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カスハラの基準について詳しく解説!企業が直面するクレーム対応の線引きや適切な対策を紹介します。顧客対応フローを通じて、カスハラへの正しい理解と対応策を学びましょう。
近年、カスタマーハラスメント(カスハラ)は企業にとって深刻な問題となっています。顧客からの過度な要求や不当なクレームに対し、どこまで対応すべきか判断に迷うケースも少なくありません。本記事では、カスハラの判断基準や法的根拠を詳しく解説し、企業が取るべき具体的な対策や対応フローを紹介します。
顧客からの言動がカスタマーハラスメントに該当するかどうかを見極めるには、明確な判断基準が必要です。ここでは公式定義から業種別の具体例まで、カスハラの線引きを徹底解説します。
カスハラは、厚生労働省によると「顧客等からのクレーム・言動のうち、当該クレーム・言動の要求の内容の妥当性に照らして、当該要求を実現するための手段・態様が社会通念上不相当なものであって、当該手段・態様により、労働者の就業環境が害されるもの※」と定義されています。
※厚生労働省 「カスタマーハラスメント対策 企業マニュアル」参照:2025.03.19
https://jsite.mhlw.go.jp/shizuoka-roudoukyoku/content/contents/001104928.pdf
カスハラの判断には3つの重要な要素があります。①クレーム内容の妥当性、②実現手段・態様の社会通念上の相当性、③労働者の就業環境への影響です。「顧客等」には実際に商品・サービスを提供した相手だけでなく潜在的な顧客も含まれるため、企業は将来発生する可能性があるクレームにも対応する必要があります。
正当なクレームとカスハラは明確に区別する必要があります。正当なクレームは、合理的かつ適切な補償や改善を求める内容を指摘するものです。具体的には、契約や法令に基づくもの、客観的根拠があるもの、適切な範囲での要求、誠実な意図で行われているものが該当します。
一方、カスハラは問題解決ではなく従業員の尊厳を傷つける行為です。カスハラの判断基準としては、要求内容が不当または過剰である、言葉遣いが威圧的・侮辱的である、長時間にわたる執拗な要求や抗議である、従業員の人格を否定するような発言があるなどの点が挙げられます。
業種によってカスハラの具体例は異なります。情報通信業では、サポートデスクのスタッフに対する「頭が悪い」「性格が悪い」といった人格否定の言葉や、「徹夜で明日までにバグを直せ」といった無理な要求が見られます。
宿泊業・飲食サービス業では、顧客の立場を利用した無理な要求が多く、例えば宿泊するたびに清掃不備を指摘してグレードアップを要求するケースや、自身の過失で商品を落としたにもかかわらず半額での販売を求めて店内で騒ぎ続けるなどの事例があります。
生活関連サービス業・娯楽業では、要求を丁重に断られたことに納得がいかず、大声で怒鳴り散らしたり、暴言を吐いたり、物を投げたりするなどの威圧的行動が報告されています。これらのカスハラは従業員のトラウマとなり、休職に追い込まれるケースも少なくありません。
いずれの業種においても、社会通念上の相当性を欠く行為がカスハラの判断ポイントとなります。
2025年に予定されている法改正に向けて、カスハラ対策は企業の法的義務となります。ここでは最新の法的動向から企業が取るべき対応、対策を怠った場合のリスクまでを解説します。
厚生労働省は2024年12月26日、カスタマーハラスメント(カスハラ)対策を企業に義務付ける方針を決定し、労働政策審議会の雇用環境・均等分科会で了承されました。
厚生労働省は2022年にカスハラ対策マニュアルを策定し、事例ごとの対応策を示していましたが、さらに踏み込んだ対策強化を模索しています。2025年3月11日には労働施策総合推進法の改正が閣議決定され(施行日は2024年3月19日現在未定)、カスハラ対策が企業の義務となることが明確になりました。
また、東京都では2025年4月から全国初となるカスハラ防止条例が施行される予定で、2024年12月25日にはカスハラと認められる具体的な行為をまとめたガイドラインが公表されています。
