「これは労災ではない」と会社に言われた――そのとき、あなたはどう動けばいいのでしょうか。本記事では、会社が労災を認めない本当の理由から、事業主証明がなくても進められる申請方法、労災が不支給になっても会社へ損害賠償請求できるケース、「本人の不注意」と言われたときの反論方法まで、当法人の実際の解決事例とともに弁護士が解説します。
- 会社が「労災ではない」と言っても、労災に当たるかを決めるのは会社ではなく労働基準監督署です。会社の証明(事業主証明)がなくても労災申請はできます。
- 会社が労災を認めたがらない背景には、保険料の上昇や「労災かくし」だけでなく、その先にある損害賠償責任を避けたいという思惑が隠れていることがあります。
- 労災保険が不支給でも、会社の安全配慮義務違反を理由に損害賠償を請求できるケースは少なくありません(労災認定と民事賠償は別物)。
- 「本人の不注意だ」と責任を否定されても、適切な証拠を固めれば数百万〜数千万円規模の解決に至った事例があります。

(※お電話での対応は平日9:00~18:00となっております、それ以外の時間はメールやLINEでのお問い合わせをお願いします)
「労災を会社が認めない」には2つの意味がある
労災を会社が認めない、という相談には、実は性質の異なる2つの問題が混在しています。混同すると対処を誤ります。
| タイプ | 会社の態度 | 主な争点 | ゴール |
|---|---|---|---|
| ①申請への非協力 | 事業主証明を拒む/手続きに協力しない | 労災保険給付を受けられるか | 労基署への申請受理・給付決定 |
| ②賠償責任の否認 | 「会社に落ち度はない」「本人の不注意だ」 | 安全配慮義務違反・使用者責任 | 会社への損害賠償(慰謝料・逸失利益等) |
既存の解説記事の多くは①の「手続き」しか扱いません。しかし、重い後遺障害や死亡に至った事故ほど②が本丸になります。会社が労災を頑なに認めないとき、その本当の理由は「②損害賠償を負いたくない」ことが少なくないのです。

(※お電話での対応は平日9:00~18:00となっております、それ以外の時間はメールやLINEでのお問い合わせをお願いします)
そもそも労災に当たるか決めるのは会社ではない
会社が「労災ではない」と言っても、それは一意見にすぎません。労災として認められるかどうかを判断するのは、事業主ではなく労働基準監督署(労基署)です。
労災(労働災害)における業務災害とは、労働者の業務上の負傷、疾病、障害または死亡のことです(労働者災害補償保険法第7条1項1号)。業務災害と認められるには、「業務遂行性」と「業務起因性」の2つの基準を満たすことが必要です。
業務遂行性
業務遂行性とは、「業務を遂行しているときに起きた傷病であること」です。事業主の支配下・管理下にあり、業務に従事している場合に起きた災害であることを満たす必要があります。実際に業務をしておらず、休憩中の買い物といった私的な行為によって発生した傷病の場合は、業務災害とは認められません。
業務起因性
業務起因性とは、「業務が原因で、傷病が起こったといえること」です。業務と傷病の間に一定の因果関係が認められる必要があります。ただし、労働者が故意により災害を発生させた場合などは、業務との因果関係が認められません。
また、通勤中に起きた「通勤災害」においては、労災保険法における通勤の要件を満たしていれば、労災の給付が対象となります。
会社の協力がなくても労災申請はできる
労災を会社が認めない場合でも、労災申請はできます。なぜなら、業務中に傷病が起きた場合、労災として認められるかどうかの判断は、事業主ではなく労基署が行うためです。
労災を申請する際は、指定の請求書を労基署に提出します。この中には「事業主証明」の欄が含まれていますが、会社が拒否する場合には、会社の同意や承認を得ずに労災申請を行うことが可能です。なお、労働者災害補償保険法第23条により、会社には労働者の労災申請に協力する義務があります。
| 第23条(事業主の助力等) <1項> 保険給付を受けるべき者が、事故のため、みずから保険給付の請求その他の手続を行うことが困難である場合には、事業主は、その手続を行うことができるように助力しなければならない。 <2項> |
事業主証明欄が空欄でも、会社が拒否した経緯を記した上申書を添えれば、労基署は申請を受理しなければならない取り扱いになっています。提出の際は、「会社に認めてもらえず事業主証明がない」旨を伝えましょう。
事業主証明のない申請が受理されたら、労基署から会社に「証明拒否理由書」が送付されます。会社が拒否した理由を記入して返送すると、労基署はこの理由書などをもとに、該当する死傷病について調査や事情聴取を行います。これらを経て労災と認定されると、労災保険の給付対象となります。
【当法人の解決事例①】会社が「事業主証明」を拒否し、申請が完全に止まったケース
状況:建設業で就労中に負傷し休業。休業(補償)給付を申請しようとしたが、勤務先が「これは労災ではない」と事業主証明を拒否。手続きが止まり、休業中の収入が途絶える危機に。
当法人の対応:①会社へ拒否理由を確認し「事業主証明は労働者の受給権を左右せず、事実を証明するにすぎない」ことを法的に説明、②並行して労基署担当者に事前に事情を説明し、上申書に記載すべき事項を確認、③会社への協力依頼を内容証明で記録化。会社へのプレッシャーと労基署への丁寧な説明を”両輪”で進行。
結果:弁護士介入後、非協力だった会社が最終的に事業主証明に応じ、約1ヶ月で休業給付の受給開始。「自分一人ではどうにもならなかった」と感謝の声。
(依頼者・会社が特定されないよう抽象化しています。以下の事例も同様です。解決金・解決期間は事案ごとの個別事情により大きく異なり、同様の結果を保証するものではありません。)

