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労働災害の後遺障害等級に応じた補償金額は?1〜14級早見表と認定基準を解説

笹野皓平 弁護士

この記事の監修者

笹野 皓平(ささの こうへい)

弁護士法人ブライト|労災事故部統括/パートナー弁護士

/大阪弁護士会/京都大学法学部卒・立命館法科大学院修了

注力分野:労災事故・交通事故・会社関係争訟・M&A・事業再生

労災で後遺障害等級が認定された。それで終わりだと思っていませんか。

多くの記事は「後遺障害等級の認定基準と給付額」を解説して終わります。しかし、等級を取ることは「スタートライン」にすぎません。等級を取った後の会社への損害賠償請求——そこに本来受け取れる補償の大部分があります。

この記事では、後遺障害等級の認定基準・給付額・手続きを解説した上で、当法人の解決事例(孫02:12級・1,000万円台/孫03:併合9級・2,000万円台)を通じて「等級認定をゴールにしない」ブライトの考え方をお伝えします。

なお、労災後遺障害そのものの種類・症状については姉妹記事「労災の後遺障害(後遺症)の種類・等級・申請の流れ」で詳しく解説しています。本記事は「等級と補償金額・損害賠償」に特化した位置づけです。

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目次

【まず結論】等級ごとの受取額の目安(早見表)

後遺障害の補償には「①労災保険からの給付」と「②会社への損害賠償」という別々の2つの財布があります。①には慰謝料は含まれていません。慰謝料や逸失利益は②の会社への請求で初めて発生します。まずは①の目安額を等級別にご覧ください(①の計算方法は次章、②の詳しい考え方は後の章「会社に請求できる後遺障害の損害賠償」で解説します)。

等級①労災保険からの目安額
(給付基礎日額1万円と仮定)
②会社への損害賠償
(慰謝料の目安・弁護士基準)
1級年金・年額313万円+特別支給金342万円2,800万円
3級年金・年額245万円+特別支給金300万円1,990万円
5級年金・年額184万円+特別支給金225万円1,400万円
7級年金・年額131万円+特別支給金159万円1,000万円
9級一時金391万円+特別支給金50万円690万円
10級一時金302万円+特別支給金39万円550万円
11級一時金223万円+特別支給金29万円420万円
12級一時金156万円+特別支給金20万円290万円
13級一時金101万円+特別支給金14万円180万円
14級一時金56万円+特別支給金8万円110万円

※①は給付基礎日額(事故前3カ月の平均日給)を1万円と仮定した試算です。実際の日額は人によって異なるため、次章の計算例やご自身の給与明細でご確認ください。②は弁護士基準(裁判基準)による慰謝料相場であり、実際の金額は事案の内容により増減します。同様の結果を保証するものではありません。

労災の後遺障害に対する補償

労働災害(労災)における「後遺障害」とは、労災による怪我や疾病が治療をしても完治せず、一定の症状が残っている状態、かつ、その症状が後遺障害の等級表に該当する場合をいいます。

例えば、労災事故で体の一部を失ってしまった場合は、どれだけ治療をしてもその部分が回復することはないため、体の一部の「欠損」という後遺症が残ったことになります。

後遺症が後遺障害として認められるかどうかは、申請書類や医師の診断書などを基に、労働基準監督署が調査します。調査の結果、後遺障害であると認定された場合は、障害等級表に基づく補償(年金または一時金)を受けることが可能です。

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労災の後遺障害等級とは?

