この記事でわかること
- 下請け契約で“会社が飛ぶ条項”を見抜き、契約前に修正・交渉してリスクを最小化する方法がわかる。
この記事のポイント
- 下請けの契約書は「上位契約の丸写し」で危険条項が混入しやすい
- 保証(契約不適合責任)と損害賠償の設計次第で“無限責任”になる
- 拠保管+個別契約の工夫で、対等に交渉できる
「契約書は上から降ってくるものだから、変えられない」――そう思っていませんか。しかし、下請け取引の契約書には、元請け側が負うはずの責任まで下請けに転嫁されているケースがあります。しかもそれは、サインした瞬間に始まります。
実際に、ある設備工事の案件で「いつもの契約」と思って押印しかけた経営者が、条文を読み返して青ざめました。保証期間が不自然に長く、損害賠償の範囲も際限がない内容だったからです。結論から言うと、こうした“無限責任”は、契約前のワンクッション相談と交渉で回避できます。
弁護士法人ブライトでは、契約書だけでなく、見積書・仕様書との整合まで含めてスピーディに確認し、現場感覚に即した修正方針を整理します。「このままサインしていいか不安」なら、一度ご相談ください。
目次
下請け契約の落とし穴は「丸写し契約」にある
下請け現場では、上位会社が元請けから受けた契約内容を、そのまま下流へ流すことがあります。名義だけ差し替えて、条文の構造はほぼ同じ。これがいわゆる「丸写し契約」です。
ある案件では、二次下請けの会社が工事を受ける際、一次下請けから基本契約書が届きました。ぱっと見は一般的な契約に見えますが、よく読むと“上位会社が負うべき管理責任”まで、下請け側に寄せられていました。経営者は「いつもこうだから」と流しかけましたが、現場責任者が「この条文、重くないですか」と指摘し、社内で違和感が膨らんだそうです。
丸写し契約が怖いのは、上位のリスク構造をそのまま背負わされる点です。元請けが発注者から求められる条件(長期保証、広い賠償範囲、厳しい検査義務)が、そのまま下請けの責任として設計されてしまいます。一度サインすると「知らなかった」は通りにくく、後戻りが難しくなります。だからこそ最初に、契約の“骨格”を疑う必要があります。
「契約不適合責任」が伸びるほど、会社の未来が不安定になる
契約書で特に注意したいのが、施工後の保証に関わる「契約不適合責任(いわゆる瑕疵対応)」です。要するに、後から不具合が見つかったときに、誰がどこまで責任を負うか、という設計です。
設備や電気系の工事は、完成直後に問題が出るとは限りません。稼働後しばらくしてから不具合が表面化することもあります。ある会社では、引き渡し後かなり経ってから「動作が不安定だ」と連絡が入りました。原因は利用環境の変更も絡んでいて、施工品質だけの問題とは言い切れない状況。それでも契約上の保証期間が長いと、下請け側が“まず対応する側”にされてしまい、現場と経営が削られていきます。
保証期間が長いほど怖いのは、費用だけではありません。人員が取られ、予定していた案件が遅れ、結果として売上機会まで失う。つまり、契約不適合責任の設計は「法務」ではなく、経営の継続性そのものの話です。
とはいえ、すべての保証を拒否するのは現実的ではありません。大事なのは、業界の標準感に照らして「合理的な範囲」に整えること。契約前なら、その交渉は可能です。
損害賠償が「総額転嫁」型だと、一発で資金繰りが崩れる
もう一つの地雷が「損害賠償条項」です。特に危険なのは、賠償範囲が曖昧で、上位会社が負った損害まで下請けに転嫁され得る形になっているケースです。
実際にあった相談では、条文に「発注者から請求された損害の範囲で賠償する」と読める文言が入っていました。これは解釈によって、発注者→元請けへの請求が膨らんだ場合、そのまま下請けにも降ってくる余地がある、ということです。下請けとしては、実際に施工した範囲の責任は負うにしても、上位の管理や設計、運用判断まで含めた“総額”を負うのは不合理です。
経営者が怖いと感じるのは当然で、これは利益計算の前提を壊します。どれだけ案件の粗利が良くても、事故時に上限が見えないなら、経営としては“やってはいけない仕事”になります。
このタイプの条項は、契約書を読むだけでは気づきにくいのが厄介です。文言が丁寧で、一見フェアに見えるからです。だからこそ、「賠償の上限」「責任の範囲」「原因との因果関係」など、分解してチェックする必要があります。
交渉の鍵は「基本契約」ではなく、個別契約で守ること
下請け側がよく陥る誤解があります。「基本契約が絶対だから、変えられない」という思い込みです。しかし現実には、基本契約が強くても、個別契約(見積書・仕様書・発注書)で条件を補強できる余地があります。
ある工事案件では、基本契約の保証に関する条文が重く見えました。そこで下請け側は、見積書の条件欄に「保証期間は一定期間とする」「対象範囲は施工箇所に限る」といった整理を入れ、仕様書にも同趣旨の注意事項を記載しました。このやり方は、現場で運用しやすいのが利点です。丸ごと契約書を書き換えなくても、意思表示として残し、交渉の材料にできます。