(※お電話での対応は平日9:00~18:00となっております、それ以外の時間はメールやLINEでのお問い合わせをお願いします)
会社が労災を認めたがらない「本当の理由」
労災を認めない会社があるのは、なぜなのでしょうか。考えられる主な理由を解説します。
申請に手間がかかる
まずは、申請の手間にかかることを理由に、労災認定を拒否するケースです。労災が発生した場合、会社は労基署へ労働者死傷病報告書を提出したり、労災保険の給付手続きをしたりしなければなりません。社内の担当者が「別の業務も兼務している」「日常業務に追われている」といった場合、手続きを怠ったり、故意に行わなかったりする恐れがあります。
労災保険料(メリット制)が上がる
会社の労災保険における保険料が上がってしまうことを理由に、拒否しているケースもあります。業務災害の労災保険は、労災の発生率に応じて保険料が増減する仕組みです。労災の件数が増えると、それに伴って会社の保険料も増えるため、保険料の増額を恐れて労災を認めない可能性も考えられるでしょう。
監督署の調査・法令違反の発覚を避けたい(労災かくし)
会社に何らかの法律違反があるために、労災を認めないケースもあります。労災が発生した場合、労基署の調査が入ります。そのため、何らかの法律違反(安全配慮義務違反など)があると自覚している会社では、それが明るみになることを避けるため、労災を認めないことがあるでしょう。
労災により労働者が死亡または4日以上休業した場合、事業者はすぐに労働者死傷病報告書等を労基署長に提出する必要があります(労働安全衛生法第100条、労働安全衛生規則第97条)。この報告書を故意に提出しない、または虚偽の内容を記載した場合、「労災かくし」という犯罪にあたります。「労災かくし」による労働安全衛生法違反の公訴時効は3年ですので、労災かくしが疑われる場合は早めに弁護士へ相談しましょう。
【関連記事】犯罪となる事業者の「労災かくし」について弁護士が解説
その先の「損害賠償」を避けたい(本当の核心)
上記の3つに加えて、特に重傷事故・死亡事故では見逃せない理由があります。労災を認めれば「業務上の事故」と確定し、会社の安全配慮義務違反を問われやすくなるのです。だからこそ、入口で「労災ではない」と否認したがる構図があります。
会社にとって、労災保険料の上昇は「数万〜数十万円」の問題ですが、損害賠償は「数百万〜数千万円」規模になり得ます。入口で否認することで、その後の損害賠償請求そのものを封じたい――これが、会社が頑なに労災を認めない本当の理由であることがあります。

