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労災で会社に損害賠償請求する完全ガイド|慰謝料相場・安全配慮義務違反・労災給付との二重取りを弁護士解説


笹野皓平 弁護士

この記事の監修者

笹野 皓平(ささの こうへい)

弁護士法人ブライト|労災部部長/パートナー弁護士

弁護士歴14年以上(2011年登録)/大阪弁護士会/京都大学法学部卒・立命館法科大学院修了

専門:労災事故・交通事故・会社関係争訟・M&A・事業再生

労災事故の損害賠償でお困りの方へ

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「労災に遭ったけれど、労災保険の給付だけでは生活が立ち行かない」「会社の安全管理に問題があったのに、本当に泣き寝入りするしかないのか」――このような悩みを抱える方は少なくありません。

労災事故では、労災保険から休業補償や障害補償などの給付を受けられますが、これらは損害のすべてを補うものではありません。慰謝料は労災保険からは一切支給されず、休業損害や逸失利益も労災給付では満額をカバーできないのが実情です。

労災給付で足りない部分は、会社に対して民事上の損害賠償請求として請求できる可能性があります。本記事では、弁護士法人ブライトの労災事故専門チームが、会社への損害賠償請求の法的根拠から相場、請求の流れ、解決事例まで、労災被害に遭われた方が知っておくべき情報を網羅的に解説します。

この記事でわかること

  • 労災で会社に損害賠償請求できる4つの法的根拠
  • 労災保険給付と損害賠償の関係(二重取り問題)の整理
  • 慰謝料・逸失利益などの相場と計算方法
  • 事故態様別の損害賠償請求の見通し
  • ブライトが解決した労災損害賠償の実例(金額・等級は一部改変)
  • 請求が認められない・減額されるケース
  • 労災に強い弁護士の選び方とブライトの体制

この記事のポイント

  • 労災給付と損害賠償は併給可能。ただし損益相殺ルールあり
  • 遺族特別支給金は損益相殺の対象外のため、年金の先行受給で構造上の不利は生じない
  • 会社への請求の中心は安全配慮義務違反(民法415条)
  • 労災給付申請は着手金ゼロ、会社への損害賠償請求は別契約で対応可能
  • 解決まで一般的に交渉6ヶ月〜訴訟1〜3年

労災で会社に損害賠償請求できる4つの法的根拠

労災事故で会社に損害賠償請求をする場合、根拠となる法律は1つではありません。事故の態様や会社の関与の度合いに応じて、以下の4つの法的根拠を使い分けます。

法的根拠 条文 主な対象事案
安全配慮義務違反 民法415条(債務不履行) 建設・製造現場の事故全般、過労死、長時間労働
使用者責任 民法715条 同僚や上司の不法行為(暴行・ハラスメント等)
工作物責任 民法717条 足場崩落、機械の欠陥、施設の瑕疵による事故
不法行為責任 民法709条 会社側の故意・重過失による直接的な加害

安全配慮義務違反(民法415条)|最も多い請求根拠

労災損害賠償請求で最も多く使われるのが、安全配慮義務違反を根拠とする請求です。労働契約法5条は「使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする」と定めており、会社にはこの義務に違反した場合の損害賠償責任があります。

具体的には、以下のような場合に安全配慮義務違反が認められやすくなります。

  • 必要な保護具(ヘルメット、安全帯、手袋など)を支給していなかった
  • 機械の安全装置が外された状態で作業をさせていた
  • 長時間労働を放置し、健康診断や面談を実施していなかった
  • 危険作業について十分な教育・訓練を行っていなかった
  • 過去に同種事故が発生していたのに対策を怠っていた

使用者責任(民法715条)

同僚・上司・他部署の社員など、会社の指揮監督下にある人物が業務上で他の労働者に損害を与えた場合、その雇用主である会社が責任を負うのが使用者責任です。職場でのハラスメント被害や、トラックドライバーが運転中に同乗者を負傷させた場合などがこれに該当します。

工作物責任(民法717条)

会社が設置・占有する建物・足場・機械などの「工作物」に瑕疵(欠陥)があり、その瑕疵によって事故が発生した場合、会社は無過失でも責任を負います。足場崩落事故やプレス機の安全装置の欠陥による指切断事故などで活用される根拠です。

不法行為責任(民法709条)

会社が直接的に故意または過失によって損害を与えた場合の一般的な賠償責任です。労災隠しや、明らかな違法操業によって労働者が被害を受けたケースなどで補完的に使われます。