労災の後遺障害にあたるかは、障害等級表(労働者災害補償保険法施行規則 別表第一)に基づいて、管轄する労働基準監督署が等級を認定します。

障害等級の認定基準は症状によって第1級〜第14級に分かれており、等級の数字が小さいほど障害が重くなり、補償として受け取れる金額も等級によって変わります。一方、労災前と異なる違和感があっても、この認定基準(障害等級表)に当てはまらなければ、基本的に給付は受けられません。

障害等級表

等級身体障害
第1級1:両眼が失明したもの
2:そしゃくおよび言語の機能を廃したもの
3:神経系統の機能または精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの
4:胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、常に介護を要するもの
6:両上肢をひじ関節以上で失ったもの
7:両上肢の用を全廃したもの
8:両下肢をひざ関節以上で失ったもの
9:両下肢の用を全廃したもの
第2級1:1眼が失明し、他眼の視力が0.02以下になったもの
2:両眼の視力が0.02以下になったもの
3:両上肢を手関節以上で失ったもの
4:両下肢を足関節以上で失ったもの
第3級1:1眼が失明し、他眼の視力が0.06以下になったもの
3:神経系統の機能または精神に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの
4:胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの
5:両手の手指の全部を失ったもの
第4級1:両眼の視力が0.06以下になったもの
3:両耳の聴力を全く失ったもの
4:1上肢のひじ関節以上で失ったもの
5:1下肢をひざ関節以上で失ったもの
6:両手の手指の全部の用を廃したもの
第5級1:1眼が失明し、他眼の視力が0.1以下になったもの
2:1上肢を手関節以上で失ったもの
3:1下肢を足関節以上で失ったもの
4:1上肢の用を全廃したもの
5:1下肢の用を全廃したもの
6:両足の足指の全部を失ったもの
第6級1:両眼の視力が0.1以下になったもの
4:せき柱に著しい変形または運動障害を残すもの
5:1上肢の3大関節中の2関節の用を廃したもの
6:1下肢の3大関節中の2関節の用を廃したもの
7:1手の5の手指または母指を含み4の手指を失ったもの
第7級1:1眼が失明し、他眼の視力が0.6以下になったもの
3:神経系統の機能または精神に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの
6:1手の母指を含み3の手指を失ったものまたは母指以外の4の手指を失ったもの
8:1足をリスフラン関節以上で失ったもの
12:外貌に著しい醜状を残すもの
第8級1:1眼が失明し、または1眼の視力が0.02以下になったもの
2:せき柱に運動障害を残すもの
3:1手の母指を含み2の手指または母指以外の3の手指を失ったもの
6:1上肢の3大関節中の1関節の用を廃したもの
7:1下肢の3大関節中の1関節の用を廃したもの
第9級1:両眼の視力が0.6以下になったもの
7:1耳の聴力を全く失ったもの
8:1手の母指または母指以外の2の手指を失ったもの
9:1手の母指を含み2の手指のまたは母指以外の3の手指の用を廃したもの
12:生殖器に著しい障害を残すもの
第10級1:1眼の視力が0.1以下になったもの
6:1手の母指または母指以外の2の手指の用を廃したもの
7:1下肢を3センチメートル以上短縮したもの
9:1上肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの
10:1下肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの
第11級5:せき柱に変形を残すもの
6:1手の示指、中指または環指を失ったもの
9:胸腹部臓器に障害を残し、労務の遂行に相当な程度の支障があるもの
第12級5:鎖骨、胸骨、ろく骨、肩こう骨または骨盤骨に著しい変形を残すもの
6:1上肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの
7:1下肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの
8:長管骨に変形を残すもの
12:局部にがん固な神経症状を残すもの
14:外貌に醜状を残すもの
第13級1:1眼の視力が0.6以下になったもの
4:1手の小指の用を廃したもの
8:1下肢を1センチメートル以上短縮したもの
第14級2:3歯以上に対し歯科補てつを加えたもの
6:1手の母指以外の手指の指骨の一部を失ったもの
9:局部に神経症状を残すもの

等級表内の「用を廃したもの」という表現は、要するに「指の付け根もしくは第2関節(親指の場合は第1関節)の可動域が、健康な状態の半分以下に制限されるとき」を指します。このとき指が曲がらない場合でも、その可動域角度が通常の半分以下に制限されていない場合は認められないことがポイントです。

