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近年、企業を取り巻くハラスメント問題は多様化しており、職場におけるパワーハラスメントやセクシュアルハラスメントに加え、顧客や取引先からの迷惑行為であるカスハラが深刻な課題として認識されています。 かつて「お客様は神様」という言葉が尊重された時代もありましたが、現代においては、企業利益の重視、そして何よりも従業員の安全と労働環境の保護が重要な経営課題となっています。 利益重視の時代において、企業は自社にとっての顧客を明確に見定め、そうではない、むしろ害を及ぼす可能性のある顧客に対しては、毅然とした対応を取ることが求められています。なぜなら、企業の利益にとって従業員の保護は不可欠だからです。カスハラは従業員のモチベーションやメンタルヘルスを著しく悪化させ、ひいては離職や休職につながり、事業運営に深刻な影響を及ぼす可能性があります。社会的な責任という観点からも、従業員のメンタルを犠牲にしてまで顧客の要求に応え続けることは、批判を招くでしょう。 そこで重要となるのが、自社にとっての「顧客」を明確に定義し、顧客とは言えない対象からの不当な要求や迷惑行為に対しては対応しない、という方針を確立することです。この判断基準を明確にマニュアル化し、現場の担当者レベルでも適切に判断できるようにしておくことが、現代の企業にとって不可欠なカスハラ対策と言えるでしょう。
近年において、企業が解決しなければいけない重大な課題の一つがカスハラです。接客業やサービス業を中心に被害が拡大しており、従業員の精神的負担や企業の対応コストの増加が深刻な問題となっています。
しかし、どこまでが正当なクレームで、どこからがカスハラに該当するのか、その線引きに悩む企業も少なくありません。 適切な対応を怠れば、従業員の離職や企業の評判を考えるリスクもあります。
カスハラとは、顧客、取引先、施設利用者その他の利害関係者が行う、社会通念上相当な範囲を超えた言動で、労働者の就業環境が害されるものと定義されます。厚生労働省によると、カスハラは以下の3つの要素をすべて満たすものとされます。
かつては、顧客からの意見や要望は真摯に受け止められるべきという考え方が強く、「お客様は神様」という言葉に代表されるように、顧客上位の意識が根強く存在していました。
しかし、社会構造の変化、インターネットやSNSの普及による情報発信力の増大、そして企業における従業員保護の意識の高まりなどを背景に、過剰な要求や迷惑行為はハラスメントとして認識されるようになってきました。特に、人材不足が深刻化する介護業界においては、職員が安全に働ける環境整備が急務となっており、カスハラ対策の重要性はますます高まっています。
カスハラが社会問題として広く認識されるようになった背景には、複数の要因が考えられます。
まず、顧客側の権利意識の高まりが挙げられます。情報化社会において、消費者は容易に商品やサービスに関する情報を入手でき、自身の権利を強く主張する傾向があります。これは必ずしも悪いことではありませんが、一部の顧客においては、その権利意識が過剰になり、理不尽な要求や攻撃的な言動に繋がるケースが見られます。
次に、サービス業の多様化と競争の激化も影響しています。企業は顧客満足度を高めるために様々なサービスを提供していますが、その結果、顧客からの要求水準も高まり、対応する従業員への負担が増加しています。
また、競争が激化する中で、顧客を失うことへの恐れから、企業側が顧客の過剰な要求を黙認してしまうケースも少なくありません。
さらに、インターネットやSNSの普及は、カスハラを拡散させ、企業イメージを大きく損なうリスクを高めています。顧客による不当なクレームや従業員への暴言などがSNSで拡散されれば、企業は社会的信頼を失い、採用活動や事業運営にも悪影響を及ぼしかねません。
そして、企業における従業員保護の意識の高まりも、カスハラ問題が注目されるようになった重要な要因です。従業員の心身の健康は、企業の持続的な成長にとって不可欠であり、ハラスメントのない快適な職場環境の整備は、企業の安全配慮義務の一環として認識されています。