もちろん、相手が「基本契約が優先」と押してくることもあります。そんなあなたに必要なのは、“法律論で勝つ”ことではなく、合理性で対等に話す武器です。業界標準、責任分界、運用実態、証拠の残し方。これらをセットで提示すると、交渉は現実味を帯びます。
証拠(施工データ)を残せば、後から理不尽に負けにくい
契約交渉と並んで重要なのが、施工の証拠を残す運用です。「写真を撮るくらいで意味あるの?」と思われがちですが、これは後日の紛争で効きます。
ある現場では、締付けや配線など、後から見えなくなる工程が多くありました。そこで担当者は、規定値に沿った作業をした証拠として、要所の写真・検査記録を保管するようにしました。後日、不具合の指摘が入ったとき、証拠がなければ、相手側は「施工が悪い」と言いやすくなります。しかしこちらが「当時の基準に沿って施工した」ことを示せれば、議論は一方的になりにくいのです。
ここで重要なのは、証拠の目的が“完璧な証明”ではないことです。争点になったときに、相手の主張に対して「本当にそうですか?」と返せる材料を持つ。それが経営防衛になります。
証拠保管は現場の負担にもなるので、全部やる必要はありません。トラブルになりやすい工程、後から確認できない工程、責任を押し付けられやすい工程――そこに絞れば十分現実的です。
「受けない」という判断も、会社を守る立派な経営戦略
交渉しても条件が改善しない。責任範囲が不合理なまま。その場合、最終手段はシンプルです。「受けない」。
これを言うと極端に聞こえますが、下請け企業ほど“受けない判断”が必要です。ある経営者は、契約条項を見て「この条件で受けたら、社員を守れない」と判断し、案件を見送りました。短期的には売上が減る選択です。しかし、事故一発で会社が傾くリスクを避けたという意味で、合理的な経営判断です。
仕事は取り替えがききます。信用と会社は、取り替えがききません。特に、損害賠償が総額転嫁型で、保証が長期化するような契約は、利益よりも損失が支配する構造になりやすいです。この“構造”に気づけるかが、経営者の分かれ道です。
契約前に弁護士へ「ワンクッション相談」するのが最短ルート
結局のところ、下請け契約で会社を守る最も確実な方法は、契約前に専門家へ相談することです。揉めてからでは、選択肢が減ります。サインする前なら、選択肢が増えます。
弁護士法人ブライトでは、契約書単体のチェックではなく、見積書・仕様書・発注条件との整合を含めて論点を整理し、「どこが危険で、どう直すか」を実務レベルで提示します。さらに、議論した内容を整理して共有することで、社内説明や相手との交渉も進めやすくなります。
「弁護士に相談すると大げさでは?」と思うかもしれません。ですが実態は、判を押す前の安全確認です。会社と従業員を守るための、経営の基礎動作です。
相談前に準備すべき資料(これだけで話が早い)
最後に、相談の精度とスピードを上げるために、準備しておくと良い資料を整理します。これは実務的に効きます。
- 契約書(基本契約・個別契約・覚書があれば一式)
- 見積書(条件が書いてあるもの)
- 仕様書・発注書(要求仕様、検査条件)
- 工程や検査の記録(現場で残している範囲でOK)
- 相手からの指摘メールや議事メモ(あれば)
これだけ揃っていれば、「どの条文が危ないか」だけではなく、「どう直すか」「交渉できるか」まで現実的に検討できます。今まさにサイン直前なら、先延ばしせず、まずは一度ご相談ください。
まとめ
下請け契約で怖いのは、条文の難しさではなく「構造」です。上位契約の丸写しで、下請けが無限責任を背負わされると、利益が出ても事故一発で会社が傾きます。
- 丸写し契約は責任転嫁の温床になりやすい
- 契約不適合責任(保証)と損害賠償が“無限化”すると危険
- 個別契約(見積・仕様)で条件を個別化して交渉できる
- 証拠(施工データ)を残すと、後から負けにくい
- 条件が不当なら「受けない」も経営判断
そして最も効果的なのは、判を押す前のワンクッション相談です。契約書・見積書・仕様書をまとめて確認し、会社と従業員を守る判断を取りに行きましょう。
FAQ:よくある質問
Q1. 下請けでも契約内容は交渉できますか?
可能です。基本契約の全面修正が難しくても、見積書・仕様書など個別契約側で条件を明記し、責任範囲や保証期間を合理化する交渉は現実的に行えます。特に「業界標準」「責任分界」「運用実態」を根拠に整理すると、対等に話しやすくなります。
Q2. 証拠(写真や記録)は何を残せばいいですか?
すべてを残す必要はありません。後から確認できない工程や、トラブルになりやすい工程(締付け、接続、検査結果など)に絞って、写真・検査記録を保管するのが現実的です。「当時の基準に沿って施工した」ことを示せるだけで、理不尽な責任追及を受けにくくなります。