認定の基準についてはあいまいな部分があり、書類に不備があれば症状に対して低い等級で認定されることもあります。その一方で、嗅覚や味覚が無くなった場合など、等級表にない症状でも「相当等級」として後遺障害に認められる可能性もあります。

【関連記事】後遺障害等級とは?症状ごとの等級と慰謝料表

後遺障害として認められる可能性のある例

手足・指の切断や転落事故による骨折などは、後遺障害としてよく知られています。そのほかにも後遺障害と認められる症状は多く、「関節が動きにくくなる機能障害」や「体の一部にしびれや痛みが残る神経症状」なども、後遺障害に認定される可能性があります。

関節の機能障害

関節の機能障害とは、関節が元通りに曲がらなくなった状態を言います。可動域が制限される範囲によって、後遺障害の等級が変わってきます。

仮に右の肘関節が動かしにくくなった場合は、障害の残っていない左側の関節と比べてどの程度動かしにくくなっているかを測ります。動く範囲が半分になってしまった場合は、著しい機能障害として障害等級10級が、4分の3になってしまった場合は機能障害として12級が認定されます。

神経症状

神経症状とは、神経がダメージを負い、しびれや痛みなどが表れている状態を指します。神経症状で後遺障害の認定を受けるには、以下の条件を満たすことが必要です。

●労災との因果関係が明らかである
●医師が「症状固定」と診断した
●「時には強度の疼痛のため、ある程度差し支えがある」または「受傷部位にほとんど常時疼痛を残す」状態である

症状固定とは

症状固定とは、これ以上治療を続けても症状が改善しないと医師が判断した状態のこと。労災の「治ゆ」には、完治だけでなく症状固定も含まれます。

神経症状の認定は症状の常時性が必要で、例えば「雨が降る日は痛い」程度の場合は、後遺障害に認定されないことがあります。神経症状に関連する後遺障害は第12級(局部にがん固な神経症状)と第14級(局部に神経症状)のみです。

痛みの程度は本人にしかわからないため、レントゲン写真やMRI、そのほか神経学的な検査によって客観的に症状を証明し、等級を判断してもらう必要があります。

参考:「神経系統の機能又は精神の障害に関する障害等級認定基準について」厚生労働省

後遺障害等級の併合

後遺障害等級の「併合」とは、同一の労災によって複数の後遺障害が体に残った場合に、重い方の等級で1つにまとめることです。

条件等級の変化
障害等級5級以上の症状が複数ある重い方の等級を3つ繰り上げ
障害等級8級以上の症状が複数ある重い方の等級を2つ繰り上げ
障害等級13級以上の症状が複数ある重い方の等級を1つ繰り上げ
障害等級14級以上の症状が複数ある等級の変化はなし

後遺障害の加重と準用

「加重」は、労災に遭うよりも前から何らかの障害がある人が、労災によって同一カ所に新たな障害を負ったことで、障害が重くなる場合をいいます。加重が適用された場合、被災者には加重後の等級に相当する給付額から既存の等級に相当する給付額を差し引いた金額が支払われます。

「準用」は、後遺障害の等級表で定められていない後遺障害が残った場合に、その障害の程度に応じた等級を認定する方法です。例えば味覚脱失は12級相当、味覚減退は14級相当として認定される可能性があります。

後遺障害等級に応じた給付額

後遺障害が認められた場合、被災者は「障害(補償)等給付」として、障害補償給付・障害特別年金または一時金・障害特別支給金を受け取ることができます。後遺障害等級に応じた給付額は以下の通りです。

