働き方改革改正に伴い生じる2024年問題とは?課題と解決に向けた取り組みを解説します

働き方改革改正に伴い生じる2024年問題とは?課題と解決に向けた取り組みを解説します

働き方改革関連法が改正となり、2024年問題と呼ばれる各種課題が問題視されています。今回は、企業の収益不足や人材不足などの問題にどのように対処すべきなのかについて解説していきます。

2024年に行われる働き方改革関連法とは

働き方改革関連法とは、2018年6月に成立し2019年4月に施行された、多様な働き方が選択できるようにするための関連法令のことです。

一億総活躍社会を実現するための改革とも言われ、50年後も人口1億人を維持して、誰しもが活躍可能な社会を目指すためのものです。

施行から5年間は、物流・運送業界のほか、建設・医療業界などでは猶予期間が設けられていましたが、それが終了となりいよいよ2024年からは上記業界においても各種関連法が対象となります。

それに伴い生じる問題は2024年問題と呼ばれ、「荷物が届かない」「路線バスの廃止」「住宅がたたなくなる」「病院数が減る」などの国民の生活に大きな影響を与えるさまざまな問題が懸念されています。

働き方改革関連法に盛り込まれている内容として具体的に

  • 時間外労働の上限規制
  • 時間外労働における割増賃金の引上げ
  • 勤務間インターバルの延長
  • 年次有給休暇取得の義務化
  • 労働時間の把握の義務化

などが挙げられます。

どの取り組みに関しても、労働者の心身の健康維持と、働きやすい環境の整備を目的としたものであり、特にこれまで長時間労働が問題視されていた物流・運送、建設、医療業界にとっては大きな変化となることが予想されます。

重要なのは、働き方における各種制限が設けられる中で、その実現のためにはどのような人員配置が必要となるか、また不足する人材を補うために、どのように採用活動を進めるべきかということです。業界、企業としての魅力を向上させ伝えることが必要となるでしょう。

時間外労働の上限規制が変更

働き方改革関連法で一番大きく取り上げられているものが時間外労働の上限規制です。

施行前については、36協定を締結することで実際には無制限で時間外労働や休日出勤が可能という状態であったものが、規制されています。

具体的には、

  • 時間外労働が年720時間以内
  • 時間外労働と休日労働の合計が月100時間未満
  • 時間外労働と休日労働の合計が、2ヶ月から6か月の平均で月80時間以内
  • 時間外労働が月45時間を超えることができるのは、年6か月が限度

となっています。

時間外労働の上限規制については、2019年の施行とともに大企業で適用され、その1年後には中小企業、そして2024年から物流・運送・建設・医療業界・鹿児島県と沖縄県の砂糖製造業において段階的に適用されることとなりました。

働き方改革関連法の改正に至った背景

そもそも、働き方改革関連法が改正となったのはなぜでしょうか?

労働力不足

日本の生産年齢人口は想定を上回るペースで減少が進んでおり、加速する少子高齢化に伴う労働力不足が懸念されています。また、女性の社会進出に関しても、過去と比較すると少しずつ増えてはきているものの、未だ出産しても働き続けることや、育児をしながら働くことなどに関して、環境が整備されていない点も多くためらってしまうケースも多いというのが実情です。

そのため、これらの状況を改善していくことが、労働生産性の向上に繋がると考えられています。

長時間労働の是正

バブル期の日本では、長時間労働や仕事を優先させて働くことが良しとされていましたが、そのような風潮により家庭がおろそかになったり、過労により体調を崩すなどの悪影響が生じる引き金となっていたといえます。

過重労働による過労死の増加や心身の病を抱える人が増えている状況を改善しなければならないということが、働き方改革の推進に繋がっています。

近年では、時間外労働の制限のほかにも、フレックスタイム制の導入やリモートワークの普及など、一人一人が働きやすく、また生産性が向上するような多様な働き方を取り入れる企業も増えています。

