休業損害とは交通事故の被害で会社を休んだ結果、減ってしまった給料の事です。休業損害は加害者側に請求することが出来ます。
仕事中に発生した事故であれば休業補償を労災保険から受け取る事が出来ますが、プライベートでの事故や労働者でない専業主婦・主夫、学生はこのページで説明する休業損害を加害者に請求することで損失を補填します。
休業損害として請求できる金額は
- 計算に使用する基準
- 仕事を休んだ日数
- 事故前の収入
によって変わります。
専業主婦・主夫は給与等の収入こそありませんが、家事労働を行っている家事従事者です。そのため、事故に遭い家事が出来なくなった場合はその分の休業損害を請求することが出来ます。
また、事故の時に無職であっても働く意思があり、就職できる可能性が高い場合は休業損害を請求できる可能性があります。
基本的には収入の100%を補償してくれますが、被害者に過失があった場合は過失割合に応じて減額されます。
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休業損害の金額は計算基準で異なる
休業損害の金額は計算には次の3つの基準が使われます。
- 自賠責基準
- 任意保険基準
- 弁護士基準(裁判所基準)
自賠責基準が一番低く、弁護士基準が最も高くなります。
自賠責基準で計算した場合の休業損害の金額
自賠責基準での休業損害の計算式は
- 2022年4月1日以降に発生した事故:6,300円×休業日数
- 2022年3月31日までに発生した事故:5,700円×休業日数
となっています。1日あたりの収入が6,300円以上あると証明できれば
実際の収入(19,000円が上限)×休業日数
となります。
任意保険基準で計算した場合の休業損害の金額
保険会社によって多少の違いはありますが
- 会社員の場合:事故前3ヵ月の収入を90日で割った金額×休業日数
- 専業主婦、主夫の場合:6,300円(自賠責基準と同じ金額)×休業日数
で計算されます。
弁護士基準で計算した場合の休業損害の金額
3つの基準の中で最も高くなるのが弁護士基準です。裁判所基準とも呼ばれ過去の判例を基に弁護士が示談交渉をする際に使う基準です。
弁護士基準での休業損害の金額は
基礎収入の1日あたりの金額×休業日数
で計算します。職業ごとの基礎収入1日あたりの金額の求め方も解説します。
会社員(給与所得者)の基礎収入
会社から給料をもらっている会社員の場合の1日当たりの基礎収入は
で計算します。任意保険基準で基礎収入を計算する時は過去3ヵ月の収入を90日で割るのに対し、弁護士基準の場合は実際に働いた日数で割るため休業損害の金額は大きくなります。
専業主婦・主夫の基礎収入
先に述べたように専業主婦・主夫は家事従事者として家事労働を行っているため、休業損害を請求することが出来ます。
その金額は厚生労働省が毎年発表している賃金構造基本統計調査の結果をまとめた賃金センサスに基づいて女性労働者の平均賃金を使って計算します。
令和3年の女性の平均賃金は3,859,400円であるため、専業主婦・主夫の1日当たりの基礎収入額は
となります。
任意保険基準で計算すると1日当たりの基礎収入は自賠責と同じ6,300円なので弁護士基準で計算すると約1.5倍増額することになります。
個人事業主、フリーランスの基礎収入
個人事業主、フリーランスの場合は収入に加えて事業にかかる費用も基礎収入として計算して休業損害として請求することが出来ます。
会社員と違い、収入に波があるため計算式は
となります。
取締役などの会社役員
会社役員は給料を役員報酬という形で受け取るのですが、この役員報酬は金銭以外の経済的利益をもたらすもので支払われることがあります。
例えば、報酬として自社の株を貰っていてその配当金がある場合、その分の収入は事故によって減らないので休業損害として請求することは出来ません。
休業損害の特徴
休業損害は加害者に請求できる事故によって失った収入です。自賠責保険や任意保険から支払われますので、相手方の保険会社に請求します。
対象の保険は「自賠責保険」と「任意保険」
相手方が任意保険に加入している場合は、任意保険会社が自賠責保険部分も含めて一括で窓口になってくれます。
一方、相手方が任意保険未加入の場合、休業損害は「被害者請求」という方式で、被害者が直接相手方の自賠責保険会社に請求しなければならないケースがあります。
対象事故は、交通事故による人身事故すべて
政府労災保険の休業補償の場合は、仕事中や通勤中に生じた事故のみが対象でした。
