この記事でわかること
- 社員の等級ダウン・減給が問題になりやすい理由
- 「適法かどうか」だけで判断するリスク
- 実務でトラブルを避ける進め方と専門家の関わり方
この記事のポイント
- 等級ダウンは減給率より「進め方」が重要
- 合意形成と書面化がリスクを大きく左右する
- 弁護士選びで将来のトラブル発生率が変わる
社員のパフォーマンスが想定に届かない。
等級を見直したいが、減給は問題にならないのか——。
こうした悩みを抱える人事担当者や経営者は少なくありません。インターネット上では「10%までなら安全」「同意がないと危険」といった情報が並びますが、実際の現場ではそれだけでは判断できないケースも多いのが実情です。
この記事では、実際に起きがちな企業事例をもとに、等級ダウン・減給をどう考え、どこまで専門家に頼るべきかを整理します。「自社の場合はどう判断すべきか」を考える材料としてお役立てください。
目次
等級ダウン・減給が問題になりやすい本当の理由
等級ダウンや減給は、法律上すべてが禁止されているわけではありません。それでも実務では、驚くほど簡単にトラブルへ発展します。その原因は、「減給が適法かどうか」だけで判断してしまう点にあります。
ある企業では、試用期間を終えた社員について「想定していた水準に届いていない」という理由で等級ダウンを検討しました。現場としては切実な判断でしたが、本人にとっては「急に評価を下げられた」という受け止め方になり、不信感が一気に膨らみました。結果として、制度上は問題がなくても、感情的な対立が先行してしまったのです。
このようなケースで問題になるのは、減給そのものではなく、評価の前提条件がどこまで共有されていたかです。企業側は「当然わかっているはず」と考えていても、社員側はそう受け取っていないことが少なくありません。
とはいえ、企業としても評価を甘くし続ける余裕はなく、放置すれば組織全体の士気や生産性に影響します。そんなあなたに知ってほしいのは、この問題は減給の是非ではなく、進め方の設計で結果が決まるという点です。
「10%までなら安全」という情報に頼る危うさ
減給の相談で必ず出てくるのが、「10%までなら、何%以下なら大丈夫」という話です。確かに、実務上の目安として語られることはあります。しかし、それを絶対的な基準として扱うのは危険です。
実際にあったケースでは、等級制度が細かく設定されており、等級を一段階下げただけで給与差が10%を超える構造になっていました。企業側は制度どおりに運用したつもりでも、社員側からは「一方的に大幅な減給をされた」と受け止められてしまったのです。
ここで重要なのは、減給率の数字ではありません。なぜその等級・給与になるのかを、合理的に説明できるか、そしてその説明が事前に行われていたかです。
とはいえ、数字が明確な分、「10%」という基準にすがりたくなる気持ちも理解できます。そんなあなたに必要なのは、数値ではなく、プロセスで安全性を確保する視点です。
就業規則・等級制度・採用時説明の整理
等級ダウンや減給を検討する際、最初に行うべきは条件変更の可否判断ではありません。まず整理すべきなのは、「そもそもどんな前提で雇用関係が成立しているか」です。
ある企業では、採用時に「試用期間後に正式な評価を行う」と説明していたものの、その内容が曖昧でした。就業規則にも評価基準の詳細がなく、等級制度は形だけ存在している状態。このまま条件変更を進めれば、後から説明責任を果たせないのは明らかでした。
ここで整理すべきなのは、
- 就業規則に等級や評価の根拠があるか
- 採用時にどこまで説明しているか
- 過去にどんなフィードバックをしてきたか
といった点です。
とはいえ、「そんなに整理できていない」という企業も多いでしょう。
私ならこうする①:面談内容を“証拠”に変える
評価面談や改善指導は、多くの企業で行われています。しかし、実務上問題になるのは、「言ったかどうか」ではなく「残っているかどうか」です。
