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2025年の通常国会で労働施策総合推進法の改正案が提出され、カスハラ対策が企業の義務となります。厚生労働省は従業員保護のため、企業に対応マニュアルの策定や相談体制の整備などを義務付ける方針です。本記事では、カスハラの定義から具体的な企業対策、法改正の最新動向まで解説。顧客からの不当な要求から従業員を守るために、企業が今すぐ取り組むべき実践的な対応策をご紹介します。
2025年4月から東京都カスハラ防止条例が施行される予定で、労働施策総合推進法の改正によりカスハラ対策が企業の義務となります。ここでは、法改正の最新動向から企業に求められる対応策まで解説します。カスハラの定義、相談窓口の設置方法、マニュアル作成のステップなど、企業が今すぐ取り組むべき対策を紹介。法改正に備えるチェックリストも掲載していますので、自社の対応状況を確認しながら準備を進めてください。
カスタマーハラスメント(カスハラ)とは、顧客等からの著しい迷惑行為のことを指します。顧客が事業者に対して過剰な要求を行ったり、商品やサービスに不当な言いがかりをつける悪質なクレームなどが該当します。
2025年3月11日に閣議決定された労働施策総合推進法等の一部改正法案では、カスハラが法的に定義されます。この改正案では、カスハラを「顧客、取引先、施設利用者その他の利害関係者が行う社会通念上相当な範囲を超えた言動であって、労働者の就業環境が害されるもの」と定義しています。厚生労働省が2022年に公表した「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」では、「要求の内容の妥当性に照らして、当該要求を実現するための手段・態様が社会通念上不相当なもの」とされています。法改正により、企業はカスハラ対策として従業員保護のための措置を講じることが義務化されます。
飲食店では、待ち時間やサービス内容に対する不満からカスハラに発展するケースが多く見られます。対策として、明確なルール設定と店内掲示、タッチパネル式やQRコード注文の導入によるミス防止、従業員教育の徹底などが効果的です。
サービス業では、顧客の期待値とサービス内容のギャップがカスハラの原因となることが多く、サービス内容の明確化、顧客の声の収集と分析、従業員への権限付与(従業員が自身の判断で問題解決できる体制づくり)、外部機関との連携などが有効な対策となります。従業員に適切な権限を与えることで、問題をその場で解決できるようになり、顧客満足度の向上と対応時間の短縮につながるでしょう。
いずれの業種でも、カスハラ発生時には複数の従業員で対応し、記録を残しましょう。管理者は従業員をサポートする姿勢を明確に示し、必要に応じて顧客の担当変更や会議への同席など具体的な支援を行うことが効果的です。
カスタマーハラスメント(カスハラ)対策が法制化へと大きく動き出しています。東京都の条例施行と全国的な法改正の動きを踏まえ、企業が知っておくべき最新情報について解説します。
2025年4月1日から東京都では全国初となる「東京都カスタマー・ハラスメント防止条例」(通称:東京都カスハラ防止条例)が施行されます。この条例は2024年10月4日に可決・成立し、カスハラの一律禁止を明確に掲げた画期的な内容となっています。
条例では「何人も、あらゆる場において、カスタマー・ハラスメントを行ってはならない」と明記され、企業対消費者の関係だけでなく企業間取引にも適用されることとなりました。カスハラの定義は「顧客等から就業者に対し、その業務に関して行われる著しい迷惑行為であって、就業環境を害するもの」とされており、店舗や事業所での直接的な行為だけでなく、電話やインターネットを通じた行為も対象です。
条例には罰則規定はありませんが、カスハラが違法である旨が明記されたことで、被害の減少・緩和が期待されています。また、東京都はカスハラ防止指針(ガイドライン)を作成・公表し、事業者向けのマニュアル素案も公開されました。
厚生労働省は2025年3月11日に「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律等の一部を改正する法律案」を閣議決定し、同日に国会に提出しました。
