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取引先からの支払いが滞った場合、債権回収にはどのような方法があるでしょうか。取引先が倒産するリスクを想定して、あらかじめ方法や対策を得ておくことが大切です。本記事では、債権未回収のリスクを防ぐために事前にできる対策を解説しています。債権回収を行う際にお役立てください。
債権回収とは、期限までに支払われなかった債権を債務者(取引先)から回収するために、債権者側が起こす行動のこと。取引先からの支払いが滞っている場合、相手の資金繰りが悪化している可能性があるので、時間を追うごとに債権を回収できる確率が下がっていきます。
また、取引先が破産手続を行い自社に債権届出書が届いた場合、それ以降企業から任意での回収は見込めません。破産手続が開始されると裁判所の指導・監督下にある破産管財人により、破産者の財産が換価され、各債権者の債権の内容や金額に応じて、分配が行われます。従って、取引先が倒産して破産手続が行われた場合、原則として債権を回収できるのは配当手続のみになり、およそ債権の回収は困難となるのが通常です。
そもそも、取引先から債権回収できないと、自社のキャッシュフローが悪化する、多額の不良債権により取引先とともに共倒れになる、貸し倒れ損失が発生し利益を圧迫するといった自社の存続にも悪影響を与えます。また、従業員の士気が低下する、債権回収に労力を費やすことにより本来の業務に時間を割けなくなります。
そのため、取引先の支払いが滞った場合、できるだけ多くの債権回収のために迅速な対応が求められます。
債権を回収するにはまず、できる限り早く取引先の状態や支払状況を確認する必要があります。では、取引先の倒産が疑われる場合、まず行うべき項目を見てみましょう。
実際に取引先を訪問する、関係者やデータバンクなどから情報を入手するなどして、取引先の状況を確認してみましょう。
取引先の資金繰りが悪化した場合、再建に向けて取引先が取りうる手段として裁判所が関与して実施する「公的手続き(法的整理)」と、裁判所が関与しない「私的手続き(私的整理・任意整理)」が考えられます。法的整理がすでに行われている場合、前述のように企業が裁判手続きを介さず債権を回収することはできません。
一方、私的整理を行っている場合もしくはまだ何ら手続きを取っていない場合には、企業が任意で債権回収の交渉をする余地があります。まずは、取引先の営業状態や代表者の所在、担保物権・納品商品の所在、他の債権者の動向について調査しましょう。
あわせて、取引先と債権・債務の関係を調査しましょう。特に未回収の債権の種類や金額を把握することに努めます。まずはどのような債権が未回収で残っているのかを、全てリストアップすることが重要です。
確認の際は、「売買契約書」「見積書」「発注書(発注請書)」などの契約書類を探しましょう。契約内容がわかる書面から、売買代金、リース代金などの債権の種類とその内容、金額や支払方法、担保や連帯保証人の有無、期限の利益喪失条項などを確認します。期限の利益喪失条項とは、支払停止など一定の事由が発生した場合に、本来の期限を待たずして支払義務を生じさせる項目のことです。
さらに、自社が取引先に対する債務があるときは、その履行状況なども確認しましょう。
支払期限までに振込みがない場合、取引先の経営状況の悪化が原因とみられるならば速やかに、取引を停止しましょう。これ以上未回収債権が増えることを防ぎ、損害を最小限にとどめることが大切です。もし、取引先がそれでも納品の続行を望むときは、担保提供や現金による前払いを要求しましょう。
あわせて、例えば商品の売買において、代金が完済されるまで所有権を留保するという契約内容となっている場合には、自社商品の回収も検討しましょう。ただし、所有権を留保していたとしても、自社商品を引き取る際は、取引先の承諾を得ましょう。承諾なく引き揚げを行うと、窃盗罪などに関わる可能性があるため、同意書にサインを受けるなどして両者が合意している旨を形に残しましょう。
できるだけ多くの債権を回収するには、どのような手立てがあるでしょうか。まずは、訴訟によらない方法を解説します。