「カスハラに関する基礎知識と法律」について詳細を知りたい方は、以下の記事で詳しく解説してますので、ぜひ合わせてご覧ください。
では、具体的にどのような行為がカスハラに該当するのでしょうか。「対応が悪い」と大声で怒鳴り続ける行為、根拠のないクレームを何度も繰り返す行為、従業員に対して個人を否定するような暴言を吐く行為などはカスハラの典型例です。
カスハラは、業種や業態を問わず様々な現場で発生しており、その態様も多岐にわたります。カスハラの事例としては、以下のようなものが挙げられます。
暴行・傷害などの身体的な攻撃 | ・家賃を支払うよう伝えた賃貸保証会社の従業員の首元を掴み壁に押し付ける(不動産会社)。 ・鉄道係員に体当たり・頭突きをする(鉄道会社)。 ・酩酊状態の乗客が声をかけた鉄道係員に殴りかかる(鉄道会社)。 ・「こっちは客だぞ!」と胸ぐらをつかむ。 |
暴言・脅迫などの精神的な攻撃 | ・「死ね」「馬鹿」などの暴言を吐く。 ・「今から行くから首を洗って待ってろ」「インターネットでさらしてやる」などと脅迫する。 ・「ぶっ殺すぞ!」と吐き捨て、強くカウンターを叩く。 ・「ババア!」「役立たず!」などと暴言や大声を出す。 ・「名前は覚えたからな!お前の店の接客、動画にとってSNSで拡散するぞ!」などと脅迫まがいの言動をする。 |
不当な要求 | ・商品に傷がついていたとして店員に土下座を要求する。 ・利用者家族が執拗に過度なケアを要求する(介護施設)。 ・汚れがないのに宿泊のたびに清掃不備を指摘し、部屋のグレードアップの要求または客の前での清掃を要求する(ホテル)。 ・合理的な理由なく金品を要求する。 ・不合理な特別待遇を要求する。 |
継続的・執拗な言動 | ・短時間に集中して「殺すぞ」「センターに行く」などの暴言のほか、無言の入電を100回以上繰り返す(鉄道会社)。 ・何回も同じ内容を繰り返すクレーム。 ・休日、深夜にわたり執拗に電話を入れてくる。 |
拘束的な行動 | ・6時間に及ぶ長電話をする(市役所)。 ・真夏の炎天下の中、配達員に対し長時間の説教をする(運送会社)。 ・「お前じゃ話にならない。本部の人間呼べよ!来るまで帰らないぞ!」などと言い、店舗に居座る。 |
カスハラの発生は、従業員だけでなく企業全体に様々な悪影響を及ぼします。
1.精神的なストレス
暴言、脅迫、不当な要求などは、従業員に大きな精神的苦痛を与え、不安、恐怖、抑うつなどの症状を引き起こす可能性があります。
2.モチベーションの低下
理不尽な対応を強いられることで、仕事への意欲が低下し、エンゲージメントの低下に繋がります。
3.離職・休職
深刻なカスハラ被害は、従業員の離職や休職の原因となり、人材不足を悪化させる可能性があります。
4.心身の健康被害
ストレスの蓄積は、自律神経の乱れや免疫力の低下を招き、様々な心身の不調を引き起こす可能性があります。
職場の雰囲気悪化: 一人の従業員がカスハラの被害を受けると、他の従業員にも不安や恐怖が広がり、職場の雰囲気が悪化する可能性があります。
1.生産性の低下
従業員のモチベーション低下や心身の不調は、業務効率の低下に繋がり、企業の生産性を損ないます。
2.人材採用への影響
劣悪な労働環境は、企業の評判を低下させ、優秀な人材の確保を困難にする可能性があります。
3.顧客満足度の低下
従業員が疲弊し、適切な顧客対応ができなくなることで、顧客満足度が低下する可能性があります。また、悪質なクレーマーへの対応に時間と労力を費やすことで、本来注力すべき顧客へのサービス提供が滞る可能性もあります。
4.安全配慮義務違反のリスク
企業がカスハラを放置し、従業員の安全配慮を怠った場合、損害賠償請求などの法的責任を問われる可能性があります。東京地方裁判所平成25年2月19日判決では、看護師が患者から暴力を振るわれた事例について病院の安全配慮義務違反を認め、約1900万円の賠償を命じています。
5.労災認定のリスク
カスハラによる従業員の精神疾患が労災として認定される可能性があります。
6.企業イメージの悪化
カスハラ問題への対応が不適切である場合、SNS等で情報が拡散され、企業のイメージが大きく損なわれる可能性があります。
