契約書の真価は「認識のすり合わせ」にあり

契約書の真価は「認識のすり合わせ」にあり

近年、企業活動における契約書の重要性がますます高まっているように思います。弊所でもこの業務は全体の3~5割を占めており、企業法務の中核を担う分野となっています。

契約書というと、単なる形式的な書面というイメージがあるかもしれません。しかし、契約書は単なる形式的なモノではなく、ビジネスの成否を左右する「認識の調整ツール」としての側面が重要であると考えております。私たちが日々の業務で実感するのは、契約当事者間で「認識のズレ」が非常に多いということです。ビジネスの現場では、「相手も同じ理解をしているだろう」「普通はこうだろう」という思い込みから、認識が食い違ってしまうことがよくあります。このズレを放置したまま契約を締結すると、後に重大なトラブルを招く恐れがあります。「認識のズレ」を事前に正し、お互いの認識を揃えることこそ、契約書作成における最も重要な目的だと考えます。

弁護士の役割は「言語化」と「翻訳」

弁護士は、まずクライアントから詳しく話を伺い、相手方との「認識のズレ」を推測・確認します。場合によっては交渉の場にも立ち会い、その内容を正確に契約書に落とし込みます。さらに、クライアントが頭の中で思い描いている内容や、漠然とした希望を法的に整理し、明確な言葉にする「言語化」の役割も担っています。これにより、契約書は単なる形式文書ではなく、役割分担・目的・責任・リスクとリターンの分配まで明確に記載された実践的な文書になります。結果として、契約目的の達成やトラブル防止に貢献できたらと願っています。

AIは便利でも、最後は人間の言葉で

最近ではインターネット上の契約書テンプレートやChatGPTのような生成系AIを使って契約書を手軽に作成できるようになりました。しかし、既存のテンプレートや生成系AIでの文書作成は手軽に思える反面、当事者間の微妙な「認識のズレ」までは拾いきれず、トラブルの原因となることが少なくありません。AIなどは今後、認識の違いを指摘する補助ツールとして発展していく可能性がありますが、最終的には人間がしっかり言語化して合意内容を詰めることが大切です。だからこそ、プロジェクトの初期段階から弁護士に相談することをお勧めします。契約の目的や背景に即した内容で文書化することが、最も合理的で効率的なリスクマネジメントとなるからです。

契約当事者それぞれの目的や役割、責任分担、そしてリスクとリターンを事前に確認して言語化しておけば、お互い安心してビジネスに取り組むことができます。契約書作成は、そうした「認識のすり合わせ」の集大成と言えるでしょう。私たちも日々そのお手伝いをしながら、皆さまの事業が安全に成長できるよう支援しています。

代表弁護士 和氣 良浩

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