交通事故によるケガの中でも、大腿骨(だいたいこつ)骨折はとても重傷といわれる骨折の一つです。
大腿骨は人間の身体のなかでは一番大きな骨ですので、完治するまでには時間がかかり不自由な生活を強いられます。
また大腿骨骨折は、後遺障害が残ってしまうケースが多いです。
そこで、今回は「交通事故で大腿骨骨折した場合」というテーマで
- 後遺障害に該当するケースや
- 慰謝料などの示談金相場(損害賠償金)
をわかりやすく解説します。
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大腿骨骨折とはどういう状態?
大腿骨の位置
大腿骨は股関節の付け根から膝までをつないでいる太ももの骨であり、上半身をしっかり支えて、歩く際にも使う大切な骨です。
大腿骨は股関節側から順に、
- 大腿骨頭(だいたいこっとう)
- 大腿骨頚部(だいたいこつけいぶ)
- 大腿骨転子部(だいたいこつてんしぶ)
- 大腿骨転子下(だいたいこつてんしか)
- 大腿骨骨幹部(だいたいこつこっかんぶ)
- 大腿骨顆部(だいたいこつかぶ)
で、構成されています。
大腿骨を骨折した場合、歩く・走ることはもちろん、立っているのも辛い状況になります。大腿骨は骨折する箇所によって、痛みや症状が変わります。
大腿骨頸部骨折
大腿骨と骨盤が付いている箇所が「大腿骨頭」で、その下が「大腿骨頸部」になります。
大腿骨頸部骨折は股関節の内部で発生する骨折であり、股関節を自由に動かすことが非常に困難になります。
そのため、骨折の治りが遅く治療は長引く可能性が高いです。
また血流が悪い箇所で、「骨がくっつきにくい」という特徴があります。股関節周辺の痛みや、骨折範囲によっては歩行や立てずに、壊死などの合併症を併発するリスクもあります。
大腿骨転子部・転子下骨折
「大腿骨頸部」よりさらに下が「大腿骨転子部」で、太ももの付け根付近の骨です。
「大腿骨転子部」は、足の小指側を大転子、足の親指側を小転子といいます。
大腿骨転子部骨折は、大腿骨の大転子から小転子の間の骨折です。大腿骨頸部骨折と比較すると、血流はそんなに悪くはないので、骨がくっつきやすく、壊死などの合併症のリスクは下がります。
大腿骨頸部骨折と同じように、激しい痛みを伴って歩くことができなかったり、腫れや皮下出血を起こしたり、また下肢が短縮するケースがあります。
大腿骨骨折の手術
大腿骨骨折の中でも大腿骨頸部骨折と大腿骨転子部骨折は手術になる可能性が高いです。
大腿骨頸部骨折では、金属製のねじやプレートなどで骨折箇所を固定して骨を接合する手術や、大腿骨骨頭部分を人工の骨頭に入れ替えるような手術が行われます。
大腿骨骨折になる事故
大腿骨骨折に至る交通事故事例には、さまざまなものがありますが代表的なのは
- バイク事故
- 歩行中に自動車に跳ねられる事故
です。
自動車とオートバイとの衝突事故では、オートバイの運転手が転倒して大腿部を地面に強打し、その衝撃で大腿骨骨折などの重傷になるケースが多いです。
横断歩道を歩いている途中、歩行者が自動車にはねられるケースや、自転車で走行中に自動車と衝突して大腿骨骨折するケースもあります。
また、高齢者が自動車との衝突で大腿骨骨折すると、治療期間が長期間になったり、完治せず後遺障害が残るケースが多いです。
【症状別】交通事故による大腿骨骨折で後遺障害が認定されるケース
まず、交通事故で骨折した場合の後遺障害の症状には、
- 欠損障害:体の一部が無くなる
- 機能障害:関節が動きにくくなる
- 変形障害:目で見てわかるほどに骨が変形している
- 短縮障害:足がもう片方の足と比べて短くなる
- 神経障害:痛みや痺れが残る
の5つがあり、大腿骨骨折の場合は欠損障害以外の4つが認められる可能性があります。それぞれ症状別に後遺障害認定等級と、後遺障害慰謝料の相場を解説します。
なお、後遺障害慰謝料は、慰謝料の基準の中でも一番高い弁護士基準の相場を紹介します。
交通事故で大腿骨を骨折した場合、後遺障害慰謝料以外にも入通院慰謝料を請求することが出来ます。
慰謝料については「交通事故の慰謝料の相場、計算方法、弁護士に依頼するべきケースを解説」でくわしく解説しています。
機能障害の後遺障害認定と慰謝料
機能障害とは、下肢の関節の用廃・可動域の制限などがでる障害です。大腿骨骨折によって、主に股関節そのものが動かしづらくなる機能障害で、骨折箇所の可動域の制限がどのくらいあるかなどで、後遺障害等級が決定されます。
両下肢の用を全廃したもの
- 後遺障害等級:第1級6号
- 後遺障害慰謝料:2,800万円
両足の3大関節(股関節、ひざ関節、足関節)の全てが強直(きょうちょく)した障害です。
強直(きょうちょく)とは関節が全く可動しないか、もしくはこれに近い状態(健側に比べて可動域が10%以下に制限されている状態)をいいます。
一下肢の用を全廃したもの
- 後遺障害等級:第5級7号
- 後遺障害慰謝料:1,400万円
片足の3大関節(股関節、ひざ関節、足関節)の全てが強直(きょうちょく)した障害です。
一下肢の三大関節中の二関節の用を廃したもの
- 後遺障害等級:第6級7号
- 後遺障害慰謝料:1,180万円
片足の3大関節中の2関節が、「強直(きょうちょく)」、「完全弛緩性麻痺(しかんせいまひ)またはこれに近い状態」、「人工関節・人工骨頭をしている場合はその可動域が健側の可動域角度の1/2以下に制限された状態」の障害です。
