賃貸住宅を民泊として貸し出すことは可能?民泊の定義や関連する法律をご紹介します

賃貸住宅を民泊として貸し出すことは可能?民泊の定義や関連する法律をご紹介します

民泊にはいくつかの種類があるのをご存じでしょうか?今回は、種類ごとの違いや特徴をまとめました。民泊と賃貸住宅経営との違いや関連する法律についてもご紹介します。コロナによる旅行者の減少が落ち着き、外国人観光者数も以前の数に戻ってきたことにより、民泊の需要が高まっています。 今回は民泊の種類や関連する法律などについてご紹介していき、民泊を営むにあたって気を付けるべきポイントなどについてもお伝えしていきます。

「民泊」の定義

民泊とは、一般の住宅の全部もしくは一部を宿泊施設として貸し出すことです。

民泊には、大きく分けて3つの種類があります。

一つずつ詳しく見ていきましょう。

1,簡易宿泊

一つ目の簡易宿泊は、旅館業法に基づいて定められており、民宿やペンションなどがこれにあたります。

営業日数に制限がなく、有料で複数人が共有して宿泊することのできる施設となります。

営業には旅館業運営のための許可を得る必要があるため、申請の手間や労力がかかるものの、利用者にとってはホテルや旅館の延長といった感覚で安心して利用できることもあり、安定した人気を集めています。

住居専用地域での営業ができない、建築基準法が定める構造設備が必要、最低床面積3.3㎡/人以上が必要などの細かい条件があります。そのため許可を得るには、さまざま条件をクリアする必要があります。申請の際にはあらかじめ条件を確認する必要があると言えるでしょう。

2,特区民泊

国が指定する国家戦略特区において特区エリア向けに認められた民泊のことです。

外国人旅客の滞在に適した施設となるように、外国人の滞在ニーズを汲んだ施設や設備の展開が求められます。

特区エリアを具体的にご紹介すると、東京都大田区、大阪府、大阪市、福岡県北九州市、新潟県新潟市、千葉県千葉市が挙げられます。

特区民泊の場合簡易民泊のように旅行業の許可は必要とはならないものの、その代わり行政からの認定を受ける必要があります。

年間営業日数の制限はありませんが、最低宿泊日数は2泊3日以上、1居室の床面積が原則25㎡以上、物件所有者と宿泊者の共同使用ができない等の条件はあるものの、3種類ある民泊の中で最も手続きの手間と費用がかからずに運営することが可能です。

ただし、冒頭でも解説した通り運営できる地域が限定されているという点には注意が必要です。

3,新法民泊

2018年に新たに施行された住宅宿泊事業法で定められている新法民泊は、手続きに必要な書類があればオンライン申請が可能で手軽に民泊事業を始めることができるのが特徴です。

住居専用地域でも営業が可能であり、前述の2種類と比べて手続きが簡単で民泊を始めるにあたってのハードルが低い一方で、営業可能なのは年間180日以内であることから、収益という面では他よりも上げにくいというのが難点でしょう。

賃貸経営と民泊の違い

続いては、民泊と似たような業態である賃貸経営を取り上げ、その違いについてご説明していきます。

まずはじめに、賃貸経営とは購入または建設したアパートやマンションを第三者に貸し出すことにより、入居者から家賃収入を得るという不動産貸付事業のことであることを理解したうえで話を進めていきましょう。

1,事業形態

民泊が旅館業に分類される一方で賃貸経営は不動産賃貸業に分類されます。

そのため、民泊が短期的な宿泊者を受け入れることを前提としたサービスを提供するのに対し、賃貸経営は居住者が長期的に利用するための部屋を提供することを前提としています。

2,期間

前述の短期的、長期的の具体的な期間としては、民泊の場合は原則1か月未満とされており、賃貸経営の場合は1か月以上を想定しています。実際には、賃貸経営による入居であれば1年以上の長期にわたるケースが多くなっています。

3,許可の有無

旅館業に基づく民泊を営む場合には、さまざまな要件をクリアする必要があります。

たとえば、これまで住居として使用していた建物の全部もしくは一部を民泊用に用途を変更するための許可をとったり、近隣住民への説明会の開催などが挙げられます。

賃貸経営においては、特別に許可を取得する必要はありません。

また、消防法において、賃貸経営は一般住宅として取り扱われる一方で、民泊は旅館やホテルなどと同じ防火対象物として取り扱われます。それにより、賃貸経営よりも厳しい基準が適用されることとなります。

