労災事故の基礎知識

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労災で高次脳機能障害を負ってしまったら。認定基準と損害賠償について

高次脳機能障害とは、病気や事故などのさまざまな原因で脳の一部を損傷したために、知的な機能に障害が起こった状態のことです。業務においても、下敷き事故や転落などによる頭部外傷、過労による脳血管障害により高次脳機能障害を負うことがあります。もしそのような事態に陥ってしまったら、どのように対応するのがよいでしょうか。この記事では、高次脳機能障害の症状や労災との関係、労災における高次脳機能障害の認定基準などについて解説します。合わせて、損害賠償請求や弁護士に相談するメリットについても紹介しますので、参考にしてください。

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労働災害(労災)に遭って「高次脳機能障害」と診断されたら

高次脳機能障害について、概要や主な症状についてご説明します。

高次脳機能障害とは

高次脳機能障害とは、病気や事故などが原因で脳の一部を損傷したために、言語・思考・記憶・行為・学習・注意などの知的な機能に障害が起こった状態を指します。

国立障害者リハビリテーションセンターでは、以下のように定義しています。

学術用語としては、脳損傷に起因する認知障害全般を指し、この中にはいわゆる巣症状としての失語・失行・失認のほか記憶障害、注意障害、遂行機能障害、社会的行動障害などが含まれる。

出典: 「高次脳機能障害者支援の手引き」国立障害者リハビリテーションセンター・高次脳機能障害情報・支援センター

高次脳機能障害の主要な症状

高次脳機能障害の主要な症状「記憶障害」「注意障害」「遂行機能障害」「社会的行動障害」について、例を挙げながらみていきましょう。

記憶障害

記憶障害とは、新しいことを覚えられなかったり、古い記憶や体験的に習ったことを忘れてしまったりする障害です。

〈例〉
・物の置き場を忘れる
・新しいことを覚えられない
・同じことを繰り返し質問する

注意障害

注意障害とは、集中することが困難になり、ほかのことに気を取られやすくなったり、左右どちらかにあるものやできごとに注意を向けられなくなったりする障害です。

〈例〉
・ぼんやりしていてミスが多い
・二つのことを同時に行うと混乱する
・作業を長く続けられない
・向かって左(または右)にあるものを見落とす

遂行機能障害

遂行機能障害とは、ものごとを計画し順序立てて実行することが難しく、自分の行動を客観的に評価し必要に応じた修正ができない障害です。

〈例〉
・自分で計画を立ててものごとを実行することができない
・人から指示をしてもらわないと行動できない
・約束の時間に間に合わない

社会行動障害

社会行動障害とは、自発的な活動が乏しくなったり、感情のコントロールが適切にできなかったり、一つのことに固執してしまったりする障害です。

〈例〉
・一日中ベッドから離れられない
・思い通りにならないと大声を出す
・自己中心的になる

参考:「高次脳機能障害者支援の手引き」国立障害者リハビリテーションセンター・高次脳機能障害情報・支援センター

高次脳機能障害と労災の関係

高次脳機能障害は、前述したように労災と関係することがあります。転落・墜落などの事故といった脳外傷だけでなく、脳梗塞、脳出血、くも膜下出血など過重労働に伴う脳血管障害として高次脳機能障害が残存してしまうケースもあります。

労災によって高次脳機能障害が残存し症状固定となった場合は、神経系統の障害として労災保険の後遺障害等級認定を受けられることがあります。認定されれば適切な保障を受けられますので、労災保険の申請をしましょう。

症状固定とは

医学上一般に認められた医療を行っても、その医療効果が期待できなくなった状態」を指します。何らかの症状が残存している場合であっても、標準的な治療によりそれ以上の医療効果が期待できないと判断される場合は、症状固定とみなされます。

労災保険では、一般的に完治という意味で使われる「治ゆ」も、症状固定と同様の意味で使われ、傷病を負う前の状態に戻ったかどうかにかかわらず「治療の終了」を意味します。