一下肢の三大関節中の一関節の用を廃したもの
- 後遺障害等級:第8級7号
- 後遺障害慰謝料:830万円
片足の3大関節中の1関節が、「強直(きょうちょく)」、「完全弛緩性麻痺(しかんせいまひ)またはこれに近い状態」、「人工関節・人工骨頭をしている場合はその可動域が健側の可動域角度の1/2以下に制限された状態」の障害です。
一下肢の三大関節中の一関節の機能に著しい障害を残すもの
- 後遺障害等級:第10級11号
- 後遺障害慰謝料:550万円
「関節の可動域が健側の可動域角度の1/2以下に制限されている」、「人工関節・人工骨頭を挿入している(後遺障害8級7号以外)」の障害です。
一下肢の三大関節中の一関節の機能に障害を残すもの
- 後遺障害等級:第12級7号
- 後遺障害慰謝料:290万円
「関節の可動域が健側の可動域角度の3/4以下に制限されている状態」の障害です。
変形障害の後遺障害認定と慰謝料
変形障害とは、目視でわかるほど骨の形が変形している障害です。
一下肢に偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの
- 後遺障害等級:第7級10号
- 後遺障害慰謝料:1,000万円
折れた骨がくっつかずにグラグラと動いている状態を偽関節といい、常に硬性補装具を必要とする場合の障害です。前述のとおり、大腿骨頚部骨折では骨がくっつきにくいため、偽関節が発生しやすいとされています。
一下肢に偽関節を残すもの
- 後遺障害等級:第8級9号
- 後遺障害慰謝料:830万円
偽関節を残すもので、硬性補装具を必要しない障害です。
長管骨に変形を残すもの
- 後遺障害等級:第12級8号
- 後遺障害慰謝料:290万円
骨折がくっつく際に、元の形状よりも屈曲し大腿骨の変形が起こる障害です。
短縮障害の後遺障害認定と慰謝料
受傷した側の下肢の長さが他方より短縮している障害です。
大腿骨骨折すると、足の長さが短くなり、左右の足の長さが変わってしまったケースがあります。(下肢の短縮)
足の長さが短くなれば、走ることや歩行に影響がでます。
大腿骨骨折の短縮障害には、下記のとおり後遺障害、8級5号、10級8号、13級8号が該当します。
一下肢を5センチメートル以上短縮したもの
- 8級5号830万円
上前腸骨棘(腰骨)と下腿内果下端間(内くるぶし)の長さが、健側の下肢と比較して5センチメートル以上短縮した障害です。
一下肢を3センチメートル以上短縮したもの 10級8号550万円
上前腸骨棘(腰骨)と下腿内果下端間(内くるぶし)の長さが、健側の下肢と比較して3センチメートル以上短縮した障害です。
一下肢を1センチメートル以上短縮したもの 13級8号180万円
上前腸骨棘(腰骨)と下腿内果下端間(内くるぶし)の長さが、健側の下肢と比較して1センチメートル以上短縮した障害です。
神経障害の後遺障害認定
むち打ちなどのように、大腿骨骨折でも神経障害が出るケースがあります。
神経障害は事故により神経の損傷による痛みやしびれがでる障害です。
画像検査や神経学的検査結果により、後遺障害12級13号、14級9号が該当します。
局部に頑固な神経症状を残すもの
- 後遺障害等級:12級13号
- 後遺障害慰謝料:290万円
頑固な神経症状とはMRIやCT、レントゲン画像などで症状が客観的に証明できる場合を指します。
局部に神経症状を残すもの
- 後遺障害等級:14級9号
- 後遺障害慰謝料:110万円
画像で症状が証明できず、自覚症状しかない場合は14級9号となります。
大腿骨骨折による後遺障害が認められたら賠償金はいくらになるの?
では、大腿骨骨折を場合の慰謝料などを含めた賠償金総額を計算してみます。被害者Aさんの事例で解説します。
Aさんの状態
- 事故日:2020年4月20日(追突事故、加害者の過失100%)
- 年齢40歳男性(症状固定日時点)、職業は自営業、2019年の年収1,200万
- 休業期間:3か月
- 入院日数:2か月
- 通院日数:8か月
- 後遺障害8級7号認定済。
- 逸失利益は減額適用なし(労働能力喪失率45%、労働能力喪失期間67歳まで認定済)
- 示談交渉のサポートを弁護士に依頼
Aさんの状態で賠償金額をそれぞれの項目について整理すると・・・・
- 後遺障害慰謝料:830万円
弁護士がサポートしていますので、弁護士基準の後遺障害8級の慰謝料830万が適用されます。 - 逸失利益:約9,900万円
基礎収入(1,200万円)×労働能力喪失率(45%)×労働能力喪失期間(67歳まで27年)に対応するライプニッツ係数(18.327)=9,896万5,800円(約9,900万円) - 治療費:50万円
- 休業損害(交通事故により収入が減少した損害:300万円
- 入通院慰謝料:194万円
まとめ
交通事故による大腿骨骨折は、骨折はどうしても治るまでには長期間必要で、後遺障害が残る可能性も十分に考えられます。
大腿骨骨折など、交通事故で骨折した場合に認定される後遺障害にはさまざまなものがあります。
後遺障害認定や慰謝料などの損害賠償請求で、ご不満やご不安を抱えていらっしゃる場合は、ぜひ弁護士にご相談ください。
ご相談者さまの疑問点にお応えし、適正な補償が受けられるようにサポートします。