建築基準法においても、賃貸経営は一般建築物であるのに対して、民泊は特殊建築物であるために、こちらも建築基準が厳しくなっているなど、比較すると民泊を営むハードルが高いことがお分かりいただけるでしょう。

4,管理内容

民泊の場合、短期間でさまざまな人が出入りするという環境であることから、宿泊者及び宿泊施設の管理が厳しく定められています。

まずはじめに、住宅宿泊管理業務として、鍵の受け渡しや本人確認の実施および宿泊者名簿の作成、さらには近隣住民からの苦情の対応などが挙げられます。

また、衛生管理についても、宿泊者がチェックアウトした後のハウスクリーニングや寝具の交換・洗濯、アメニティの補充や定期的な換気の実施などが必要となります。

さらに、安全確保業務として、災害発生時の避難体制の設備や宿泊者の避難支援を行うことや、部屋の設備の維持管理および外国語を用いて設備の使用方法を説明するなども必要とされる事項です。

続いてはここまで民泊と賃貸経営の違いについてご紹介してきましたが、実際に双方を営むとなった場合のメリット、デメリットについて見ていきましょう。

民泊のメリット・デメリット

お伝えしてきたように、民泊を始めるとなると、さまざま許可をとる必要があることや、管理についても厳しくなっていることがデメリットとなるでしょう。

ただし、その一方で高い利益を上げられるというのがメリットとなります。

特に、人気の観光地やアクセスが便利な場所などであれば、大きな利益が期待できます。

賃貸経営のメリット・デメリット

民泊の裏返しとなりますが、賃貸経営の場合は比較的運営が楽であることがメリットとして挙げられます。業務開始にあたって特別な許可を取得する必要がなく、入居者と日々やり取りをしたり、毎日の清掃や備品の補充などが不要です。

入居者から何らかのトラブルが発生して問い合わせがくることなどは考えられますが、基本的にトラブル対応に関しては管理会社への委託を行っていれば問題もありません。

一方、利益という面で考えると民泊と比較すると小さいのがデメリットだと言えます。

一日当たりの金額を想像してみるとわかる通り、賃貸経営の場合は宿泊単価が非常に安くなっています。

以上のように、民泊は経営が大変な分利益が大きい、賃貸経営は比較的運営が楽な分利益は小さいというのがそれぞれの特徴となっています。

実際に経営をおこなうのであれば、それらを考慮したうえで民泊の形態を選択する必要があると言えるでしょう。

賃貸住宅を民泊として貸すことはできるのか

続いては、賃貸住宅を民泊として貸し出すことが可能か否かについてのお話です。結論から申し上げますと、基本的にはNGです。

というのも、賃貸住宅の場合オーナーから借りている物件を第三者に無断で貸すことは、契約違反となり契約解除の対象となるからです。

ということは、オーナーの許可を取れば賃貸住宅を民泊として貸すことができるということになります。

しかしながら、民泊の場合、短期間に不特定多数の人が利用するということ、外国人が宿泊してトラブルが発生した場合、日本語が通じずに意思疎通が図れなくなる、近隣住民からの苦情が発生するリスクがあるなどの理由によりオーナーが許可するということは難しいのが実態です。

