交通事故によってケガをした場合、相手方の保険会社と治療費や慰謝料などの賠償金をめぐって示談交渉が行われます。
90%近くは示談が成立するのですが、相手の主張にどうしても納得がいかない、話し合いで解決できない場合は最終的に裁判を起こすことになります。
そこで今回は交通事故の裁判の流れや、裁判するメリットとデメリットなど、注意すべきポイントをわかりやすく解説します。ぜひ参考にしてみてください。
記事のポイント
- 交通事故の裁判にかかる費用は訴訟額によって変わる
- 交通事故の裁判は1年~1年半程度で終わることが多い
- 交通事故で裁判になるケースは多くない

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交通事故裁判の流れ
まずは、裁判を起こしてから判決が出るまでの流れを説明します。
裁判所に訴状を提出
裁判は、裁判所へ訴状を提出するところからスタートします。
訴状を裁判所に提出し訴えた人が「原告」といい、逆に訴えられた人が「被告」です。
交通事故の被害者が訴える裁判は、原告は被害者、被告は加害者です。

訴状は損害賠償を求める金額が140万円以下の場合は簡易裁判所、140万円を超える場合は地方裁判所に提出します。
訴状を提出する際、記載している内容をが正しいことを証明するために証拠となる書類を添えて提出します。
主な証拠書類は、
- 交通事故証明書
- 診断書、後遺障害診断書
- 治療費の領収証や明細書
- 源泉徴収票などの収入証明書
- 休業損害証明書
などです。
口頭弁論と証拠提出
裁判所に訴状提出後、1ヶ月~2ヶ月以内に裁判がスタートします。このスタートが第1回口頭弁論期日といわれています。
第1回口頭弁論期日では
- 原告(被害者)が提出した訴状の内容
- 被告(加害者)の訴状へ対する意見や反論である答弁書の内容
- 提出された証拠
の確認を行います。
その後、1ヶ月に1回ぐらいのペースで口頭弁論が開催されます。
原告と被告双方からの主張や反論を記載した書面や証拠になる書類を提出していきながら裁判は進んでいきます。
口頭弁論を行い、原告と被告が自分の主張が正しいことを裁判官に訴えるわけです。
和解協議
ある程度の回数、口頭弁論が繰り返されると、原告と被告双方からの主張や証拠が出尽くします。
これぐらいのタイミングで、裁判所から和解案が提示されるケースが多いです。
裁判官から和解案が提示されることを、「和解勧告」あるいは「和解の勧試」といわれています。
原告か被告のどちらか一方から和解案が提示されるケースも稀にありますが、和解案の多くは裁判官から提示されます。
交通事故の和解案ではそれぞれ損害明細など具体的な金額と根拠が示されることが多く、原告と被告双方が合意できれば和解が成立して和解の内容が記載された和解調書が作成され裁判は終了します。
和解が成立すれば裁判が終了するのでメリットは大きいですが、和解案を受け入れるかどうかは慎重に検討しなければなりません。
検討するポイントとしては、
- 和解案の金額に納得できるか。特に、裁判による判決見込額と比較してどうなのか。
- 和解の場合、裁判費用は各自の負担になるが問題ないか。
- 裁判を継続する場合は追加費用がどのくらいかかるか。
- 裁判を継続する場合、時間的コスト、また尋問等の精神的ストレスに耐えられるか
このあたりを総合的に考えて、判断しなければなりません。
証人尋問・当事者尋問
もし提示された和解案に原告と被告のどちらかが納得せず、和解が成立しなかった場合は口頭弁論が再開されます。
主張や証拠書類などはある程度出し尽くしているので、関係者や本人に直接話を聞く証人尋問や本人尋問が行われます。尋問の前に、証人や本人は尋問で立証する事実を陳述書として提出します。
- 証人尋問:事故の目撃者や治療した担当医師などが出廷し、質問に回答
- 本人尋問:原告本人、被告本人が質問に回答(当事者尋問とも呼ばれる)
尋問は証人や本人が作成した陳述書をもとに、自分の弁護士から質問に答える主尋問と、相手の弁護士からの質問に答える反対尋問が交互に実施されていきます。
- 主尋問:原告側の弁護士が原告側指定の証人に対して質問するなどです。
- 反対尋問:被告側の弁護士が原告側指定の証人に対して、証言の矛盾を指摘するなどです。
- 補充尋問:主尋問や反対尋問に加えて、裁判官が質問します。
再度の和解協議
尋問の全てが終了した段階で、改めて和解案が提示されるケースがあります。判決の直前になりますので、前述のとおり和解案を受け入れるかどうかをより慎重に検討する必要があります。
判決
判決言い渡し期日が指定されて判決が出ます。期日後に判決書が郵送されてくるのが一般的です。
判決書が送達されてから2週間で判決が確定します。判決が確定すると、内容に不満があることを伝える「不服申立て」をすることができなくなります。そのため、当事者としては、判決内容に納得するかどうかを、判決書が送られて来てから2週間以内に検討しなければなりません。
不服申立て
もし判決内容に納得できなければ、不服申立てをすることができます。