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労災給付と損害賠償の関係|二重取り問題の完全整理

「労災保険からも給付を受けられて、さらに会社にも損害賠償請求できるなら、二重取りになるのでは?」と疑問に思われる方が多いのですが、結論からいえば、労災給付と損害賠償は併給できますが、損益相殺のルールがあります。同じ性質の損害について重複して受け取ることはできない仕組みです。

損益相殺の対象になるもの・ならないもの

損益相殺の判断は損害項目ごとに行います。以下の早見表で整理します。

労災保険の給付 性質 損益相殺の対象
療養補償給付 治療費の実費 ○ 対象(治療費と相殺)
休業補償給付(給付基礎日額の60%) 休業損害の一部 ○ 対象(休業損害と相殺)
休業特別支給金(同20%) 労働者保護の上乗せ × 対象外
障害補償給付(一時金・年金) 逸失利益・後遺障害慰謝料の一部 ○ 対象(逸失利益と相殺)
障害特別支給金 労働者保護の上乗せ × 対象外
遺族補償給付 遺族の生活保障 ○ 対象(逸失利益と相殺)
遺族特別支給金 労働者保護の上乗せ × 対象外
葬祭料 葬儀費用の実費 ○ 対象(葬祭費と相殺)

ここで重要なのは、「特別支給金は損益相殺の対象外」というルールです。労災保険には「補償給付」と「特別支給金」の2階建て構造があり、特別支給金は労働者保護のための上乗せ給付として位置づけられているため、会社への損害賠償から控除されません。

慰謝料は労災給付では一切支給されない

労災保険の給付に慰謝料は含まれていません。入通院慰謝料・後遺障害慰謝料・死亡慰謝料は、すべて会社への損害賠償請求でのみ獲得可能です。これが「労災給付だけでは足りない」と言われる最大の理由です。

遺族補償年金と将来賠償の関係

死亡労災のケースでは、遺族補償年金を将来にわたって受給することになります。「賠償が確定する3年後より前に年金を受け取り始めて、構造上不利にならないか」と心配されるご遺族が多いのですが、特別支給金は損益相殺の対象外であり、補償給付部分も将来の年金停止・調整で精算されるため、先行受給で構造上の不利は生じません。むしろ早期に手続を進めることをお勧めします。

損害賠償で請求できる項目と相場

会社への損害賠償請求で請求できる主な項目は、慰謝料・治療費・休業損害・逸失利益・遅延損害金などです。それぞれの相場と計算方法を解説します。

慰謝料

慰謝料は、入通院慰謝料・後遺障害慰謝料・死亡慰謝料の3種類があります。

入通院慰謝料(傷害慰謝料)

入通院期間に応じた精神的苦痛への慰謝料です。交通事故の「赤い本」基準に準じて算定されることが一般的です。

入通院期間 入通院慰謝料の目安
1ヶ月通院 約28万円
3ヶ月通院 約73万円
6ヶ月通院 約116万円
1ヶ月入院+3ヶ月通院 約115万円
3ヶ月入院+6ヶ月通院 約211万円

後遺障害慰謝料

後遺障害が残った場合に等級に応じて支払われる慰謝料です。

後遺障害等級 慰謝料の目安
1級 約2,800万円
2級 約2,370万円
3級 約1,990万円
5級 約1,400万円
7級 約1,000万円
9級 約690万円
11級 約420万円
12級 約290万円
14級 約110万円

後遺障害等級に納得がいかない場合は、不服申立や再審査請求の手続きがあります。詳しくは 労災の後遺障害等級が低い・非該当だったときの対処法 および 労災の障害等級に納得いかないときはどうする? をご覧ください。

死亡慰謝料

被害者が死亡した場合の慰謝料です。被害者本人分と遺族固有分を合算します。

被害者の家族内地位 死亡慰謝料の目安
一家の支柱 約2,800万円
母親・配偶者 約2,500万円
その他(独身者・高齢者・子ども等) 約2,000〜2,500万円

死亡労災の詳しい補償内容については 労災の「死亡事故」で遺族が受け取れる損害賠償 および 家族が労災で死亡した場合に遺族がするべきこと をご参照ください。

治療費・将来介護費

労災給付(療養補償給付)でカバーされない自由診療分や、症状固定後に必要となる将来介護費は、損害賠償請求の対象になります。重度の後遺障害(高次脳機能障害・脊髄損傷など)では将来介護費が請求の中心になることもあります。

