問題社員やモンスター社員への対応方法。具体例を挙げて解説

問題社員やモンスター社員への対応方法。具体例を挙げて解説

問題社員とは、問題行動や能力不足、ハラスメント行為などにより、会社に悪影響を与える社員を指します。会社に問題社員がいてもすぐさま解雇することは難しく、組織や周囲の社員に悪影響を及ぼさないよう、適切な対応をとるのは困難です。この記事では、問題社員への基本的な対応方法や円満に解決する方法、問題社員を放置した場合のリスク、問題社員を生まない方法などについてご紹介します。今、まさに問題社員を抱えている会社の担当者や、今後問題社員が出てきた場合に備えて対策方法を知りたい方の参考にご覧ください。

問題社員・モンスター社員とは?

一般的に問題社員とは、問題行動や能力不足、ハラスメント行為などにより、会社事業の継続や職場環境に悪影響を与える社員のことをいいます。起こす問題の程度や頻度によっては、モンスター社員と呼ばれることもあります。

問題社員は当人だけの問題に留まりません。経営側にとっては対応にコストがかかり、周りの従業員側には士気やモチベーションの低下といった悪影響が生じる懸念があります。このように、問題社員がいるということは、経営側と従業員側、どちらにとっても悪影響を及ぼし、ひいては職場環境や業績の悪化を招く恐れがあります。

問題社員の特徴|問題社員はなぜ問題?

問題社員と呼ばれる者には、多様なタイプがあります。大まかには、意図的に問題を引き起こしているタイプと、故意ではないが能力不足などにより問題を引き起こしているタイプに分けることができます。

また、問題社員には次のような行動パターンが挙げられます。

  • 就業規則や業務命令に従わない
  • 不必要な残業をする
  • 仕事を怠ける
  • 社内ルールを守らない
  • 無断欠勤や遅刻、早退を繰り返すなど勤務態度に問題がある
  • 協調性がない
  • 守秘義務違反をする
  • SNSへ不適切な投稿をする
  • 素行が悪い、ギャンブルや不倫など私生活に問題がある
  • ミスが多く、改善できない
  • 能力が低い
  • ハラスメント行為がみられる

さらに問題によっては、業務が滞ったり職場の人間関係に支障をきたしたりという社内だけの問題では済まないこともあります。自社や取引先の秘密情報や、顧客の個人情報の漏えい、また、SNSへの不適切な投稿などは、事案によっては違法と評価され、企業が社会的批難を請けたり、損害賠償請求されたりする事態を引き起こすリスクもあるのです。

弁護士が教える問題社員の対応フロー

問題社員がいる場合、いきなり解雇を念頭に置くのではなく、まずは冷静に対処する方法を探るのが妥当です。

ここからは、具体的な問題解決方法をみていきましょう。

ステップ1:現状の客観的な把握

問題とされる言動が見られたり、周りの従業員から報告を受けたりした場合、まずはその現状を客観的に把握することが大切です。具体的にはどのような問題が起こっているのか、そしてその原因を確認します。

問題視されている社員個人に起因するものなのか、それとも、チームや上司とのコミュニケーション不足や不適切な業務指示などから起こる組織としての問題なのか、客観的に事実関係を確認することが大切です。周りの社員からの公平な意見聴取が重要となり、必要があれば本人からも事情を聴くことも考えられます。

ステップ2:業務指導

現状を客観的に把握し、原因を確認したうえで、問題社員の言動に改善の見込みがあったり原因が明確であれば、業務上の改善点に関して指導を行ったり、原因となっている事象に対処しましょう。その際、問題点に応じた具体的な改善方法を適切な表現で伝えることがポイントです。客観的にみて、業務上必要かつ相当な範囲で行われる適正な業務指示や指導をすべきであり、事実に基づかず感情的な言い方や嫌味な言い方をしても、相手の反発を買うだけでなく、場合によってはパワーハラスメントと評価される危険もあります。

また、指導は一度で済ませる必要はありません。時にはその社員の意見を取り入れたり目標を決めてフィードバックする機会を設けることも有益です。また、能力発揮を望める他部署に異動させたりといった対応も考えられます。

