この記事でわかること
- 小規模のM&Aでも弁護士が必要な理由
- 仲介任せ・AI契約書で起きやすい買い手側リスク
- 相談すべきタイミングと判断基準
この記事のポイント
- 買い手は「未知」を買うためリスクが集中する
- 仲介会社は成約インセンティブがあり、買い手側の最適解とは限らない
- 取り決めは「基本合意」で固まる=契約書チェックの前に相談すべき
M&Aを検討しているとき、ふと頭をよぎるのが「この規模なら弁護士は不要では?」という迷いです。特に小規模案件では、仲介会社が動いてくれていたり、AIで契約書が“それっぽく”作れたりするため、法務コストを削りたくなるのも自然な流れでしょう。
しかし、M&Aは「買うかどうか」、買うとして「どう買うか」、そして具体的な条件については契約書に記載されているものがすべてです。そして構造的に、買い手が最もリスクを背負う立場になります。だからこそ、M&Aを検討する段階から、良き相談相手としての専門家が必要です。
この記事では、買い手側の経営者が後悔しないために、弁護士へ相談すべき判断基準を整理します。読み終えたとき、あなたは「今、何を確認すべきか」が明確になるはずです。
目次
小規模のM&Aほど「弁護士はいらない」と思いやすい理由
小規模のM&Aの現場では「この程度なら自社で処理できそうだ」と判断されがちです。
あるサービス業の経営者は、事業拡大のために同業の小さな事業を買うことを検討していました。仲介担当者からは「条件もきれいですし、契約はテンプレで十分です」と言われ、費用も抑えたい気持ちが強くなったそうです。
実際、AIで契約書のたたき台を作れば、文章自体は整って見えます。ただし問題は、契約書が「文章として整っているか」ではなく、買収後に起こり得る不利益を見据えて適切な防御策を講じられているかどうかです。M&Aは“雰囲気の合意”ではなく、法的に拘束される合意の積み重ねです。規模が小さいほど管理部門が弱く、数字や契約の整備が追いついていないことも珍しくありません。小規模だから安全、ではなく、小規模だからこそ地雷が見えにくい。ここが最初の落とし穴です。
買い手が最もリスクを背負う構造を理解する
買い手は「未来」を買います。つまり、過去の数字や資料だけでなく、将来の運営まで背負う側です。
例えば、買収対象の取引が特定の1社に依存していた場合、その取引が消えれば事業の前提が崩れます。実際に、買収後に主要取引先が離れ、想定していた収益計画が成立しなくなるケースはあります。しかし契約書に「主要取引が継続する保証」や「契約の前提となった決算書の金額についての保証」などが整理されていなければ、買い手は打つ手が限られます。
このとき、買い手は「聞いてなかった」と言っても通りにくい。なぜならM&Aは、基本的に契約書に書かれた内容が世界のルールになるからです。買い手が最も慎重であるべき理由は、道徳ではなく構造です。
仲介会社に任せきりが危ない本当の理由
仲介会社は重要な役割を担いますが、ビジネスモデル上「成約して初めて利益が出る」構造があります。つまり、仲介会社のゴールは基本的に成約です。ある製造業の経営者は、仲介会社から提示された資料を見て「これは買うべきだ」と気持ちが固まりました。ところが、契約条件を詰める段階で、売り手側には既に弁護士が入り、責任範囲が最小化される条項が丁寧に入っていたのです。
売り手側は「後で揉めない」ために守りを固めます。一方、買い手が仲介会社任せで動くと、交渉の論点や条項の意味を理解しないまま進んでしまいます。結果として、買い手だけが丸腰になる。仲介会社任せが危ないのは、仲介会社が悪いからではなく、立場が違うからです。
AI契約書は“入口”であって“答え”ではない
AIで契約書を作ること自体は否定されるものではありません。実務でも下書き作成や論点整理に使える場面はあります。しかし、AIは「あなたの買収案件の地雷」を勝手に見抜いてはくれません。例えば、従業員の引継ぎ、未払い残業代、解約できないリース、口約束の取引、名義の整理不足など、現場の事情は案件ごとに異なります。
ある経営者はAIで作った契約書に満足し、成約直前まで進めていました。しかし、よく見ると「引き継がない負債の定義」が曖昧で、買収後に想定外の支払い義務が発生し得る状態でした。文章は整っていても、リスク整理としては未完成だったわけです。AIは便利ですが、判断責任を負うのは経営者です。契約書は“きれいな文章”よりも“事故らない設計”が重要です。
弁護士は「事業戦略(どう買うか)」の相談相手
