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労災で骨折した場合の補償は?慰謝料の相場や会社への請求方法を解説

労災による骨折で働けなくなり、今後の生活に不安を抱える人もいるのではないでしょうか。労災で骨折した場合の生活補償のためにできることとしては、「労災保険の申請」と「損害賠償請求」があります。

本記事では、労災(骨折)時に請求できる、労災保険と損害賠償について解説します。慰謝料の相場や会社への損害賠償請求方法なども参考にしていただくとともに、早めに弁護士に相談することもおすすめいたします。

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労働災害(労災)で骨折した場合、「労災保険」を受給できる

労働者が業務中または通勤中の災害(労災)で骨折した場合、「労災保険」を申請することで、治療費などの補償を受けられます。労災保険を受給するためには、労働基準監督署に申請書などの必要書類を提出し、労災認定を受ける必要がありますが、労災の認定を受けるには、定められた判断基準をクリアしなければなりません。まずは、業務中の事故(業務災害)で骨折した場合の労災認定の判断基準を解説します。

労災認定の判断基準

業務中の事故の場合、骨折が労災にあたるか否かは、「業務遂行性」と「業務起因性」という2つの基準で判断されます

  • 業務遂行性:労働者が会社と労働関係にある際に起きた災害であること
  • 業務起因性:業務と傷病などとの間に一定の因果関係があること

労災認定を受けるには、業務遂行性が認められた上で、業務起因性についても認められる必要があります。

業務遂行性

「業務遂行性」を判断できる3つの基準と、認められる事例について見ていきましょう。

(1)事業主の支配・管理下で業務に従事している場合
<認められるケース>
・担当業務やそれに付随する作業を行っている
・突発事故に対する事故処理や救護活動を行っている
・業務中にトイレや飲水などの生理的行為を行っている など

(2)事業主の支配・管理下にあるが、業務に従事していない場合
<認められるケース>
・休憩時間に事業場内で休んでいた
・事業主が通勤専用に提供した交通機関を利用した など

(3)事業主の支配下にはあるが、管理下を離れて業務に従事している場合
<認められるケース>
・出張や社用での外出などのために事業所外で仕事を行う
・事業所外の就業場所への往復など事業場外での業務に付随する行為を行う など

上記の3つの基準に該当する場合、「業務遂行性」があると判断されます。

業務起因性

労災が認められるには、業務遂行性に加えて当該業務と災害との間に因果関係があり、業務に内在する危険が現実化したものと認められる必要があります。上記で述べた業務遂行性の3つの基準ごとに、業務起因性が認められる判断基準と、認められない事例について紹介します。

(1)事業主の支配・管理下にあって業務に従事している場合
所定労働時間や残業時間内に事業所内で本来の業務やそれに付随する業務を行っていた場合、業務起因性が認められる。

<認められないケース>
・喧嘩や飲酒など私的行為が原因の災害
・故意に起こした災害
・個人的な恨みなどで他人から危害を加えられたことによる災害 など

(2)事業主の支配・管理下にあるが業務に従事していない場合
業務遂行性は認められるが、原則、業務起因性は認められない。ただし、当該事故が事業場の施設・設備や管理状況などが原因で発生した災害は業務災害となる。

<認められないケース>
・更衣室で着替え中の災害
・休憩時間中のスポーツによる災害 など

(3)事業主の支配下にあるが、管理下を離れて業務に従事している場合
出張や社用での外出などにより事業場外で業務に従事している場合、業務起因性を否定するような特段の事情がない場合、業務起因性が認められる。

このように、「業務起因性」と「業務遂行性」の双方が認められる場合、骨折は労災と認定され、被災労働者は労災保険による補償が受けられます。

労災による骨折で受けられる労災保険給付

労災による骨折と認められた場合、労働者は、療養費を補償する「療養(補償)等給付」のほか、休業する必要があれば、その損害を補償する「休業(補償)等給付」、骨折の治ゆ後も何らかの後遺障害が残れば、「障害(補償)等給付」を必要に応じて受けられます。また、社会復帰促進等の事業の一環で、労災保険で補償される金額に上乗せし、労災保険の給付金にあわせて受給することができる、「特別支給金」を受け取れることもあります。 支給される労災保険給付の内容は以下の通りです。

●療養(補償)等給付

給付されるケース給付内容特別支給金の内容
業務災害・複数業務要因災害・通勤災害による傷病で療養するとき(労災病院や労災保険指定医療機関などで療養を受けるとき)必要な療養の給付
業務災害・複数業務要因災害・通勤災害による傷病で療養するとき(労災病院や労災保険指定医療機関以外で療養を受けるとき)必要な療養費

●休業(補償)等給付

給付されるケース給付内容特別支給金の内容
業務災害・複数業務要因災害・通勤災害による傷病の療養により労働ができず、賃金を受け取れないとき休業4日目から休業1日につき、給付基礎日額の60%相当額【休業特別支給金】
休業4日目から休業1日につき、給付基礎日額の20%相当額