後遺障害等級障害補償年金/障害補償一時金障害特別年金/障害特別一時金障害特別支給金
1級給付基礎日額の313日分(年額)算定基礎日額の313日分(年額)342万円
2級給付基礎日額の277日分(年額)算定基礎日額の277日分(年額)320万円
3級給付基礎日額の245日分(年額)算定基礎日額の245日分(年額)300万円
4級給付基礎日額の213日分(年額)算定基礎日額の213日分(年額)264万円
5級給付基礎日額の184日分(年額)算定基礎日額の184日分(年額)225万円
6級給付基礎日額の156日分(年額)算定基礎日額の156日分(年額)192万円
7級給付基礎日額の131日分(年額)算定基礎日額の131日分(年額)159万円
8級給付基礎日額の503日分算定基礎日額の503日分65万円
9級給付基礎日額の391日分算定基礎日額の391日分50万円
10級給付基礎日額の302日分算定基礎日額の302日分39万円
11級給付基礎日額の223日分算定基礎日額の223日分29万円
12級給付基礎日額の156日分算定基礎日額の156日分20万円
13級給付基礎日額の101日分算定基礎日額の101日分14万円
14級給付基礎日額の56日分算定基礎日額の56日分8万円

出典:「障害(補償)等給付の請求手続」P.1 厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署

障害補償給付金(年金・一時金)

労災の後遺障害に対する障害補償給付は、等級によって継続的に受け取れる「障害補償年金」(1〜7級)と、一度だけ受け取れる「障害補償一時金」(8〜14級)に分かれます。金額は、事故前の給料を基にした「給付基礎日額」にて算出します。

給付基礎日額とは

事故が起きる直前の3カ月間に支払われた給料をその期間の日数で割った、1日当たりの平均給与額のこと。休日も含めた暦日数で計算します。給与には通勤手当や住宅手当などを含みますが、ボーナスは計算に含みません。

障害特別年金・障害特別一時金・障害特別支給金

障害特別年金・障害特別一時金は「算定基礎日額(ボーナスを日割りした額)×等級に応じた日数」で計算されます。障害特別支給金は社会復帰促進等事業の一環として、障害補償給付に上乗せして支払われる一時金です。

給付基礎日額でみる受取額の計算例

ご自身の給付基礎日額に近いパターンで概算できるよう、8〜14級(一時金)について3つの日額パターンで計算例を示します。特別支給金は日額に関わらず等級ごとの定額です。

等級日数日額8,000円
(月給24万円程度)
日額10,000円
(月給30万円程度)
日額13,000円
(月給40万円程度)
特別支給金
(定額)
10級302日分約241.6万円約302万円約392.6万円39万円
11級223日分約178.4万円約223万円約289.9万円29万円
12級156日分約124.8万円約156万円約202.8万円20万円
13級101日分約80.8万円約101万円約131.3万円14万円
14級56日分約44.8万円約56万円約72.8万円8万円

例えば給付基礎日額1万円の方が12級に認定された場合、「一時金156万円+特別支給金20万円=176万円」が労災保険からの受取額の目安になります(賞与を受けていた場合は、算定基礎日額×同じ日数の障害特別一時金がさらに上乗せされます)。ここに含まれるのはあくまで労災保険からの給付であり、慰謝料は含まれていない点にご注意ください。

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後遺障害の認定手続きと必要書類

後遺障害の認定や障害補償給付は自動的に受けられるようになるわけではなく、労働者が自身で「障害(補償)等給付」の申請を行う必要があります。

医師に診断書の作成を依頼

後遺障害の認定を受けるには専用の診断書が必要なため、症状固定と診断された後に、医師に作成を依頼します。厚生労働省の「労働者災害補償保険診断書」を自身で印刷して持参しましょう。診断書料は4,000円を上限として労災保険に請求が可能です。

後遺障害の等級は、この診断書に何が書かれているかでほぼ決まります。同じ症状が残っていても、記載が不十分だと本来認定されるはずの等級より低く判定されてしまうことがあります。診断書のチェックポイントは姉妹記事「労災の後遺障害診断書とは|書式・もらい方・記載不備で等級が下がる理由」で詳しく解説しています。

認定結果が出るまでの期間は、事案の複雑さによって幅があります。単純な外傷であれば比較的短期間で結果が出ることが多い一方、高次脳機能障害など医学的な判断が難しい事案では長期化することもあります。症状固定の診断を受けたら、早めに申請の準備を進めることをお勧めします。

