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労災指定病院とは?指定病院以外を受診した場合の対応も紹介

労災に遭った場合に、「労災指定病院に行くべきか」「なぜ労災指定病院を受診するとよいのか」と気になる方もいるのではないでしょうか。また、労災に遭ってたまたま受診した病院が「労災指定病院ではなかった」という方もいるでしょう。今回の記事では、労災指定病院の概要とあわせて、労災指定病院を利用する場合や指定病院以外を受診した場合、健康保険証を使用して受診した場合などの手続き、労災に関するよくある質問をご紹介します。

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労災指定病院とは、窓口負担ゼロで労災の診療を受けられる医療機関のこと

労災指定病院とは、業務中や通勤中に労働者がけがをしたなどの労働災害(労災)があった場合に、受診を推奨している病院のことです。正式には労災保険指定医療機関といい、労働者災害補償保険法施行規則第11条により、都道府県の労働局長が指定した医療機関を指します。

労災指定病院の受診が推奨される理由は、労働者自身が窓口で負担する費用は発生しないためです。健康保険制度による保険診療の場合、治療を受けると患者の窓口負担が発生します。しかし、労災保険の給付が認められた場合、治療費や入院費、通院費などの療養費は、労災保険から医療機関へ直接支払いが行われます。これを労災保険で「療養の給付」といい、被災労働者は窓口負担なく治療を受けることができます。

一方、労災指定病院以外を受診しても、労災保険から治療費を受け取ることは可能です。ただし、労災指定病院などの指定医療機関等でない場合は、窓口で一旦全額を負担したうえで、別途手続きが必要となるので注意しましょう。詳しくは後述します。

なお、労災保険の適用範囲はけがや病気の受診・治療などに限られ、入院の際に個人の快適性のために指定した個室代や、日用品などの備品代は原則として自己負担となります。

参考:「労災保険給付の概要」「療養(補償)等給付の請求手続」厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署

【関連記事】労働保険とは?受けられる補償や受ける方法を解説

労災病院も同様の受診が可能

労災指定病院とよく似た機能をもつのが「労災病院」です。労災病院も労災指定病院と同じく、労災保険が適用されれば労働者は窓口負担ゼロで受診できる点は共通しています。

異なる点は、運営元です。労災指定病院は、「一般の医療機関」が各都道府県の労働局長に申請を行うことで対象となります。対して、労災病院は厚生労働省所管の「独立行政法人労働者健康福祉機構」が運営する病院のことです。

労災病院は全国に32カ所あり、一般診療も実施しつつ、労働者の治療やリハビリなど労災への対応に重点を置いているのが特徴です。

労災指定病院、労災病院を利用する手続き

業務中や通勤中のけがなどで労災指定病院、または労災病院を利用するとき、療養(補償)等給付の申請に必要な手続きを紹介します。

(1)受診の際に労災であることを伝える

労災の場合は健康保険が適用されません。受診の際は、労災指定病院や労災病院で、労災である旨を伝えましょう。

(2)労災保険の請求書を作成して、受診した医療機関に提出をする

労災保険の申請には、労災であることを証明する書類が必要です。労働災害である場合は5号、通勤災害である場合には16号の3を記入し、医療機関を通じて労働基準監督署(以下、労基署)に提出をしましょう。この場合、窓口での負担なく、必要な治療を受けることができます。

なお、請求書には労働者個人の情報だけでなく、事業主による証明欄があります。受診前に請求書が用意できる場合は、受診時に窓口に提出をしましょう。

一方、けがをしてすぐに治療が必要なときなど受診時に請求書を用意できない場合は、一旦窓口で治療費を全額立て替えます。治療費を請求するにあたって領収書やレシートが必要となるため、必ず受け取り大切に保管しておきましょう。後日、受診した医療機関に上記の請求書を提出することで、窓口での負担額が返還されます。

また、労災で治療を受けたあとに調剤薬局を利用した場合も、同様の手続きをすると無償で薬が受け取れます。薬局にも労災指定薬局と指定外薬局があるため、利用した薬局にあわせて請求を行いましょう。

受診した病院が労災指定病院ではない場合の手続き

「急いで治療が必要となったため最寄りの病院に行った」など、受診した病院が労災指定病院ではないときも、療養(補償)給付の対象となります。申請に必要な手続きは、以下の通りです。