(※お電話での対応は平日9:00~18:00となっております、それ以外の時間はメールやLINEでのお問い合わせをお願いします)
労災が「不支給」になっても、会社への損害賠償は別物
労基署が労災を不支給と判断しても、会社への民事の損害賠償請求まで否定されたわけではありません。労災認定(行政)と損害賠償(民事)は判断の枠組みが別だからです。
ただし、これは「不支給でも賠償が簡単に取れる」という意味ではありません。民事でも業務起因性や安全配慮義務違反の立証責任は依頼者側にあり、決して低いハードルではないため、証拠の見極めと戦い方の設計が結果を大きく左右します。だからこそ、初動での弁護士の関与が重要になります。
【当法人の解決事例②】労災が不支給。それでも会社から解決金を得たケース
状況:勤務先施設内で、雨の日に濡れた床で転倒し肩を負傷(腱板断裂)。会社が「業務中ではない」と非協力で、労基署は不支給決定。審査請求も棄却された。
当法人の判断:「再審査請求で行政判断を覆すのは相当に厳しい。主戦場を、会社に対する安全配慮義務違反を根拠とした損害賠償請求に切り替えるべき。労災認定と民事の判断は別物で、こちらには十分チャンスがある」。事故直後の報告内容・当日の天候の客観証拠・同僚証言を固め、内容証明で相手の出方を見ながら交渉。
結果:水掛け論で訴訟リスクが残ると見て、早期和解を選択。治療費・慰謝料相当を「解決金」名目で受領し、約2ヶ月・100万円台で示談解決。「諦めずに相談して本当に良かった」との声。(同様の結果を保証するものではありません。)

(※お電話での対応は平日9:00~18:00となっております、それ以外の時間はメールやLINEでのお問い合わせをお願いします)
「本人の不注意だ」と言われたら――安全配慮義務違反で反論する
会社が責任を認めない典型が「本人の不注意(自己責任)」という主張です。しかし、危険な作業を命じながら安全措置を講じていなければ、会社の安全配慮義務違反・使用者責任を問えます。
安全配慮義務とは、使用者が労働者の生命・身体の安全を確保しながら労働できるよう配慮しなければならない義務です(労働契約法第5条)。具体的には、設備・機械の整備、危険作業に関する教育・指示、安全帯・ヘルメット等の保護具の提供が含まれます。
【当法人の解決事例③】「本人の不注意」と退けられたが、1,000万円台で和解したケース
状況:上司の指示で高所のホールド交換作業中、落下防止措置がないまま脚立から転落し踵骨を複雑骨折。労災で後遺障害12級は認定されたが、会社は「本人の不注意」として労災給付以外の賠償に応じず。
当法人の判断:「12級認定済みは大きなアドバンテージ。これを基礎に、安全帯着用指示や足場確保を怠った点を安全配慮義務違反・使用者責任の両面で追及する」。相手方の『本人過失』主張は想定どおりと見て早期に訴訟へ移行。事故現場写真・業務指示の記録・同僚陳述書を準備。
結果:裁判所の和解案(過失相殺リスクを織り込んだ妥当水準)を受け入れ、約11ヶ月・1,000万円台で訴訟上の和解。(同様の結果を保証するものではありません。)
死亡事故で会社が「ゼロ回答」でも、戦う余地はある
最も会社が責任を認めたがらないのが死亡事故です。目撃者がいない事案では、会社が「労災ではなく私病(持病)で倒れた」と主張し、賠償を全面拒否(ゼロ回答)することもあります。
【当法人の解決事例④】「持病で倒れただけ」との会社主張を覆し、3,000万円台で和解したケース
状況:トラック運転手がトラック付近で頭部から出血して倒れ死亡。目撃者なし。会社は「荷台からの転落ではなく私病で倒れた」としてゼロ回答。
当法人の対応:転落か私病かが最大の争点。人がどのような体勢で落下するかを専門の鑑定で立証し、「平らな地面で倒れただけでは頭部の裂傷やヘルメットの脱落は説明できない。転落時の複雑な墜落姿勢なら、発見状況とも矛盾しない」と反論を構築。
結果:ゼロ回答から、最終的に訴訟上の和解で3,000万円台の解決に到達。(同様の結果を保証するものではありません。)
ご遺族にとって何が変わるか
| Before(ゼロ回答時) | After(ブライトに依頼後) |
|---|---|
| 「夫の死は持病のせい」と会社から拒絶され、何もできない絶望 | 故人の死が業務上の事故として法的に認められ、3,000万円台の補償 |
| 夫の名誉が傷つけられたまま放置される苦しみ | 「夫の死が事故として認められ、名誉が回復された」と感じられる |
| 遺族として会社・元勤務先と直接対峙する精神的負担 | 弁護士が窓口になり、職場や元勤務先と直接対峙せずに正当な補償を獲得 |