あるケースでは、上司が繰り返し改善点を伝えていたにもかかわらず、記録が一切残っていませんでした。その結果、本人から「そんな説明は受けていない」と主張され、企業側が不利な立場に立たされました。
ブライトでは、顧問先の企業に対し、面談内容を音声やメモで記録し、それをもとにAIで要点を整理しておくよう指導しています。問題となりそうな案件であれば、弁護士が関与しながら、評価・改善指導として適切な表現に整えます。このプロセスによって、説明責任を果たすための材料が整います。
とはいえ、すべてを完璧に残すのは現実的に難しいものです。そんなあなたに必要なのは、「今からでも積み上げられる記録」を整える発想です。
私ならこうする②:減給ではなく「契約の組み直し」で考える
一方的な減給は、法的にも感情的にもリスクが高い判断です。そこで実務上有効なのが、真摯な同意を前提とした契約の組み直しという考え方です。
実際にあった企業では、職務内容と期待値を再定義し、それに合わせて等級と給与を再設計しました。単なる減額ではなく、「役割が変わる」という整理を行ったことで、本人も状況を受け入れやすくなりました。
この際、重要なのは合意内容を口頭で済ませないことです。ブライトでは、合意書のたたき台を弁護士側で作成し、企業と社員の双方が理解できる形に落とし込みます。
とはいえ、同意が得られるか不安に感じる企業も多いでしょう。そんなあなたに必要なのは、同意を引き出すための説明設計です。
私ならこうする③:合意書と就業規則を一気通貫で整える
合意書を作成しても、就業規則や等級制度と矛盾していれば、将来また同じ問題が起きます。
ある企業では、合意書は整っていたものの、就業規則の記載が古く、後日、別の社員から不公平だと指摘されました。個別対応が、新たなトラブルの火種になってしまったのです。
そこで重要になるのが、合意書・就業規則・制度運用を同時にチェックする視点です。ブライトでは、「今回の対応が次の問題を生まないか」という観点で、制度全体を確認します。
とはいえ、制度改定まで踏み込むのは大変です。そんなあなたに必要なのは、必要最低限で効果の出る調整ポイントを見極めることです。
減給案件を「顧問弁護士選び」の判断材料にする
この手の相談で本当に重要なのは、「この減給がOKか」ではありません。誰と一緒に判断するかが、その後の経営判断の質を大きく左右します。
実務では、「法律的にはNGです」「リスクが高いです」と言われて終わるケースも少なくありません。一方で、曖昧な状況から論点を整理し、現実的な選択肢を提示してくれる弁護士もいます。
とはいえ、どの弁護士が自社に合うのかは分かりにくいものです。そんなあなたにとって判断材料になるのが、「具体的な問題解決プロセスをどこまで担ってくれるか」です。
顧問弁護士は経営判断を支えるパートナー
等級ダウンや減給の問題は、単発の法務対応では終わりません。評価制度、採用設計、管理職の運用など、組織の構造的な課題が背景にあることがほとんどです。
だからこそ、顧問弁護士選びでは、「どこまでやってくれるか」「どこまで背負ってくれるか」を見る必要があります。判断に迷ったとき、一度立ち止まって全体を整理するだけでも、選択肢は大きく広がります。
まとめ
- 等級ダウン・減給は「適法か」だけでは判断できない
- 重要なのは、評価前提・進め方・合意形成の設計
- 契約の組み直しや書面化でリスクは大きく下げられる
- 弁護士は判断を「出す人」ではなく「組み立てる人」
判断に迷ったときは、まず現状を整理することから始めるだけでも、次の一手が見えてきます。
FAQ:よくある質問
Q1. 等級ダウンに本人の同意は必ず必要ですか?
すべてのケースで必須ではありませんが、減給や職務内容の変更を伴う場合、同意を得て合意書として残すことでトラブルリスクは大きく下がります。
Q2. 社労士と弁護士、どちらに相談すべきですか?
制度設計や日常運用は社労士、個別事案の判断や合意書作成、紛争予防まで含めるなら弁護士が適しています。