ライフワークバランスの実現

これまでは、仕事中心で進めていた働き方を見直し、仕事の充実は家庭の充実にありというライフワークバランスの考え方を尊重するものです。

仕事と家庭のバランスを取ることで、健康で豊かな生活を送ることを目指し、働く人一人一人の心身の健康の維持につなげることを目指しています。

ライフワークバランスに関する対策は長時間労働の是正に繋がるものであり、フレックスタイム制度や短時間勤務制度、育児休暇やリモートワークの導入などが行われています。

働き方改革関連法の改正で2024年問題と言われる理由

働く人が多様な働き方の中から自分のライフスタイルに合ったものを選択できるという点で、大きなメリットがある働き方改革ですが、その一方でさまざまな問題や課題も挙がっています。

中でも大きな問題として取り沙汰されているのが2024年問題です。

先述の通り、2024年4月より、これまで猶予期間を設けられていた業界においても規制の対象となります。

ここでは業界ごとに懸念されている2024年問題をご紹介していきましょう。

運送・物流業界

・ドライバーの収入減少

時間外労働の上限規制に伴い、これまでよりも労働時間が減少することで、収入が減少するという場合も増えることが予想されます。収入の減少により、人手不足が加速し更なる人材不足が懸念されるでしょう。

・企業収益のダウン

これまでよりも引き受ける輸送量などが減少することにより、企業としての収益がダウンすることも予想されます。

そのため、各種コストへの上乗せや材確保によって引き受ける仕事量を増やすなどの対策が必要となってくるでしょう。

・輸送可能量のダウン

各社の引き受けられる輸送量が減少すれば、輸送することのできる量もおのずとダウンしてしまいます。

そのため、輸送がこれまでよりも遅くなったり、引き受けられないというケースが発生する可能性も出てくるでしょう。

・運賃・輸送量のアップ

企業の収益のダウンをカバーするには、その分運賃や輸送量を引き上げなければならないという事態が想定されます。運賃のアップについては、依頼主側に大きな負担としてのしかかってくるでしょう。

建設業界

・従業員の給料の減少

運送・物流業界同様に、時間外労働時間が少なくなれば、その分給与が減ってしまうことになります。

・工事費の高騰

既に建築工事費は住宅建設需要の高まりや、木材の供給不足などを理由に上昇傾向にあるものの、2024年問題による企業収益の減少や人件費の高騰などを理由にさらに高騰する可能性があります。

・工期が遅れる

時間外労働の上限規制に伴い、一人が行うことのできる労働時間が限定されるために、その不足分の人員を確保することができなければ、自ずと工期が遅れてしまうこととなります。一つ一つの工事に時間を要することから、引き受けられる仕事量の減少にもつながってしまう問題です。

少子高齢化や業界としても若手の新規参入が課題となっている現状を見ても、早急に人材確保に向けた取り組みが必要となるといえるでしょう。

医療業界

・人材不足

医療業界に限ったものではありませんが、少子高齢化による労働不足の減少や、出産や育児に伴うキャリアの中断などによる人材不足は何らかの対策を講じなければ、今後も加速していくことでしょう。

働き方改革で、時間外労働の上限が定められることで、過重労働問題に関しては改善の見通しがあるものの、それだけではなく職場や労働環境の整備を多面的におこなっていくことが求められます。

・勤務環境の整備不足

先の人材不足にもつながるものですが、医療現場においてはやはり勤務環境を早急に整えることが必要とされています。

救急搬送や出産、看取りなどについては時間を問わずに起こりうるものであることから、他の業界と比べても長時間労働であったり、不規則な労働時間となるのが医療業界の特徴であるといえるでしょう。

働き方改革関連法に違反した際の罰則と改善の取り組み

業界により様々な問題が挙げられる中で、解決のためにどのように取り組んでいくべきなのか、また仮に法令違反を犯した場合にはどのような罰則が与えられる可能性があるのかについて詳しく見ていきましょう。