取引先からの支払いが停止した場合、取引先に電話、出向くなどして、直接交渉を行うか、内容証明郵便などを送付して支払いの督促を行い交渉しましょう。内容証明郵便とは、日本郵便が「差出日、差出人、受取人、文書の内容」を証明する文書であり、相手の義務感に訴えかける効果も望めます。
取引先からその債権を直接回収できる見込みが低い場合、ほかにも以下のような方法が考えられます。
担保権とは、相手が債務を支払えなくなることに備え、動産や不動産などに設定し金銭債権の補償とすることで、万が一の際に債権の代わりに担保物を売却するなどして金銭を回収できる権利です。人的担保として連帯保証人をとっている場合は、連帯保証人に請求を行うこともできます。
担保権を設定している場合には、まず担保権の実行を検討しましょう。
相殺とは、自社と取引先の間で債権をお互いに有している場合、両債権と同金額分を消滅させることができる制度です。自社の債権が消滅する分、取引先に対して負っていた債務も消滅することになります。このように、取引先に対する債務と相殺することで、債権回収と同様の効果が得られるため、事実上一部の“債権を回収できた”ことになります。
なお、相殺は債権者か債務者、どちらか一方だけの意思表示によって実施可能です。相殺の際は、対象となる債権、金額、弁済期(支払期日)、相殺後に残存する債権の額などを明確にして、取引先に通知しましょう。
債権譲渡とは、取引先が第三者との間で持っている売掛金などの債権を譲り受けることで、取引先の代わりにその第三者(第三債務者)から債権を回収する権利を得る制度です。
債権の譲渡は原則として取引先と自社の当事者双方の合意で成立するものの、対抗要件を備える(自分が権利者であると当該第三債務者や同様に権利を譲り受けた第三者に主張する)には取引先から当該第三債務者に対して債権譲渡の旨を知らせるか当該第三債務者から承諾を得る必要があります。その際は、譲渡する債権(金額・返済期日・利息など)を表示した書面を、必ず取引先から当該第三債務者に通知してもらいましょう。
代物弁済とは、支払いの代わりに取引先から何らかの財産を譲り受けるなどして、債権回収を図ることです。代物として、入金前の受取手形や他社の納入品を引き取るといった方法があります。
この場合も、自社と取引先との間に合意が必要となるため、後にトラブルとならないよう書面にて合意した旨を残すことが重要です。
取引先が交渉に応じない場合は、法的な手続きを検討しましょう。
保全措置は、債務者の財産を強制的に確保するための制度です。債権回収ができるまで取引先の資産を凍結できる「仮差押」を行うことにより、示談交渉や裁判を行っている間に債務者(取引先)が財産の処分や第三者に贈与・売却することを禁止できます。
例えば、取引先の銀行預金口座を仮差押することで、預金の引き出しができなくするなどの方法があります。他にも、不動産や売掛金など仮差押の対象となる資産はさまざまです。
支払督促とは、裁判所が債務者に対し書類を送付することで、金銭の支払いを督促する制度です。支払督促に対し取引先が異議を申し立てなければ、支払督促に「仮執行宣言」を付してもらうことで、債務名義として取引先の資産に強制執行が可能となります。
裁判所から通知が送られるため、取引先側に支払いのプレッシャーを与えるといった効果も期待できるでしょう。
対して、訴訟は、裁判所が、法廷で、双方の言い分を聴いたり証拠を調べたりして、最終的に判決によって紛争の解決を図る手続きです。しかし、判決後も支払いが滞る場合には、「強制執行」を検討する必要があるでしょう。
判決により支払いの義務が生じたにもかかわらず取引先が債権を支払わない場合には、強制執行の手続きを検討します。強制執行は、取引先が持つ債権や預貯金、不動産を差し押さえ、強制的に回収する方法です。
しかし、判決が出た時点で取引先の預貯金を引き出してしまうといったケースも存在します。そのため、あらかじめ取引先の資産状況や口座を把握して、回収見込みを把握しておくことが重要となります。
債権が回収できない事態を防ぐには、事前の対策が大切です。