2025年の通常国会で労働施策総合推進法改正案が提出されました。改正法では、企業に対して以下の対応が義務付けられます。
これまで努力義務だったカスハラ対策が、パワハラ防止対策と同様に企業の義務となります。具体的には、対応マニュアルの策定や従業員から相談を受ける社内体制の整備などが求められます。企業は明確な対応基準を策定し、従業員に周知することが第一歩となります。
カスハラ対策を怠ると、企業は以下のような深刻なリスクに直面します。
まず、従業員がカスハラによって精神的または身体的なダメージを受けた場合、企業は「安全配慮義務違反」として損害賠償請求を受ける可能性があります。特に、企業がカスハラの存在を認識していながら適切な対応を取らなかった場合、その責任はさらに重くなります。
2023年9月には「心理的負荷による精神障害の労災認定基準」が改正され、カスハラが精神障害の労災認定基準に追加されました。実際に2020年に住宅会社の従業員が顧客からのカスハラにより亡くなり、2022年に労災認定を受けた事例もあります。
さらに、カスハラを放置すると従業員の離職率増加や人材確保の困難さ、ブランドイメージの低下、顧客離れによる売上減少など、企業経営に直接的な悪影響を及ぼします。東京商工リサーチの調査によれば、カスハラの影響で休職や退職が発生した企業は13.5%に上っています。
カスハラ対策は従業員を守るだけでなく、企業の健全な経営と社会的責任を果たすために不可欠な課題です。
2025年の労働施策総合推進法改正によりカスハラ対策が企業の法的義務となる中、従業員を守るための具体的な対策が求められています。ここでは企業が取り組むべき6つの対策を実践的に解説します。
企業としてカスハラ対策の方針を明確に示し、従業員に周知することが第一歩です。方針には「カスハラに該当する行為の定義」「カスハラは重大な問題であり、放置せず毅然とした対応をする」「従業員の人権を尊重し、カスハラから守る」などを含めましょう。
JR東日本のように「グループで働く社員一人ひとりを守るため、カスタマーハラスメントが行われた場合には、お客さまへの対応をいたしません」と明記することで、従業員が安心して業務を行える環境を整えることができます。方針は社内イントラネットやポスターなどで全従業員に周知徹底しましょう。
カスハラ対応マニュアルには「カスハラの定義と具体例」「カスハラ発生時の対応手順」「エスカレーション体制」「関連法規」などを盛り込みます。特に重要なのは対応フローチャートの作成です。
フローチャートには「カスハラの判断基準」「従業員の安全確保」「上司や専門チームへの報告手順」「警察への通報基準」などを含めることで、従業員が迷わず行動できるようにします。厚生労働省のマニュアルを参照しつつ、自社の実情に合わせた内容に調整し、弁護士によるチェックを受けると良いでしょう。
カスハラの相談窓口には、信頼性があり機密情報を守ることができ、危機管理の観点で即時に正しい判断と行動がとれる担当者を配置します。メンタルヘルスについての基本的な知識も持つ人材が望ましいでしょう。
相談窓口は社内だけでなく、外部の専門機関と連携することも検討します。厚生労働省の「こころの耳」では電話・SNS・メールでの相談が可能で、「産業保健総合支援センター」ではメンタルヘルス対策に関する相談や研修を無料で提供しています。
カスハラ研修では「クレームとクレーマーの違い」「判断しにくい内容について自ら考える力」「クレーマーへの対応」「ロジカルコミュニケーション」「レジリエンス力」などを学びます。
研修はロールプレイングを取り入れ、実際のカスハラ場面を想定した対応練習を行うことで効果を高められます。レジリエンス力を身につける内容も含めることで、従業員のメンタルヘルスを強化できます。階層別・職種別に研修を実施し、現場で役立つ知識を習得させましょう。
カスハラ発生時は、まず冷静に顧客の声に耳を傾けましょう。この段階では反論や弁解は控え、相手の話に集中し、必要に応じて確認の質問を丁寧に行います。感情的にならず、まずは客観的な事実把握に努めましょう。
対応は複数名で行うか、一次対応者に代わって現場監督者が対応するなど、従業員の安全に配慮します。小規模事業者でも対応可能な基本的な対応方法を周知・教育しておくことが望ましいでしょう。