【関連記事】労災の症状固定前に弁護士に相談すべき理由とは?基礎知識や手続きについて解説
【関連記事】労災の後遺障害(後遺症)とは?認定方法や補償金額、手続きを解説

労災における高次脳機能障害の認定基準

労災における高次脳機能障害を認定するには、以下のように一定の基準が設けられています。

1.労働能力の喪失の程度について、介護の要否を確認

高次脳機能障害のため、食事・入浴・用便・更衣などに介護が必要な状況かどうか判断します。介護の程度によって、以下のように認定されます

常時介護が必要な場合 → 第1級
随時介護が必要な状態 → 第2級

2.認定基準上の4能力の程度を確認

介護が不要な場合は、この後詳しく説明する4能力の程度を以下の7段階に分けて判定し、喪失の程度を判断します。

【4能力の程度についての7段階】
1.できない
2.困難が著しく大きい
3.困難はあるがかなりの援助があればできる
4.困難はあるが多少の援助があればできる
5.困難はあるが概ね自力でできる
6.多少の困難はあるが概ね自力でできる
7.障害なし

認定基準上の4能力とは

認定基準上の4能力についてみていきましょう。

1.意思疎通能力/仕事をする上で、記銘・記憶力、認知力、言語力などにおいて他人とのコミュニケーションを適切に行えるか

2.問題解決能力/作業課題に対する指示や要求水準を正確に理解し、その場の状況に合わせて適切な判断を行い、円滑に業務が遂行できるか

3.作業負荷に対する持続力・持久力/精神面における意欲、気分または注意の集中の持続力・持久力、意欲低下による疲労感や倦怠感など、一般的な就労時間に対処できるだけの能力が備わっているか

4.社会行動能力/職場において他人と支障なく共同作業ができ、社会的な行動ができるか。主に協調性の有無や不適切な行動(突然大した理由がないのに怒るといった、感情や欲求のコントロール低下による不適当な行動など)の頻度について判断される

参考:「労災保険 神経系統の機能及び精神の障害に関する障害等認定基準について」厚生労働省

高次脳機能障害の障害等級

前述の高次脳機能障害の認定基準に基づき、一般的には以下のように障害等級が認定され、障害(保障)等給付が補償されます。

参考:「労災保険 障害(補償)等給付の請求手続き」厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署

上記のように高次脳機能障害の認定基準があるとはいえ、労災保険における高次脳機能障害の認定についてその基準は非常に複雑です。また、申請時にどのような資料を作成・収集しておくべきかなどは明らかにされていません。

適切な補償を受けるためには、労災における高次脳機能障害に関する深い知見や多数の労災申請・認定に関わる経験を有する弁護士に相談することが賢明でしょう。

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労災でカバーできない補償は、損害賠償請求を検討

労災保険だけでは、全ての損害が補償されないケースがほとんどです。会社に安全配慮義務違反など、労働者が安全に働けるように努める配慮義務の過失があり、法的責任を追及できる場合は、損害賠償請求が可能です。

【主な賠償項目】

損賠賠償の項目賠償内容
入通院慰謝料入院・通院を強いられたことによる精神的損害に対する慰謝料
後遺障害慰謝料後遺障害による身体的・精神的な苦痛に対する慰謝料
後遺障害逸失利益高次脳機能障害により喪失した収入に対する補償
休業損害労災に遭って休業を余儀なくされた間に、もらいそびれた収入

「慰謝料」の相場について

慰謝料としては、入通院に対する慰謝料後遺障害に対する慰謝料が考えられます。一般的な相場は以下のようになります。

「入通院慰謝料」の場合

入通院慰謝料は、所定の慰謝料算定表に基づき計算します。下記算定表(一部)を使用し、横軸の「入院期間」と縦軸の「通院期間」で計算します。

出典:『民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準』公益財団法人日弁連交通事故相談センター東京支部