指導内容は記録に残すこともポイント

この指導をするときは、企業側として何度も指導を重ね、できる限りのことは行ったという「プロセス」を経ておくことが後日の対応のために非常に重要となります。どのような指導をしたか、これに対してその社員がどう対応したのかというプロセスを記録に残しておくことで、企業として必要な指導や対応を実施した証明になります。

指導内容の記録として、「業務指導書」を作成するといった方法もあります。企業や問題社員の背景や実情により指導書の内容については異なってきますので、早めに弁護士に相談するのがよいでしょう。

【業務指示書の書き方とポイント】テンプレート付き資料はこちらよりダウンロードできます。

ステップ3:定期面談

業務指導後は、きちんとフォローすることが重要です。そのためには、対象社員との定期的な面談の機会を設けましょう。指導後に改善傾向が見られるか、改善されたか、不満はないかなどしっかり把握します。この際、一方的に指導するだけではなく、対象社員側の意見をしっかり聴くことも重要です。

問題行動はいきなり発生するというよりは、小さな問題らしきものが積み重なって表面化することが多いものです。問題の芽となりうる言動が見られた段階から定期的にコミュニケーションをとっておくと、問題化の予防になり、たとえ問題が表面化してもスムーズな話し合いができるでしょう。

そして繰り返しになりますが、やりとりを記録することが大切です。適切な指導や面談をいくら重ねても、その事実や反応が記録されてなければ、後日客観的に証明することが難しいのが実状です。しっかりとプロセスを記録しておきましょう。

このような対策にもかかわらず状況が改善されない場合は、フロー2に戻り、他の解決策を検討してみることが考えられます。

ステップ4:警告

一定期間、指導や面談を重ねても改善が見られない場合は、警告をする必要があります。口頭ではなく、文書で、会社として何を問題視しているのか、対応してきたプロセスを明記し、何を望んでいるのか明記できるとよいでしょう。

事案によって、今後も改善が認められない場合は人事上の対応をする旨を記載することも選択肢となります。警告文書を交付するときは、可能であれば対象社員から受領書をもらっておきましょう。

ステップ5:懲戒処分

軽い戒告
(かいこく)
口頭もしくは文書で注意する
けん責始末書などの提出を命じて戒める
減給給与を減額する処分。ただし、一度の事案に対する減給額や、複数事案の場合の総額には法的な上限がある。
出勤停止 一定期間の出勤を停止し、その期間の賃金を支払わない処分
降格役職や職位、職務内容を引き下げる処分
諭旨解雇(ゆしかいこ)会社が退職を勧め、合意による退職を目指す処分。応じない場合は懲戒解雇とすることが就業規則に定められている場合がある。
重い懲戒解雇最も重い懲戒処分であり、従業員を一方的に解雇するもの

指導や面談、注意を何度行っても問題行動が改善しない、問題内容が極めて悪質といった場合は、懲戒処分を考える必要があります。懲戒処分には、軽微な処分である戒告に始まり、けん責、減給、出勤停止、降格、と徐々に処分内容が重くなり、最も厳しい処分が懲戒解雇です。懲戒処分は、諸般の事情を考慮して「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められない場合」は無効となります(労働契約法15条)。懲戒処分を決行する際は、記録されたプロセスを踏まえ、その事案においてどの程度の処分が妥当なのか、十分な検討を行う必要があります。とくに懲戒解雇は、紛争になると争いが大きくなるリスクがあり、容易ではないことに注意が必要です。

なぜ解雇は難しい?

日本的長期雇用を前提とした社員について、単に成績が不良というだけでは解雇が難しい理由としては、まず客観的な解雇の正当性が挙げられます。辞めさせたいと思っても、労働契約法16条により、「客観的に合理的な理由」と「社会通念上の相当性」がないと解雇はできません。問題社員が自主退職するのではなく、会社側から解雇した場合、問題社員から「不当解雇」と主張され、訴訟に発展する可能性もあります。

また裁判になれば、証拠資料を準備したり、弁護士費用が必要になったり、会社側の負担も多くかかります。もし裁判で企業側が敗訴したとなると、解雇した従業員に支払い命令がくだされるケースもあり、相当な支払い額になることもあります。