必要書類の提出

業務中の怪我(業務災害)の場合は様式第10号、通勤中の怪我(通勤災害)の場合は様式第16号の7に必要事項を記入し、診断書を添付して労働基準監督署に提出します。後遺障害の給付請求は5年で請求権が消滅します。

労働基準監督署による調査・面談

書類を提出すると、労災事故の内容と後遺症の内容・程度について調査が行われます。障害の程度を実際に確認する目的で、労働基準監督署の調査官や地方労災医員と被災した本人との面談が実施されます。

認定結果の通知

調査が完了すると、障害等級の認定基準に該当するかどうかの結果が通知されます。障害補償年金の認定を受けた場合は、支給要件に該当することとなった月の翌月分から支給され、毎年2月・4月・6月・8月・10月・12月に前月までの2カ月分が支給されます。

会社に請求できる後遺障害の損害賠償

労災被災者になった場合、労災保険からの補償だけでなく、会社に対して慰謝料などの損害賠償を請求することが可能です。労災によって後遺障害が残った場合は、後遺障害慰謝料と後遺障害逸失利益を会社に請求することができます。

ここで整理しておきたいのは、①労災保険の給付と②会社への損害賠償はまったく別の制度だという点です。①の障害(補償)給付には慰謝料が含まれていません。慰謝料・逸失利益(労災保険で補いきれない収入減少分)は、②の会社への請求で初めて発生します。会社への請求では、労災保険から受け取った給付額は損益相殺として差し引かれるのが原則ですが、慰謝料はその対象外です。

会社への請求は、直接雇用の場合だけでなく、派遣社員として働いていた場合にも可能です。実務では、派遣先が本来の業務範囲外の作業を指示していたケースで、労働基準監督署が「安全規定違反の可能性がある」と言及したこと自体が、その後の会社への損害賠償請求における重要な足がかりになった例があります。派遣先・派遣元のどちらに、どこまで請求できるかは個別の事情を整理する必要があります。

後遺障害慰謝料

後遺障害慰謝料は、障害が残ることによる精神的苦痛に対する賠償金です。認定された後遺障害等級ごとに「弁護士基準」による慰謝料額の相場があります。

後遺障害等級慰謝料額(弁護士基準)
1級2,800万円
2級2,370万円
3級1,990万円
4級1,670万円
5級1,400万円
6級1,180万円
7級1,000万円
8級830万円
9級690万円
10級550万円
11級420万円
12級290万円
13級180万円
14級110万円

【関連記事】後遺障害等級とは?症状ごとの等級と慰謝料表

後遺障害逸失利益

後遺障害逸失利益とは、労災事故によって失ってしまった将来の収入のことです。基礎収入×労働能力喪失率×ライプニッツ係数(労働能力喪失期間に対応する現在価値係数)で計算されます。被災した労働者の収入・認定された後遺障害等級・年齢の3つで計算額が変わります。

弁護士チェック

より正確には「基礎収入」×「労働能力喪失率」×「労働能力喪失期間に対するライプニッツ係数」という計算式で算出されます。

逸失利益の計算方法については、関連記事「逸失利益とは?計算方法と職業別の具体例をわかりやすく紹介」をご覧ください。

損害賠償の請求方法

後遺障害慰謝料・逸失利益は、後遺障害等級が決まってからでないと請求できる金額が分かりません。そのため、損害賠償を請求する前に後遺障害認定を受ける必要があります。会社に対しては安全配慮義務違反(労働契約法5条・民法415条)または使用者責任(民法715条)を根拠に請求します。

【関連記事】労災保険外の損害は会社に請求!損害賠償について法律事務所が解説

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等級認定は「スタートライン」──取れて終わりではない

多くの記事は「後遺障害等級認定の基準と給付額」を解説して終わります。しかし、等級を取ることは補償の出発点にすぎません。等級認定後の会社への損害賠償請求——慰謝料・逸失利益・過失相殺への反論——こそが、本来受け取れる補償の大部分を決定します。

