この記事でわかること
- 継続賃料の正しい考え方
- 相場と賃料が“直結しない”理由
- 増額請求に対して取るべき交渉基準
- 実例をもとにした安全な判断軸
この記事のポイント
- 継続賃料は相場とは異なる独自の基準で決まる
- 交渉では「裁判所が認める範囲」を意識することが重要
- 無用な譲歩を避けるために戦略的な対処が必要
テナントとして店舗を運営する中で、貸主から突然「家賃を上げたい」と言われ、どう対応すべきか迷うケースは少なくありません。相場が上がっているからといって、同じ割合で賃料も上げられるのか。あるいは提示された増額幅が本当に妥当なのか。こうした疑問は、店舗オーナーであれば誰でも抱く自然な不安です。
本記事では、実際の相談で見られた状況をもとに、読者が自分のケースにも当てはめて理解できるよう、継続賃料の考え方・交渉ポイント・相場との関係性を体系的に整理します。専門的な用語も、初めての方でも理解できるよう丁寧に解説していきます。
継続賃料の判断は「相場が上がったから賃料も倍になる」といった単純な話ではありません。むしろ、法的には“増額に上限となる基準”が存在し、それを理解しているかどうかで交渉結果は大きく変わります。
とはいえ、法律の話は複雑に見えがちで、自分のケースではどう判断すべきか悩む方も多いところです。そんなあなたにこそ、本記事で紹介する実例と考え方が役立つはずです。
目次
継続賃料とは何か――相場との差を理解する
継続賃料とは、すでに賃貸借契約が続いているテナントに対して、その継続性を前提に決められる賃料水準のことです。一般的な「新規賃料(これから入居するテナントに提示される賃料)」とは異なり、継続賃料には歴史的な事情、当事者間の信頼関係、契約経過、地域相場の変動など複数の要素が複雑に絡みます。
ある店舗オーナーの例では、長年据え置かれてきた賃料に対し、新しい管理者から「近隣相場が上がっているため、賃料を見直したい」という申し入れを受けました。しかし、近隣の坪単価を見ても、自身の賃料が極端に安いのかどうか判断できず、困惑していました。
ここで重要なのは、“相場=そのまま賃料に反映されるわけではない” という点です。相場が急激に上昇したとしても、継続賃料は通常、その変動を緩やかに反映する仕組みになっています。なぜなら、継続賃料は「契約継続の安定性」と「市場の合理性」を両立させるための概念だからです。
とはいえ、相場が上昇している事実を無視してよいわけではなく、「どの程度なら妥当か」を判断する基準を理解しておく必要があります。そんなあなたにこそ、次の“裁判所基準”の考え方を知ることが大きな武器になります。
裁判所が用いる「妥当ライン」とは――戦える根拠を持つ
継続賃料の判断において最も重要なのが、裁判所が採用している“妥当ライン”の考え方です。これは、当事者間で合意できない場合に、裁判所が「継続賃料としてこのくらいが適切」と判断する水準を指します。
実際に似た事例では、貸主から“相場水準に近い賃料”を提示され、テナント側が大幅増額を迫られていたケースがありました。しかし弁護士が継続賃料の枠組みを丁寧に説明すると、依頼者は「相場がこれだけ高いのだから、その中間に合わせるのが当然」という思い込みが誤解であると気づいたのです。
裁判所は、相場の動きを完全に反映させるのではなく、「現実に支払われてきた賃料」と「地域の市場性」をバランスさせた独自の基準を採用します。そのため、例え周辺の新規賃料が大幅に上がっていたとしても、継続賃料はそれとは別の水準になることがあるのです。
とはいえ、「裁判所基準」と聞くと難しく感じる方も多いはずです。そんなあなたに知ってほしいのは、この基準を理解することで、提示された増額幅が妥当かどうかを冷静に判断できるようになるということです。これこそが、交渉の際に最も強力な根拠になります。
相場が上昇しても賃料は「急上昇しない」理由
相場の上昇と継続賃料は、しばしば誤解されるポイントです。「周りの店舗は賃料が高いのだから、うちも同じように上がるのでは?」と不安に思う方は多いですが、継続賃料は相場と比例して増加するものではありません。
ある別の飲食店オーナーの例では、地域の相場が大幅に上がった時期に、貸主から賃料見直しの話がありました。しかし弁護士が状況を整理すると、これまで一度も増額されていなかった点や、店舗の立地・利用状況・歴史的経緯が考慮され、相場ほどの増額にはならない可能性が高いことがわかりました。
このように、継続賃料は「相場×契約の経過×安定性」の三つの要素が重なって形づくられます。相場がどれだけ高騰しても、契約継続の公平性を損なうような急激な増額は、原則として認められません。