休業損害(労災休業補償との差額)

労災保険の休業補償給付は給付基礎日額の60%、休業特別支給金が20%で、合計80%です。残り20%および賞与減額分は会社への損害賠償請求でカバーします。

休業補償の支給に関するトラブル(振込が遅い、決定通知書が届かない等)については 労災の休業補償が振り込まれない? および 労災の支給決定通知書が届かない? をご覧ください。

逸失利益(後遺障害・死亡)

後遺障害逸失利益は「基礎収入 × 労働能力喪失率 × 労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数」で算定します。死亡逸失利益は「基礎収入 × (1 – 生活費控除率) × 就労可能年数のライプニッツ係数」です。労災障害補償給付(年金または一時金)と損益相殺します。

遅延損害金

不法行為構成の場合は事故日から、債務不履行(安全配慮義務違反)構成の場合は催告日から、年3%(民法改正後)の遅延損害金が発生します。長期化すれば数百万円規模になることもあります。

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事故態様別 損害賠償請求の見通し

労災事故は事故態様によって争点や請求の見通しが大きく異なります。代表的な事故類型ごとに、損害賠償請求の特徴を整理します。

建設・製造現場の重機・機械事故

プレス機・フォークリフト・クレーン・ローラーなどの機械や重機による事故は、安全装置の不備や操作教育の欠如が問題になりやすく、安全配慮義務違反・工作物責任の両方を根拠にできることが多い類型です。詳しくは 機械・重機事故の労災で会社に損害賠償請求フォークリフトに起因した労災事故と損害賠償請求機械に起因した労災事故と損害賠償請求 をご覧ください。

転落・墜落事故

建設現場の足場・屋根・はしごからの転落事故は、安全帯の支給状況、墜落制止用器具の使用ルール、足場設置基準の遵守状況が争点になります。転落・墜落労災で弁護士に相談すべき理由と解決事例 をご参照ください。

過労死・過労うつ(精神疾患労災)

長時間労働による脳・心臓疾患(過労死)や、職場のストレスによる精神疾患(うつ病・適応障害)も労災に該当します。長時間労働の証拠(タイムカード・PC履歴・メール送信時刻)の確保や、業務起因性の立証が中心的な争点です。過労死・過労うつの労災認定|遺族・本人ができる立証ポイント で詳しく解説しています。

通勤災害

通勤途中の交通事故等は通勤災害として労災給付の対象になりますが、加害者がいる場合は第三者行為災害として損害賠償請求の組み立てが変わります。詳しくは 通勤中の事故だと労災おりない?通勤中の事故は労災保険の対象?労災における第三者行為災害 をご覧ください。

派遣・一人親方・外国人技能実習生

派遣社員、一人親方、外国人技能実習生の労災では「誰が責任を負うか(派遣元か派遣先か、注文者か元請けか)」が複雑化します。派遣・一人親方・外国人技能実習生の労災|誰が責任を負うか で整理しています。

死亡労災・遺族補償

遺族補償給付・遺族特別支給金・死亡慰謝料・死亡逸失利益が請求の中心です。刑事手続では弁護士費用特約の活用や被害者参加代理人の選任も検討できます。

ブライトが解決した労災損害賠償の解決事例

弁護士法人ブライトの労災事故専門チームが実際に解決した案件を、依頼者・相手方企業が特定されないよう抽象化してご紹介します。

解決額・等級・解決期間は事案ごとの個別事情(過失割合・収入・既往症・会社の資力等)により大きく異なり、同様の結果を保証するものではありません。金額はレンジ(○○万円台)で表示しています。

事例1:後遺障害12級でも「等級認定で終わらせない」|トラック荷台転落・約2ヶ月で1,000万円台に

被害者 40代男性・トラック運転手
事故態様 トラック荷台で作業中に足を滑らせ転落、足首を骨折
後遺障害 12級7号(労災認定済み)
主な争点 荷台での転落防止措置(滑り止め・安全帯指示)の不備=安全配慮義務違反/過失相殺の割合/使用者賠償責任保険の適用
解決方式 示談
解決額 1,000万円台
期間 約2ヶ月