【ケース別】問題社員への対応方法

これまでに述べた基本的な対応方法を踏まえたうえで、ケースによってどのように問題社員に対応するか考えることも非常に重要です。ここからは、ケース別に問題社員への対応方法をみていきましょう。

【CASE1】無断欠勤を繰り返す社員への対応

無断欠勤は、勤務態度の問題として多く挙げられる事例です。無断欠勤を繰り返す社員には、まず連絡を入れ、欠勤となった理由を確認して証拠化するようにしましょう。やむを得ない急な理由で欠勤する場合は、必ず会社に連絡するように指導します。指導しても、無断欠勤を繰り返すようなら、懲戒処分を検討します。

裁判例には、2週間以上無断欠勤が続き、総合的な判断から解雇が正当だとみなされた例もあります。就業規則に一定期間の無断欠勤が続いた場合には自然退職とする旨の規定があれば、退職も検討が必要でしょう。

遅刻や早退についてもまずは指導から始まります。指導や注意を繰り返し、このプロセスを記録しておくことが、後日、企業側としての対応に問題がないとの評価につながります。

【裁判例】麻布税務署事件(東京地裁 平成3年4月26日 判決)

▶事案の概要
本件の原告(従業員側)は、税務署に勤務する国家公務員。昭和60年11月15日から、正当な理由なく継続して職場を欠勤し、連絡も取れない状態となる。被告(税務署側)は、この状況に対して、まずは電話や電報、書面によって原告に連絡を取り、欠勤理由の確認や出勤の督促を行う。しかし、原告からの具体的な返答はなく、欠勤は続く。税務署はさらに、原告の自宅を訪問したり、実家にも連絡を試みたりしたが、原告は出勤せず、連絡も取れない状態が続く。最終的に、税務署は昭和61年1月14日をもって、約1ヶ月間の無断欠勤を理由に原告を懲戒免職処分とする。これに対し、原告が処分の無効を訴えて裁判となった。

▶裁判所の判断と無断欠勤による解雇の判断基準
裁判所は、税務署が行った懲戒免職処分を有効であると判断しました。裁判所が解雇(懲戒免職処分)の有効性を判断するにあたっては、単に無断欠勤があったという事実だけでなく、様々な事情を総合的に考慮します。本件裁判例からも、以下の点が重要な判断要素となることが読み取れます。

1.無断欠勤の期間の長さと継続性
2.会社からの連絡・働きかけに対する従業員の態度
3.欠勤に正当な理由があるか
4.過去の勤務態度や懲戒歴
5.就業規則上の懲戒事由

【CASE2】業務命令に従わない社員への対応

会社からの業務命令に従わない社員に対しては、まずは口頭で注意・指導を行いましょう。それでも改善されない場合は、業務命令に従わなかったことについて弁明書を提出させましょう。

その後も業務命令に従わない場合には、懲戒処分を検討します。懲戒処分をした後も命令に背く場合は、より重度の懲戒として、退職勧奨や解雇を検討します。

【裁判例】高校教師による雇用関係存続確認等請求事件(大阪地裁 平成8年12月25日 第五民事部判決)

▶事案の概要
私立の男子高校において、本件の原告(保健体育の教師兼水泳部の顧問)が、体育の授業中に生徒を全裸にさせてプールで泳がせたなどの度重なる問題行動や業務命令違反を理由としてなされた懲戒解雇について、無効であると主張し、被告(学校側)に対して雇用契約上の地位確認と、解雇後の賃金支払いを求めて提訴した。

▶裁判所の判断と業務命令違反および懲戒処分の法的な判断基準
裁判では、懲戒解雇は懲戒権の濫用に当たるとして無効とされましたが、予備的になされた通常解雇は有効であるとされました。裁判所が、業務命令違反の有無や、それに対する懲戒処分の有効性を判断する際に考慮する主な基準は以下の通りです。本裁判例においても、これらの基準が適用されています。

1.業務命令の有効性・適法性
2.業務命令違反行為の有無と程度
3.会社への影響 
4.懲戒処分の相当性(均衡)

