業務中や通勤中に労働災害に遭ったとき、予想もしていなかった事態に「会社や保険からはどのような補償が受けられるのか」「どこに相談したらよいのか」と不安になる方もいるのではないでしょうか。
また、労災で給付を受けるには、自身で労働基準監督署へ書類を提出する必要があります。給付ごとに必要書類が異なり、医師の診断書が必要な場合もあるため、専門的な知識を持つ人の力を借りたいと思うこともあるかもしれません。
この記事では、労災保険の給付の種類や申請の流れ、お悩みごとに適した相談先や準備しておくとよいものなどを解説します。
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労災保険で受けられる給付
労災保険で労働者(被災者)が受け取れる主な給付には、以下のものがあります。
補償の種類 | 内容 |
---|---|
療養(補償)等給付 | 支払った治療費の還付金 |
休業(補償)等給付 | 療養のため休業し賃金が支払われないときに、休業日数などに応じて支給される給付金 |
傷病(補償)等年金 | 療養開始から1年6か月経過しても治ゆ(症状固定)しない場合などに支払われる年金 |
障害(補償)等給付 | 所定の障害が残ったとき、程度に応じて支給される年金または一時金 |
介護(補償)等給付 | 障害年金や傷病年金の受給者のうち、所定の介護を受けている人に支給される給付金 |
遺族(補償)等給付 | 労災で死亡した場合、遺族に支給される年金または一時金 |
葬祭料等 | 労災で死亡した場合、葬儀を行う者などに支給される一時金 |
このほか、労災保険には「義肢等補装具費」「労災就学援護費」「休業補償特別援護金」など、社会復帰促進や被災者家族を支援する制度もあります。詳しくは厚生労働省のサイトページをご覧ください。
参考:「労災保険給付の概要」p.8 厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署
労災が起こったら?申請の流れ
労災が発生したら、どのような流れで申請を進めていくとよいのでしょうか。ここでは休業(補償)給付を例に、申請の流れを簡単に説明します。
1.会社に労災発生を報告 2.労働基準監督署へ給付の請求書を提出 3.労働基準監督署の調査後、労災認定 4.保険給付の支払い |
労災が発生して労働者が休業・死亡した場合は、まず会社に報告した上で、医療機関で治療を受けます。
会社への報告の際には、
●労働災害の発生した時刻や場所
●どんな状況で事故が発生したか
を具体的に報告しましょう。
労災保険の給付申請は、基本的に労働者自身が行う必要があります。給付ごとに所定の保険給付の請求書を労働基準監督署に提出しましょう。
申請から認定までは通常1カ月ほどですが、内容によっては3・4カ月、業務との因果関係が不明瞭な場合はさらに時間を要するケースもあります。認定までの期間が長引くと給付の開始も遅れるので、スムーズに申請が通るよう、事前の準備が重要です。
具体的な申請の流れや給付の種類ごとに必要な書類については、こちらの記事で詳しくご紹介しています。
【関連記事】労災申請の流れと手続きの注意点を弁護士が詳しく解説!
