倉庫の賃貸借トラブルで900万円台の損害賠償請求——請求を全額退け、逆に300万円台の解決金を獲得した事例

① 事案の属性
- 業種:物流・倉庫関連事業(関西の企業)
- 相談ジャンル:企業法務/事業用賃貸借の契約トラブル・損害賠償請求訴訟への対応
- 解決方式:訴訟上の和解(反訴提起による逆転解決)
- 解決までの期間:約1年4ヶ月
② 相談時の状況
「事業拡大のために借りた倉庫。敷金も支払ったのに、『無断転貸を計画している』と一方的に疑われて鍵すら渡してもらえない。それどころか、契約解除を通知され、900万円台の損害賠償を求める訴訟まで起こされた——。」
ご相談いただいたのは、事業拡大のため倉庫の賃貸借契約を締結し、600万円台の敷金を支払っていた企業です。賃貸人側は「別会社に無断で転貸しようとしている」との疑いを理由に倉庫の鍵の引渡しを拒否し、依頼者側の債務不履行を理由とする契約解除を通知。敷金の返還にも応じないまま、逆に依頼者を被告とする損害賠償請求訴訟を提起してきました。
「倉庫を使えないまま敷金が戻らないだけでなく、高額の違約金まで支払わされるのか」——被告という守勢の立場からのスタートであり、放置すれば敷金と賠償金の二重の損失を被りかねない状況でのご相談でした。
③ 争点・難しさ
- 「無断転貸」の評価:相手方は、通信回線の申込名義や設備搬入の状況、さらに面談時の録音データまで持ち出して「賃借人が無断転貸を認めた」と主張。契約の信頼関係を破壊する債務不履行があったのかが正面から争われました。
- どちらの契約解除が有効か:賃貸人・賃借人の双方が契約解除の意思表示をしており、鍵の引渡し拒絶という賃貸人側の債務不履行を先に位置づけられるかが勝敗の分かれ目でした。
- 敷金償却条項の適用範囲:契約書には敷金の償却条項がありましたが、賃貸人自身の債務不履行で契約が終了した場合にまで適用されるのかを争う必要がありました。
- 一方的な違約金条項への反撃:契約書の違約金条項は賃貸人に一方的に有利な建て付けでした。この条項を信義則により賃借人側からの請求にも類推適用できないか、という攻めの論点を組み立てました。
④ ブライトの方針・対応
初動——受けて立ち、反訴で攻守を逆転させる。訴訟を提起された時点で、単に請求を争う(防御する)だけでは、勝っても敷金が戻らないおそれがありました。そこで応訴と同時に、敷金の返還と、賃貸人の契約不当破棄を理由とする損害賠償を求める反訴を提起し、「守りながら攻める」構図に転換しました。相手方に一方的に有利な違約金条項についても、信義則を根拠に当方からの請求に類推適用すべきだと主張し、交渉カードに加えました。
「無断転貸」主張への反論。相手方が提出した録音データや設備搬入の経緯に対しては、関係会社の関与について事前に説明していた事実経過を丁寧に整理し、「隠れて転貸しようとした」という評価が成り立たないことを主張しました。言った言わないの水掛け論に陥らせず、説明の事実を裏づける客観的な経過で反論することを徹底しました。
裁判所の心証を見極めた和解戦略。審理の進行に伴い、当方の債務不履行は認められないという心証が示される一方、敷金の返還には裁判所も慎重な姿勢を見せる場面がありました。ここで「当方に契約終了の責任がないのであれば、敷金返還が否定される理由はない」と一貫して主張し、尋問・控訴審まで進んだ場合のリスクとあわせて依頼者に選択肢を提示。経営判断として最も利益の大きいラインで和解をまとめました。
⑤ 結果
- 相手方からの900万円台の損害賠償請求を支払いゼロで退けた
- 逆に、相手方から依頼者へ300万円台の解決金を支払わせる内容で訴訟上の和解が成立
- 請求された側から解決金を受け取る側への逆転により、経済的利益は1,000万円台
- 解決までの期間:約1年4ヶ月
依頼者とは良好な関係のまま事件を終結し、将来の別事業でのご相談も示唆されるかたちとなりました。
⑥ 担当弁護士のコメント(和氣良浩・代表弁護士)
事業用の賃貸借では、契約書が貸主側に有利な建て付けになっていることが少なくありません。訴えられた側だからといって、防御だけで終わらせる必要はないのです。本件では、反訴によって攻守を逆転させ、相手方に有利な違約金条項を逆にこちらの武器として使う構成を取りました。不利な証拠を出されたときこそ、事実経過を丁寧に積み上げて評価を争うこと。そして、裁判所の心証を見極めながら、経営として最も合理的な着地点を経営者と一緒に判断すること。この2つが逆転解決の鍵だったと考えています。
⑦ 関連リンク
- 契約法務・契約書トラブルの相談窓口(契約法務ハブ)
- 賃貸借契約を途中解除されたら・されそうになったら【弁護士解説】
- 賃貸契約解除通知書が届いたときの対応|借主・貸主の法的手順と立退料・原状回復の基礎【弁護士解説】
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※本事例は当時の個別事情に基づく解決例であり、結果を保証するものではありません。