(1)受診の際に労災であることを伝える

先述したように、労災は健康保険が使用できません。受診した医療機関が労災指定病院であるかを問わず、労災であることを伝えましょう。

(2)窓口で治療費の支払いを行う

労災指定病院以外で受診した場合でも、療養(補償)等給付の申請は可能です。ただし、一旦治療費全額を窓口で支払う必要があります。治療費を請求するにあたって領収書やレシートが必要となるため、必ず受け取り大切に保管しておきましょう。

(3)申請書と治療費の領収書を労働基準監督署に提出する

後日、必要書類を労働基準監督署に申請することによって、支払った分の治療費が返還されます。7号(1)、または16号の5(1)に必要事項を記入し、労災により受診・治療を行ったことを事業主、および医師から証明を受けましょう。申請書が揃ったら、領収書とともに労基署へ提出します。

申請が承認されると、労働者が指定した預貯金口座に治療費が振り込まれます。

健康保険で支払った場合の手続き

労災であるにもかかわらず、受診の際に健康保険を使用してしまった場合には、すぐにかかった医療機関にその旨を伝えましょう。労災保険への切り替えができるか否かで、今後の手続きが異なります。

受診した病院に健康保険から労災保険への切り替えができるかのフロー図

参考:「お仕事でのケガ等には、労災保険!」厚生労働省

労災保険への切り替えができる場合

医療機関から「健康保険から労災保険への切り替えができる」と返答があった場合は、労災指定病院を受診するときと同じ手続きを行う必要があります。

まずは労災保険の申請書を作成して、受診した医療機関に提出をしましょう。業務災害である場合は5号、通勤災害である場合には16号の3を記入し、医療機関を通じて労基署に提出します。

その後、医療機関から窓口で支払った金額(一部負担額)が返還されます。また、次回以降の受診がある場合には、労災保険が適用されます。

労災保険への切り替えができない場合

すでに医療機関側で健康保険扱いの手続きが完了している場合など、医療機関では労災保険への切り替えができないことがあります。その場合は、原則として、一時的に医療費の全額を自己負担した上で労災保険の請求が行えます。労災保険への切り替え手続きは、以下の通りです。

(1)健康保険組合に伝える

まずは保険者である健康保険組合に、今回の負傷が労災であったものの健康保険を使ってしまった旨を伝えましょう。

なお、健康保険組合には、「全国健康保険協会(各都道府県支部)」、企業グループ等が組織する「健康保険組合」、各市町村が運営する「国民健康保険」があります。健康保険証から自身が加入する健康保険組合を確認して行いましょう。

(2)健康保険組合に返納手続きをする

後日、保険者から窓口で負担していない分の医療費(労働者が窓口で3割負担なら、医療機関側が負担した7割分)を支払う納付書が送られてきます。健康保険組合の手続きに従い、健康保険で受診した医療費の返納をしましょう。この残りの医療費を支払うことで、治療にかかった費用全額の10割を一旦負担する形となります。

医療費の確認作業などが発生するため、納付書の到着までに数カ月かかる場合があります。医療費を納付したあとは、保険者から領収書と診療報酬明細書を受け取りましょう。今後の手続きに必要な書類です。開封せずに保管しておきましょう。

(3)労災保険の申請書を記入後、領収書を添えて労基署へ請求を行う

労災保険給付の申請を行うため、7号(1)、または16号の5(1)を記入して、事業主、および医師による証明を受けます。申請書とともに、病院の窓口で支払った金額(一部負担金)の領収書と、返還額の領収書、診療明細書を添付して労基署に提出しましょう。

その後、申請が承認されたら、労働者が指定した預貯金口座に療養費が返還されます。

ただし、指定医療機関以外で受診や治療を行った場合は、手続きが複雑になる場合もあります。手続きの方法がわからない、申請の範囲が適切か知りたいなど、不明点がある場合は早めに弁護士や労基署などの専門家に相談すると、自身に適した手続きや補償が可能となるでしょう。

参考:「主要様式ダウンロードコーナー(労災保険給付関係主要様式)」厚生労働省

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労災での受診についてよくある質問

労災での受診についてよくある質問を、厚労省の資料を基に解説します。

労災指定病院を検索する方法は?