依頼者は労災保険の障害補償給付は受け取っていましたが、慰謝料は労災給付では一切填補されず、逸失利益も労災給付だけでは不足することが多いため、その差額を会社へ請求することになります。当法人は、会社が加入する使用者賠償責任保険の存在を交渉のポイントと見て、過失相殺2割を織り込んだうえで裁判基準での逸失利益・慰謝料を内容証明で請求しました。相手方の当初提示は請求額の半額以下(700万円台)でしたが、「依頼者の過失が大きい」「裁判基準の慰謝料は認められない」という会社側の主張に一つずつ反論し、対案提示を経て、請求内容の正当性が認められて1,000万円台で早期の和解に至りました。依頼者からは「迅速に、妥当な金額で解決できた」と感謝の言葉をいただきました。

ここがポイント:労災で後遺障害等級が認定された後でも、慰謝料・逸失利益を会社へ別途請求できるケースは多くあります。会社側の「あなたにも過失がある」を鵜呑みにせず、過失相殺の割合を交渉で抑えることが金額を大きく左右します。

事例2:「払わない」と言われた重層下請の墜落事故|元請まで追及し、7級で3,000万円台

被害者 男性・建設作業員
事故態様 高所からの墜落で多発骨折、手術を複数回。事故から症状固定まで相当な年数を要した
後遺障害 7級(労災認定済み)
主な争点 元請・上位下請各社の安全配慮義務違反/重層下請構造での責任分担/労災給付との「費目拘束」/逸失利益(労働能力喪失率56%)/古い事故ゆえの証拠の散逸
解決方式 示談
解決額 3,000万円台(別途、相手方保険からの補償金あり)
期間 1年4ヶ月

依頼者は事故後、元請会社へ自分で損害賠償を求めたものの「払わない」と拒否され、当法人へ相談されました。直接の雇用主(下請)は事実上廃業状態。事故から相当な年数が経過し、刑事記録など客観証拠の保管期限も過ぎているという、極めて不利な状況からのスタートでした。

当法人は、責任関係が明確な会社には損害賠償請求を、関与の度合いが不明な会社にはまず事実関係の照会を——と相手の立場に応じてアプローチを使い分けました。最大の決め手は、相手方代理人の初回提案に含まれていた「費目拘束」の論点の欠落を見抜いたこと。労災給付が損害のどの費目を填補したかを正確に整理することで、控除される金額が大きく変わり、賠償額の大幅増額につながりました。最終的に重層下請の上位会社まで責任を追及し、7級で3,000万円台の示談に至りました。

ここがポイント:建設現場の労災は、直接の雇い主だけでなく元請・上位下請にも安全配慮義務違反を問えることがあります。また、相手方提示額の妥当性は「費目拘束」を正しく計算できるかで数百万円単位で変わります。古い事故・証拠が乏しい事案でも、諦める前に一度ご相談ください。

事例3:過労死を「持病のせい」とされた遺族|素因減額に反論し、5,000万円台

被害者 長距離トラック運転手(ご遺族=50代女性が依頼者)
事故態様 恒常的な長時間労働の末、運転中に急性心筋梗塞を発症し死亡
認定 業務上の死亡として労災認定を獲得
主な争点 長時間労働と死亡の業務起因性/会社の労働時間管理体制・安全配慮義務違反/基礎疾患(高血圧)を理由とする素因減額の可否/死亡逸失利益・遺族慰謝料の算定
解決方式 訴訟上の和解
解決額 5,000万円台
期間 2年6ヶ月

「そもそも夫の死が労災として認められるのか」——遺族が労基署に相談しても個人対応に限界を感じていた段階からの受任でした。当法人はまず労災認定の獲得を最優先としました。公的機関が業務起因性を認めれば、その後の会社への損害賠償が精神的にも立証上も有利に進むためです。タコグラフと日報を精査し、月100時間を超える時間外労働の常態化を客観証拠で立証

会社側は予想どおり「死因は本人の高血圧という持病であり業務とは無関係」と素因減額を主張しましたが、当法人は「基礎疾患があったとしても、それを急激に悪化させたのは安全配慮義務に違反する過重労働である」という論理構成で反論し、安易な減額に応じませんでした。労災認定という公的判断を交渉カードに、訴訟上の和解で5,000万円台に到達。遺族からは「夫が命を削って働いた事実が公に認められ、名誉が回復された」との言葉をいただきました。

ここがポイント:過労死・過労疾患では、会社は高い確率で「本人の持病が原因」と素因減額を主張します。これに対しては、過重労働が持病を悪化させた因果関係をタコグラフ・勤怠記録等の客観証拠で立証することが反論の核になります。労災申請と会社への損害賠償はセットで設計するのが有利です。

