交通事故における休業補償とは仕事中の事故による怪我で働けなかった間の収入を労災保険から補償するものです。そのため、休んでいない場合は受け取ることが出来ません。
仕事中の事故で休業した場合の補償の内訳
▶ 労災保険から休業補償として60%
▶ 労災保険から休業特別支給金として20%
▶ 加害者から休業損害として40%
上記のように、勤務中に事故に遭った場合は休業補償と休業損害、特別支給金を合わせて、給料の120%が補償されます。仕事中ではなく、プライベートな時間で事故に遭った場合は加害者に休業損害として給料の100%を請求します。
それでは、「休業補償」と「休業損害」について、詳しく解説して参ります。
休業補償や休業損害と間違われやすい賠償金の中に「逸失利益」というものがあります。どちらも減った収入に対する賠償金ですが休業補償と休業損害は仕事を休んだ分の収入を補填するものであり、逸失利益は事故によって失われた将来の収入を補填するものです。
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休業補償の特徴
休業補償は政府労災保険から支払われる、失った収入に対する補償です。
被害者が勤務する会社を通じて休業補償を請求します。つまり相手方の加害者との示談交渉とは関係なく請求可能です。
政府労災保険の休業補償は、下記3点を充足している必要があります。
- 業務中か通勤中に発生したケガや疾病による療養であること
- 対象の事故により仕事ができない状態であること
- 会社から給与や賞与などの賃金をもらっていないこと
対象の保険は「政府労災保険」
政府労災保険は雇用主が必ず契約しなければならない国の労災保険で、業務中の労災事故などを補償します。休業補償も政府労災保険の一つの補償であり、国から支払われます。
対象事故は業務中と通勤途中の交通事故
政府労災保険は、業務中や出退勤などの通勤途中に発生した事故のみが補償対象です。
休業補償は交通事故で仕事を休み、収入が減った場合に請求可能です。
対象者は給与所得者(会社員、パート・アルバイトなど)
政府労災保険の休業補償の対象者は、給与所得者といわれる会社員、パートやアルバイトなどです。原則、経営者や自営業者は対象外ですが、建設業などの一人親方が加入するケースが多い「特別加入制度」を通じて休業補償を請求できる場合があります。
過失割合による増減や支払い上限はなし
政府労災保険は相手方との示談交渉に一切関係なく支払われる保険です。よって加害者と被害者の過失割合で支払額は増減しません。また休業補償の支払額に上限もありません。
有給休暇の補償は対象外
政府労災保険の休業補償は、会社を休んがことで失った収入を補償するものです。つまり、会社を休んで賃金をもらっている有給は補償対象外です。
主婦・主夫は休業補償を受け取ることが出来ない
休業補償は労災保険から支払われるため、労働者ではない主婦・主夫は受け取ることが出来ません。
一方で休業損害であれば主婦・主夫も受け取ることが出来ます。
休業補償の支払日
休業補償は会社を通じて労働基準監督署に請求・申請を行います。
申請内容に問題が無ければ、申請から1ヵ月程度で受け取ることが出来ます。もし、貯金が無く少しでも早く休業補償を受け取りたい時は会社の担当者に受任者払い制度が利用できないか尋ねてみましょう。
休業補償を貰うために嘘をつくとどうなる?
交通事故で休業補償を多く貰うために嘘をつくと休業補償の打ち切りだけでなく、保険金詐欺にあたる可能性もあります。
怪我の程度や治療内容、通院日数などをキチンと調べた上で休業補償は支払われるため嘘をついてもすぐにばれます。
それどころか本来であれば受け取れたはずの治療費や慰謝料なども減ってしまう可能性があるため、絶対にやめましょう。
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休業補償の計算方法
休業補償は「給付基礎日額の60%×対象日数」で計算します。
分かりやすく言い換えると「給料の6割×仕事を休んだ日数」が大体の休業補償の金額です。
給付基礎日額=事故発生日または診断日前3ヶ月間の賃金総額÷当該3ヶ月間の総日数
詳しい解説
- 給付基礎日額とは事故発生日、または診断日前3ヵ月間の賃金をその期間の総日数で割った金額です。
- 対象日数は休業4日目から治療終了までです。
休業特別支援金
休業特別支援金とは勤務中に事故にあった場合に支払われる「特別支給金」です。
その金額は事故前3ヵ月間の平均賃金の20%です。
これは休業補償の60%とは別に受け取ることが出来るので、二つ合わせて給料の80%を補償してもらうことが出来ます。
「休業補償」と「休業損害」の違い
休業補償と休業損害は両方とも交通事故で収入が減ったときの補償で、言葉も似ているためよく間違われます。
ですが、この二つは支払われる金額や誰が支払うのかなど様々な違いがあるので表にまとめました。
休業補償 | 休業損害 | |
---|---|---|
誰が払うか | 政府労災保険(国) | 加害者の保険 |
対象となる事故 | 通勤を含めた仕事中の事故 | 全ての事故 |
貰える金額 | 給料の60% | 給料100% (※上限等あり) |
過失割合の影響 | 受けない | 受ける |
有給 | 補償されない | 補償される |
主婦・主夫は受け取れるか | 受け取れない | 受け取れる |
いつ貰えるか | 申請から1ヵ月後 | 書類提出から1~2週間 |
貰える期間 | 怪我が治るか症状固定と診断されるまで | 怪我が治るか症状固定と診断されるまで |
これだけ見るとどんな状態でも休業損害を請求した方がいいように思いますが、実際に勤務中に事故に遭った場合は休業補償と休業損害を合わせて給料の100%まで受け取ることが出来るため。
- 仕事中の事故は休業補償と休業損害を合わせて請求
- それ以外の事故は休業損害を請求
となりますが、休業損害は過失割合の影響を受けるため加害者に有利な条件で交渉されると受け取る金額が下がってしまいます。
弁護士を通して示談交渉することで
- ややこしい手続きをしなくて済む
- 正しい過失割合を主張できる
のでおすすめです。
まとめ
勤務中に交通事故の被害にあった場合は労災保険から休業補償として給料の60%が、休業特別支援金として給料の20%が支払われます。
二つ合わせると給料の80%の補償を受けることが出来ます。
一方で休業補償と休業損害を合わせて請求すれば給料の100%の補償に加えて、休業特別支援金の20%を受け取ることが出来るため、最大で給料の120%分の補償を受けることが出来ます。