【弁明書の書き方とポイント】テンプレート付き資料はこちらよりダウンロードできます。

【CASE3】能力、対人関係に問題がある社員への対応

能力不足や、協調性に欠け対人関係に問題がある社員に対しても、まずは指導することが大切です。能力不足の社員の中には、本人は努力をしているものの、会社が求める水準に業務遂行能力が達しないという場合もあるので、面談や研修を繰り返し、改善の機会を与えましょう。新卒社員など未経験で入社した社員に対しては会社から十分な指導が必要と判断されるため、指導内容を記録しておくことが大切です。また、経験者として中途採用した社員の場合にも、会社側の指導は必要です。なお、採用時に本人が申告した能力を偽ったことが明らかなケースでは、事実関係を調査できれば、指導プロセスなく懲戒処分とできる場合もあると考えられます。

対人関係に問題がある場合も、適切な指導や面談を行い、まずは改善を目指します。本人の希望も踏まえ、配置転換を考えるのもよいでしょう。

【CASE4】ハラスメント行為をする社員への対応

セクハラやパワハラなどのハラスメント行為に関しては、まず、会社がハラスメントの有無やどの程度のハラスメントであったかなど、内容について十分な調査を行うことが重要です。その際、相談者、行為者双方に対してヒアリング調査を行います。相談者側の言い分のみを安易に信用して行為者とされる社員を懲戒処分してしまうと、不当とされ訴えられることもあるので要注意です。

事実関係をきちんと整理したうえで、程度に応じた処分を検討します。暴力を伴うセクハラや、過去にもパワハラについて懲戒処分歴がある社員がさらにパワハラを繰り返したケースなどは、諭旨解雇や懲戒解雇を検討する余地があるでしょう。

【裁判例】不動産関連企業の従業員による降格処分無効確認請求事件(東京地裁 平成27月8月7日 判決)

▶事案の概要
本件の被告(会社側)は、原告(従業員側)が部下に対して、長期間にわたり継続的にパワハラ(パワーハラスメント)に該当する行為を行ったとして、就業規則に基づき、原告を理事(8等級)から副理事(7等級)に降格させる懲戒処分を行った。原告は、この降格処分は無効であると主張し、被告に対して訴訟を提起した。

▶裁判所の判断とハラスメントの法的な判断基準
裁判所は、原告の行為の多くが被告の就業規則に定める懲戒事由(パワハラ)に該当すると認定しました。その上で、原告の地位、パワハラの態様(退職強要など悪質なものを含む)、期間(長期・継続的)、被害者の精神的苦痛(カウンセリング受診者もいる)、職場環境への悪影響などを考慮し、降格処分は相当であると判断しました。また、懲戒処分の手続きについても、懲戒事由の通知や弁明の機会は適切に与えられており、適法であると判断しました。結果として、原告の請求は棄却されました。本件裁判例からも、以下の点が重要な判断要素となることが読み取れます。

1.定義の適用
2.就業規則上の懲戒事由への該当性
3.処分の相当性(量定)
4.手続きの適法性

問題行為が改善しない場合、円満に退職させるには?

指導や懲戒処分をしても問題行為が改まらないときは、問題社員を辞めさせられるのでしょうか。円満に退職させるにはどうしたらよいのか、離職の方法についてみていきましょう。

まずは、退職勧奨を検討する

問題社員を辞めさせたいと思っても、いきなり解雇することは適当ではありません。前述したように、労働契約法では「客観的に合理的な理由」と「社会通念上の相当性」という2つの要件を満たす必要があると定められており、よほどの事情がない限り解雇することは難しいでしょう。

そのため、まずは退職勧奨を検討しましょう。退職勧奨とは、問題社員を退職に向けて説得し、双方の合意により雇用契約を終了することを指します。解雇は一方的な会社からの意思表示により雇用契約を終了させる性質上、どうしてもトラブルになりやすいものです。一方、退職勧奨なら従業員の同意を得ている点でトラブルになりにくいという利点があります。

退職勧奨の進め方と注意点

退職勧奨は、一般的には適法な行為とされていますが、その進め方には細心の注意が必要です。特に、以下の点を厳守しないと、違法な「退職強要」とみなされ、後々大きなトラブルに発展するリスクがあります。