●障害(補償)等給付 

給付名称給付されるケース給付内容特別支給金の内容
障害(補償)等年金業務災害・複数業務要因災害・通勤災害による傷病の治ゆ(症状固定)後、障害等級第1級から第7級に該当する障害が残ったとき給付基礎日額の313日分から131日分の年金(障害の程度による)

第1級:313日分
第2級:277日分
第3級:245日分
第4級:213日分
第5級:184日分
第6級:156日分
第7級:131日分
【障害特別支給金】
342万円から159万円までの一時金(障害の程度による)
【障害特別年金】
算定基礎日額の313日分から131日分の年金(障害の程度による)
障害(補償)等一時金業務災害・複数業務要因災害・通勤災害による傷病の治ゆ(症状固定)後、障害等級第8級から第14級に該当する障害が残ったとき給付基礎日額の503日分から56日分の一時金(障害の程度による)

第8級:503日分
第9級:391日分
第10級:302日分
第11級:223日分
第12級:156日分
第13級:101日分
第14級:56日分
【障害特別支給金】
65万円から8万円までの一時金(障害の程度による)
【障害特別一時金】
算定基礎日額の503日分から56日分の一時金(障害の程度による)

出典:「労災保険給付の概要」厚生労働省

療養(補償)等給付では、診察料や薬代、手術代や入通院費などが給付されます。労災指定病院などで療養を受けた場合は、労働者本人が治療費を自己負担する必要はありません。それ以外の医療機関での場合は、一度労働者が費用を立て替える必要がありますが、労災の申請をした上で必要な手続きを経ることにより、後日支払い分が戻ってきます。また、骨折により障害が残ってしまった場合には、障害認定を受けることにより、障害等級に応じた年金または一時金が給付されます。

参考:「労災保険給付の概要」厚生労働省
【関連記事】労働保険とは?受けられる補償や受ける方法を解説
【関連記事】労災の後遺障害(後遺症)とは?認定方法や補償金額、手続きを解説

会社に過失があれば、「損害賠償」を請求できる場合も

会社に安全配慮義務違反など(労働者が安全に働けるように努める配慮義務)過失があり、法的責任を追及できる場合、損害賠償請求が可能です。労災保険では療養費や休業費などは補償されますが、慰謝料の支払いはありません。その後の休業が長引いたり、後遺症が残って以前のように働けなかったりなど、労災保険からの補償では損害を回復しきれない場合もあります。このような経済的損失を解消するためには、損害賠償請求を検討するとよいでしょう。損害賠償請求をする際には、法律の専門家に依頼・相談することで、適切かつ有利に進めることができます。

では、安全配慮義務違反と認定されるのはどのようなケースなのでしょうか。

【関連記事】労災と損害賠償の関係

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骨折で「安全配慮義務違反」と認定されるのはどのようなケース?

もし会社が必要な安全対策を行っていれば、労働者に多少の不注意があったとしても、労災事故やその事態悪化を防げる可能性があります。そのため、会社に安全配慮義務違反があるか否かは、以下の2つのポイントで判断されます。

予見可能性:労働者に対する怪我や健康被害の危険性について予測できたか
結果回避性:労働者に対する健康被害の危険性への対策を行ったか

会社が上記のポイントについて配慮していなかった場合、安全配慮義務違反と認定される可能性が高まります。安全配慮義務違反の具体例は以下の通りです。

  • 危険な作業方法の指示があった
  • 危険作業に関する教育や注意喚起を怠った
  • 使用する設備や道具に不備があった
  • 安全を確保するための設備(てすりなど)や保護具(ヘルメットなど)がなかった
  • 経験が浅いのにもかかわらず、危険業務を一人で行った
  • 作業場所が雑然としていた  など

損害賠償の主な賠償項目

これまでに述べたように、損害賠償では、労災保険給付で補償されない慰謝料などを請求することができます。労災による骨折で請求できる可能性のある損害賠償の主な内容は、以下の通りです。

損賠賠償の項目賠償内容
入通院慰謝料入院・通院を強いられたことによる精神的損害に対する慰謝料
後遺障害慰謝料後遺障害による身体的・精神的な苦痛に対する慰謝料
後遺障害逸失利益骨折により喪失した収入に対する補償
休業損害労災に遭って休業を余儀なくされた間に、もらいそびれた収入

骨折した場合の「慰謝料」の相場。いくらもらえるのか?