施行時期は、一部の規定を除き、公布の日から起算して1年6か月を超えない範囲内において政令で定める日とされています。この法改正により、カスハラ対策が全国的に強化され、従業員保護の体制整備が進むことが見込まれます。
カスハラ対策が企業の義務となる中、従業員を守るための具体的な対応策が求められています。
カスハラ相談窓口の設置は企業としてカスハラ問題に真剣に取り組む姿勢を示す重要な施策です。窓口担当者には信頼性があり、機密情報を守ることができ、危機管理の観点で適切な判断ができる人材を配置することが望ましいです。
相談窓口の整備では、「相談先の部署」「相談先の責任者」「連絡先電話番号」「連絡先メールアドレス」「相談可能時間」を定めておくことが必要です。電話だけでなくメールも設定し、いつでも相談を受け付けられる体制を整えることが重要です。また、相談の受付から事後対応までの手順を明確にし、全従業員に周知することも欠かせません。
カスハラから従業員を守るためには、定期的な研修プログラムの実施が効果的です。ロールプレイングを取り入れ、実際のカスハラ場面を想定した対応練習を行うことで、従業員の対応スキルを向上させることができます。
研修では、カスハラ事例の共有や対応のコツを学ぶ機会を設け、従業員の知識とスキルの向上を図ることが大切です。新入社員研修などでカスハラに関する教育を行う際に、相談窓口の情報提供も併せて行うと、窓口が明確となり新入社員の安心に繋がります。
カスハラ対策マニュアルは従業員を守るための重要なツールです。効果的なマニュアル作成のポイントと実践的な活用方法について解説します。
カスハラ対策マニュアルを作成する際は、5つのステップを踏むことが効果的です。
①厚生労働省が公開しているマニュアルを参考にする
これはベースとなる情報として活用できますが、自社の業界や特性に合わせてカスタマイズする必要があります。
②カスハラに対する企業としての基本方針を明確化する
この方針は対応の土台となるため、経営層を含めた議論が重要です。
③カスハラの判断基準や具体例をピックアップする
自社で実際に起きた事例や業界特有の事例を集めることで、より実践的なマニュアルになります。
④カスハラのケースごとに具体的な対応方法を定める
状況別の対応手順を明確にし、従業員が迷わず行動できるようにします。
⑤従業員からの相談窓口を設置し、専門家によるチェックを受ける
マニュアルの素案ができたら弁護士などの専門家によるチェックを受けると良いでしょう。
カスハラ対応のフローチャートは、従業員が迅速かつ適切に行動するための道しるべとなります。フローチャートには「一人で対応しない」「一人で判断しない」「解決を早めようとしない」「絶対に書類作成・署名・捺印しない」「警察と連携する」などの基本原則を組み込みましょう。
フローチャートは全体像を素早く把握できるようシンプルでわかりやすい内容にすることが重要です。また、誰でも簡単に実行できる内容にし、特定の従業員に対応が集中しないよう配慮しましょう。オンラインで閲覧できる状態にしておくと、緊急時にもすぐに参照できて便利です。
事例別対応シナリオは、過去の事例を集めて記載することで経験値を蓄積し、よりスムーズな対応を可能にします。現場の従業員から過去のカスハラ事例を聞き出し、マニュアルに反映させることが大切です。
事例を記載する際はリスト形式にすると閲覧時に探しやすくなります。また、カスハラ発生の理由や対応の時系列順にまとめておくと、必要な情報が見つけやすくなります。事例ごとに講じた対策の効果を検証し、マニュアルや研修内容に反映させることで、継続的な改善が可能になります。
対応シナリオには「まずは冷静に顧客の声に耳を傾ける」といった初期対応から始まり、段階的な対応プロセスを明記することが効果的です。各段階での従業員と顧客のやり取りを記録する方法についても具体的に示しておくと良いでしょう。
カスタマーハラスメント(カスハラ)への適切な対応を怠ると、企業は様々なリスクに直面します。法的責任から従業員の健康被害、企業イメージの低下まで、その影響は多岐にわたります。
企業はカスハラから従業員を守る「安全配慮義務」を負っています。労働契約法では、企業は従業員の安全を確保する義務があると定められており、この義務を怠ると損害賠償責任を負う可能性があります。