1. 「退職強要」にならないようにする

退職勧奨は、あくまで従業員が自発的に退職を選択するように働きかける行為であり、強制するものであってはなりません。執拗(しつよう)であったり、強引な言動を用いたりすることは、「退職強要」または公序良俗違反として違法と判断される可能性があります。

例えば、長時間の面談を繰り返す、大声で威圧する、退職以外の選択肢はないと断定する、家族にしつこく連絡するといった行為は、退職強要とみなされる可能性が高く危険です。冷静かつ丁寧な態度で、従業員の意向を確認しながら進めることが重要です。面談時には、相手方の言い分も十分に聴き、頭ごなしに決めつけたり、感情的になったりせず、配慮の姿勢を見せることも大切です。

2. 客観的な事実に基づいて説明する

退職勧奨を行う際には、なぜ会社が退職を検討せざるを得ない状況にあるのかを、従業員の具体的な問題行動や能力不足といった客観的な事実に即して説明することが重要です。単に「協調性がない」「態度が悪い」といった主観的な評価や感情的な非難ではなく、「〇月〇日の会議で、△△という指示に対して□□という発言をし、業務の遂行を妨害した」「過去半年間の営業成績が他の社員と比較して著しく低い状態が続いている」「警告したにもかかわらず、無断欠勤が△日発生している」といった具体的な行動や事実を示す必要があります。これにより、従業員も自身の状況を認識しやすくなり、反発を招きにくくなります。

3. 問題行動やこれまでの指導の経緯を記録しておく

問題社員への対応においては、問題行動の内容、発生日時、会社が実施した注意・指導の内容や日時、従業員の反応などを具体的に記録しておくことが極めて重要です。特に、口頭での注意や指導だけでは「言った言わない」の水掛け論になりがちですので、指導記録表を作成したり、重要な面談の内容を議事録として残したりするなど、書面やデータで証拠化することが推奨されます。 これらの記録は、退職勧奨がうまくいかなかった場合に、最終的に解雇を選択せざるを得なくなった際の重要な証拠となります。裁判において会社側が解雇の有効性を立証する責任を負うため、日頃からの丁寧な記録が不可欠なのです。

4. 就業規則を確認し、必要に応じて整備する

問題社員への対応を進める上で、就業規則は対応の根拠となる非常に重要な社内規程です。どのような問題行動が懲戒処分の対象となるか、懲戒処分の種類や程度などを明確に定めておく必要があります。退職勧奨は直接には懲戒処分ではありませんが、その前の段階として行った注意・指導や軽い懲戒処分(譴責、減給、出勤停止など)の根拠となります。 就業規則の内容が現状に合致しているか、法改正に対応しているかなどを定期的に確認し、必要に応じて見直しを行うことも重要です。就業規則がしっかりと整備されていれば、従業員も会社のルールを認識しやすくなり、問題行動の抑止にもつながります。

5. 公平性を保つ

問題社員への対応は、他の従業員への影響も考慮して行う必要があります。特定の社員に対してのみ厳格に対応したり、逆に甘い対応をとったりすると、他の真面目に働いている社員の不満や不信感につながりかねません。常に公平な基準で対応することを心がけ、感情的にならず、冷静に対応することが大切です。また、問題社員に関する情報は、不必要に広まらないよう、適切に管理する必要があります。

解雇のリスクと弁護士への相談

退職勧奨を検討するといっても、事実を客観的に見極める必要があり、企業が自社で判断するのはかなり難しいでしょう。また退職勧奨といっても、何時間も面談するなど程度によっては違法とみなされることがあります。専門的な知識が欠かせませんので、早めに弁護士に相談するのが得策です。普段から付き合いのある弁護士なら、企業側の事情や背景を理解してくれているので、企業側にとっても問題社員にとっても、歩み寄った解決策が期待できます。

もし解雇したいと考えている場合も、弁護士に相談することをおすすめします。解雇は大きなリスクを伴う判断になるので、慎重に進めましょう。

問題社員への対応を放置することで想定される4つのリスク

問題社員への対応を放置していると、会社にさまざまな悪影響を及ぼします。社内に問題社員がいると、会社としての生産性が低下する、周りの従業員のモチベーションが下がる、場合によっては周りの社員が退職してしまうこともあります。対応が遅れると、事態はますます悪化してしまいます。放置することで起こりうるリスクを紹介します。