この3事例が示すブライトの労災損害賠償への向き合い方

後遺障害12級・7級、そして過労死——等級も態様もさまざまですが、いずれも「労災が認定された/給付が出た」で終わらせていません①過失相殺への反論 ②費目拘束の正確な計算 ③素因減額への反論 ④元請・重層下請への責任追及——労災給付(定型)では填補されない慰謝料・逸失利益を、会社への損害賠償としてどう組み立てるかで、最終的に手元に残る金額は大きく変わります。労災保険の給付と、会社に対する損害賠償は別物です。後者の設計こそ、弁護士に依頼する価値が最も出る領域です。

関連記事:労災を会社が認めないとき労災申請はできる?認定の基準や会社が認めない理由とは労災の後遺障害(後遺症)とは?認定方法や補償金額、手続きを解説労災で慰謝料請求はできる?請求方法や時効などについて弁護士が解説

労災事故の解決事例をさらに詳しく知りたい方は 労災事故の解決事例10選|弁護士法人ブライト をご覧ください。

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労災事故の証拠保全|会社が証拠隠滅する前にやるべき7つのこと

労災事故で会社に損害賠償請求をする際、勝敗の7割は証拠保全のスピードと網羅性で決まると言っても過言ではありません。事故から時間が経つほど、タイムカード・防犯カメラ映像・同僚証言・現場の状態などの証拠は消えていきます。会社側が証拠を整理・廃棄したり、後から書類を作り直したりするケースも残念ながら少なくありません。

弁護士法人ブライトでは、労災事故の証拠保全プロセスをマニュアル化し、ご相談いただいた当日から系統的に証拠の確保を進める体制を整えています。具体的なマニュアルの細部は所内ノウハウとして公開していませんが、以下の7つの取り組みを基本としています。

①主治医カルテと画像所見の早期取り寄せ

業務起因性の立証には、事故直後のカルテ記録と画像所見(MRI・CT・レントゲン)が決定的な意味を持ちます。診断書に書かれていない症状であっても、カルテや画像所見には記録が残っていることが多く、後から診断書を補強する材料になります。弊所では主治医とのコミュニケーションを早期に開始し、必要な記載の追加を相談する運用を採っています。

②労働局への保有個人情報開示請求(調査復命書の取り寄せ)

労災認定の過程で労働基準監督署が作成する調査復命書には、認定根拠・聞き取り内容・現場検証結果などが詳細に記載されています。これを保有個人情報開示請求で取り寄せることで、後遺障害等級の不服申立や会社への損害賠償請求の戦略立案が可能になります。弊所ではこの開示請求の運用を所内マニュアル化しており、依頼者向けの案内文・郵送と窓口の選択肢提示までを定型化しています。

③タイムカード・PCログ・健康管理時間表の確保

過労死・過労うつなど長時間労働が原因の労災では、客観的な労働時間の証拠が必須です。タイムカード、PC起動・シャットダウンログ、メール送信時刻、健康管理時間表、入退室カードログなどを、会社が整理・廃棄する前に確保することが重要です。会社が「タイムカードはない」「労働時間は把握していない」と主張するケースもあるため、第三者的な客観資料を複数経路で確保します。

④民事訴訟法234条の証拠保全申立(裁判所経由)

会社が証拠を任意に提出しない、あるいは隠滅・改ざんのおそれがある場合は、民事訴訟法234条に基づく証拠保全を裁判所に申し立てることができます。裁判所書記官が会社に立ち入り、証拠物を直接確認・複写する強力な手続です。事故記録・安全装置の状態・防犯カメラ映像・タイムカードなどに対して活用できます。弊所では証拠保全申立書のテンプレと運用マニュアルを整備しています。

⑤防犯カメラ・ドラレコ映像の早期保全依頼

事故現場や通勤経路の防犯カメラ・ドライブレコーダーの映像は、上書きされて消えるのが通常1〜4週間と非常に短期間です。事故直後に会社・店舗・運送会社・警察などに対して保全依頼を文書で行うことで、映像消失を防ぎます。映像が確保できれば、事故態様の客観立証・過失相殺の反論に決定的な材料になります。

⑥同僚証言の早期書面化

事故を目撃した同僚や、長時間労働の実態を知る同僚の証言を早期に書面化しておくことが重要です。時間が経つと記憶が薄れるだけでなく、会社からの圧力で証言を翻されるリスクも高まります。陳述書として書面化し、署名・押印・日付を確定させておけば、後の訴訟でも有力な証拠になります。

