OVERTIME CLAIM RESPONSE
ある日突然、
内容証明が届いたら——最初の一手で変わります。
「先週まで普通に働いていた従業員が、退職したとたん弁護士から通知書を送ってきた」——残業代請求の通知書には、たいてい「〇日以内にご連絡ください」という期限が書かれています。
この記事では、残業代請求を受けた会社が最初に取るべき行動を、実際の相談事例をもとに具体的に解説します。
📖 この記事の目次
はじめに|ある日突然、内容証明が届いた
「先週まで普通に働いていた従業員が、退職したとたん弁護士から通知書を送ってきた」「在職中にそんな話はひとつも出なかったのに、なぜ今さら」——そんな状況に直面した経営者・人事担当者から、弊所には毎年多くのご相談が寄せられます。
残業代請求の通知書には、たいてい「〇日以内にご連絡ください」という期限が書かれています。時間的なプレッシャーをかけられた状態で、どう対応すればよいか分からず、途方に暮れてしまう方も少なくありません。
この記事では、残業代請求を受けた会社が最初に取るべき行動を、実際の相談事例をもとに具体的に解説します。まずは深呼吸して、一つひとつ確認していきましょう。
01残業代請求が届いたら|焦る前に確認すること
通知書や内容証明が届いたとき、多くの会社が最初にする間違いがあります。それは「すぐに返答しようとすること」です。
弁護士が代理人として通知書を送ってきた場合、相手はすでに法的手続きの準備を進めています。このタイミングで会社が単独で、しかも感情的・即興的に返答すると、後の交渉で不利になる発言を記録されてしまうリスクがあります。
✓ まず確認すべき3点
- 通知書の差出人(相手方本人か、弁護士が代理人か)
- 回答期限(何日以内に何をするよう求められているか)
- 請求の根拠として示されている内容
これらを確認したら、次のステップへ進みましょう。
02最初にすべきこと①|弁護士に相談し「受任通知」を送ってもらう
残業代請求を受けたときの最初の一手は、弁護士に相談し、会社の代理人として「受任通知」を相手方へ送付してもらうことです。
受任通知とは、「弁護士が会社の代理人として対応する」という旨を相手方に伝える書面です。これを送付することで、以下のメリットが得られます。
- 相手方が直接会社へ連絡することを防ぎ、やり取りを弁護士が窓口となって一本化できる
- 「準備しているので少し時間をください」という意思表示ができ、期限の猶予が生まれる
- 会社の担当者が感情的・不用意な発言をするリスクを回避できる
CASE STUDY
実際の相談事例から
製造業を営むA社(IT・情報処理系)に、退職した社員から未払い賃金請求の通知が届きました。通知書には「10日以内にご連絡ください」と記載されていました。A社の担当者はパニックになりかけましたが、すぐに顧問弁護士へ連絡。弁護士が即日、受任通知と「準備を進めているので回答まで時間をください」という内容の書面を送付したことで、時間的な余裕を確保しました。この「初動の一手」が、その後の交渉を有利に進める大きな布石となりました。
弁護士に相談することを「大げさ」「費用がかかりそう」と感じる方もいるかもしれません。しかし、残業代請求は労働基準法が絡む専門的な問題です。弁護士なしで対応しようとすると、知らないうちに不利な言動をとってしまうことがあります。早期の相談が、結果的にリスクと費用を最小化します。
03最初にすべきこと②|勤怠記録・賃金台帳を速やかに収集する
受任通知を送ったら、次は「証拠の収集」です。残業代請求の争点は、多くの場合「実際に何時間働いたか」と「その時間分の賃金が支払われていたか」の2点です。
収集すべき資料は以下のとおりです。
STEP 01
勤怠データの抽出
タイムカード・勤怠管理システムのデータ(対象期間分)を速やかに抽出します。GPS連動の打刻システムや勤怠管理アプリのログも含め、改ざんされない形で保全することが重要です。
STEP 02
業務記録の整理