とはいえ、相場が明確に上昇していると、何も言わずに据え置きで通すことも難しい場面があります。そんなあなたに知ってほしいのは、増額の幅を“相場基準ではなく継続賃料の基準”で捉え直すことで、交渉の方向性が大きく変わるという点です。
貸主の「相場が上がっている」という主張への向き合い方
貸主からの増額請求で最も多い説明が「周辺相場が上がっている」というものです。しかし、これをそのまま受け取り、提示された増額幅に応じてしまうのは危険です。というのも、相場と継続賃料の関係は前述の通り単純ではなく、貸主側が示す相場データも“新規賃料中心”で構成されている場合が多いためです。
あるテナントでは、貸主から急に「近隣の新しい商業施設ではこの金額だから」と高めの賃料表を見せられました。しかし実際には、その物件は新規開発エリアにあり、数年前から営業している既存店舗の状況とは全く異なるものでした。このように、貸主が示す相場が「あなたの物件にそのまま当てはまるものなのか」を丁寧に整理し直すことが必要です。
とはいえ、貸主の主張を頭ごなしに否定すると関係性が悪化し、交渉にも不利に働くことがあります。そんなあなたにこそ、“相場を参照しつつ、継続賃料の論点に引き戻す” という戦略が有効です。
具体的には、
STEP1.相場データを一度受け取り、事実として確認する
STEP2.その上で「継続賃料の考え方では、相場をそのまま反映しない」ことを伝える
STEP3.増額幅がどの程度なら妥当か、合理的な説明を準備する
という3ステップで対処できます。このアプローチを取ることで、感情的な対立を避けつつ、交渉を正常な軌道に戻すことが可能です。
増額幅は「どの程度が妥当か」――判断のための3つの観点
増額の妥当性は、単に相場の中間値を見ればわかるものではありません。実務では、次の3つの観点を総合して判断されます。
1.これまでの賃料推移
長年据え置かれていた場合、ある程度の増額が合理的になることもあります。ある小売店では、契約開始以来ほとんど賃料が変わっていなかったため、一定の見直しが必要と判断されました。ただし、それでも貸主の提示よりもはるかに小幅な増額に落ち着いたのは「契約継続の安定性」が重視されたからです。
とはいえ、据え置き期間が長いからといって大幅増額が当然とは限りません。そんなあなたに知ってほしいのは、過去の経緯を整理することで“増額の限度”が見えるということです。
2. 物件の現況と利用状況
立地・築年数・構造・競争力など、物件の実態も重要な要素です。以前相談を受けたケースでは、貸主が高い相場を根拠に増額を求めていた一方、店舗のある建物は老朽化が進み、周辺の新規物件より明らかに競争力が低い状況でした。この点を丁寧に説明すると、貸主も過度な増額要求を見直す方向に転じました。
3.地域相場の「合理的な反映」
地域相場が上昇しているからといって、継続賃料が同じ割合で上がるとは限りません。“合理的な反映”とは、過去の賃料と相場との差を適切に調整することであって、相場の数字をそのまま当てはめることではありません。
この3つを整理することで、依頼者は「貸主が言うほどの増額が本当に必要なのか」を冷静に判断できるようになります。
提示された金額に「そのまま応じない」ための交渉ステップ
増額請求が来た際に最も避けたいのは、根拠を確認しないまま提示額を受け入れてしまうことです。継続賃料は法的にも交渉余地が極めて広いため、まず状況整理のステップを踏む必要があります。
あるサービス業のオーナーは、貸主から高めの金額を提示され「この金額で契約更新したい」と言われた際、すぐに返答すべきだと焦っていました。しかし、弁護士の助言を受けて状況を整理すると、提示額と継続賃料の基準に大きな隔たりがあり、交渉によって適正な範囲に収まる可能性が高いことがわかりました。
交渉ステップとしては、
STEP1.提示根拠の確認(相場か、建物の事情か、それ以外か)
STEP2.継続賃料の枠組みで整理した反対提案
STEP3.過去の経緯・物件の状況を元に合理的に説明
といった流れが有効です。
とはいえ、相手が管理会社やオーナーである場合、個人での交渉が心理的に負担になることもあります。そんなあなたにこそ、専門家のサポートを得ることで、交渉プロセスが大幅にクリアになる点を知ってほしいです。
貸主との関係悪化を防ぐためのコミュニケーション戦略
賃料交渉は双方にとってセンシティブなテーマです。貸主との関係性を壊したくない一方で、必要以上に譲歩したくないという葛藤は、多くのテナントが抱える悩みです。
あるケースでは、貸主との関係を大切にしたい依頼者が「穏便に済ませたい」と思うあまり、強く言い返せずに困っていました。しかし、専門家が交渉の論点を整理し、事実に基づいて説明したことで、貸主も感情的な反発を見せず、双方が納得できる落とし所に辿り着くことができました。
大切なのは、