7.事業継続のリスク
離職者の増加や訴訟リスクの高まりは、企業の事業継続を脅かす要因となり得ます。
カスハラの具体例について、以下の記事で業界ごとに実態と対策を詳しく解説しています。ぜひ合わせてご覧ください。
現時点では、カスハラそのものに特化した法律や全国的な条例は存在しません。しかし、カスハラの内容や状況によっては、既存の法律や条例が適用される場合があります。また、厚生労働省は指針等を示し、企業に対して適切な対応を求めています。
企業は、労働契約法第5条に基づき、従業員の安全に配慮し、健康を損なわないように労働させる義務を負っています。カスハラを放置し、従業員が精神的・身体的な苦痛を受けた場合、この安全配慮義務に違反したとして、損害賠償責任を問われる可能性があります。
カスハラの態様が悪質な場合、刑法上の犯罪に該当する可能性があります。
暴行罪(刑法第208条) | 身体的な暴行を加えた場合。 |
傷害罪(刑法第204条) | 暴行により人を負傷させた場合。 |
脅迫罪(刑法第222条) | 生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した場合。 |
恐喝罪(刑法第249条) | 脅迫や暴行を用いて人に財物を交付させたり、財産上の利益を得たりした場合。 |
強要罪(刑法第223条) | 脅迫や暴行を用いて、人に義務のないことを行わせたり、権利の行使を妨害したりした場合。クレーマーからの土下座や謝罪の強要は、強要罪に該当します。 |
威力業務妨害罪(刑法第234条) | 威力を用いて人の業務を妨害した場合。大声を上げる、物を叩く、居座るなどの行為が該当する可能性があります。 |
不退去罪(刑法第130条) | 正当な理由がないのに、人の看守する建造物等に侵入し、又は要求を受けたにもかかわらずこれらの場所から退去しなかった場合。店舗や会社などから退去を求められても退去しない場合は、不退去罪に該当します。 |
名誉毀損罪(刑法第230条) | 公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した場合。 |
侮辱罪(刑法第231条) | 事実を摘示しないで、公然と人を侮辱した場合。 |
令和2年6月に改正された労働施策総合推進法では、事業主に対して、職場におけるパワーハラスメントを防止するための措置を講じることが義務付けられました。この指針(令和2年厚生労働省告示第5号)では、パワーハラスメントに加えて、顧客等からの著しい迷惑行為(カスハラ)についても言及されており、事業主として相談体制の整備、被害者への配慮、対応マニュアルの作成や研修の実施等の取り組みを行うことが望ましいとされています。
一部の自治体では、迷惑行為防止条例などを制定し、カスハラを含む悪質なクレーム行為を規制する動きも出てきています。例えば、東京都では「迷惑行為防止条例」が改正され、カスタマーハラスメントに対する事業者の対策を促進する規定が盛り込まれています。
カスハラが発生した場合、企業は安全配慮義務に基づき、従業員が安心して働ける環境を整備する責任を負います。企業が適切な対策を怠り、従業員が被害を受けた場合、損害賠償責任を問われる可能性があります。具体的には、以下のようなケースで企業の責任が問われる可能性が高まります。
一方、顧客による言動が社会通念上相当な範囲を超え、従業員の就業環境を害するものであれば、顧客自身も法的責任を問われる可能性があります。具体的には、以下のようなケースで顧客の責任が問われる可能性があります。
カスハラから従業員を守り、企業運営への悪影響を最小限に抑えるためには、事前の対策と発生時の適切な対応が不可欠です。
カスハラ対策の第一歩として、カスハラ対応マニュアルの作成と従業員への研修の実施が重要です。
マニュアルには、カスハラの定義、具体的な事例、対応の基本方針、初期対応の流れ、記録方法、相談窓口、上司への報告手順、警察や弁護士との連携方法などを具体的に記載します。業種や業態に応じて、よく発生するカスハラのパターンとその対応例を盛り込むと、より実践的なマニュアルになります。