以下に、当法人が関わった実案件から2例をご紹介します。

状況:建設現場で上司の指示により高所作業中に転落し、踵骨を複雑骨折した30代男性。治療後、後遺障害等級12級7号(局部に頑固な神経症状)が認定済み。しかし会社は「本人の不注意による転落」として損害賠償への対応を全面拒否していた。

当法人の対応:上司の作業指示記録・脚立の安全基準不適合・補助者未配置の事実を証拠化。安全配慮義務違反(労働安全衛生法・同規則)と使用者責任(民法715条)の両面から追及。12級認定を起点に逸失利益・慰謝料の全体像を設計し直した。

結果:約11ヶ月・訴訟上の和解・解決額1,000万円台(労災保険の障害補償給付とは別に)

(本事例は依頼者・関係者が特定されないよう抽象化しています。解決額・等級・期間は事案ごとの個別事情により異なり、同様の結果を保証するものではありません。)

詳細は孫記事「12級認定・「本人の不注意」を覆して1,000万円台──高所作業転落事故の解決事例」をご覧ください。

状況:製造工場で機械に手を巻き込まれ、指の可動域制限と神経症状が残った40代男性。会社は「本人の操作ミス」として損害賠償に非協力的な姿勢をとり続け、さらに「過失相殺30%」を主張していた。

当法人の対応:症状固定前の段階から関与し、診断書に可動域制限(10級)と神経症状(12級)の両方を正確に記載してもらうよう担当医と連携。併合規定により9級を取得。その後、機械のメンテナンス記録の不備・緊急停止装置の点検記録欠如を証拠化し、会社の30%過失相殺主張を大幅に圧縮した。

結果:約1年5ヶ月・訴訟上の和解・解決額2,000万円台

(本事例は依頼者・関係者が特定されないよう抽象化しています。解決額・等級・期間は事案ごとの個別事情により異なり、同様の結果を保証するものではありません。)

詳細は孫記事「診断書の段階から「併合9級」を設計して2,000万円台──機械事故の解決事例」をご覧ください。

多くの記事は「等級表と給付額」を解説して終わります。しかし実務では、等級が認定された後の会社への損害賠償請求——慰謝料・逸失利益の設計・過失相殺への反論・素因減額への対抗——こそが補償の大部分を左右します。

当法人は、症状固定前の診断書の段階から「どの等級を取りに行くか」を設計します。可動域制限と神経症状の両方が残っているなら、診断書にその双方を正確に記録してもらうことで、併合による等級のアップが狙えます。等級が1段重くなるだけで、慰謝料・逸失利益は数百万円単位で変わります。

「ブライトは等級認定をゴールにしない。等級認定はスタートライン。その先の賠償額設計が本当の仕事。」

これが、当法人が後遺障害等級事案で一貫して大切にしている考え方です。

なお当法人では、受任の可否についても初回相談時に率直にお伝えします。費用倒れになる見込みが高い場合は、その旨を明確にお伝えしています。

後遺障害の記事の選び方

「後遺障害」に関するブライトの記事は2本の柱で構成されています。

記事テーマ
本記事等級と補償金額:等級認定基準・給付額・損害賠償・「等級はスタートライン」の考え方
労災の後遺障害|認定の流れと支払いまでの日数・受け取れる補償後遺障害そのもの:後遺障害の種類・症状・等級申請のプロセス・賠償額を左右する3つの戦い方

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県民共済など他の保険との併用は可能?