会社の義務
会社は労働者が休業または死亡した場合に、労働基準監督署へ「労働者死傷病報告(様式23号または様式24号)」を提出しなければなりません。仮に労災保険を使わない場合でも、提出を怠ると「労災かくし」として50万円以下の罰金が科されることがあります。
また、会社には労働者が労災保険の給付を受けることができるよう、必要な証明など、手続きに協力する義務があります。
労災についての相談先一覧
労災が発生したときは、労働者(被災者)自身が申請を進める、もしくは会社の人事労務担当者が代行するのが一般的です。しかし、労災に該当するかわからない場合や会社が労災を認めない場合には、外部に相談したいという方もいるでしょう。
労災についての主な相談先には、以下が挙げられます。
●弁護士
●労働基準監督署
●労災保険相談ダイヤル
●総合労働相談コーナー
●社会保険労務士
それぞれについて詳しく見ていきましょう。
弁護士
弁護士は、法律相談や和解・示談交渉、訴訟などを行う、法律の専門家です。労災に遭い「会社の対応に疑問を感じるとき」や「会社との交渉を検討しているとき」は、弁護士に相談しましょう。
特に、後遺症が残った場合や、会社に慰謝料や損害賠償を請求したい場合は、医学的・法的に高度な専門知識が必要であり、適切な賠償金を請求するためには、労災の証拠を集めて会社と交渉する必要があるからです。被災した労働者がこれら全てに対応するのは困難でしょう。
労災保険給付や損害賠償請求には時効があるため、労災専門の弁護士へ早めに相談することをおすすめします。
労働基準監督署
労働基準監督署は、管轄内の事業所が労働関係法令を守って運用しているかを監督する機関です。労災保険の給付申請は会社を管轄している労働基準監督署にて行うため、申請に必要な書類や請求書の用紙の記入方法はこちらに聞くとよいでしょう。
労災に関する相談も労働基準監督署で受け付けており、労災保険について不明な点や、調査結果に不服・疑問がある場合なども、労働基準監督署に相談できます。
相談費用が無料であることもメリットなので、困ったことがある場合には遠慮せずに利用しましょう。
労災保険相談ダイヤル
「労災保険相談ダイヤル」とは、厚生労働省委託事業である労災に関する電話専用の相談窓口です。労働者と事業主、双方の相談を受け付けており、個別事案の照会などを除く一般的な相談に応じています。
利用は通話料のみで、相談料はなし。心配ごとが発生した場合はひとまずこちらに電話してみるのもよいでしょう。ただし、一部の電話からは利用できないことがあります。
電話番号:0570-006031(ナビダイヤル) 受付時間:毎週月曜日~金曜日 9:00~17:00 土・日・祝日、年末年始は休み |
参考:「労災保険相談ダイヤル」厚生労働省
総合労働相談コーナー
厚生労働省の下部組織として、各都道府県の労働局・労働基準監督署内に設置されているのが「総合労働相談コーナー」です。解雇や配置転換など労働条件に関する相談や、いじめ・パワハラ・嫌がらせなどさまざまな労働問題について、労働者および事業主からの相談を受け付けています。
こちらは情報提供や解決のための助言・提案を行う機関なので、労働基準監督署のように直接介入することはできません。ただし法律違反が疑われる場合には労働基準監督署へ取り次ぐなど必要に応じて相談先を紹介してもらえるので「どこに相談したらいいか分からない」というときに役立ちます。
予約制ではありませんが、専門の相談員が不在の日時もあるため、念のため連絡してから行くとよいでしょう。
参考:「総合労働相談コーナーのご案内」厚生労働省
社会保険労務士
社会保険労務士(社労士)とは、国家資格を持つ、労働・社会保険の専門家です。取り扱う業務は幅広く、労働および社会保障に関する書類作成の代行も社労士の業務のため、給付金の請求書作成について相談できます。
また、労働者は労働基準監督署の判断に不服がある場合は審査請求を行えますが、この審査請求に必要な書類の作成も、社労士に依頼可能です。
ただし、社労士が行うことができるのは労災申請のための書類作成のみで、問題解決のために介入することはできないことに注意しましょう。
【ケース別】迷ったらここに相談しよう
労災についてどのようなことで迷っているのか、内容によって相談先も異なります。代表的な3つのケースを紹介しますので、参考にしてください。
会社に損害賠償を請求したい|弁護士
労災保険の給付では休業損害の全額の補償を受けることができず、入院や後遺症による慰謝料や損害賠償なども労災保険から支払われません。それらの不足する部分は、会社に損害賠償請求をする必要があります。
