・顧客データ・経営戦略が競合に流れても、法的に取り戻すことが難しくなります。本記事では、NDAの基本から裁判例に基づく違反リスクまで、弁護士が実務目線で解説します。

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秘密保持契約(NDA)とは

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秘密保持契約(NDA)とは、当事者間で開示される秘密情報の取扱いを定めるための契約です。新規取引の検討、共同開発、M&Aの協議など、自社の機密情報を相手方に開示しなければならない場面で締結します。

「守秘義務契約」「機密保持契約」とも呼ばれ、英語では Non-Disclosure Agreement(NDA)と表記されます。

NDAで保護される「秘密情報」とは

秘密保持契約において「秘密情報」は通常、次のように定義されます。

「文書・口頭・電磁的記録媒体その他有形無形を問わず、本目的に関連して開示当事者から受領当事者に対して開示された一切の情報」

(書式4-4-1-1【秘密保持契約書】より)

ただし、次のような情報は一般的に「秘密情報から除外」されます。

  • 開示を受けた際に、既に自己が保有していた情報
  • 開示後に公知となった情報(自己の責によらないもの)
  • 第三者から秘密保持義務を負うことなく正当に取得した情報

NDAを締結するタイミング

秘密情報を相手方に開示するに締結することが原則です。開示後に締結した場合でも、「契約締結日よりも前に開示した情報に遡って秘密保持義務を課す」旨の規定を盛り込むことで、過去の開示分を保護することができます。

秘密保持契約を締結すべき場面

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NDAは以下のような場面で締結するのが実務上の標準です。

場面 開示される秘密情報の例
新規取引先との交渉 価格・仕入れルート・顧客リスト
共同開発・業務提携の協議 技術ノウハウ・特許出願前の発明内容
M&A・事業譲渡のDD(デューデリジェンス) 財務データ・顧客契約・人事情報
従業員・役員との関係 経営戦略・開発ロードマップ・個人情報
外部委託(システム開発・マーケティング等) 顧客データ・社内業務フロー

特にM&A・事業提携の場面では、協議段階から多くの財務・法務情報が開示されるため、LOI(基本合意書)締結前の段階でNDAを交わすことが慣行となっています。

秘密保持契約書の必須記載事項

相手方から提示されたNDAをそのまま署名するのは危険です。以下の条項について、自社に不利な内容になっていないか必ずチェックしてください。

① 秘密情報の定義・除外事由

秘密情報の定義が広すぎると、公知の情報まで保護対象となり実務上の支障が生じます。除外事由(既知情報・公知情報・独自開発情報等)が明記されているか確認しましょう。

② 秘密保持義務の内容

受領した秘密情報を「本目的以外に使用しないこと」「善管注意義務をもって管理すること」の2点が基本です。管理水準の規定が曖昧だと、情報漏洩が起きても「相当な注意を払っていた」と反論される余地が生じます。

③ 第三者への開示制限

役員・従業員への開示範囲、弁護士・会計士など法令上守秘義務を負う専門家への開示可否を明確にします。法令上守秘義務を負わない者へ開示する場合は、同等の秘密保持義務を課すことを契約上明記しておくことが重要です。

④ 有効期間・情報の返還・破棄

秘密保持期間(3〜5年が多い)、契約終了後の情報返還・廃棄義務を明確に定めます。期間の定めがないと「いつまで義務が続くか」が不明確になります。

⑤ 損害賠償・差止請求

違反した場合の損害賠償責任(損害額の立証困難に備えた違約金条項)と、差止請求権を明記しておくことが実務上有効です。

秘密保持契約に違反した場合の法的リスク

NDA違反・情報漏洩の問題はお早めに

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NDA違反が発覚した場合、次の法的手段を講じることができます。

① 損害賠償請求(債務不履行)

契約違反(債務不履行)として損害賠償を請求できます。ただし、損害の立証には実務上大きなハードルがあります。

「秘密保持義務違反についてはその損害の発生や損害額を立証することが困難であることも少なくありません」

(高谷知佐子ほか『【改訂版】秘密保持・競業避止・引き抜きの法律相談』青林書院 2020年 p.48)

損害の発生は確実だが金額の特定が困難な場合には、民事訴訟法248条により裁判所が「相当な損害額」を認定できます。ただし、損害の発生自体が不明な場合は同条の適用もなく、請求が認められないリスクがあります。

② 差止請求

秘密情報の使用・開示の差止(契約に基づく差止請求権)を求めることができます。

⚖️ 関連裁判例

  • 差止請求を認容:東京地判昭45・10・23(判時624号78頁)— 退職した従業員による秘密情報の不正使用について、差止請求を認めた先例
  • 損害賠償を認容:ダイオーズサービシーズ事件(東京地判平14・8・30 労判838号32頁)— 秘密保持約定違反の債務不履行による損害賠償請求を認容
  • 不法行為として認容:アイ・シー・エス事件(東京地判昭62・3・10 判タ650号203頁)— 秘密情報の目的外利用について不法行為責任を認定

※各裁判例は、菅野和夫『労働法(第10版)』弘文堂 2013年 p.117 ほか参照

③ 不法行為に基づく損害賠償

NDAの定めがない場合や、契約の保護範囲を超える行為については、不法行為(民法709条)による損害賠償請求が可能な場合があります。ただし、契約違反の場合よりも立証の負担が重くなります。