とはいえ、「弁護士に相談=契約書の赤入れ」というイメージだけで止まってしまう人も多いでしょう。そんなあなたに伝えたいのは、M&Aにおける弁護士の価値はむしろ経営判断のブレーキ役にある、という点です。 経営者は買いたい気持ちが強くなるほど、リスクが見えにくくなります。そこで、あえて斜めから「その条件だと危ない」「その買い方は損をする可能性がある」と言える第三者が必要です。
たとえば、株式譲渡で買うのか、事業譲渡で買うのか。どの資産を引き継ぎ、どの負債を切り分けるのか。価格は妥当か。ここは契約書の文言以前に、事業戦略そのものです。弁護士は、契約だけではなく「買うべきか」を含めて整理する相談相手になれます。
弁護士への相談は「基本合意」の段階から
多くの経営者が「弁護士には最終契約書のリーガルチェックを頼めばいい」と考えています。しかし、それでは手遅れになるケースが少なくありません。 なぜなら、M&Aの骨組み(スキームや価格、主要な条件)は、その手前の「基本合意書(LOI)」の段階で固まってしまうからです。
例えば、「株式譲渡にするか、事業譲渡にするか」といった「買い方」の選択は、税務リスクや引き継ぐ負債の範囲を決定づける最重要事項です。これを基本合意で握ってしまった後に、最終契約の段階で覆すことは実務上非常に困難です。
弁護士への相談は、単なる「答え合わせ(契約確認)」ではなく、「設計図作り(基本合意)」の段階から行うのがベストです。 「どういう買い方をすればリスクが低いか」を最初に相談できていれば、後のデューデリジェンスや最終交渉も、買い手主導の有利な条件で進めることが可能になります。
弁護士選びで失敗しない判断基準(買い手側の視点)
弁護士は誰でも同じではありません。M&Aでは特に「立ち位置」と「視点」が重要です。買い手側に必要なのは、仲介会社の意向に合わせて成約へ進める人ではなく、依頼者の利益を最優先に考える人です。場合によっては「買わない」という結論を出せるかどうかが、実は最大の判断軸になります。
また、中小企業のM&Aは、数字の整備が十分でない、管理部門が弱い、ワンマン経営になっている等の特徴が出やすい領域です。こうした現実を知っている弁護士ほど、表面的な契約チェックではなく、実態を踏まえた論点整理ができます。最終的には「契約書を整える」ではなく「経営として事故らない」ことが目的です。その視点で伴走できる専門家を選ぶことが、成功確率を上げます。
ブライトが提供できる支援の考え方(相談先の選択肢として)
弁護士法人ブライトは、単なる契約書チェックに留まらず、M&Aを重要な事業戦略と捉え、経営者の意思決定に伴走する支援を重視しています。仲介会社が成約を優先しがちな局面でも、依頼者の利益を第一に考え、必要であれば「買わない」という選択肢も含めて誠実に助言します。
また、多様なM&A相談に触れてきた知見から、中小企業特有のつまずきポイントを前提にリスクを洗い出すことが可能です。買い手側が背負うリスクを理解した上で、価格・スキーム・引継ぎ条件を整理し、後悔のない判断につなげます。
まとめ
M&Aで弁護士が必要か迷ったときは、「契約書がきれいか」ではなく「買い手が事故らない設計になっているか」で判断するのが本質です。
- 小規模のM&Aほど法務コストを削りたくなるが、地雷は見えにくい
- 仲介会社は成約インセンティブがあり、買い手の利益と一致しないことがある
- AI契約書は便利でも、案件固有のリスクを自動で潰してはくれない
- 弁護士は契約書チェックだけでなく、買う・買わないの判断を支えるブレーキ役
- 弁護士に相談するなら「基本合意」の前が最も合理的
悩んでいる時点で、すでに判断は難しくなっています。買収を成功させるために、まずは現状の条件が「買い手に不利になっていないか」を専門家視点で整理することから始めましょう。
FAQ:よくある質問
Q1. 小規模のM&Aでも弁護士に相談した方がいいですか?
はい。規模が小さくても、買い手は事業運営の責任を引き継ぎます。契約書に整理されていないリスクは成約後に顕在化しやすく、「後の祭り」になりがちです。特に仲介任せ・AI契約書で進める場合は、事前に専門家視点で論点整理することをおすすめします。
Q2. 仲介会社がいるのに、別で弁護士を立てる必要はありますか?
必要性は高いです。仲介会社は成約が成果になりやすく、買い手側の最適解と一致しない場面があります。買い手が背負うリスクを前提に、自社の立場で条件やスキームを整理してくれる弁護士がいると、判断の質が上がります。