カスハラ事案の収束後は、再発防止のために詳細な分析を行います。「発生要因と経過の分析」「既存の対応手順の問題点の洗い出し」「社内の報告・連絡体制の見直し」を行い、対応マニュアルの更新や従業員教育の見直しにつなげます。
過去の失敗事例からの学習と対策として、事例の分析と原因特定、従業員への事例共有と教育、定期的な対策の見直しを行いましょう。また、店舗内やウェブサイトでの方針掲示、利用規約へのカスハラ禁止条項の追加なども効果的です。
カスタマーハラスメント(カスハラ)が発生した際、従業員を守り適切に対応するためには明確な対応フローが不可欠です。ここでは初期対応から証拠保存、エスカレーションまでの一連の流れを解説します。
カスハラ発生時の初期対応は、その後の展開を大きく左右します。まず重要なのは傾聴の姿勢です。顧客の話を途中で遮ったり、反論したりせず、最後まで聴くことが基本となります。顧客の怒りや興奮は、真剣に聞いてもらうことでかなり収まる場合があります。
ただし、事情が分かるまでは安易に謝罪せず、「不快な思いをさせたこと」「説明不足があったこと」といった事実のみを認める程度にとどめましょう。感情的にならず、客観的な事実把握に努めることが重要です。
特に注意すべきは、顧客の過剰な要求を安易に認めないことです。これにより事態が悪化する可能性があります。対応に自信がない場合は「私一人では判断できかねますので、施設内で協議したうえで改めてご連絡させていただきます」と伝え、時間を置くことも有効です。
カスハラ対応の基本原則は「複数人で対応する」ことです。カスハラを受けている従業員を一人にしてはいけません。優越的な地位を利用して行われるカスハラに対しては、複数人で毅然とした態度で接することが効果的です。
対応体制としては、顧客に対して複数名で対応する、一次対応者に代わって現場監督者が対応するなど、従業員の安全に配慮した内容とすることが重要です。小規模事業者など対応を引き継ぐ管理者がいない場合も想定し、現場の従業員のみでも対応可能な基本的な対応方法を周知・教育しておくことが望ましいでしょう。
カスハラの証拠を残すことは、社内での解決や外部機関への相談において非常に重要です。まず、被害を受けてから間を置かずに詳細なメモを残しましょう。日付、時刻、場所、顧客情報、被害従業員情報、詳細な内容と対応などを記録します。
メールやチャットログは専用フォルダで保管し、電話の場合は音声データをパソコンに保存するなどバックアップを取っておくことが重要です。写真や動画も有効な証拠となります。顧客の暴力によって従業員がケガをしたり、備品を破損した場合は必ず写真を撮りましょう。
エスカレーション基準を明確にすることで、従業員の判断負担を軽減できます。例えば「同じ要求を3回以上繰り返す」「脅迫的な発言がある」「通話時間が15分を超える」など、具体的な数値基準を設定するとよいでしょう。
暴力行為があった場合や、カスハラが悪質・常習的な場合など、具体的な基準を定め、定期的に見直すことが重要です。エスカレーション先(上司・担当部署など)と連絡手段(メール・電話・チャットなど)をあらかじめ決めておき、「この程度で上司に連絡すると迷惑をかけるかも」と一人で悩まないよう、組織で立ち向かう姿勢を明確にすることが大切です。
カスハラ対策は2025年の労働施策総合推進法改正により企業の法的義務となります。カスハラの判断基準は①クレーム内容の妥当性、②実現手段・態様の社会通念上の相当性、③労働者の就業環境への影響の3要素から成り、企業は基本方針の明確化、対応マニュアルの作成、相談窓口の設置などの対策が求められます。
弁護士法人ブライトでは、カスハラ対応を含む企業法務を月額5万円からサポート。従来型の顧問契約と異なり、複数の弁護士とパラリーガルによる専門チームが能動的・自発的に法務リスクを発見し改善策を提案します。「企業の法務リスク診断」を通じて事業内容や組織文化まで深く理解し、チャットツールでカジュアルに相談できるため、まるで社内の法務部のように機能!お困りの際はお気軽にご相談ください。
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