(※お電話での対応は平日9:00~18:00となっております、それ以外の時間はメールやLINEでのお問い合わせをお願いします)
会社が労災を認めないとき、弁護士に相談するメリット
- 申請(行政)と損害賠償(民事)のどちらを主戦場にすべきかを初動で見極められる
- 会社への交渉・内容証明・労基署対応を一任でき、復職や生活費の不安を抱えながら自分で動く負担を回避
- 証拠(事故報告・現場写真・同僚証言・カルテ)を「後で効く形」で早期に確保できる
- 弁護士が窓口になることで、在職中の会社と直接やり取りする精神的負担をなくせます。「会社と争えば解雇されるのでは」「職場で気まずくなるのでは」という不安こそ、多くの方が泣き寝入りしてしまう最大の理由です。やり取りを弁護士に一本化することで、その恐怖を抱えずに正当な補償を求められます。
弁護士法人ブライトでは、弁護士歴平均13年以上のチームが、申請から安全配慮義務違反の損害賠償まで一貫して対応します。紹介に頼らずWeb経由で多数のご相談をいただいており、労災事案の蓄積が厚いことが特長です。労災部(笹野皓平 弁護士)を中心に、重い後遺障害・死亡事故を含む複雑な案件にも取り組んでいます。
会社が労災を認めないケースでブライトに依頼した場合の対応範囲・解決までの流れ・費用は、「会社が労災を認めない」場合の弁護士対応サービス案内で詳しくご案内しています。

(※お電話での対応は平日9:00~18:00となっております、それ以外の時間はメールやLINEでのお問い合わせをお願いします)
よくある質問
会社が「労災ではない」と言えば労災にならないの?
いいえ。労災に当たるかを決めるのは会社ではなく労働基準監督署です。会社の「これは労災ではない」という発言は一意見にすぎず、申請を妨げる法的根拠はありません。
事業主証明を拒否されたら申請できない?
できます。上申書(会社に拒否された経緯を記した書面)を添えて労基署に直接申請できます。会社に協力義務を告知しながら交渉を進め、並行して労基署に事情を伝える方法が効果的です。
労災が不支給でも会社に損害賠償できる?
安全配慮義務違反が立証できれば、できるケースがあります(解決事例②参照)。労災認定(行政)と民事損害賠償は判断の枠組みが別物です。ただし、民事でも立証責任は依頼者側にあるため、証拠の準備と戦略が重要になります。
「本人の不注意」と言われたら諦めるしかない?
いいえ。会社が適切な安全措置を講じていなかった場合、安全配慮義務違反・使用者責任を問えます(解決事例③参照)。「本人の過失」があっても、会社側の過失と組み合わせて損害賠償を争うことができます。

(※お電話での対応は平日9:00~18:00となっております、それ以外の時間はメールやLINEでのお問い合わせをお願いします)
NEW|2026年最新
労災事故の損害賠償|弁護士法人ブライトの最新解説シリーズ
労災給付では補えない慰謝料・逸失利益などの損害賠償請求について、論点別に体系的に解説しています。
===文字数: 35979