日報・業務記録・業務メールのログを整理し、勤怠データと突き合わせます。在宅での作業時間・移動時間・システム外での業務時間などが記録から漏れていないかを実態ベースで把握します。
STEP 03
契約書類・規程類の確認
賃金台帳・給与明細、雇用契約書・就業規則(特に固定残業代の定めを含むもの)、36協定の締結・届出状況を確認します。固定残業代の運用実態は、後の争点になりやすい要所です。
⚠️ 注意点|「勤怠管理システムを使っているから大丈夫」は危険な思い込みです
GPS連動の打刻システムや勤怠管理アプリを導入していても、在宅での作業時間・移動時間・システム外での業務時間などが記録から漏れていることがあります。日報や業務メールのログと突き合わせて、実態を把握することが重要です。
04最初にすべきこと③|「固定残業代を払っていた」が必ずしも免責にならない理由
「うちは月40時間分の固定残業代(みなし残業代)を払っていたから問題ない」と思っている経営者は多くいます。しかし、固定残業代制度は要件を満たさないと法的に無効と判断されることがあります。
✓ 固定残業代が有効とされるための主な要件
- 固定残業代が基本給とは別に明確に区分されていること
- 固定残業時間数と対応する金額が書面(雇用契約書・給与明細等)で明示されていること
- 固定残業時間を超えた分について、追加で残業代が支払われていること
CASE STUDY
「効率面で考慮」が不利な証拠になったケース
IT系企業(開発・技術部門)のB社では、月40時間の固定残業代を支給していましたが、過去に従業員から「残業代が賞与で差し引かれた」という申出があり、担当者が「残業代は支払っている。残業時間は効率面で考慮している」と口頭で回答していました。この回答が後に問題となる可能性が出てきました。「効率が悪い残業は認めない」という趣旨の発言は、残業代の支払い義務を否定しようとする言動として、不利な証拠になりかねません。
05残業代請求でよくある「会社側の誤解」3つ
誤解①「本人が同意していたから払わなくていい」
残業代は労働基準法上の強行規定であり、本人の「同意」があっても未払いは違法になります。口頭での同意・書面での同意を問わず、法定の残業代は支払わなければなりません。
誤解②「3年以上前の分は時効だから関係ない」
労働基準法改正(2020年施行)により、賃金債権の消滅時効は原則として5年(当面は3年)に延長されました。以前は2年でしたが、現在は遡及できる範囲が広がっています。
誤解③「退職後はもう請求できない」
退職後も、在職中の未払い賃金に対する請求権は消滅しません。退職後に弁護士を立てて請求するケースは、むしろ増加傾向にあります。
06証拠保全という手段|会社側も使える法的手続き
残業代請求の中でも複雑な案件では、相手方が証拠保全申立を行うことがあります。これは、会社が保有する勤怠記録・日報などの書類を裁判所の手続きで開示させるものです。
しかし、会社側も証拠保全を活用できることは、あまり知られていません。また、証拠保全の期日には弁護士が対応することで、会社にとって不利な資料の開示範囲を適切にコントロールすることが可能です。
CASE STUDY
証拠保全期日に弁護士が対応したケース
物流・輸送業を営むC社では、退職した従業員から残業代請求とともに証拠保全の申立がありました。申立の対象は勤怠記録・日報・ドライブレコーダー・雇用契約書など多岐にわたりました。弁護士が証拠保全期日に立ち会い、それぞれの記録の状況を確認しながら対応。最終的にドライブレコーダーについては取り下げが認められ、必要以上の開示を避けることができました。また、当初の勤怠記録には勤務実態を把握するために追加のデータ収集が必要なことが判明し、受任通知送付後に改めて内容確認のプロセスを設けました。
07注意|残業代問題は「他の問題」と連動することがある
残業代請求は、それ単体で終わらない場合があります。特に以下のケースでは、複合的な問題に発展する可能性を見据えた対応が必要です。
