公益通報から1年以内の解雇はNG?

公益通報から1年以内の解雇はNG?

企業のコンプライアンス体制に対する世間の関心が高まるなか、2025年6月に公布された改正公益通報者保護法が注目されています。改正法は、公布から1年6か月以内の政令で定める日に施行される予定で、2026年内には施行される見込みです。

今回の改正では、通報者の保護が一段と強化され、労務管理の現場にも大きな影響を及ぼします。特に注目すべきは、「通報後1年以内に行われた解雇や懲戒は、通報を理由としたものと推定する」という新たな規定が設けられた点です。つまり、通報後に従業員を処分する場合、会社側が通報とは無関係であることを証明できなければ、「報復的処分」とみなされる可能性があります。


さらに、報復的な解雇・懲戒に対しては、個人に最大6か月の拘禁刑または30万円以下の罰金、法人には最大3000万円の罰金が科されるなど、罰則も新設されました。保護対象もフリーランス等に広がっており、通報の妨害や通報者を探す行為も禁止されます。

日常の指導・対応の“見える化”が鍵

では、こうした厳格な制度に、企業は具体的にどう備えればよいのでしょうか。

やはり基本となるのは、日頃からの丁寧な記録の積み重ねです。従業員の問題行動に対して注意・指導をした際は、その経緯を文書で残しておくといった地道な対応が、いざという時に「処分の理由は通報とは無関係で、正当な業務上の判断である」と客観的に示すための鍵となります。加えて、現場の管理職に対して、このような報復的行為を禁止する旨を周知しておくことも大切です。


こうした取り組みが、従業員が安心して声を上げられる信頼性の高い内部通報制度へと繋がり、ひいては企業の健全な成長を支える土台となります。改正法の施行を見据え、日々の労務対応を振り返り、誰もが安心して働ける、風通しの良い職場環境の整備を進めていきたいものです。

弁護士 山中 あい

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