社内規則の作成方法とは?流れや押さえておきたいポイント、注意点を解説

社内規則の作成方法とは?流れや押さえておきたいポイント、注意点を解説

会社内での組織や権限、意思決定のあり方(ガバナンス)などについて取りまとめたルールである社内規則。企業活動における「組織のあり方」「権限や責任、意思決定過程の明確化」「業務の平準化・効率化」「リスク管理」を図るのに必要となるため、自社の組織や業務内容、さらには企業文化をしっかり把握し、検討したうえで作成することが重要です。 また、社内規則にはさまざまな種類があるため、何をどのように作成すればよいか知りたい経営者や法務担当者もいるのではないでしょうか。今回の記事では、社内規則の種類や作成方法、管理・運用する際のポイントなどを紹介します。

社内規則とは

社内規則とは、会社で取り決められているルールの総称です。社内規則にはさまざまな種類・役割があり、ガバナンスのあり方を基礎づけ組織体制を構築するものから、経理や人事など各種業務にまつわるものまで幅広く、社内手続きの明確化はもとより、秩序維持にも大きな役割を果たします。

社内規則を作成する目的

社内規則を作成する目的は、自社の組織のあり方、意思決定過程を明確にすることです。これらがあいまいだと決裁権限や責任の所在が不明確となり、意思決定が適正に行われるか判断できないこととなります。会社内でのガバナンスのあり方を文書化(見える化)して取りまとめることで、事業を行ううえでの「5W1H(いつ、どこで、だれが、何を、なぜ、どのように処理するのか)」を規定することが重要です。そして、これらを通じて法令を遵守して、コンプライアンスを意識した企業運営を行う判断軸ができます

また、意思決定過程が明確になることで、社内業務の進め方も明確になりますから、結果的に業務の効率化や平準化も進み、業務の最適化も図ることができるでしょう。

社内規則と就業規則との違い

「就業規則」とは、会社と従業員との働き方に関する約束事を明記した職場におけるルールブックのこと。賃金や労働時間、休日、年次有給休暇などの労働条件をはじめ、就業するうえで必要な事項や服務規程、懲戒についても定められています。「社内規則」は社内ルール全般をカバーするものですが、「就業規則」は働き方に関するルールに限られる点が違います。

就業規則は雇用者と労働者間の契約の内容となるもので、常時10名以上の従業員を雇用する企業には労働基準法で作成が義務づけられています。また、就業規則を作成・変更したときは、労働組合または従業員過半数代表からの意見聴取と労働基準監督署への届出が必要ですので注意しましょう。

この記事では、原則として、就業規則以外の社内規則について述べることとします。

社内規則の種類

社内規則の種類は、会社の業種や業態、規模などによって異なります。大きく6つのカテゴリーに分けることができますが、主な社内規則を例示すると、以下の表のようなものがあります。

社内規則の種類

カテゴリー社内規則例
会社の根本や機関に関する規則●定款
●株式取扱規則
●取締役会規則
●監査役会その他会議体の規則
●執行役員その他役員関連規則
●内部監査規則 など
組織や権限に関する規則●組織規則、組織図
●職務権限(業務分掌)規則
●決裁基準
●関係会社管理規則
●コンプライアンスガイドライン など
人事労務に関する規則●就業規則
●賃金規則
●退職金規則
●人事考課規則
●個人情報管理規則
●安全衛生管理規則 など
総務に関する規則●文書取扱規則
●固定資産管理規則
●社用印章規則
●従業員持株会規則
●インサイダー取引防止規則 など
財務経理、債権管理に関する規則●経理規則
●経費処理基準
●予算管理規則
●在庫管理規則
●与信・債権管理規則 など
近時のワークスタイルに合わせた規則●ハラスメント防止規則
●副業・兼業規則
●テレワーク勤務規則
●内部通報規則
●SNS利用ガイドライン など

近年注目されている規則として、ソーシャルメディアやハラスメントに関するものが多く見受けられます。自社の事業内容、組織のあり方、文化も踏まえ、リスク管理の視点も加味して必要なルールを整備し、社内への周知しましょう。

【ステップで紹介】社内規則を作成する流れ

社内規則はどのように作成していくとよいのでしょうか。作成の流れと各ステップのポイントを紹介します。

社内規則作成のフロー図

【ステップ1】責任者を選出する

はじめに社内規則の作成に関する責任者を選出します。責任者を決めることで情報の一元管理や進捗状況のチェックが容易になります。責任者が連絡窓口となり、関係各部署や決裁権者との間を調整しながら進めていくとよいでしょう。

【ステップ2】既存の社内ルールを収集する

社内規則を新たに作成しようとする場合でも、社内には既存のルールや業務マニュアルなどが存在していることも多いと思います。まずは既存の社内ルールを確認・収集し、最新の状況と照らし合わせてみましょう。そのうえで既存のルールを社内規則に組み込むべきか、修正すべきかも含めて検討します。

【ステップ3】作成する優先順位を決める

どのような社内規則を整備するかは、会社によって異なります。事業や業務の内容、企業文化もふまえて、自社の実情に合った規則のあり方を考えることが重要です。しかし、あらゆる社内規則を一度に作成・整備することは現実的ではありません。まずは作成する規則や重点的に取り組むカテゴリーの優先順位をつけるとよいでしょう。自社の事業分野との関係やステップ2で確認した既存ルールの状況も踏まえて検討するのがポイントです。