- 長時間労働による健康障害:脳梗塞・うつ病などが「業務起因性あり」として労災申請に発展するケース
- ハラスメントとの連動:残業を強いたことがパワハラとして申告されるケース
- その他の法令違反との併発:36協定違反・休憩時間の未付与など
⚠️ 弁護士なしで「労災申請を取り下げさせる」ことは危険です
問題を一時的に回避しようとして、後でより深刻な事態を招くことがあります。請求を受けた段階で、弁護士に全体像を把握してもらうことが最善です。
請求を受けた後の流れ|解決までのステップ
| ステップ | 内容 |
|---|---|
| 1. 受任通知の送付 | 弁護士が会社の代理人として対応開始 |
| 2. 証拠収集・事実関係の確認 | 勤怠記録・賃金台帳・契約書等 |
| 3. 請求額の精査 | 法的に妥当な請求額はいくらか |
| 4. 交渉・回答 | 弁護士が相手方と交渉 |
| 5. 和解または訴訟 | 合意に至らない場合は訴訟・労働審判へ |
多くのケースは、弁護士が介入することで交渉段階で解決します。適切な証拠と法的根拠があれば、請求額を減額したり、分割払いで合意したりすることも可能です。
再発防止のために|今すぐできる労務管理の見直し
- 固定残業代の定めが雇用契約書・給与明細に明確に記載されているか確認
- 勤怠管理システムの記録と実態が一致しているか定期的にチェック
- 36協定の締結と労働基準監督署への届出が最新の状態か確認
- 在宅勤務・業務外の連絡(メール・チャット対応)の時間をどう扱うかルール化
- 残業代に関する社員からの申出には、口頭ではなく書面で適切に回答する体制を整備
💡 これらの見直しは、労務管理の顧問弁護士に依頼することで、法的に適切な形で整備することができます。
08よくあるご質問(FAQ)
Q1. 残業代請求の内容証明が届いたが、まず何をすべきですか?
落ち着いて通知書の内容(請求者・期限・請求の根拠)を確認した上で、すぐに弁護士へ相談してください。弁護士が受任通知を送ることで、期限の猶予を得ながら証拠収集の時間を確保できます。一人で相手方に返答することはリスクがあります。
Q2. 固定残業代(みなし残業代)を払っていれば残業代は不要ですか?
固定残業代を払っているだけでは不十分なケースがあります。固定残業時間数と金額が書面で明示され、超過分が別途支払われていることが要件です。また、固定残業時間を超えた分の追加支払いがない場合は、その部分の未払いが生じます。
Q3. 退職した従業員からの請求は時効で消滅しませんか?
賃金債権の消滅時効は現在、原則5年(当面の間は3年)です。退職後であっても在職中の未払い賃金は請求できます。
Q4. 労働審判と訴訟、どちらが会社にとって有利ですか?
一概にはいえません。労働審判は短期間(原則3回以内の期日)で解決できる反面、審判で合意に至らなければ訴訟に移行します。弁護士と相談しながら、事案の特性に応じた対応方法を選択することが重要です。
Q5. 残業代請求を受けたことは他の従業員に知れますか?
訴訟になった場合は裁判記録が公開される可能性がありますが、交渉・和解の段階であれば外部に知られることは通常ありません。ただし、従業員間での情報共有が起きるケースはありますので、職場環境の管理も並行して行うことが大切です。
まとめ
残業代請求を受けた会社がすべき最初の行動は、「弁護士に相談し、受任通知を送ってもらうこと」です。時間的なプレッシャーの中でも、この一歩を踏み出すことで、その後の対応が大きく変わります。
実際のご相談事例から見えてくるのは、「なぜ請求されているかわからない」という戸惑いを感じながらも、弁護士が介入することで冷静かつ論理的に対応できたケースが多いという事実です。会社側に正当な根拠がある場合は、それを丁寧に示すことで解決への道が開けます。
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