労災保険は、多くの場合民間の保険と重複して請求でき、県民共済(傷害保険・医療保険)と併用が可能です。労災保険の加入は事業主の義務ですが、傷害保険や医療保険などは本人の任意加入で、それぞれ別の保障のため、加入している保険が補償の対象となっている場合、労災と県民共済などは重複して受給できます。

ただし、労災保険と自動車保険(自賠責保険・任意保険)で内容が重複する部分は、どちらか一方からの受け取りを選択するようなケースがあり得ます。慰謝料など労災保険の補償と重複しない部分は、自動車保険に請求可能です。

等級が低い・非該当と言われたら──審査請求・再審査請求・取消訴訟という3段階

労災の後遺障害等級認定の結果に納得できない場合、次の3段階の不服申立て制度があります。

  1. 審査請求:労働者災害補償保険審査官に対し、決定通知書を受け取ってから3カ月以内に申し立てます。
  2. 再審査請求:審査請求の結果にも納得できない場合、労働保険審査会に対して再審査を求めることができます。
  3. 取消訴訟:再審査請求の裁決にも納得できない場合、地方裁判所に処分の取消しを求めて訴訟を提起できます。

決定通知書には認定理由がほぼ記載されておらず、調査の内容や判断理由が分からないことが多いため、担当調査官への確認や調査資料の開示請求が実務上重要になります。同じ内容の書類をそのまま再提出しても判断が覆ることは期待しにくく、何を追加で立証すべきかの見極めが結果を左右します。

画像検査(MRI・CTなど)で明らかな異常が見つからない場合でも、それだけで後遺障害が否定されるとは限りません。神経心理学的検査の数値や、公的機関による判定など客観的な資料を積み重ねることで、当初の認定より重い等級が認められる可能性があります。「異常なし」の一言で終わらせず、何が不足していたのかを具体的に検討することが重要です。

【関連記事】労災認定されないケースとは?判断基準や不服の場合の対応

等級が低い・非該当と判断された場合の対処法は、姉妹記事「労災の後遺障害等級が低い・非該当だったときの対処法」でさらに詳しく解説しています。

労働基準監督署から「非該当」「等級が低い」という結果が届いたとき、多くの記事は「審査請求という制度があります」と説明して終わります。しかし、審査請求で結果を見直してもらうには、初回申請で足りていなかった医学的所見や事実関係を新たに積み増す必要があります。

「ブライトは『非該当』『等級が低い』という結果をそのまま受け止めない。専門家の力を借りてでも、正当な等級を取りに行く。」

これが、当法人が異議申立て事案で一貫して大切にしている考え方です。

なお、弁護士費用特約がなく、かつ請求できる相手方がいない事案(自損事故等)では、弁護士費用が受け取れる補償を上回ってしまう「費用倒れ」のリスクがあります。当法人では、その見込みについても初回相談時に率直にお伝えしています。

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「等級が取れたから、あとは保険会社・会社の提示通りで仕方ない」と思い込んでいた。等級を起点に慰謝料・逸失利益・過失相殺への反論を戦略的に設計し、本来取れる補償を獲得。
12級しか取れなかったと諦めていたが、可動域制限と神経症状の両方が残っていた。診断書の段階から関与し、併合により等級アップ。等級1段の差が補償額の数百万円の差になった。
「会社に払う気がない」「自分の過失だ」と言われ、一人でどう対処すればよいか分からなかった。弁護士が窓口になり、会社・裁判所とのやり取りをすべて代行。治療とリハビリに集中できた。

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参考文献

本記事の作成にあたり、以下の専門書籍・行政資料を参照し、記載内容の正確性を確認しています。

  • 加藤久道『後遺障害の認定と異議申立』
  • 『(改訂3版)労災保険請求書記入マニュアル』
  • 『建設現場責任者のための労災ハンドブック』
  • 厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署「障害(補償)等給付の請求手続」
  • 厚生労働省「障害等級表」(労働者災害補償保険法施行規則 別表第一)

※書籍の記述を要約・転載するものではなく、公表されている制度・数値の正確性確認のために参照しています。

よくある質問

Q1:後遺障害等級が認定されました。会社への損害賠償請求もできますか?

はい、できます。労災保険の障害補償給付とは別に、会社の安全配慮義務違反(労働契約法5条・民法415条)または使用者責任(民法715条)を根拠に、後遺障害慰謝料・逸失利益の差額などを請求できます。等級が認定されていることは損害額計算の重要な起点となります。

Q2:「本人にも過失がある」と会社から言われました。それでも請求できますか?

