労災を会社が認めないとき、「労災保険は受給できるのか」「なぜ会社は労災を認めてくれないのか」「会社を通さず自分で労災の申請ができるのか」と気になる方もいるでしょう。本記事では、労災認定に必要な条件とあわせて、会社の労災申請における義務や会社が労災を認めない理由、労働者自身が労災申請を行う方法などを解説します。
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労災の認定には2つの基準を満たすことが必要
労災(労働災害)における「業務災害」とは、労働者の業務上の負傷、疾病、障害または死亡のことです(労働者災害補償保険法第7条1項1号)。業務上とは、「業務が原因となったこと」であり、業務と傷病などの間に一定の因果関係があることを意味します。
労災保険の認定には、業務災害であることが認められなければなりません。業務災害であると認められるには、「業務遂行性」と「業務起因性」の2つの基準を満たすことが必要です。
業務遂行性
業務遂行性とは、「業務を遂行しているときに起きた傷病であること」です。事業主の支配下・管理下にあり、業務に従事している場合に起きた災害であることを満たす必要があります。
実際に業務をしておらず、休憩中の買い物といった私的な行為によって発生した傷病の場合は、業務災害とは認められません。
業務起因性
業務起因性とは、「業務が原因で、傷病が起こったといえること」です。業務と傷病の間に一定の因果関係が認められる必要があります。
ただし、労働者が故意により災害を発生させた場合などは、業務との因果関係が認められません。
また、通勤中に起きた「通勤災害」においては、労災保険法における通勤の要件を満たしていれば、労災の給付が対象となります。
労災を会社が認めないときでも労災申請は可能
労災を会社が認めない場合でも、労災申請はできます。なぜなら、業務中に傷病が起きた場合、労災として認められるかどうかの判断は、事業主ではなく労働基準監督署(以下、「労基署」)が行うためです。
労災を申請する際は、指定の請求書を労基署に提出します。この中には「事業主証明」の欄が含まれていますが、「会社が拒否する」などの理由により事業主証明が得られない場合には、会社の同意や承認を得ずに労災申請を行うことが可能です。詳しくは以下で紹介します。
なお、労働者災害補償保険法第23条により、会社には労働者の労災申請に協力する義務があります。
第23条(事業主の助力等) <1項> 保険給付を受けるべき者が、事故のため、みずから保険給付の請求その他の手続を行うことが困難である場合には、事業主は、その手続を行うことができるように助力しなければならない。 <2項> |
労災申請に際して協力を拒否された場合には、最寄りの労基署に相談することをおすすめします。
労災を認めない場合は「労災かくし」に該当する場合も
労災により労働者が死亡または4日以上休業した場合、事業者はすぐに労働者死傷病報告書等を労基署長に提出する必要があります(労働安全衛生法第100条、労働安全衛生規則第97条)。
この労働者死傷病報告書を「故意に提出しない」あるいは「虚偽の内容を記載して提出した」場合、「労災かくし」という犯罪にあたります。
労災かくしが生じると、本来受給できるはずの補償が受けられなくなってしまうため、労働者の経済的な負担が多くなります。また、労災であるのにもかかわらず、「会社に恩義を感じているから」「大したけがではないから」といった理由から申請を行わない場合には、知らないうちに労災かくしに加担してしまっている可能性もあります。「労災かくし」による労働安全衛生法違反の公訴時効は3年ですので、労災かくしが疑われる場合は早めに弁護士へ相談しましょう。
【関連記事】犯罪となる事業者の「労災かくし」について弁護士が解説
会社が労災を認めないのはなぜ?理由を解説
労災を認めない会社があるのは、なぜなのでしょうか。考えられる理由を解説します。
申請に手間がかかる
まずは、申請の手間にかかることを理由に、労災認定を拒否するケースです。先述したように、労災が発生した場合、会社は労基署へ労働者死傷病報告書を提出したり、労災保険の給付手続きをしたりしなければなりません。社内の担当者が「別の業務も兼務している」「日常業務に追われている」といった場合、手続きを怠ったり、故意に行わなかったりする恐れがあります。
保険料が上がる
会社の労災保険における保険料が上がってしまうことを理由に、拒否しているケースもあります。業務災害の労災保険は、労災の発生率に応じて保険料が増減する仕組みです。労災の件数が増えると、それに伴って会社の保険料も増えるため、保険料の増額を恐れて労災を認めない可能性も考えられるでしょう。
法律違反がある
会社に何らかの法律違反があるために、労災を認めないケースもあります。労災が発生した場合、「労災と認められる事故であるか」「どの程度の支給が適切であるか」などを判断するために、会社に労基署の監査が入ります。そのため、何らかの法律違反(安全配慮義務違反など)があると自覚している会社では、それが明るみになることを避けるため、労災を認めないことがあるでしょう。
労災を会社に認めてもらうには
労災保険の申請を行うには、原則として「事業主証明欄」を記入してもらう必要があります。では、会社に労災と認めてもらうにはどうするとよいのでしょうか。
先述したように、会社には労災申請に協力する義務があります。その義務があることを前提として、労災申請への協力を交渉しましょう。
しかし、交渉を行っても会社から何らの対応が得られない場合や、申請を取りやめるよう促された場合は、労基署への相談が望ましいです。労基署に相談することで、労基署から会社に対して、事業証明への記入を促すことがあるでしょう。また、「業務災害の発生は会社側に責任がある」「労災かくしが行われている」という場合には、弁護士への早めの相談をおすすめします。
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それでも会社の協力が得られず個人で労災申請を行う方法
まずは、「療養補償給付及び複数事業労働者療養給付たる療養の給付請求書」(5号)など自身(遺族)が該当する申請書を記入し、会社の管轄である労基署に提出をします。必要な請求書などについては、労基署で受け取るほか、「厚生労働省」のホームページにてダウンロードも可能です。提出の際は、「会社に認めてもらえず事業主証明がない」旨を伝えましょう。
事業主証明のない申請が受理されたら、労基署から会社に「証明拒否理由書」が送付されます。会社が拒否した理由を記入して返送すると、労基署はこの理由書などをもとに、該当する死傷病について調査や事情聴取を行います。これらを経て労災と認定されると、労災保険の給付対象となります。
労災でお困りの方は、弁護士法人ブライトにご相談を
労災を会社が認めない場合は、事業主の証明が得られなくても申請が可能です。ただし、会社には労災申請に協力する義務や、労働者死傷病報告書を提出する義務(4日以上の休業がある場合)があります。
弁護士法人ブライトでは、労災問題に特化した「労災事故専門チーム」を擁しています。相談料は3回まで無料(0円)で行っているため、会社に業務災害の責任が追及できる場合や労災かくしがある場合には、安心してご相談ください。また、弁護士費用についても、原則として完全成功報酬制を採用しているため、着手金も無料(0円)です。
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