例えば、「社長を呼べ」「誠意を見せろ」といった典型的な要求に対する切り返し方などを明記することも有効です。マニュアルは、現場のリーダーとクレーム対応に強い弁護士が協力して作成し、定期的に見直し、改訂していくことが望ましいです。厚生労働省も「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」を公表しており、参考にすると良いでしょう。
作成したマニュアルに基づき、従業員に対してカスハラに関する研修を実施します。研修では、カスハラの定義や具体例、従業員が取るべき基本的な対応、ロールプレイングなどを通じて実践的な対応力を育成します。
特に、経験の浅い従業員や外国人従業員などは、カスハラに遭遇した場合に適切な対応ができない可能性があるため、丁寧な研修が必要です。研修では、感情的にならないこと、安易に謝罪しないこと、一人で抱え込まずに上司に報告すること、毅然とした態度で対応することなどを徹底的に指導します。
また、研修を通じて、企業としてカスハラを許さないという明確なメッセージを従業員に伝えることが重要です。
カスハラが発生した場合、従業員が安心して相談できる体制を整えることと、事実を正確に記録し、証拠を保全することが重要です。
社内にカスハラに関する相談窓口を設置し、従業員が安心して相談できる体制を整備します。相談窓口の担当者は、相談内容に応じて適切なアドバイスやサポートを提供できるように、専門的な知識や研修を受ける必要があります。
相談窓口の設置だけでなく、社外の弁護士などに相談できる体制を整えることも有効です。相談窓口があることを従業員に周知徹底し、相談したことを理由に不利益な取り扱いを受けないことを明確にする必要があります。
カスハラが発生した際には、いつ、どこで、誰が、どのような言動を行ったのかを詳細に記録することが重要です。可能であれば、録音や録画などの客観的な証拠を保全することも有効です。
被害を受けた従業員だけでなく、同僚などが目撃した場合は、その内容を記録することも重要です。記録は、後々の事実確認や加害者への注意・警告、法的措置などを検討する上で重要な証拠となります。
カスハラの被害を受けた従業員に対しては、心身のケアや業務上のサポートなど、適切な支援を行うことが企業の責任です。
カスハラ被害を受けた従業員は、精神的なダメージを受けている可能性が高いため、カウンセリングなどのメンタルヘルスケアを提供します。
社内に相談できる専門家がいない場合は、外部の専門機関と連携することも検討します。上司や同僚は、被害を受けた従業員の気持ちに寄り添い、決してないがしろにせず、安心して休養できる環境を整えることが重要です。
被害を受けた従業員を一人で対応させ続けないように配慮します。必要に応じて、配置転換や業務内容の変更などを検討し、従業員の負担を軽減します。また、加害者との接触を避けるための措置を講じることも重要です。
カスハラの発生状況や対応状況について、関係部署間で情報を共有し、連携を取りながら対応を進めます。これにより、組織全体で問題解決に取り組み、再発防止に繋げます。
カスハラ対策で企業がとるべき行動については、以下の記事で詳しく解説しています。厚生労働省ガイドラインに基づいた対策を詳しく知りたい方は、ぜひ合わせてご覧ください。
実際にカスハラが発生した場合、初期対応が非常に重要です。冷静さを保ち、適切な手順で対応することで、事態の悪化を防ぎ、早期解決を目指します。
カスハラに遭遇した従業員は、まず冷静さを保つことが重要です。相手の大声や感情的な言動に動揺せず、落ち着いて対応するように努めます。決して感情的に言い返したり、挑発的な態度を取ったりしてはいけません。相手の主張を注意深く傾聴し、共感の姿勢を示すことも大切です。
ただし、相手の勢いに負けて安易に謝罪したり、不当な要求を認めたりすることは避けるべきです。初期対応を誤ると、カスハラがエスカレートする危険性があります。
相手の主張を傾聴した上で、問題の根本原因を冷静に指摘し、建設的な解決策を探るように努めます。もし相手の要求が不当なものであれば、毅然とした態度で拒否することも重要です。その際、「そのような言動は困るので止めてください」と明確に伝えることが大切です。