他の社員への悪影響、士気低下

問題社員の悪影響は、周りの社員へも及びます。問題社員の振る舞いは確実に職場の雰囲気を悪くし、真面目に職務を遂行している社員の士気を低下させます。

当初は問題社員に不満を持っていた他の社員が、何も対策を講じない上司や経営者に怒りの矛先を変えることもあります。さらには、新たな問題社員を生み出してしまうこともあるため、放置してもよいことはありません。

懲戒処分が難しくなる可能性がある

問題社員に対して、これまでの問題を会社が見て見ぬふりをし、必要な指導や懲戒処分を行っていないと、いざ懲戒処分を行う際になって裁判所が制限的に判断することがあります。

裁判所は、問題社員の行動のみならず、会社側がどのような対応、プロセスを経てきたのか過去の対応と比較し、バランスを考慮します。対応が遅れると、会社が積極的に問題解決を試みてこなかったと判断されてしまうのです。

逆パワハラ問題に発展する可能性がある

最初は些細な問題発言だったとしても、それを放置しているといわゆる逆パワハラに発展してしまうケースもあります。逆パワハラとは、部下から上司や経営者に対して行われるパワーハラスメントです。部下が上司に暴言を吐いたり暴力を振るったり、上司の命令に対して部下が執拗に反論するといった事態に陥る可能性があります。

逆パワハラが横行すると、上司が精神疾患になってしまう、休暇を余儀なくされてしまうといったこともあり、逆パワハラの被害者から会社が訴えられるケースもあります。

紛争に発展する可能性がある

問題社員をそのまま放置しておくと、問題がますます深刻化してしまう例も少なくありません。問題が悪化するだけでなく、上司からパワハラを受けたなど事実無根の主張をかざす、SNSに不適切な投稿をする、顧客情報を悪用しようとする、取引先に言いふらすなど、会社を攻撃・復讐してくるなど、紛争に発展することも考えられます。

問題社員への対応を弁護士に相談するメリット

問題社員への対応は、労働法上の難しさもあり、自社で対応するには限界があります。注意や指導から始まり、問題を解決するまではさまざまなプロセスを踏むことが必要です。ひとつでも不適切な対応があると、そこを社員が逆に問題視して紛争になることも考えられます。弁護士に面談の同席を依頼したり、手続きそのものを委任したりすることも、適切な対応を担保し、後日の「不当解雇」といった紛争リスクを低減させる有効な手段となり得ます。

また、裁判に発展してしまうと、裁判所から会社の対応がまずかった場合、その点を問題視され、会社が不利な立場に追い込まれる可能性もあります。

紛争を予防し会社の損害を最小限に抑えるためには、労働審判・労働訴訟などに詳しく問題社員への対応に精通した弁護士に、社員の問題言動とみられる前兆をキャッチした時点で相談することが大切です。弁護士に相談するメリットとしては以下が挙げられます。

メリット1. 法的な観点から、アドバイスを受けられる

問題社員に注意・指導し、懲戒処分を科す場合、必要になるのが労働法規や関連する裁判例です。法令や裁判例を踏まえて、最終的に法的紛争になった場合に想定される帰結やリスクを検討し、経営判断をしていくことになります。しかし、これらの情報を得たり活かしたりするのは、専門外の人には難しいのが現状です。その点弁護士なら、ケースごとにあった法的な観点から、適切なアドバイスを行うことができます。

メリット2. 問題の長期化を防止・人事担当者の負担軽減ができる

問題社員への対応はどうしても専門知識が必要になるので、自社だけで対応するとなると相当の労力と時間、また精神的負担もが必要です。長期化すればするほど問題は悪化し、周りにも悪影響を及ぼすでしょう。弁護士に相談することで、問題の長期化を防止するだけでなく、人事担当者の負担も減ります。心身ともにハードな対応を求められる人事担当者を守ることにつながるでしょう。

メリット3. 紛争に発展した場合に対応を一任できる

問題社員への対応は、後日、社員側から訴訟を起こされるリスクをもちます。例えば会社としては円満に退職してもらったつもりでも、当の社員は不満を募らせている場合が少なくありません。