与信管理とは、万が一債権が回収不能となった場合のリスクに備え、取引先の信用度合を把握し、適切な管理を行うことです。共倒れを防いだり、自社の資金繰り対策を講じたりするためにも、与信管理の徹底は非常に重要といえます。具体的には、取引先の与信調査を実施して、販売限度額の設定や取引の可否を判断しましょう。
また、業界の動向や取引先の状況を継続的に調査し、定期的に取引の見直しを行います。
取引先の経営状況の悪化を察知したらできるだけ早期に債権を回収するために、取引の段階で取引先が債権を有する第三者や取引先の預金口座を知ることができると有益です。未回収となってからでは取引先の協力が得られない可能性もあるため、あらかじめ取引先の財産を把握しておきましょう。取引先の資産状況を知っていると、回収見込みを高めることや、そもそも回収見込みがあるのかを判断することにもつながります。
契約書の内容は、債権回収を行う際に重要な証拠となるため、契約を交わす時点で契約書を整備することが大切です。
一般的な契約書にはトラブルを想定した取り決めが定められていますが、契約書に記載のないトラブルは事後の判断となります。あらかじめ、あらゆるトラブルを想定して対処法を記すことができれば、リスクの低下につながるでしょう。
契約書を作成する際は、債務者が支払いを怠ったなどの場合に直ちに債務履行義務が生じる期限の利益喪失条項や、商品の所有権移転時期についての記載を忘れず行いましょう。
また、契約を交わす際には、担保権を設定することも大切です。担保には、連帯保証などの「人的担保」と、動産や不動産などの「物的担保」があります。
通常想定されるのは、「連帯保証人」である人的担保の設定でしょう。保証人は、取引先(主な債務者)に履行を督促するよう主張する権利があり、また、取引先に資力があることなどを証明することにより、取引先の財産に対して執行するように主張する権利があります。、他方、連帯保証人にはこれらの権利はなく、取引先と同等の責任を持ちます。そのため、取引先から回収できない見込みがある場合には、取引先への督促を継続することなしに連帯保証人へ債務の支払いを請求できるといった特徴があります。取引先が倒産した場合、すぐに担保権を実行することで損害が膨らむ事態を防げるでしょう。
物的な担保権を設定する場合は、取引先が有する土地や建物といった不動産の「抵当権」や、不動産のほか、備品や機械類などの動産に、「譲渡担保権」を設定するという方法も考えられます。
「譲渡権担保」とは、債務者の所有物の所有権を債権者に譲り渡し、完済したら債務者が所有権を買い戻すという制度です。
ただし、どのようなトラブルやリスクが起こりうるか、企業のみでは判断が難しいこともあります。契約書の作成や契約の締結をする前に弁護士に相談することで、前もって契約に関するアドバイスやチェックを行えるでしょう。トラブルが生じた場合にも不利とならないよう、早めに弁護士などの専門家に相談してみてはいかがでしょうか。
取引先の倒産が疑われる場合、少しでも多くの債権を回収するには、交渉や法的措置などが必要となります。取引先の状況を追いながら、適切な対処を行いましょう。また、債権未回収を防ぐには、事前にリスクに応じた対策が必要です。契約前や取引中の与信管理の徹底や、契約書には未払い時のリスクに応じた項目を設定し、不利な状況が生じないよう契約を取り交わすなどの対策を講じましょう。
しかし、企業のみでは契約時点でのリスクや回収の進め方に気づけない場合もあります。債権回収に困らないよう、取引先との契約前から弁護士に相談することがおすすめです。
弁護士法人ブライトが提供する「みんなの法務部」は、法務部や顧問弁護士をもたない企業でも相談・解決が行えるリーガルサービスです。弁護士による法律に基づいた解決はもちろん、「契約書の作成」や「与信管理」についてもアドバイスやサポートを行っています。事前にご相談いただくことで、債権未回収を未然に防ぐための対策をともに作りましょう。取引先の倒産や債権回収のリスクにお悩みの場合は、ぜひ登録をご検討ください。
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