ただし、その場で即座に解決しようと焦るべきではありません。必要に応じて、「私一人では判断できかねますので、施設内で協議したうえで改めてこちらからご連絡させていただきます」、「当施設としましてはコンプライアンスに則り対応する必要があると考えておりまして、弁護士に相談したうえで正式にご回答します」などと伝え、時間をおいて組織的に対応することを検討します。
カスハラに該当する可能性が高いと判断した場合は、後日改めて、「先ほどのご発言はいわゆるカスタマーハラスメントに当たり、職員を傷つけ萎縮させるものなので問題であると当方は認識している。以後、同様の恫喝的命令や人格を毀損する発言は控えて頂きたい。」と相手方に申し入れ、繰り返さないよう求めます。その上で、こちらの誠意を示すために、可能な範囲で具体的な改善策を提案するなど、建設的な話し合いを試みます。
カスハラに対して具体的にどのように対応すれば良いか、状況に応じた対応例を知っておくことは、現場の従業員にとって非常に心強いものです。
相手の言動によって恐怖を感じた場合は、率直にその気持ちを伝えることも有効です。
例えば、「お客様の大きな声や強い口調に、私は恐怖を感じています。そのような形でのご要望には応じかねます」と伝えることで、相手に自身の言動が相手に与える影響を認識させ、行動の改善を促す効果が期待できます。
相手のクレームが事実に基づかない場合や、過剰な要求である場合は、冷静に問題の根本原因を指摘します。
例えば、「ご指摘の〇〇につきましては、事実確認を行いましたが、そのような事実はございません。お客様のご理解をお願いいたします。」と論理的に説明することで、不当な要求を拒否することができます。
カスハラと正当なクレームは、対応の原則が異なります。
正当なクレームは、商品やサービスの不具合、従業員の対応の不備など、改善すべき点を含む顧客からの意見や要望です。このようなクレームは、企業にとって品質向上や顧客満足度向上に繋がる貴重な情報源となります。正当なクレームに対しては、真摯に耳を傾け、事実確認を行い、迅速かつ適切に改善策を提示し、謝罪することが重要です。
一方、カスハラは、顧客の要求に合理的な理由がなく、社会通念上相当な範囲を超えた言動であり、従業員の就業環境を害するものです。カスハラに対しては、正当なクレームと同様の対応をするべきではありません。安易に要求を認めたり、謝罪を繰り返したりすると、相手を増長させ、更なるハラスメントに繋がる可能性があります。カスハラに対しては、毅然とした態度で不当な要求を拒否し、必要に応じて法的措置を含む断固たる対応を取ることが重要です。
正当なクレームとカスハラを適切に区別し、それぞれに応じた適切な対応を取ることは、従業員を守るだけでなく、企業の健全な運営のためにも非常に重要です。現場の従業員がこの区別を適切に行えるように、研修やマニュアルを通じて明確な判断基準を示す必要があります。
また、クレーム対応について、初動で大切なことや企業が取るべき対応方法を知りたい方は、以下の記事も合わせてご覧ください。
近年、カスハラ対策に積極的に取り組む企業が増えており、従業員向けの研修、相談窓口の設置、対応マニュアルの作成などに取り組んでいます。カスハラに対して毅然とした態度で臨む方針を明確にし、従業員が安心して業務に取り組める環境づくりを進めています。
ヤマト運輸は、従業員が顧客からの過度な要求や迷惑行為に苦慮している状況を受け、2019年に「お客様第一主義」を見直し、従業員の安全と働きやすさを重視する方針を明確にしました。具体的には、以下のような対策を実施しています。
1.従業員向けのガイドライン作成
どのような行為がハラスメントに該当するのか、具体的な事例とともに対応方法を明記したガイドラインを作成し、従業員に周知徹底しました。
2.管理職向けの研修実施
カスハラの初期対応やエスカレーションの手順、被害を受けた従業員のサポート方法などについて、管理職向けの研修を実施しました。
3.お客様への理解と協力のお願い
ウェブサイトや広報活動を通じて、顧客に対して適度なコミュニケーションと協力をお願いするメッセージを発信しました。