【ステップ4】草案を作成する

責任者の指揮のもと、作成しようとする社内規則の関係部署へのヒアリングを行い、法務担当者が草案をつくり、決裁権者が内容を確認します。権限分配や手続きの流れが適切か、自社の事情をよく踏まえて検討することで、運用後のトラブルを軽減できるでしょう。

なお、効率的に作成を進めたい場合は、官公庁が公表している雛形などを参照するのも一つの方法です。ただし、雛形を参考にする場合は、「規定内容が自社に合っているか」「自社に当てはめて修正すべき点はないか」などを確認し、内容を精査しながら草案を作成しましょう。

【ステップ5】社内規則を制定、公表する

内容が決定したら、規則制定に関する社内手続きを経ることになります。社内規則の様式には制限がないため、紙でも電子データでも構いません。制定後は従業員への周知が不可欠です。従業員がいつでも確認しやすい方法で公開しておきましょう。

社内規則の作成における弁護士等専門家の活用について

社内規則の作成では、ステップ4の草案作成の段階において弁護士などの専門家によるチェックを受けたいと考える会社は多いでしょう。しかし、この段階で初めて専門家による確認を挟むのは、得策とはいえません。なぜなら、既にご説明のとおり、社内規則は各社の組織や業務内容、企業文化を前提とし、既存のルールも踏まえて作成されるものです。企業ごとに異なる背景知識を共有せずに専門家に意見を仰いでも、専門家は記載の内容や背景事情を真に理解できません。そのため、規定の形式的な確認にとどまることとなり、会社のニーズに即したアウトプットが得られない可能性が高まるでしょう。

社内規則の整備を検討するときは、プロジェクトの早い時点から、その意図や背景事情も含め、自社の事業や組織についても専門家と情報共有しながら進めていきましょう。自社の事情に即した専門家の意見を得られるようにするなど、専門家をうまく「使う」ことが重要といえます。

社内規則の作成・運用・管理のポイント

社内規則を作成時と、実際に運用・管理する際に押さえておきたいポイントを3つ紹介します。

法令に則り、各規則間の整合性を保つ

大前提として、社内規則は法令に則り作成しなければなりません。また、他の社内規則との整合性が取れているかの確認も重要です。社内規則に基づく手続きが法令に反していると、当該規則に基づく会社の行為の有効性に影響する可能性もあります。

各種法令の確認は法務担当者や各部署の実務担当者にとって重要な業務であり、判断が難しい業務でもあります。社内での確認と並行して、随時、弁護士や各分野の専門家へ確認しながら進めていくとよいでしょう。

作成後は従業員へ周知する

社内規則は会社という組織における権限や責任、意思決定のあり方を規定するルールですので、作成後は、これに沿った業務遂行のため、役員・従業員に周知させることが重要です。周知方法として、「規則集を作成し閲覧しやすい場所に備え置く」「社内ポータルサイトに掲載する」などが挙げられます。常に従業員が社内規則を確認できる状態にしておくことで、社内規則への理解を促し、業務遂行の適正化、権限や責任、意思決定の明確化につながります。

定期的に見直し、適宜内容を更新する

社内規則は法令改正や時代の変化に応じて、更新していくことが求められます。とくに近時は、法律や規則、ガイドラインの改正が頻繁に行われ、時代や社会も急速に変化しています。また、会社における運用実態が社内規則とズレてくることもあるでしょう。そのため、社内規則は一度作成して終わりではなく、定期的な見直しが必要です。

必要に応じて内容を更新できるよう、社内規則ごとに点検する時期や責任部署を決めておくとよいでしょう。

特に法改正に注意

社内規則に関連する法律は、民法、商法、会社法、労働基準法、育児介護休業法、個人情報保護法など幅広く、また、各種規制法や業法もあり、法改正されたときはその都度社内規則見直しの要否を確認することが必要です。

実務上の影響が大きい各種法令の改正情報は、新聞やニュースで報道されます。また、所管の省庁が改正の趣旨や新旧対照表を公表していることも多いため、ホームページなどで確認しましょう。なお、改正情報の見落としも想定されるため、普段から専門家にアドバイスをもらえる環境を整えておくことが望ましいです。

社内規則を作成する際はリーガルチェックを受けよう

社内規則は会社で取り決めるものですが、法令に則って作成する必要があります。今回紹介したステップに沿って作成した後は、従業員への周知をきちんと行いましょう。

また、社内規則は一度作成して終わりではなく、定期的に見直すことが重要です。各規則に関連する法改正や社会の動向もふまえて、自社の実態に合った社内規則の作成に取り組んでみてはいかがでしょうか。

社内規則の作成に課題を感じたら、「みんなの法務部」に登録して弁護士に相談を

社内規則を作成する際に重視すべきポイントである、「自社の事業や企業文化をふまえた改正」「他の規則との整合性や法改正の確認」のためには、自社の事業を理解して法務サービスを提供する「みんなの法務部」が最適です。「みんなの法務部」は企業の法務担当者と伴走しながら、各種社内規則の整備、説明資料の作成、その他導入支援を行っております。社内規則の作成に関するご相談は、「みんなの法務部」までお寄せください。

本記事は、一般的な情報の提供を目的とするものであり、個別案件に関する法的助言を目的とするものではありません。また、情報の正確性、完全性及び適時性を法的に保証するものではありません。
なお、本記事の内容に関する個別の質問や意見などにつきましては、ご対応できかねます。ただし、当該記事の内容に関連して、当事務所へのご相談又はご依頼を具体的に検討されている場合には、この限りではありません。
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