<計算例>
◆治療期間合計が20カ月(入院期間12カ月・治療期間8カ月)の場合:341万円

「後遺障害慰謝料」の場合

高次脳機能障害により後遺障害が残った場合は、以下のように障害等級に応じた後遺障害慰謝料を受け取れる可能性があります。

※各等級に対する慰謝料は目安です

出典:『民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準』公益財団法人日弁連交通事故相談センター東京支部

労災による高次脳機能障害については、弁護士法人ブライトに相談を

労災により高次脳機能障害を負ってしまったら、治療しながら労災による給付申請手続き、場合によっては会社への損害賠償請求などを進める必要があります。とはいえ大変な状況の中、ご本人やご家族だけで手続きを進めるのは難しいでしょう。

そこで頼りになるのが、専門的知識を有する弁護士です。弁護士法人ブライトでは労災問題に特化した「労災事故専門チーム」を擁し、経験豊富な弁護士が多数在籍しています。労災後のサポートを適切に受けるためには、早い段階でのご相談がおすすめです。弁護士法人ブライトなら、みなさんが安心できるようきめ細やかに対応します。

安心1|適切な診断やリハビリを受けられるようサポート

労災に遭い、高次脳機能障害の疑いがあるにもかかわらず、適切な脳検査や高次脳機能障害の診断・リハビリを受けていない方も多くいらっしゃいます。そのような被災者の方には、専門医を受診し、適切な検査、診断やリハビリを受けられるよう、アドバイスなどを行っています。必要に応じて診察に同行させていただく場合もあります。

安心2|医師と連携し、必要に応じて医師面談も

弁護士法人ブライトでは、高次脳機能障害に関して専門的知見を有する医師らとも連携し、医学的な裏付けを得た弁護活動を心がけており、必要に応じて医師面談なども行います。

高次脳機能障害を理解するため、MRIの撮像法でもあるDWI(拡張強調画像)やSWI(磁化率強調画像)の有用性、PET(放射能を含む薬剤を用いる、核医学検査の一種)などに関する知識も日々深めています。

安心3|労災認定のサポートに関する多数の経験有り

労災における高次脳機能障害の認定は容易ではありません。弁護士法人ブライトでは、労災により高次脳機能障害が残存してしまった方の労災認定のサポートを多く取り扱っているため、労災保険における高次脳機能障害に関する専門的知見を有しています。

会社に対する損害賠償請求を見据えて、申請時に必要な資料の作成や収集についてアドバイスを行い、適切な後遺障害等級の認定を受けるためのサポートを行っています。

【労災認定のサポート事例】

〈ケース1〉
通勤災害に遭い、ご本人で障害給付の申請を行い、障害等級認定を受けていた方

症状に照らし適切な等級認定ではないと判断したため、医師面談や家族への聴取を行い、必要な医証を収集して審査請求
 ⇓
結果:障害等級5級から障害等級2級への変更が認められた

〈ケース2〉
労災に遭い、治療を開始して数カ月後に通院先で高次脳機能障害の疑いがあると診断された方

適切な診断を受けるべく、ご本人に専門医への通院、検査をしてもらい、高次脳機能障害の診断を受けてもうらう
 ⇓
専門医での通院・リハビリについてアドバイスを行い、医師の意見書等を収集して障害補償給付を申請
 ⇓
結果、障害等級3級の認定を受けることができた

安心4|弁護士費用は完全成功報酬制、着手金・相談料無料

高次脳機能障害に関する労災問題についてのご相談は無料(0円)です。安心して、まずは相談ください。ご相談の上、正式にご依頼された場合でも、着手金は原則として無料(0円)です。報酬金として、原則、経済的利益の24%を申し受けます(ただし、事案の内容・性質などによって変更する場合があります)。

弁護士法人ブライトのサービス詳細については、こちらをご覧ください。電話やメールのほか、LINEでのお問い合わせも承っておりますので、まずはお気軽にお問い合わせください。

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有本 喜英

弁護士法人ブライト労災部所属弁護士:クライアントの話をしっかりと聞くことで、常に「ニーズ」を把握することが第一と考えています。クライアントの「ニーズ」や思いを前提とした最善の解決を目指すことを心掛けています。

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