労働施策総合推進法に基づき、企業はカスハラ対策として相談体制の整備や被害者への配慮など、必要な措置を講じることが求められています。東京都のカスハラ防止条例では現時点で罰則規定はありませんが、将来的に法規制が強化される可能性も大いにあります。
カスハラ被害を受けた従業員は精神的なダメージを受けていると考えられます。社内にカウンセリング窓口を設置したり、外部の専門機関と提携したりするなど、従業員が安心して相談できる環境整備が効果的です。
被害を受けた従業員には「あなたのせいではない」と声をかけ、寄り添う姿勢を示すことが重要です。従業員のメンタルヘルスを守ることは組織全体の生産性向上にもつながります。
カスハラに関連するトラブルは企業のブランドに打撃を与える可能性がある一方、適切なガイドラインを実施している企業は顧客からの信頼を獲得しやすくなります。
効果的な戦略としては、サービス内容の明確化、顧客の声の分析、従業員への適切な権限付与などが挙げられます。企業は顧客満足度を維持しながらも従業員を守る姿勢を示すことで、健全な顧客関係を構築できます。
法改正に備えて今から準備を進めるべきポイントを解説します。
2025年3月に閣議決定された労働施策総合推進法等の一部改正法案では、カスハラ対策が企業の義務となります。施行は公布から1年6か月以内とされているため、2026年度中の施行が予定されています。この期間を逆算して準備を進めましょう。
まず2025年内に社内の現状把握と課題抽出を行い、対応方針を決定します。具体的には、過去のカスハラ事例の収集・分析や、現場の従業員へのヒアリングを実施し、自社の課題を明確にしましょう。2025年末までに社内規定の整備や相談窓口の設置準備を完了させ、2026年前半には従業員研修やマニュアル作成を進めることが理想的です。
法施行の半年前には、すべての対策を整備し、試験運用を始めることで、本格施行時にスムーズに対応できます。
社内規定の見直しでは、まず「カスハラの定義」を明確にすることが重要です。労働施策総合推進法の改正案では、カスハラを「顧客等が行う社会通念上相当な範囲を超えた言動であって、労働者の就業環境が害されるもの」と定義しています。
また、カスハラ発生時の対応フローを明確にし、誰がどのように対応するかの手順を定めましょう。特に相談窓口の設置や対応体制の整備は法律で求められる措置となるため、「相談先の部署」「責任者」「連絡先」「相談可能時間」などを明確に規定する必要があります。
さらに、カスハラ被害を受けた従業員のメンタルヘルスケアについても規定に盛り込み、従業員保護の姿勢を明確にしましょう。
カスハラ対策を効果的に進めるには、組織の各層が役割を理解し、責任を持って行動することが重要です。
経営層は、カスハラを許さない企業方針を明確に打ち出し、必要な予算や人員を確保する責任があります。また、定期的に対策の進捗状況を確認し、必要に応じて改善指示も出さなければなりません。
管理職は、現場でのカスハラ対応の最前線として、従業員からの相談に適切に対応し、必要に応じて上層部への報告や外部機関との連携を図る役割を担います。また、日常的に従業員の状況を観察し、メンタルヘルスの変化にも気を配ることが求められます。
現場の従業員は、カスハラの兆候を見逃さず、発生時には定められた手順に従って対応し、必要に応じて上司や相談窓口に報告する責任があります。また、研修などを通じてカスハラへの理解を深め、対応スキルを向上させることも大切です。
2025年4月から東京都カスハラ防止条例が施行され、さらに労働施策総合推進法の改正により、企業にカスハラ対策が義務化されます。法改正では、カスハラを「社会通念上相当な範囲を超えた言動で労働者の就業環境を害するもの」と定義し、企業には相談窓口の設置や対応マニュアルの策定が求められます。企業は従業員を守るために、カスハラ発生時の適切な対応体制を整え、従業員への教育・サポートを強化する必要があります。
カスハラ対策の法改正対応は専門家にお任せください!
ブライト法律事務所では、企業のカスハラ対策を全面サポート。法改正に対応した社内規定の見直しや相談体制の構築、従業員研修まで、企業の実情に合わせた対応策を提案します。弁護士が直接対応し、トラブル発生時の法的アドバイスも可能。カスハラ対策でお困りの企業様は、ぜひブライト法律事務所にご相談ください。
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