働き方改革関連法に違反した場合の罰則

働き方改革関連法のうち、違反すると罰則が科される項目について見ていきましょう。

時間外労働の上限規制

上限を超えて労働をさせた企業については、労働基準法違反により6か月以下の懲役または30万円以下の罰金が科せられる可能性があります。ただし、罰則は1度の規定違反ですぐさま与えられるものではなく、再三の指摘があったにもかかわらず改善しなかった場合や、悪質性がある場合が対象となります。

したがって、法律にのっとって従業員を雇用するのはもちろんではありますが、仮に違反に当たる労働が見つかった場合には速やかに対応すべきであるといえます。

月60時間を超える残業に対して割り増しでの支払い

長時間労働の是正等を目的として、月60時間を超える残業の割増率は1.5倍と定められています。既定の割増率での支払いがなされない場合には、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金が科されることとなります。

年次有給休暇の取得

年間10日以上の有給休暇が付与されている従業員に対し、年間最低5日の有給休暇を取得させなければなりません。

これに違反した場合には、30万円以下の罰金の対象となります。

フレックスタイム制の清算期間の延長

これまでフレックスタイム制の清算期間は1か月単位となっていましたが、働き方改革関連法の改正に伴い3ヶ月に延長されました。清算期間が1か月を超える場合には、労使協定の届出が義務付けられ、これに違反した場合には、30万円以下の罰金の対象となります。

医師の面接指導

医師の面接指導とは、長時間労働により心身の不調のリスクが高いと考えられる労働者に対して、医師の診断をおこない、現状把握や改善のための措置を講じるためのものです。

医師の面接指導の義務を怠った企業に対しては、50万円以下の罰金が科せられる可能性があります。

2024年問題を解決するためにやるべきこと

IT技術の導入

2024年問題の解決のカギとなるのが業務の効率化です。限られた労働力を効率的に動かし、IT技術で賄える部分については積極的に取り入れることで、安定した収益を上げることに繋がります。

具体的には、運送・物流業界においては、運送管理システムを導入して、配送状況をリアルタイムで確認することで効率的な配送業務をおこなうというものや、医療業界では、電子カルテやモニターシステムなどを導入することで、作業の効率化を図るというものです。

人材確保

人材確保において重要となるのが、魅力的な職場環境の整備です。しかし職場環境の整備とはいっても、労働時間の改善だけで環境が整う訳ではありません。

女性が働き続けられるように育児休暇の取得支援や、業務未経験であっても参入できるように研修制度を充実させること、さらにはライフワークバランスを実現させるためにフレックスタイム制度やリモートワークの導入のほか、ノー残業デーの実施や年次有給休暇取得の推奨など企業としてできることを積極的に取り入れていくことがゆくゆくは魅力的な企業として注目されることとなり、人材確保に繋がっていくと考えられます。

給与体系の見直し

残業手当の比重が大きくなるような給与体系であれば、時間外労働の制限に伴い給与が大きく減ってしまう可能性があるでしょう。したがって、企業は2024年問題を機に給与体系を見直し、時間外労働による残業手当の比重を検討する必要があります。

窮余における残業手当の比重を減らすことは、収入の安定につながります。従業員が安心して働き続けるため、また新たな人材確保のためには給与体系を抜本から変えていく必要があるかもしれません。

まとめ

以上、今回は働き方改革関連法の改正はどのようなことを目的として行われるのか、またそれに伴い生じる2024年問題を解決するためにはどのような取り組みが必要となるのかについて解説してきました。

労働者の心身の健康や多様な働き方を実現するための働き方改革関連法の改正ですが、法の改正だけでは賃金の減少や労働力不足など、新たな課題が生じることとなり、各企業ではた対策を講じる必要があるといえます。

将来にわたって持続的な成長を遂げていくうえで、今回の2024年問題解決に向けた取り組みは非常に重要であるといえるでしょう。

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