例えば、仕事以外のプライベート時間中に発生した交通事故は補償対象外です。
しかし任意保険などの休業損害はプライベート時間中の交通事故の休業損害も対象です。
対象者は交通事故による休業で収入が減少している人全て
休業損害は、交通事故による休業で収入が減少した場合の補償です。よって政府労災保険の被保険者である会社員やパートなどに限定されることなく、実際に交通事故による休業で収入が減少している方は全て対象になります。
過失割合による増減あり、支払い上限あり
政府労災保険とは異なり、休業損害は相手方の保険会社に請求します。ですので、示談交渉での過失割合次第で休業損害のもらえる金額は増減します。なお、自賠責保険では支払い上限が120万(治療費や慰謝料含む)です。
有給休暇の補償は対象
一方、休業損害は有給休暇は補償の対象です。有給休暇には財産的な価値があると考えられており、交通事故以外の他の用件で有給休暇を取得できたのに、交通事故で有給休暇を取得して会社を休まざるを得なかったのであれば、その財産的価値の補償が必要と考えられるからです。
休業損害の支払日
休業損害は休業損害証明書を提出してから1~2週間程度で受け取ることが出来ます。
保険会社から休業損害の打ち切りを言ってきた場合の対処方法
ケガの具合、特に交通事故でむち打ちになった場合、事故日から約3ヶ月経過した前後で、突然、保険会社から休業損害の打ち切りを言ってくるケースがあります。
まず、くれぐれも相手方の保険会社のいうとおりに、打ち切りを了承しないでください。
事故日から約3か月というのは、法的な根拠は全くありません。
休業補償と休業損害の併用は可能?
そもそも、休業補償と休業損害を併用でもらえるのか、また事故別に休業補償と休業損害の分類についての考え方を解説します。
プライベート時間中の交通事故は休業損害一択!
紹介しましたとおり、プライベート時間中の交通事故の休業については、自賠責保険・任意保険の休業損害のみ対象です。政府労災保険の休業補償は、仕事中もしくは通勤中に発生した交通事故による休業の場合に限られます。
また、政府労災保険では、被害者が会社を通じて請求して、認定(労災支給決定通知)されて初めて休業補償がもらえます。請求しても全てが労災認定されるとは限りません。
仕事中もしくは通勤中の交通事故は休業補償と休業損害の二択!
仕事中もしくは通勤中の交通事故は休業補償と休業損害の両方とも対象になります。
では、休業補償と休業損害はどちらを請求するのがいいのか、あるいは併用できるのでしょうか。その前に休業に関わる補償について、もう一度整理します。
政府労災保険は、休業補償以外に「休業特別支援金」という給付金があります。つまり、休業に関する補償は下記の3つが対象になります。
- 政府労災保険の休業補償(補償割合60%)
- 自賠責保険もしくは任意保険の休業損害(補償割合100%)
- 政府労災保険の休業特別支援金(補償割合20%)
ご存じの方もいらっしゃると思いますが、労災事故の休業補償は補償割合80%といわれているのは、上記①と③を請求することで合計補償割合80%になっているわけです。
休業損害+休業特別支援金の請求(合計補償割合120%)は可能!
政府労災保険の休業補償と、任意保険などの休業損害を重複して受け取ることは出来ません。
理由は、双方とも休業に関する補償という性質が同じだからです。
一方で、休業特別支援金は「福祉」という観点で設定されている労災保険の9つの「特別支援金」の一つですので、休業損害と休業補償とは性質が異なります。
そのため、事故の被害で休業した時の損害は・・・・
- 仕事中の事故の場合:休業補償(60%)+休業損害(40%)+休業特別支援金(20%)=120%
- 仕事中以外の事故の場合:休業損害(100%)+休業特別支援金(20%)=120%
このように適切に制度を利用することで事故前の収入の120%を受け取ることが出来ます。
一方で休業損害は過失割合の影響を受けて金額が変わるので注意が必要です。
休業損害と過失割合
過失割合は事故の原因が被害者と加害者のそれぞれにどれくらいあるかを表すもので、「9:1」「7:3」というように表します。過失割合が大きい方が加害者、小さい方が被害者です。
休業損害を含め、交通事故の賠償金は過失割合で大きく変わります。
仮に、休業損害が100万円だったとすると
- 過失割合が9:1の場合:被害者が受け取るのは90万円
- 過失割合が7:3の場合:被害者が受け取るのは70万円
加害者側の保険会社は被害者に不利な過失割合を主張してくるため、弁護士に相談することをオススメします。