労働契約法第5条により、会社(事業主)には労働者の生命・身体などの安全に配慮することが義務付けられています。安全配慮義務違反や民法上の不法行為責任などに基づき、会社(事業主)等に対して損害賠償を求めていく方法があります。
任意で会社に損害賠償金を請求するには、通常、証拠を集めて会社と交渉する必要があります。労働者自身で主張・立証するのは難しく、時には裁判に発展することもあるため、損害賠償については弁護士に相談しましょう。
【関連記事】労災保険外の損害は会社に請求!損害賠償について法律事務所が解説
後遺症(後遺障害)が残った|弁護士
労災で後遺症が残り、厚生労働省が定める障害の等級に該当すると判断された場合は、労災保険から後遺障害の程度に応じて年金や一時金の支給を受けることができます。受け取れる金額は障害の等級によって異なり、不支給と判断される恐れもあるため、適切な等級で障害(補償)等給付を受けるには、労災に詳しい弁護士へ相談するのがおすすめです。
また、後遺症により減少した収入の全てについて労災保険から補償を受けることは通常できないため、「後遺障害逸失利益」として会社に損害賠償請求を行うことが可能です。逸失利益のほかに後遺障害慰謝料も請求可能なので、会社と交渉していくために、労災問題解決に実績のある弁護士に相談しましょう。
書類作成で不安がある|社労士・弁護士
「書類の記載内容で不安がある」「会社が労災申請に協力的でない」「労災後に退職している」などの理由で会社に書類作成を頼みにくい場合は、社会保険労務士(社労士)に相談するのもよいでしょう。
労災保険の給付を請求するには、最初の申請で不備なく書類を提出することが重要です。書類に不備があると、訂正が必要で補償の受け取りが遅れる、不支給と判断されるなどの恐れがあるからです。労働基準監督署の決定に不服がある場合は審査請求が可能ですが、実際に決定を覆すのは困難という事情もあります。
社労士に書類作成・申請の代行を依頼することで不備のない書類を作成してくれる可能性が高まるため、給付が不支給となるリスクを軽減できます。
ただし社労士に依頼できるのは手続きの代行のみで、示談交渉などの法律行為は依頼できません。労災の書類作成は弁護士も行えるため、会社に慰謝料や損害賠償の請求を検討している場合は、書類作成の段階から弁護士に相談するとよいでしょう。
労災の申請は「時効」に注意
労災の申請には「時効」があり、期日を過ぎると請求権が消滅します(労働者災害補償保険法42条1項)。給付の種類によって時効までの期間と起算日(期間の計算を開始する日)が異なるため、注意しましょう。
給付の種類 | 時効期間 | 時効の起算日 |
---|---|---|
療養(補償)等給付 | 2年間 | 療養の費用を支払った日ごとにその翌日 |
休業(補償)等給付 | 2年間 | 賃金を受けない日ごとにその翌日 |
介護(補償)等給付 | 2年間 | 介護を受けた月の翌月1日 |
葬祭料(葬祭給付) | 2年間 | 被災労働者が亡くなった日の翌日 |
障害(補償)等給付 | 5年間 | 傷病が治ゆした日の翌日 |
遺族(補償)等給付 | 5年間 | 被災労働者が亡くなった日の翌日 |
なお、時効で消滅するのは、労災保険の給付を請求する権利です。労災発生から1年6カ月を経過しても治ゆ(症状固定)しない場合に移行(支給)される「傷病(補償)年金」に時効はありません。
【関連記事】労災手続きの流れは?必要書類から注意点まで弁護士が詳しく解説
労災の相談を行う時に準備するもの
相談の際に準備しておくとよいものは、以下のとおりです。
●労働災害による怪我・疾病の診断書
●会社と締結している労働契約書、雇用契約書、労働条件通知書などの書類
●労災事故前の収入を証明する給与明細など
●作業場の写真など、事故状況の分かる資料
また、事実関係については時間が経つごと記憶が薄れていくことも考えられるため、事故状況や会社とのやりとりについては、録音したりメモにまとめたりしておくことも非常に有用です。
相談は無料!まずは労災に強いブライトへ
労災保険の給付申請にはさまざまな種類があり、必要な書類も給付によって異なります。
労災制度や書類作成に関することは、上述の労災保険相談ダイヤルや社会保険労務士などに相談できますが、慰謝料や損害賠償請求など労災保険制度以外の事項も含む総合的な相談は弁護士が頼りになります。
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