不服申し立ては行うタイミングによって呼び方が変わります。
第一審に対して行う場合は控訴、第二審に対して行う場合は上告、と呼びます。
控訴
第一審に対する不服申立てを控訴といいます。第一審の裁判所ごとに、
- 簡易裁判所→地方裁判所
- 地方裁判所→高等裁判所
に、控訴します。
上告
第二審に対する不服申立てを上告といいます。
上告できるのは憲法違反、法令違反、判例違反、重大な事実誤認などの場合に限られています。
第二審の裁判所ごとに、
- 地方裁判所→高等裁判所
- 高等裁判所→最高裁判所
に、上告します。
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交通事故裁判のメリット
交通事故の裁判を起こすかどうかを決断する際、裁判をするメリットとデメリットを適切に把握しておく必要があります。では、裁判するメリットから解説します。
最も多くの賠償金がもらえる
一番のメリットとして、最も多くの賠償金がもらえる可能性がある点です。裁判基準といわれている最も高額な基準に従って慰謝料などを計算し賠償金がもらえます。
また、保険会社とは違い、最も中立的な立場になる裁判所の判断を得ることができます。
示談の現場では、あまりにも理不尽な保険会社による主張は確かにあります。
保険会社の担当者は数多くの示談交渉をこなしているプロではありますが、全てにおいて適切な損害賠償金を算出し示談代行しているのではありません。
裁判によって保険会社から提示されていた損害賠償金を大きく上回る支払いを命じる判決がでる可能性があるのです。
では、裁判基準を含む三つの交通事故の慰謝料についての基準を簡単に解説します。
遅延損害金や訴訟費用の一部がもらえる
遅延損害金とは損害賠償金にかかる利息と考えて下さい。本来、交通事故発生日から実際の支払日まで損害賠償金支払いが遅延したことになり、その賠償として支払われます。
遅延損害金の計算方法は下記のとおりです。
遅延損害金=判決での損害賠償金×法定利率(年3%)×事故発生日から判決までの日数/365
令和2年3月31日以前の交通事故は年5%の法定利率
なお、法定利率は3年に一度見直されます。
また、印紙代や郵便切手代などの訴訟費用、弁護士費用の一部を相手方に請求できます。
損害賠償金の10%程度を上乗せし、訴訟費用という費目で加害者に請求するながれです。
交通事故の紛争を必ず解決できる
交通事故発生後、示談交渉から相手方の保険会社と長期間にわたって紛争になっているはずですが、裁判が終われば紛争は必ず解決されます。
また、裁判と示談の大きな違いとして、示談は加害者と被害者双方の合意がなければなりませんが、裁判は合意の有無にかかわらず紛争は解決できます。
裁判における判決やまた裁判官などからの和解案の合意に関しても、万一、相手方が支払わない場合には、その判決や和解に基づき相手方の財産に対して強制執行可能です。

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交通事故裁判のデメリット
裁判するメリットがある一方、デメリットもあります。
解決まで長期間かかる
交通事故の裁判は通常1年~1年半はかかります。さらに事案によってはそれ以上の時間がかかるケースもあり、解決に至るまでには長期間かかってしまいます。
弁護士との打ち合わせや出廷などの手間がかかる
裁判期間中は弁護士と打ち合わせを何回もしなければなりませんし、また、原則、裁判所へは弁護士が代理人で出廷しますが、本人証言が求められる場合は出廷の必要があります。
裁判費用がかかる
裁判は訴訟費用がかかり、弁護士費用もかかります。先ほど説明したとおり、認容額の10%程度を加害者に負担させることができますが、それを超える費用は被害者が負担しなければなりません。
賠償金が減ってしまうリスクあり
示談では、加害者と被害者双方の合意があれば成立しますので、お互いの妥協点を探って示談合意するケースがあります。
一方で裁判を行った場合は第三者である裁判所が判決を出しますので、こちらの望んだ賠償金額より低い額になってしまう可能性があります。
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裁判にかかる費用
裁判する場合、主に裁判所に支払う手数料と弁護士に支払う弁護士費用があります。
裁判所へ支払う手数料
裁判手続を利用する際、裁判所に納付する手数料は下記の通りです。
請求金額に応じて、下記で計算した金額になります。
- 訴訟の目的の価額が100万円までの部分
→その価額10万円までごとに1,000円- 訴訟の目的の価額が100万円を超え500万円までの部分
→その価額20万円までごとに1,000円- 訴訟の目的の価額が500万円を超え1000万円までの部分
→その価額50万円までごとに2,000円- 訴訟の目的の価額が1000万円を超え10億円までの部分
→その価額100万円までごとに3,000円引用元:最高裁判所
弁護士費用
弁護士費用は、主な着手金、報酬金、日当などがあります。
前述のとおり、裁判で勝訴すると、損害認定額の10%程度を請求可能です。