4.悪質な事案への毅然とした対応
悪質なカスハラに対しては、弁護士と連携して法的措置を検討する姿勢を明確にしました。
これらの対策により、従業員の安心感が高まり、離職率の低下にも繋がっていると報告されています。
1.小売業
店舗での迷惑行為に対する注意喚起表示の掲示、録音・録画設備の導入、従業員が危険を感じた際の緊急連絡体制の整備などを行っています。
2.金融機関
窓口業務における飛沫感染防止対策として透明な仕切りを設置するとともに、威圧的な顧客に対しては冷静に対応するよう従業員に指導しています。
3.自治体
職員に対するハラスメント対策研修の実施、相談窓口の設置、悪質なケースに対する法的措置の検討などを行っています。
これらの事例に共通するのは、トップダウンでの意識改革、具体的な対応ルールの策定、従業員への教育、そして悪質な行為に対する毅然とした姿勢です。自社の業種や業態に合わせて、これらの成功事例を参考にしながら、実効性のあるカスハラ対策を講じることが重要です。
カスハラ対策は、今後ますます重要性を増していくと考えられます。
現時点では、カスハラに特化した明確な法律は存在しませんが、社会的な問題意識の高まりを受け、今後法整備が進む可能性も十分にあります。また、地方公共団体における条例制定の動きも広がることが予想されます。
このような状況を踏まえ、企業は法規制の動向を注視しつつ、自主的かつ積極的にカスハラ対策に取り組む必要があります。顧客との良好な関係を維持しつつ、従業員の安全と尊厳を守るためのバランスの取れた対策を講じることが、企業の持続的な成長に不可欠です。
具体的には、以下の点について継続的に取り組むことが求められます。
1.経営層のコミットメント
経営層がカスハラ対策の重要性を認識し、組織全体で取り組む姿勢を示すこと。
2.実効性のある対策の実施
マニュアル作成、研修実施、相談窓口の設置、証拠保全体制の整備など、実効性のある対策を継続的に実施すること。
3.従業員への周知と意識啓発
カスハラに関する情報や対策について、従業員に分かりやすく周知し、意識啓発を行うこと。
4.顧客への理解と協力の呼びかけ
顧客に対して、適度なコミュニケーションと協力をお願いするメッセージを発信し、理解を求めること。
5.外部機関との連携
弁護士や専門機関と連携し、専門的な知識やサポートを得られる体制を構築すること。
6.対策の見直しと改善
実施した対策の効果を定期的に検証し、必要に応じて見直しや改善を行うこと。
カスハラ問題の解決には、企業側の取り組みだけでなく、社会全体の認識向上が不可欠です。
顧客は、自身の言動がサービス提供者である従業員にどのような影響を与えるのかを理解し、理性的なコミュニケーションを心がける必要があります。メディアや教育機関は、カスハラ問題の現状やその影響について積極的に情報発信を行い、社会全体の意識を高める役割を担うことが期待されます。また、政府や自治体は、カスハラ対策に関する啓発活動を推進し、企業や消費者に正しい知識を普及させる必要があります。
「お客様は神様」という一方的な考え方を改め、サービスを提供する側と受ける側が互いを尊重し、対等な立場で良好なコミュニケーションを築くことこそが、カスハラのない健全な社会の実現に繋がります。
カスハラは、従業員の心身の健康を害し、企業運営にも深刻な影響を与える重大な問題です。企業は、この記事で解説した内容を踏まえ、自社の状況に応じた実効性のあるカスハラ対策を講じることが急務と言えます。
「お客様は神様」という時代は終わりを迎え、企業は利益を重視する一方で、従業員の保護を最優先に考える時代へと変化しています。カスハラ対策は、従業員が安心して働ける環境を整備し、企業価値を高めるための重要な投資です。今一度、自社のカスハラ対策を見直し、従業員と企業双方にとってより良い未来を築くために、積極的に取り組んでいただきたいと思います。
もし、現在カスハラ問題にお悩みの場合や、対策について具体的なアドバイスが必要な場合は、お気軽にお問い合わせください。早期の相談が、問題解決への第一歩となります。
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