請求できる場合があります。会社が「本人の過失」を主張しても、機械のメンテナンス不備・安全教育の不足・補助者の未配置など会社の安全管理義務違反が立証できれば、過失相殺の割合を抑えて相当額の損害賠償を獲得できることがあります。まずは弁護士に事実関係を確認してもらうことをお勧めします。

Q3:後遺障害等級の申請は自分でできますか?弁護士に頼む必要がありますか?

等級の申請自体は自分で行うことができます。ただし、診断書の記載内容・提出する検査結果・症状の記録の仕方によって認定される等級は変わります。特に複数の障害が残っている場合は「併合」による等級アップの可能性があるため、症状固定前の早い段階での相談が有効です。

▶ 事故の類型別の解説と弁護士に依頼できることの全体像は、労災に強い弁護士による総合案内でご案内しています。

Q4:損害賠償請求の時効はいつですか?

損害賠償請求(会社への請求)の時効は、安全配慮義務違反(労働契約法5条・民法415条、債務不履行)に基づく場合も、不法行為(民法709条、使用者責任を含む)に基づく場合も、生命・身体の侵害であるため被災者が損害および加害者(または権利を行使できること)を知った時から5年です(2020年4月施行の改正民法により、生命・身体の侵害に関する消滅時効は5年に統一されました)。また、事故の時から20年が経過することでも権利は消滅します。証拠は時間の経過とともに失われやすくなるため、早めの相談をお勧めします。

Q5:相談・依頼にかかる費用が心配です。

相談は無料で承っております。依頼にかかる費用(着手金・報酬金など)については、受任時に明確にご説明します。費用倒れになる見込みが高い場合は、その旨を初回相談時に率直にお伝えします。まずはお気軽にご連絡ください。

Q6:後遺障害の認定結果が出るまでどのくらいかかりますか?

事案の複雑さによって期間は変動します。単純な外傷であれば比較的短期間で結果が出ることが多い一方、高次脳機能障害など医学的な判断が難しい事案では長期化することがあります。症状固定の診断を受けたら、早めに申請の準備を進めることをお勧めします。

Q7:審査請求をすれば必ず結果は覆りますか?

覆るとは限りません。審査請求で結果を見直してもらうには、初回申請時に不足していた医学的所見や事実関係を新たに補強する必要があります。同じ内容の書類を再提出するだけでは判断が変わることは期待しにくいため、何を追加で立証すべきかを事前に整理することが重要です。

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  • この記事を書いた人

笹野 皓平

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本記事は、一般的な情報の提供を目的とするものであり、個別案件に関する法的助言を目的とするものではありません。また、情報の正確性、完全性及び適時性を法的に保証するものではありません。
なお、本記事の内容に関する個別の質問や意見などにつきましては、ご対応できかねます。ただし、当該記事の内容に関連して、当事務所へのご相談又はご依頼を具体的に検討されている場合には、この限りではありません。

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事務所名 弁護士法人 ブライト(大阪弁護士会所属)
開 業 平成21年(代表弁護士独立開業)
設 立 平成24年11月設立、平成27年1月に法人化
所在地 〒530-0057 大阪府大阪市北区曽根崎2丁目6番6号 コウヅキキャピタルウエスト12階
TEL 06-4965-9590(受付時間9:00~18:00)
FAX 06-6366-8771
事業内容 法人向け(法律顧問・顧問サービス、経営権紛争、M&A・事業承継、私的整理・破産・民事再生等、契約交渉・契約書作成等、売掛金等の債権保全・回収、経営相談、訴訟等の裁判手続対応、従業員等に関する対応、IT関連のご相談、不動産を巡るトラブルなど)、個人向け(交通事故・労災事故を中心とした損害賠償請求事件、債務整理・破産・再生等、相続、離婚・財産分与等、財産管理等に関する対応、不動産の明渡し等を巡る問題など)

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