⑦会社のバックデート書類・偽装労働条件への対策

残念ながら、労災発生後に会社が労働条件通知書・タイムカード・業務日報などをバックデートで作成するケースがあります。これに対しては、依頼者がブライトに相談した日付、身分証明・労働関係書類の提出を求めた日付、会社が後から書類を送ってきた日付などを時系列で陳述書に整理し、書類の信用性を弾劾するロジックを構築します。実際の解決事例でも、この時系列立証が決め手となったケースがあります。

労災事故の証拠保全は、事故直後から最初の数週間が勝負です。「弁護士に相談するのはまだ早いかも」と思われがちな段階こそ、証拠保全の観点では最も重要な時期になります。詳しくは「労災事故の証拠保全|民事訴訟法234条の証拠保全申立から労働局開示請求まで弁護士が解説」もあわせてご覧ください。

損害賠償請求の流れと所要期間

会社への損害賠償請求は、以下のステップで進めるのが一般的です。

ステップ1:労災給付申請と症状固定(事故〜6ヶ月程度)

まず労災保険給付の申請を行い、療養補償給付と休業補償給付を確保します。並行して治療を継続し、症状固定の判断を主治医とともに行います。症状固定の時期は労基署任せにせず、主治医と相談して判断することが重要です。詳しくは 労災の症状固定前に弁護士に相談すべき理由 をご覧ください。

ステップ2:後遺障害等級認定(症状固定〜3〜6ヶ月)

症状固定後、障害給付の診断書を作成し、後遺障害等級認定を申請します。診断書は労基署に提出する前に弁護士に確認することをお勧めします。労災申請に診断書は必要? もご参照ください。

ステップ3:会社への請求(内容証明・示談交渉)

後遺障害等級が確定したら、会社に対して内容証明で損害賠償を請求します。会社が応じれば示談交渉、応じなければ次のステップに進みます。会社が労災を認めない場合は 会社が労災を認めない・労災隠しに遭ったときの対処法 をご覧ください。

ステップ4:労働審判または民事訴訟

示談交渉が不調に終われば、労働審判または民事訴訟を提起します。労働審判は3回以内の期日で結論が出る迅速な手続、民事訴訟は時間はかかるものの徹底的な審理が可能です。事案の複雑性によって選択します。

手続 期間の目安 メリット デメリット
示談交渉 3〜6ヶ月 柔軟・低コスト 会社が拒否すれば不成立
民事調停 3〜6ヶ月 裁判所の関与・低コスト 強制力なし
労働審判 3〜4ヶ月 迅速(3回以内) 複雑事案は不向き
民事訴訟 1〜3年 徹底的な審理・確定判決 時間とコスト

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請求が認められない・減額されるケース

労災で会社に損害賠償請求しても、認められなかったり減額されたりするケースがあります。代表的なパターンを整理します。

会社に過失がない場合

労災と認定されても、会社側に安全配慮義務違反などの過失がなければ、損害賠償請求は認められません。たとえば、被害者が安全教育を受けたうえで支給された保護具を使用せずに事故を起こした場合、会社の責任を問うのは難しくなります。

過失相殺

被害者にも事故発生に関する過失がある場合、その過失割合に応じて損害賠償額が減額されます。たとえば、被害者の過失が3割と認定されれば、損害賠償額は7割に減額されます。

時効

損害賠償請求権には時効があります。請求根拠によって時効期間が異なる点に注意が必要です。

請求根拠 時効期間 起算点
不法行為(民法709条等) 3年 損害および加害者を知った時
不法行為(生命・身体侵害) 5年 同上
債務不履行(安全配慮義務違反) 5年 権利行使可能時
除斥期間(不法行為) 20年 不法行為時

労災が認定されない場合の対処については 労災が認定されない・業務起因性が認められないときの対処法 をご参照ください。

既往症・素因減額

被害者にもともと持病や身体的特徴があり、それが損害の発生・拡大に寄与した場合、損害賠償額が減額されることがあります(素因減額)。ただし、加齢などの一般的な要因は素因減額の対象とはならないのが原則です。

既に示談が成立している場合

会社と既に示談書を取り交わしている場合、原則として追加請求はできません。ただし、示談時に予測できなかった重大な後遺障害が後から判明した場合などは、例外的に追加請求が認められることもあります。示談に応じる前に必ず弁護士にご相談ください。