そのため、賃貸住宅を民泊として貸すことはできないと理解しておくのが良いでしょう。

民泊に関する法律

近年増加している民泊について、安全面や衛生面などしっかりと確保し、周辺住民とのトラブルなどを防止することを目的として、2018年に「民泊新法」が施行されました。

ここでは民泊新法について詳しく見ていきましょう。

民泊新法の対象者

対象となるのは以下の3つの事業者です。

1,住宅宿泊事業者

住宅宿泊事業を営む者のことです。

都道府県知事などに届出をして運営を開始します。

2,住宅宿泊管理業者

住宅宿泊事業者からの委託を受けて、住宅宿泊管理業務を行う事業者のことです。

具体的には、宿泊施設の運用や清掃、管理などの役割を担います。

国土交通大臣に登録を受ける必要があります。

3,住宅宿泊仲介業者

住宅宿泊事業者と宿泊を希望するものとをつなぐ仲介の役割を担うものです。

対象となる物件情報を受けて、宿泊者とのマッチングを図ります。

具体的には、予約の手続きや支払いなどを仲介する役割を担うものであり、宿泊事業者、宿泊希望者両者がより効率的に各作業を進める上で活用できるものです。

観光庁長官に登録を受ける必要があります。

民泊新法においておさえるべきポイント

1,住宅街での営業が可能

旅館業法においては、旅行業法では認められていなかった住宅街での民泊営業が可能となっています。(※ただし、自治体によっては制限がある場合あり)

民泊を営むうえでの選択肢が広がったと言える一方で、特に住宅街の場合には近隣住民とのトラブルに注意が必要となります。

騒音やゴミ出しのルール、その他トラブルなどを防ぐためにも、事前に宿泊客に対してルールを周知し守るように促すことが、民泊を運営する事業者としての義務だと言えるでしょう。

2,要件を満たす住宅

民泊を運営するためには、民泊事業をおこなうための要件を満たした住宅を準備する必要があります。

要件には「設備要件」と「居住要件」の2つがあります。

一つ目の設備要件については、台所、浴室、トイレ、洗面設備が設置されている必要があるというもの。

二つ目の居住要件については、人の生活の本拠として使用されている、入居者募集が行われている、常に所有者などの住居として供給されている家屋であるという条件を満たす必要があります。

3、180日ルール

年間滞在日数は180日以内に制限されています。そのため、限られた日数の中でどれくらいの収益を上げることができるかを想定したうえで営む必要があるといえます。

仮に利益を上げることを優先させるのであれば、先にご紹介した簡易宿泊や特区民泊を選択することを検討する必要も出てくるでしょう。ただし、簡易宿泊や特区民泊の場合は、許可を取るための手続きなどが煩雑になってきますので、その点には注意が必要です。

4,住宅宿泊事業の適正な遂行の義務付け

そもそも民泊新法の設立のきっかけは衛生面の確保や近隣住民への配慮などをおこなうためのものであり、仮に法律違反となるような行為が行われた場合には、業務停止命令や罰則などを受ける可能性があります。

具体的には、

・民泊新法に基づく届出に虚偽があった場合には、6か月以下の懲役もしくは100万円以下の罰金が科せられる

・住宅宿泊管理業者への委託を行わなければ50万円以下の罰金が科せられる(ただし、民泊のホストが住宅宿泊管理者の場合や貸し出しをしている家に居住している場合などには委託の必要はない)

・年間180日以内の営業日数を超えて宿泊サービスの提供をおこなった場合には、6ヶ月以下の懲役もしくは3万円以下の罰金が科せられる

・安全や衛生基準に違反した場合には、業務停止命令や罰金が科せられる

・賃貸住宅を無断で民泊施設として利用した場合には、業務停止命令や賃貸物件の明け渡し請求がなされる

などといったものです。

法律違反は知らなかったでは済まされません。民泊新法に基づく民泊の運営は、簡易宿泊等と比較すると比較的手軽で簡単に始められるイメージをお持ちの方もいらっしゃるかもしれません。しかしながら、民泊の種類に関わらずいずれの業態であったとしても、まずは基準となる法律の内容を十分に理解し、それに即した運営を行っていくことが求められますj。

民泊を正しく理解し、適切に運営することが重要

以上、民泊の種類や関連する法律、さらに民泊と賃貸経営の違いや民泊における賃貸住宅の取り扱い方などについてご紹介してきましたがいかがだったでしょうか?

近年増加している民泊施設ですが、正しい方法で営業されていなければ、宿泊者はもちろん近隣住民にとっても悪影響を及ぼすものとなりかねません。

民泊経営を考えているのであれば、まずは民泊の種類をそれぞれ理解し、自分がどのような形で運営していきたいのかと照らし合わせたうえでの選択をすること、そして民泊に関わる法律を正しく理解し宿泊者や近隣住民にとって快適で過ごしやすい施設の提供をおこなうことが求められます。

今回お伝えしたことが、少しでも参考になれば幸いです。

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