労災指定病院を知りたい場合は、厚労省のホームページ「労災保険指定医療機関検索」で検索ができます。医療機関名や所在地、診療科目から検索することが可能です。労災病院を探したい場合は、独立行政法人労働者健康安全機構の「労災病院」の一覧から確認してみましょう。

また、かかりつけの病院がある場合や最寄りの病院がある場合などは、直接医療機関に問い合わせることがおすすめです。インターネットで検索するとすぐに労災保険が対象の医療機関かがわかるものの、現在は受け入れていない、該当する診療科目がないというケースもあります。希望する医療機関を見つけたら、直接電話をかけて確認をとると確実です。

病院を変更することは可能?

転院先の労災指定病院に病院の変更届(6号、または16号の4)を提出すれば、転院は基本的に自由です。「自宅に近い場所へ通院したい」「手術ができる病院に転院したい」など、労災保険が適用される傷病で継続的な受診や治療が必要となったときは、自身が通いやすい病院に変更してもよいでしょう。

ただし、変更届には病院を変更する理由の記入が必要です。「主治医と反りが合わないから」などの理由では、変更が認められない可能性もあります。「引越しにより通院が困難になったため」「セカンドオピニオンとして受診したいため」など、第三者から見ても納得できる理由を記すようにしましょう。

通院費は支給される?

通院費(移送費)は、条件を満たす場合に費用の実費相当額が支給されます。通院費の支給が対象となる条件は、以下の2つを満たす必要があります。

  • 労働者の自宅または勤務地から片道2kmを超える通院であること
  • 次の(1)~(3)のいずれかに当てはまること

(1)同一市町村内の診療に適した労災指定医療機関へ通院した場合
(2)同一市町村内に診療に適した労災指定医療機関がないため、隣接する市町村内の診療に適した労災指定医療機関へ通院した場合
(3)同一市町村内及び隣接する市町村内に診療に適した労災指定医療機関がないため、それらの市町村を越えた最寄りの労災指定医療機関へ通院した場合

ただし、労働者の居住地または勤務先から片道2km未満の通院であっても、「労働者の傷病の状態から交通機関を利用しなければ通院が著しく困難である」と認められる場合には、医療機関への通院費が給付されます。

通院費の請求には、費用請求書(7号(1)、または16号の5(1))が必要です。労働者が必要事項を記入し、医療機関側が療養の内容や傷病の状態を記載(証明)ができたら、労基署長に提出しましょう。

療養(補償)等給付の請求はいつまでできる?

労災保険の各種給付は補償の種類によって異なります。労災により受診や治療などを行った場合の「療養(補償)等給付」は、療養の費用を支出した日ごとに請求権が発生し、その翌日から2年とされています。

労災指定病院など労災保険指定の医療機関を受診した場合は、窓口での負担がないため請求手続きの期限は特に設けられていません。ただし、労災指定病院や労災病院以外の医療機関で治療を受けた、薬をもらったという場合には、請求手続きが必要です。複数回にわたり支払いがあった場合には、各支払いごとに「その日から2年間」が期限となるため注意しましょう。

なお、労災保険の給付が受けられる期間は、「傷病が治ゆ(症状固定)するまで」と定められています。療養に必要な期間、それにかかる治療費は全額受給・請求ができます。

参考:「労災保険に関するQ&A」厚生労働省

【関連記事】労災の症状固定前に弁護士に相談すべき理由とは?基礎知識や手続きについて解説

労災について気になることは、弁護士法人ブライトにお任せください

労災指定病院とは、労災による必要な診療を窓口負担なく受けられる医療機関のことです。労災保険給付の手続きも簡単に行えるため、労災で医療機関の受診が必要な場合は労災指定病院を積極的に利用しましょう。

労災指定病院以外での治療や、健康保険証を使用して治療費を支払った場合は、労基署や健康保険組合などへの手続きが必要です。ただし、手続きが複雑になるため最寄りの労基署などに確認しながら進めるとよいでしょう。

弁護士法人ブライトでは、労災問題に特化した「労災事故専門チーム」を擁しています。「労災によるけがで後遺症が残った」「会社に労災の責任を追及したい」などという場合には、ぜひブライトにご相談ください。相談は3回まで無料(0円)で行っており、原則として、完全成功報酬制を採用しているため着手金も無料(0円)です。

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  • この記事を書いた人

笹野 皓平

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