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労災の支給決定通知書が届かない?考えられる原因と対処法

労災事故の申請後に「支給決定通知書」がなかなか届かず不安になっていませんか? 労働災害(労災)保険の給付申請をした後、通常は労働基準監督署から支給の可否を知らせる「支給決定通知書」が郵送されます。

しかし、通知が届かない場合には様々な原因が考えられ、適切に対処することが重要です。

本記事では、支給決定通知書とは何か、届くまでの期間、届かない場合の原因、そして届かないときの対処法や不支給決定通知書(給付不可の通知)が届いた場合の対応策について、厚生労働省など信頼できる情報をもとに詳しく解説します。労災に関するトラブルを抱えている人たちは参考にしてみてください。

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労災の支給決定通知書とは?

「支給決定通知書」とは、労災保険給付の申請に対し給付できるかどうか、また給付できる場合はその決定額を受給者に知らせる文書です。労働基準監督署で労災保険給付の審査が完了すると、結果がこの通知書で郵送されます。

通知書には承認された給付の種類(療養補償給付、休業補償給付、障害補償給付など)や支給額、支給対象期間などが記載されます。労災保険から給付できないと判断された場合でも、同様に「不支給決定通知書」(給付不承認の通知)が送付されます。

支給決定通知書は一般にハガキ形式で届くことが多く、労働基準監督署長名で発行されます。場合によっては厚生労働省本庁から振込に関する「支払振込通知」と一体になったハガキで届くケースもあります。この通知書を受け取ることで、労災給付が正式に認められたことや支給額を確認でき、以降の振込手続きへと進みます。

支給決定通知書が届くまでの期間はどのくらい?

労災給付の支給決定通知書が届くまでの期間は、請求する給付の種類や事案の難易度によって異なります。一般的な目安としては申請から1〜3か月程度で支給決定の通知が郵送されることが多いとされています。厚生労働省が公表している資料によれば、以下のような標準的な審査期間の目安が示されています。

  • 療養(補償)給付(ケガや病気の治療費の給付)や休業(補償)給付(休業中の賃金補償)の場合:請求受付からおおむね1か月程度で給付決定。ただし内容によっては1か月以上かかることもある。
  • 障害(補償)給付(後遺障害が残った場合の給付)の場合:障害等級の認定等が必要なため、請求受付からおおむね3か月程度。場合により3か月以上かかるケースもある。
  • 遺族(補償)年金・遺族一時金(労災で労働者が亡くなった場合)の場合:請求受付からおおむね4か月程度。事案によっては4か月を超えることもあります。

以上はあくまで目安であり、「問題がなければ1〜2か月以内に通知が届く」場合もありますが、複雑なケースでは3〜4か月以上要することもあります。

例えば負傷の原因が明確な労災(転倒事故や機械による外傷など)であれば比較的早く認定されますが、過重労働やストレスによる疾病(精神疾患、過労による心疾患など)の場合は業務との因果関係の調査に時間を要しがちです。

また、請求件数が多い繁忙期(年度末・年度始め等)や都市部の労基署では、審査が通常より遅れることもあります。

支給決定通知書が届かない原因

通常の目安期間を過ぎても支給決定通知書が届かない場合、以下のような原因が考えられます。

原因1:申請書類の不備・手続き上のミス

提出した請求書や添付書類に記入漏れや誤記、必要書類の不足など不備があると、労働基準監督署から確認や訂正の連絡が入るため審査がストップし、結果として通知の発送が遅れます。

例えば日付や休業期間の不整合、計算誤り、押印漏れ等の細かなミスでも慎重に確認されるため、その分処理が長引く恐れがあります。手続き段階で会社(事業主)の証明が滞っている場合(会社側の対応遅れ)も、申請自体が先に進まず通知が出ない原因になります。

原因2:労働基準監督署での審査遅延

上記のような書類不備がなくても、労基署の調査・審査そのものに時間がかかっている可能性があります。業務上かどうかの判断が難しいケース(通勤災害か業務災害かの判断、職場外での発病など)や、追加の証拠集めが必要なケースでは認定まで通常以上の時間を要します。

また一度に多数の労災申請を抱えている場合や担当者の人手不足など、行政側の事情で処理が遅延していることも考えられます。特に複雑な災害では半年以上かかる例もあり、審査中であるため通知書がまだ発送されていない状況かもしれません。

原因3:郵送上のトラブル(配送遅延・誤配など)

労災の支給決定通知書は基本的に申請者の自宅あてに郵送されます。そのため、郵便事情による遅配や住所の記載間違い・転居未届け等による誤配・不達といった可能性も否定できません。

実際に、保険給付の通知について「決定処理を行った申請には支給決定通知書をご自宅まで送付しているが、郵送の状況により到着まで時間を要する場合もある」旨が案内されています。遠方からの発送や郵便事情によっては通常より日数がかかったり、何らかのトラブルで通知が戻ってきてしまうケースもあり得ます。

以上のように、書類上の問題・審査プロセスの問題・郵送上の問題が主な三大要因といえます。それぞれが原因の場合、対処法も異なりますので、次章で具体的な対応策を確認しましょう。

支給決定通知書が届かない場合の対処方法

予定より通知が届かない場合は、まず落ち着いて以下の対策を検討してください。

方法1:労働基準監督署へ問い合わせる

最初にすべきは、所轄の労働基準監督署に現在の審査状況を確認する連絡を取ることです。申請から相当期間が経過しても音沙汰がない場合、労基署に直接問い合わせれば、審査が遅れている理由や現在の進捗を教えてもらえることがあります。