また皆さんが加入している自動車保険には、弁護士費用を保険会社が支払う「弁護士費用特約」が付帯されている可能性があるので、一度確認してみてください。
裁判で勝つために重要な3つの準備
交通事故の裁判では、事実認定に必要な客観的証拠の有無で結論が大きく変わります。提訴前に以下3点を整えておくことで、勝訴可能性と賠償額を最大化できます。
準備1:医療記録・診断書の体系的整理
カルテ、診療明細、画像(レントゲン・MRI)、後遺障害診断書を時系列で整理します。後遺障害等級認定を受けている場合は、自賠責調査事務所の認定理由書も含めて主張立証の核となります。治療経過の継続性が認められると、慰謝料・逸失利益の認定に有利に働きます。
準備2:過失割合を裏付ける物証
ドライブレコーダー映像、防犯カメラ映像、現場写真、目撃者の連絡先、警察作成の実況見分調書(人身事故の場合)が決定打になります。過失割合が10%変動するだけで賠償額が数百万円単位で変わるケースも珍しくありません。提訴前に証拠保全申立てを行うことで、加害者側に証拠隠滅の機会を与えない工夫も有効です。
準備3:休業損害・逸失利益を裏付ける収入資料
給与明細・源泉徴収票・確定申告書(自営業者)・会社の休業証明書を3年分程度は揃えます。事故前の収入実績が高いほど休業損害・逸失利益が大きく算定されます。家事従事者の場合は賃金センサスに基づく計算が認められるため、家族構成・家事の実態を示す資料も併せて整理します。
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裁判か示談か?判断基準と相談すべきタイミング
交通事故の解決手段は「示談(任意交渉)」「ADR(交通事故紛争処理センター等)」「訴訟(裁判)」の3つに大別されます。それぞれの特性を踏まえ、案件に応じた選択が重要です。
示談が向いているのは、(1)後遺障害が残らない軽傷ケース、(2)過失割合に争いがない事案、(3)保険会社の提示額が裁判基準(赤い本基準)と大きく乖離していない場合です。これらの条件下では、示談で迅速に解決する方が経済的合理性に勝ります。
裁判が向いているのは、(1)後遺障害が残った重傷案件、(2)過失割合に争いがある事案、(3)保険会社の提示額が裁判基準と大きく乖離している場合、(4)休業損害・逸失利益で大幅な争いがある場合です。これらでは、裁判によって賠償額が数百万円〜数千万円単位で増額するケースが少なくありません。
弁護士への相談タイミングは「示談提示を受けた時点」が基本です。それ以前から相談しておくとなお有利で、後遺障害等級認定の段階から弁護士が関与することで、適正な等級獲得・適正な賠償額確保につながります。
判決・和解後の入金スケジュール
判決確定または和解成立後、加害者の保険会社からの賠償金支払いまでの一般的な流れは以下のとおりです。
判決の場合:判決言渡し → 控訴期間(2週間)経過で確定 → 確定証明書取得 → 保険会社に提出 → 通常2週間〜1か月以内に振込。
和解の場合:和解調書受領 → 保険会社に提出 → 通常1〜2週間で振込。和解の方が判決より入金が早く、不服申立てリスクもないため、有利な条件であれば和解を選択することが多くあります。
振込が遅れる場合や、加害者が任意保険未加入で資力に問題がある場合には、強制執行(給与差押え・預金差押え)の手続きが必要となることもあります。判決取得=必ず満額入金とは限らないため、相手方の資力調査も並行して行うことが実務上は重要です。
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交通事故裁判に関するよくある質問
Q. 弁護士費用特約があれば自己負担なしで裁判できますか?
弁護士費用特約(多くの自動車保険・火災保険・個人賠償特約に付帯)があれば、概ね300万円までの弁護士費用が保険から支払われます。実費負担なしで提訴できるため、賠償額が増額する見込みのある案件では、特約を最大限活用することをおすすめします。
Q. 出廷は毎回必要ですか?
原告本人の出廷は、本人尋問の期日(1回程度)に限られるのが通常です。それ以外の期日は弁護士が代理出廷するため、仕事や治療を理由に欠席しても訴訟進行に支障はありません。
Q. 裁判中に和解することはできますか?
裁判の途中でも、両当事者が合意すればいつでも和解できます。むしろ、争点整理が進んだ段階で裁判官から和解勧告がなされ、判決前に和解で終結するケースが過半数を占めます。判決を待つより早期解決を望む場合の柔軟な選択肢として活用されます。
まとめ
交通事故で裁判を起こす場合、煩雑な作業がたくさんあります。
また裁判においては相手方と損害賠償金をめぐって争いますので、立証資料や論点の整理など、緻密に準備する必要があります。
示談交渉が不調に終わり、裁判することを視野に入れていらっしゃる方はぜひ弁護士にご相談ください。
裁判に関することだけではなく、ご相談者さまの交通事故に関するさまざまな疑問点にお応えし、適正な補償が受けられるようにサポートします。