では、労災事故で骨折した場合、どのくらいの慰謝料を受け取ることができるのでしょうか。入通院慰謝料と後遺障害慰謝料の相場を見ていきましょう。なお、それぞれの慰謝料表については、財団法人日弁連交通事故相談センター東京支部が発行している「民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準」を基にしています。

「入通院慰謝料」の場合

入通院慰謝料は、所定の慰謝料算定表に基づき計算します。骨折で使用する算定表(一部)は下記の通りです。弁護士基準では、下記算定表を使用し、横軸の「入院期間」と縦軸の「通院期間」で計算します。

出典:『民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準』公益財団法人日弁連交通事故相談センター東京支部

<計算例>
◆治療期間合計が12カ月(入院期間2カ月・治療期間10カ月)の場合:203万円

「後遺障害慰謝料」の場合

労災事故の骨折により後遺障害が残った場合は、以下のように、等級に応じた後遺障害慰謝料を受け取れる可能性があります。

出典:『民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準』公益財団法人日弁連交通事故相談センター東京支部
【関連記事】労災で後遺障害が残った場合の補償を解説

労災の骨折における、損害賠償の請求方法

ここからは、労災による骨折で会社に損害賠償を請求する際の、一般的な請求方法を紹介します。

1.労災申請(治療の継続・症状固定後→必要に応じて後遺障害等級決定)
2.既払い金および損害額の計算
3.会社との示談交渉
4.損害賠償請求訴訟提起(3.が不成立の場合)

まずは、労災申請を行います。この間、治療が必要であれば治療を継続します。治療を続けても状態が変わらない段階である、「症状固定」と判断された場合、一定の後遺障害が残存していれば、「後遺障害等級」を認定するための手続きをします。後遺障害等が認定されることにより後遺障害慰謝料や後遺障害逸失利益の賠償金基準額が決まるため、症状固定後は、後遺障害認定を受ける必要があります。次に、既に労災保険で受け取った金額とそこで補填できていない金額を計算します。さらに、任意で会社との示談交渉を行い、交渉がうまく行かなかった場合、損害賠償訴訟で解決を目指します。この際、会社の賠償責任を立証するための証拠集めも並行して行います。弁護士は、障害等級認定のサポートや既払い金および損害額の計算をするほか、会社との示談交渉や、交渉が決裂した場合は訴訟提起を行います。

労災で骨折した場合に知っておきたいこと

労災で骨折した場合、知っておくとよい注意点を解説します。

重複して損害の填補は受けられない

労災保険給付を受けた上で、相手方に損害賠償請求をする場合、既に労災保険や自賠責などで受領済みの補償については、既に払われたものとして、賠償金から控除されます。これは、二重補填という不合理を解消するべく、損益相殺的な処理が行われるためです。

例えば、労災保険の休業給付及び障害一時金については、休業損害及び後遺障害による逸失利益の金額で調整されます。ただし、労災保険は被災労働者などの財産的損害の補償を目的としているため、慰謝料には影響を与えません。そのため、慰謝料については、保険給付との調整とは無関係に請求できます。

また、労働者にも注意義務違反など過失が認められる場合は、損害のうち一定割合の賠償責任が控除される「過失相殺」があることも覚えておきましょう。

第三者行為により骨折した場合の対応について

骨折の賠償責任が、会社だけでなく、第三者にあるケースもあるでしょう。例えば、通勤途中に交通事故に遭う、業務で道路を通行中に建設現場からの落下物に当たるなどが、これに該当します。このように第三者の過失や故意が原因の災害である場合は、第三者に損害賠償を請求できるとともに、労災保険給付も受けられます。

労災による骨折について相談するなら、弁護士法人ブライトへ

労災の骨折事故での対応は、専門的知識を有する弁護士に相談すると安心です。弁護士法人ブライトでは、労災問題に特化した「労災事故専門チーム」を擁しています。経験豊富な弁護士が、クライアントの経済的補償や損害を回復するべく適切に対応するため、ぜひ早い段階でご相談ください。症状固定と判断される前に相談していただくことで、適切な後遺障害等級の認定を得るためのサポートも可能です。

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笹野 皓平

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事務所名 弁護士法人 ブライト(大阪弁護士会所属)
開 業 平成21年(代表弁護士独立開業)
設 立 平成24年11月設立、平成27年1月に法人化
所在地 〒530-0057 大阪府大阪市北区曽根崎2丁目6番6号 コウヅキキャピタルウエスト12階
TEL 0120-931-501(受付時間9:00~18:00)
FAX 06-6366-8771
事業内容 法人向け(法律顧問・顧問サービス、経営権紛争、M&A・事業承継、私的整理・破産・民事再生等、契約交渉・契約書作成等、売掛金等の債権保全・回収、経営相談、訴訟等の裁判手続対応、従業員等に関する対応、IT関連のご相談、不動産を巡るトラブルなど)、個人向け(交通事故・労災事故を中心とした損害賠償請求事件、債務整理・破産・再生等、相続、離婚・財産分与等、財産管理等に関する対応、不動産の明渡し等を巡る問題など)

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