労災に強い弁護士の選び方とブライトの体制

労災事故の損害賠償請求は、労災手続・後遺障害認定・民事賠償・労働法の知識を総合的に必要とする分野です。弁護士選びでは以下のポイントを確認することをお勧めします。

弁護士選びのポイント

  • 労災事故の取扱実績が豊富か
  • 労災給付申請から会社への損害賠償請求まで一貫対応できるか
  • 後遺障害等級認定の不服申立に対応しているか
  • 費用設計が明確か(労災給付申請と会社請求で着手金体系が分かれているか)
  • 監修弁護士の経歴・実績が公開されているか

詳しい選び方は 労災問題の解決はプロフェッショナルな弁護士に依頼!選び方や費用を解説 をご覧ください。

弁護士法人ブライトの労災事故専門チーム体制

ブライトでは、労災事案について複数の弁護士による役割分担体制を採っています。

  • 笹野皓平弁護士(パートナー):訴訟担当。難件・訴訟移行案件の二次決裁および法廷対応
  • 有本 喜英弁護士:建設・製造業の労災事案を中心に、現場知見を踏まえた実務指揮。医学的証拠の収集・主治医対応・労基署対応・会社との交渉実務

役割分担により、判断と実働、交渉と訴訟、業界別の専門知見を多層的にカバーします。一人の弁護士が抱え込んで遅延・見落としが生じるリスクを防ぐ体制です。

弁護士費用の考え方

労災給付申請と会社への損害賠償請求は二本立ての請求として明確に分けています。

業務 着手金 成功報酬
労災給付申請 0円(実費予納金のみ) 給付額の一部
会社への損害賠償請求 あり(事案による) 獲得額の一部
後遺障害等級不服申立 事案による 等級アップ分の一部

詳細は 労災の弁護士費用はいくら? をご参照ください。

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よくある質問(FAQ)

Q1. 会社が労災を認めてくれません。どうすればよいですか?

会社が労災を認めない、あるいは労災申請に協力しない場合でも、労働者本人または遺族が労基署に直接申請することができます。事業主証明欄が空欄であっても受け付けられます。詳しくは 会社が労災を認めない・労災隠しに遭ったときの対処法 をご覧ください。

Q2. 労災認定が下りなくても会社に損害賠償請求はできますか?

労災認定と民事の損害賠償請求は別の手続です。労災認定が下りなくても、会社の安全配慮義務違反等を立証できれば損害賠償請求は可能です。労災が認定されない・業務起因性が認められないときの対処法 をご参照ください。

Q3. 復職した後でも会社に損害賠償請求できますか?

復職後でも損害賠償請求は可能です。むしろ「会社との関係を保ちながら解決する」交渉戦略を採用するケースもあります。労災事故の損害賠償は復職後も請求可能? で詳しく解説しています。

Q4. 示談に応じたら、後から追加請求はできなくなりますか?

原則として示談成立後の追加請求はできません。ただし、示談時に予測できなかった重大な後遺障害が後から判明した場合などは例外的に追加請求が認められます。示談に応じる前に必ず弁護士にご相談ください。

Q5. 弁護士費用はどれくらいかかりますか?

労災給付申請は着手金ゼロ円(実費予納金のみ)でお引き受けしています。会社への損害賠償請求は別契約となり、事案に応じて着手金・成功報酬を設定します。詳しくは 労災の弁護士費用 をご覧ください。

Q6. 過労死の場合、遺族はどのような補償を受けられますか?

遺族補償給付(年金または一時金)、遺族特別支給金、葬祭料が労災から支給されます。さらに会社の安全配慮義務違反を立証できれば、死亡慰謝料・死亡逸失利益・遺族固有の慰謝料などを会社に請求できます。過労死・過労うつの労災認定 をご参照ください。

Q7. 後遺障害等級が低いと感じたらどうすればよいですか?

労働局の調査復命書を保有個人情報開示請求で取り寄せ、認定根拠を検証したうえで、審査請求・再審査請求を行うことができます。労災の後遺障害等級が低い・非該当だったときの対処法 で詳しく解説しています。

Q8. 通勤災害でも会社に損害賠償請求できますか?

通勤途上の事故で第三者(加害者)がいる場合は、その加害者に損害賠償請求します。会社に対する請求は、通勤経路を会社が指定していたり、業務の延長と評価できる場合に限られます。通勤中の事故だと労災おりない? をご覧ください。

Q9. 一人親方・個人事業主でも労災や損害賠償請求はできますか?