問い合わせの際は、労災の受付番号や氏名・事案の概要などを伝えるとスムーズです。労基署側で既に支給決定が下りているのに通知書が届いていないような場合も、連絡することで再送等の対応を検討してもらえるでしょう。

方法2:申請内容・書類の再チェック

労基署に問い合わせる前後で、自分の提出書類に不備がなかったか再確認することも大切です。もし記入漏れや添付漏れに心当たりがあれば、その点を労基署に伝えて指示を仰ぎましょう。

労基署から「●●の書類が不足している」「会社からの報告待ち」など具体的な指摘を受けた場合は、速やかに対処します。不備の補正に時間がかかっている間は通知書も当然発送されません。不安な場合は社労士や弁護士など専門家に相談し、書類をチェックしてもらうのも有効です。

郵便事故への対応

郵送上の問題が疑われる場合、住所の届出に誤りがなかったか確認します。引っ越し等で郵便局に転送届を出していなかったり、申請書の住所欄を間違えて記入していると、通知書が返送されてしまうことがあります。その場合、労基署に連絡して正しい住所を伝え、再送を依頼しましょう。

郵便局の保管期限切れで戻ってしまうケースもあるため、早めの問い合わせが肝心です。また、支給決定通知書そのものの再発行は原則できませんが、代替手段として支給決定内容を証明する書面(支給決定証明書)を発行してもらえる場合があります。

管轄の労基署に事情を説明し、必要に応じて証明書発行を相談してください。

なお、労基署から「現在審査中でもうしばらく時間がかかる」と説明を受けた場合は、その指示に従いましょう。特に複雑なケースでは時間を要するのはやむを得ませんので、記録を取りつつ待機します。

ただし、あまりにも長期間(例えば半年以上)通知が来ない場合や、労基署からの回答に不明点がある場合は、改めて状況確認の問い合わせをして構いません。必要であれば先述の専門家にも状況を共有し、アドバイスを受けると安心です。

不支給決定通知書が届いた場合の対応策

万が一、届いた通知書が給付決定ではなく「不支給決定通知書」(労災給付を支給しない旨の通知)だった場合の対応について説明します。

不支給決定通知書とは、申請した労災保険給付について「支給しない」という決定を伝える文書で、労働基準監督署長名で発行されます。この通知書が届いたということは、残念ながら労災保険としては給付認定されなかったことを意味します。

ただし、ここで諦める必要はありません。労災申請者には決定に不服がある場合、行政不服申立て(審査請求)を行う権利が保障されています。

不支給決定への主な対応策:

  • 審査請求を検討する:労災保険の不支給決定に納得できない場合、まずは審査請求によって異議を申し立てることができます。審査請求先は都道府県労働局の「労災保険審査官」で、通知書受領後に所定の審査請求書を提出することで手続きを開始できます。審査請求の期限は通知書を受け取った翌日から起算して3か月以内と法律で定められており、この期間を過ぎると正当な理由がない限り原則として不服申立てができなくなるため注意が必要です。期限が短いので、通知を受け取ったら早めに行動しましょう。
  • 専門家に相談する:審査請求の書面作成や主張立証には専門的な知識が求められます。できれば労災に詳しい弁護士や労働組合などに相談し、サポートを受けることをおすすめします。弁護士であれば、審査請求の段階から代理人となって意見書を作成したり、今後の見通しについてアドバイスしてくれるでしょう。特に業務との因果関係の立証など争点が専門的な場合、一人で対応するより専門家の助力を得た方が成功の可能性が高まります。
  • 再審査請求・訴訟も視野に:審査請求の結果(労災保険審査官の判断)にも不服がある場合は、さらに上級の審査機関である労働保険審査会への再審査請求を行うことができます。再審査でも覆らない場合には、最終的に行政訴訟(処分取消訴訟)で司法の場に訴えることも可能です。ここまで進むケースでは法的な争いになりますので、やはり弁護士と相談しながら進めるのが現実的です。なお、不支給となった場合でも健康保険の適用など他の制度で救済を受けられるケースがあります。労災が認められなかった負傷・疾病については、健康保険で治療費給付を受けたり、会社に対して民事上の補償を求める選択肢もあります(詳細は専門家にご相談ください)。

まとめ

労災の支給決定通知書が届かないと不安になりますが、まずは冷静に原因を推測し、然るべき機関に確認することが大切です。書類不備や審査遅延が原因であれば適切に対処すれば解消できますし、郵便上の問題であれば再送等の措置で解決できる可能性があります。

通常、申請から通知までは1〜3か月程度が目安ですが、状況によってはさらに時間がかかることもあります。長期間音沙汰が無い場合は迷わず労基署に問い合わせましょう。

また、通知書が不支給(給付不可)だった場合でも、異議申立て制度(審査請求)によって救済を求める道が用意されています。期限が限られていますので、早めに行動を起こし、必要に応じて専門家の力を借りることが重要です。

労災保険は労働者の権利を守るための制度ですので、適切な手続きを踏めば正当な給付を受けられる可能性があります。不安なときこそ一人で抱え込まず、労基署や弁護士等に相談しながら進めていきましょう。

  • この記事を書いた人

笹野 皓平

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