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情報漏洩・契約違反が発生したとき、または契約書の内容に不安がある場合は、早期に弁護士へ相談することが重要です。

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秘密保持契約と不正競争防止法の違い

不正競争防止法・NDAは大阪の顧問弁護士に

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自社の秘密情報を守るための手段として、NDAによる保護と不正競争防止法による保護の2つがあります。両者の違いを正確に理解しておくことが重要です。

比較項目 秘密保持契約(NDA) 不正競争防止法
対象情報 当事者が自由に設定可能 営業秘密」「限定提供データ」に限定
第三者への効力 原則なし(契約当事者のみ) あり(第三者の不正行為にも適用)
損害賠償の立証 原則として請求側が損害を立証 立証軽減規定あり(不競法5条の2等)
保護の根拠 当事者の合意 法律上の規定

実務上は両者を組み合わせて利用するのがベストプラクティスです。NDAで保護範囲を広く設定しつつ、「営業秘密」要件を満たす情報については不正競争防止法の立証軽減規定も活用できるよう管理体制を整えることが重要です。

出典:高谷知佐子ほか『【改訂版】秘密保持・競業避止・引き抜きの法律相談』青林書院 2020年 p.46〜48

秘密保持契約書の作成・審査を弁護士に依頼するメリット

秘密保持契約の作成・審査をお任せください

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NDAは「ひな形を使えばOK」と思われがちですが、内容の細部が自社に不利な条件になっていることが少なくありません。弁護士に依頼することで、次のようなメリットがあります。

リスクの見落としを防ぐ

秘密情報の定義が広すぎる・狭すぎる、有効期間の定めが不明確、損害賠償の上限が低すぎるなど、非専門家には気づきにくいリスクを事前に解消できます。

交渉での修正提案を適切に行える

相手方から提示されたNDAに問題点がある場合、どの条項をどのような理由で修正すべきかを弁護士が具体的に提案します。交渉の席で「不合理な修正を断られた」という事態を防げます。

違反発生時の対応が迅速化する

事前に弁護士と契約内容を共有しておくことで、違反が発覚した際の証拠保全・損害賠償請求・差止申請を迅速に進めることができます。

秘密保持契約も気軽に相談できる「みんなの法務部」

弁護士法人ブライトの顧問サービス「みんなの法務部」では、秘密保持契約書の作成・審査も月々の顧問料の範囲内でご相談いただけます。大阪府内および全国のクライアント企業の外部法務部として、日常的な法務課題をワンストップでサポートしています。

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⚖️ NDA(秘密保持契約書)違反に関する判例・法的根拠

  • 大阪地判平16・6・24:NDA違反による損害賠償。「秘密情報の定義が広すぎても保護対象の合理的解釈が必要」と判示
  • 東京地判平20・10・16:転職時のNDA違反事件。競業他社への顧客リスト持ち出しにつき不正競争防止法上の営業秘密として保護
  • 民法709条:NDA違反は不法行為として損害賠償請求の根拠となる
  • 不正競争防止法2条1項4〜9号:営業秘密の不正取得・使用・開示を規制。刑事罰あり(10年以下懲役・2,000万円以下罰金)

根拠条文:民法709条・415条(債務不履行)/不正競争防止法2条1項4号・21条

よくある質問

Q. NDAを締結せずに情報が漏れた場合、何もできないのですか?

A. NDAがなくても、情報が「営業秘密」に該当する場合は不正競争防止法で保護されます。また、一般的な注意義務(信義則上の義務)違反として不法行為責任を問える場合もあります。ただし、立証が困難になるため、事前にNDAを締結することが強く推奨されます。

Q. 相手方が大企業なので、提示されたNDA書式を断れません。どうすればよいですか?

A. まず弁護士に書式を確認させた上で、許容できるリスクの範囲を判断することが重要です。全条項を修正する必要はなく、特にリスクの高い条項(秘密情報の定義・損害賠償の上限・有効期間)に絞って交渉することが現実的です。顧問弁護士がいれば、その都度相談できます。

Q. 従業員との間でもNDAは必要ですか?

A. 従業員には労働契約に基づく秘密保持義務が認められますが、退職後については争いがあります(「付随義務終了説」と「信義則上の継続説」)。退職後のリスクを明確に排除するためには、就業規則や個別の秘密保持誓約書で明示的に定めることが推奨されます。

Q. NDA違反の損害額はどのように算定されますか?

A. 損害の発生と金額の両方を立証する必要があります。損害額の特定が困難な場合、民事訴訟法248条により裁判所が「相当な損害額」を認定することがあります。実務上は、違約金条項(例:「違反1件あたり○○万円」)をNDAに盛り込んでおくことで、立証困難リスクを軽減できます。

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※本記事は2025年3月時点の法令・判例に基づいています。法改正・判例変更等により内容が変わる場合があります。個別の案件については弁護士にご相談ください。

本記事は、一般的な情報の提供を目的とするものであり、個別案件に関する法的助言を目的とするものではありません。また、情報の正確性、完全性及び適時性を法的に保証するものではありません。
なお、本記事の内容に関する個別の質問や意見などにつきましては、ご対応できかねます。ただし、当該記事の内容に関連して、当事務所へのご相談又はご依頼を具体的に検討されている場合には、この限りではありません。
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