一人親方は労災保険の特別加入制度で給付を受けられます。元請けや注文者に対する損害賠償請求は、安全配慮義務の有無や注文者責任の成否で判断します。派遣・一人親方・外国人技能実習生の労災 をご参照ください。

Q10. 派遣社員ですが、派遣元と派遣先のどちらに請求すればよいですか?

労災給付は派遣元の労災保険から支給されますが、損害賠償請求は派遣先・派遣元のいずれにも可能です。実際の作業指揮命令を行っていた派遣先の責任が問われることが多いのが実情です。

Q11. 労災保険を使うとボーナスが減ったり昇進に響いたりしませんか?

労災保険を使うこと自体を理由とする不利益取扱いは違法です。労災申請で会社の評価は下がるのか? で詳しく解説しています。

Q12. 機械や重機による事故の場合、特有の論点はありますか?

安全装置の有無、作業手順書の整備状況、操作教育の実施状況、保護具の支給状況などが争点になります。機械・重機事故の労災で会社に損害賠償請求 で詳しく解説しています。

Q13. 転落・墜落事故の場合の特有の論点は?

墜落制止用器具(旧:安全帯)の支給と使用ルール、足場設置基準の遵守、高所作業の安全教育などが争点です。転落・墜落労災で弁護士に相談すべき理由 をご参照ください。

Q14. 解決まで何年くらいかかりますか?

示談交渉のみで解決する場合は3〜6ヶ月、労働審判で3〜4ヶ月、民事訴訟になると1〜3年が目安です。後遺障害等級認定や再審査請求が並行する場合はさらに延びることがあります。

Q15. 相談したいのですが、何を準備すればよいですか?

事故の概要がわかる資料(事故報告書・写真・病院のカルテ等)、雇用契約書、給与明細、労災給付の決定通知書、会社とのやりとりの記録があると話がスムーズです。すべて揃わなくてもまずはご相談ください。

まとめ|まずは弁護士法人ブライトへご相談ください

労災事故の損害賠償請求は、労災給付申請・後遺障害等級認定・民事賠償・労働法を総合的に扱う高度な分野です。労災給付だけでは補えない慰謝料・逸失利益・休業損害の差額などを会社に請求するためには、的確な戦略と専門知識が必要になります。

弁護士法人ブライトでは、労災事故専門チームが受任判断から事件解決まで一貫して対応します。労災給付申請は着手金ゼロ円でお受けしておりますので、まずはお気軽にご相談ください。

ご相談は無料で承っております。お電話・メールフォームのいずれからでも受け付けております。

まずは弁護士法人ブライトへご相談ください

労災事故・損害賠償請求の専門弁護士が、あなたのケースを丁寧にお聞きします。

  • 初回相談は無料
  • 労災給付申請は着手金ゼロ円
  • 会社への損害賠償請求も対応

  • この記事を書いた人

笹野 皓平

弁護士法人ブライト パートナー弁護士: あなた自身や周りの方々がよりよい人生を歩んでいくために、また、公正な社会を実現するために、法の専門家としてサポートできることを日々嬉しく感じています。

本記事は、一般的な情報の提供を目的とするものであり、個別案件に関する法的助言を目的とするものではありません。また、情報の正確性、完全性及び適時性を法的に保証するものではありません。
なお、本記事の内容に関する個別の質問や意見などにつきましては、ご対応できかねます。ただし、当該記事の内容に関連して、当事務所へのご相談又はご依頼を具体的に検討されている場合には、この限りではありません。

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事務所概要

事務所名 弁護士法人 ブライト(大阪弁護士会所属)
開 業 平成21年(代表弁護士独立開業)
設 立 平成24年11月設立、平成27年1月に法人化
所在地 〒530-0057 大阪府大阪市北区曽根崎2丁目6番6号 コウヅキキャピタルウエスト12階
TEL 0120-931-501(受付時間9:00~18:00)
FAX 06-6366-8771
事業内容 法人向け(法律顧問・顧問サービス、経営権紛争、M&A・事業承継、私的整理・破産・民事再生等、契約交渉・契約書作成等、売掛金等の債権保全・回収、経営相談、訴訟等の裁判手続対応、従業員等に関する対応、IT関連のご相談、不動産を巡るトラブルなど)、個人向け(交通事故・労災事故を中心とした損害賠償請求事件、債務整理・破産・再生等、相続、離婚・財産分与等、財産管理等に関する対応、不動産の明渡し等を巡る問題など)

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