- 感情ではなく“情報”で会話する
- 相手の立場を尊重しつつ、自社の事情も明確に説明する
- 事実の整理をベースにすることで、無用な対立を避ける
というスタンスです。
とはいえ、こうしたコミュニケーションを自力で行うのは難しい場面もあります。そんなあなたにこそ、専門家が入ることで、関係悪化を避けながら適正なラインで合意を目指せるという点を知っていただきたいところです。
長期的視点で見る「適正な賃料」とは何か
継続賃料の本質は、単なる数字の争いではなく「長期的に持続可能な契約関係をどう維持するか」という視点にあります。短期的な相場の変動によって賃料を急上昇させれば、テナント側の経営を圧迫し、結果として退去リスクが高まり、貸主にとっても不利益が生じます。
ある店舗オーナーのケースでも、貸主は相場を理由に高額な提示をしてきましたが、依頼者側が「この増額が経営に与える影響」と「継続賃料の枠組み」を丁寧に説明すると、貸主も長期的関係維持の重要性に理解を示しました。
とはいえ、長期的視点と言われても抽象的に感じる方もいるでしょう。そんなあなたにこそ、継続賃料は“双方が無理なく続けられるライン”を見つけるための概念であることを知ってほしいです。
合理的な増額であればテナントも理解できますし、貸主にとっても安定収入が確保されます。この“双方にとっての最適解”を見つけるための指針が、継続賃料の考え方なのです。
専門家が介入することで変わる「交渉の質」
賃料交渉は、情報量・判断軸・心理バランスの3つが重要です。特に、貸主からの提示額にどう反論するか、何を根拠に説明するかは専門的な整理が必要になります。
ある別の相談では、依頼者が貸主からの相場資料に圧倒され、反論できずに困っていました。しかし、専門家が状況を分析すると「提示されている相場資料は新規賃料であって継続賃料とは別物である」ことが判明。この視点を元に再整理すると、貸主も「確かに同列では比べられない」という理解に至り、交渉がスムーズに進んでいきました。
とはいえ、自分では感情的になって冷静さを失う場面もあります。そんなあなたに知ってほしいのは、専門家が入ることで“相手も冷静に話を聞く姿勢になる”という効果があるということです。
専門家が介入することで、
- 情報整理が的確になる
- 主張に一貫性が生まれる
- 感情的な対立が抑えられる
- 合意形成までのスピードが上がる
など、交渉全体の質が大きく向上します。
増額請求が届いたときの「最初の一手」がすべてを決める
増額請求が届いたとき、多くのテナントは「とりあえず返事をしなければ」と焦りがちです。しかし、この“最初の一手”こそが交渉の成否を大きく左右します。
あるサービス事業者は、増額通知を受け「早めに返答しないと不利になるのでは」と考えていました。しかし、専門家が状況整理を行い、継続賃料の観点から提示額を分析すると、妥当性に疑問があることが明らかになりました。そこで、まずは情報の提供を依頼し、それから合理的な反対提案を行った結果、提示額より大幅に緩やかなラインで合意できました。
とはいえ、通知が届いた瞬間は心理的に動揺し、冷静な判断が難しいものです。そんなあなたにこそ、“すぐに返答しない・情報を整理する・専門家に相談する”という3つの初動の重要性を知ってほしいと感じています。
この初動だけで、その後の交渉の流れは驚くほど変わります。
まとめ
本記事では、継続賃料の正しい考え方と、増額交渉の際に押さえるべき論点を解説しました。継続賃料は相場と単純に連動するものではなく、これまでの経過や物件の状況を総合的に判断して決まります。
特に、増額通知が届いた際の最初の一手は重要であり、そこで冷静に状況整理を行うことで、交渉の方向性は大きく変わります。不安があれば専門家がサポートすることで、妥当な範囲で合意形成を進めやすくなります。
必要以上に譲歩せず、適正なラインでの交渉に向けて、ぜひ専門家とともに次のステップへ進んでください。
FAQ:よくある質問
Q1. 相場が上がっていると言われたら、必ず賃料も上がるのでしょうか?
必ずしもそうとは限りません。相場はあくまで参考要素であり、継続賃料は「これまでの賃料の経過」「物件の現況」「合理的な相場反映」など複数の要素を総合して決まります。実例でも、相場が上がっていても増額が緩やかにとどまるケースが多くあります。
Q2. 貸主から提示された金額が妥当かどうか、自分で判断できますか?
相場資料だけでは判断が難しいことがほとんどです。提示額が“新規賃料”を基準にしている場合も多く、継続賃料の基準とは異なります。実際の相談でも、提示額と適切なラインが大きく乖離しているケースは珍しくありません。
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