もし裁判となった場合、事前に弁護士へ相談しておけば慌てることなく準備や手続き、書面の作成など諸々の対応ができ、審判・裁判当日の応対も任せられるので安心です。

弁護士に相談すべきタイミング

問題社員への対応は、その初期段階から弁護士に相談されることをお勧めしますが、特に以下のようなタイミングでは、速やかに専門家の意見を求めることが極めて重要です。

  1. 「解雇」を検討せざるを得ない状況になったとき
  2. 「退職勧奨」を進めることを検討しているとき
  3. 問題社員との間で「合意退職」の話し合いが進み、合意書を作成する必要が生じたとき
  4. 問題社員からハラスメント(パワハラ、セクハラなど)や不当解雇、その他問題行動に対する異議などを主張されたとき
  5. 問題社員の行動が、金銭的な不正請求など、会社の財産や信用に重大な影響を及ぼすものであるとき
  6. 問題社員との話し合いが感情的になり、会社だけでの対応が難航しているとき
  7. 問題行動やこれまでの指導の「証拠化」について不安があるとき
  8. 問題社員への対応マニュアルや就業規則を整備したいとき

問題社員への対応は、経営者様や人事担当者様にとって多大なストレスとなり、会社の存続にも関わる重要な経営課題です。しかし、不適切な対応はかえって状況を悪化させ、法的リスクを招きかねません。ご紹介したようなタイミング、特に従業員の身分に関わる措置を検討する場合や、法的なリスクが現実化しそうな兆候が見られた場合には、迷わず労働問題に詳しい弁護士に相談されることを強くお勧めいたします。

そもそも、問題社員を生まないためには?

問題社員の対応には、現状把握に始まり、指導、面談、懲戒処分と多くの時間と労力を要します。円満退社に持ち込めず裁判になると、より一層多くの時間と労力を費やすことになります。そのような事態を避けるため、そもそも問題社員を生まないようにすることも大切です。具体的な方法をみていきましょう。

指導や教育のあり方を見直す

問題社員による問題行動は、指導や教育のあり方を見直すことで未然に防止できる場合もあります。問題社員自身が、無視されていると思い込んでいたり、仕事を認めてもらえていないと不満に思っていたりすることが問題行動につながっているケースでは、指導の方法を見直してはいかがでしょうか。適切な指導や教育で、問題社員を本来あるべき望ましい姿に導くことは、会社側の責任とも捉えられるでしょう。

もちろん指導や教育で問題社員が生まれるリスクを完全に消せるわけではありませんが、問題行為の程度や頻度を抑えることは可能です。指導や教育方法については、適切なタイミングと頻度での1on1ミーティングなど、会社と社員による双方向コミュニケーションをはかることが重要です。

待遇面に不備がないか見直す

問題行動を起こす社員にある背景として、待遇面の不満が遠因になっていることもあります。やる気を持って入社したにもかかわらず、評価されているのか分からない、昇給やボーナス支給に反映されない、また、有給休暇が取得しにくい、といったことを不満に思い、それが問題社員のモチベーション低下につながっていることが考えられます。

待遇面から見て、社員が意欲的に働ける環境を整えることも、企業としては大切にしたいことです。

問題社員を生まない・問題が小さいうちに対策を講じることが大切

問題社員への対応は、遅れれば遅れるほど、自社での対応による誤りが発生したり、放置することで職場環境の悪化が進んだり、事態が深刻になります。一旦そうなってしまうと、問題解決のためにより多くの時間と労力を費やすでしょう。法的な知識が必要なため、火種が小さいうちに弁護士に相談することが、速やかな解決をはかるための重要なポイントです。

ブライトだからできること

弁護士法人ブライトの顧問弁護士サービス「みんなの法務」は、会社の事業や文化を理解し、予防的・積極的に根本的な解決へと導きます。問題社員の予兆が見られた時点での対応はもちろん、問題社員を生まない対策についても専門的な視点から的確なアドバイスをさせていただきます。問題社員についての疑問やお悩みがある方は、まずはお気軽にお問い合わせください。

本記事は、一般的な情報の提供を目的とするものであり、個別案件に関する法的助言を目的とするものではありません。また、情報の正確性、完全性及び適時性を法的に保証するものではありません。
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