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Amazonセラーアカウント譲渡でアカバンされたときの対処法

この記事でわかること

  • Amazonセラーアカウントの譲渡・売買がなぜ問題になるのか
  • 他のセラーのアカウントを引き継いで運用した後にアカバンされる典型的な原因
  • ポリシー違反でアカウント停止になった場合の具体的な対処ステップ
  • 売上金凍結に対する法的対応の可能性(解決事例3件)
  • アカウント取得前に行うべき法務チェックのポイント

この記事のポイント

  • アカウント売買はAmazon規約違反だが、法律上の問題と規約上の問題は別物
  • 前オーナーの違反履歴が引き継がれ、新オーナーが不当にアカバンされるケースがある
  • 弁護士介入によって凍結売上金の返還交渉が動いた解決事例がある

Amazonでの販売事業を素早く立ち上げようと、既存のセラーアカウントを購入・譲渡を受けた後、突然のアカウント停止(通称「アカバン」)に遭う事業者が後を絶ちません。「自分では規約を守っていたのに」「前のオーナーが何かやらかしていたのかもしれない」――そんな状況でも、適切な対処をしないと売上金の凍結や事業停止が長期化するリスクがあります。本記事では、アカウント譲渡後のポリシー違反によるアカバンの原因と対処法、そして見落とされがちな法的リスクを弁護士の視点から解説します。

目次

他のセラーからアカウントを買ったのに突然アカバン――典型的なトラブルの実態

EC事業の拡大を目的に、実績のあるAmazonセラーアカウントを購入した事業者が、運用開始から数ヶ月後に突然アカウント停止通知を受けるケースが増えています。

停止理由としてよく挙げられるのは次のようなものです。

  • 複数アカウントの保有(前オーナーが別アカウントを保有していたため)
  • アカウントの所有者情報の不一致(名義が旧オーナーのまま)
  • ブランド真正性に関する疑義(前オーナーが使用していた仕入れルートの問題)

Amazonのサポートに問い合わせても「ポリシー違反のため再開できません」という定型文が返ってくるだけで、具体的な違反内容の説明は得られません。売上金は同時に凍結され、事業が突然停止する事態に追い込まれます。このような状況は「自分では違反していない」という事業者にも容赦なく降りかかります。その背景には、Amazonの規約が「アカウントの譲渡・売買」そのものを禁止しているという根本的な問題があります。

Amazonが厳しく禁じる「セラーアカウントの譲渡・売買」

Amazonのセラーアカウントは、登録した個人または法人に帰属するものとして設計されています。Amazon出品者規約では、アカウントを第三者に譲渡すること自体が明確に禁止されています。

アカウントを「購入」した側は、規約上は正規のアカウント保有者とはみなされません。つまり、どれだけ適切に運用していたとしても、アカウントの取得方法自体が規約違反と判断される可能性があります。特に問題になるのが次の点です。

  • 前オーナーの名義が残ったままの状態での出品
  • 前オーナーの銀行口座が振込先として登録されている状態
  • 前オーナーが保有する別のアカウントとIPアドレスや端末情報が一致してしまうケース

こうした状況はいずれも「複数アカウントの疑い」としてAmazonの自動検知システムに引っかかるリスクがあります。

譲渡アカウントで起きやすいポリシー違反の種類

アカウント譲渡後に起きやすいポリシー違反には、大きく分けて次のパターンがあります。

複数アカウント保有の疑い

Amazonは1人(1社)につき1つのセラーアカウントしか保有を認めていません。前オーナーが別のアカウントを持っていた場合、デバイスやIPアドレスの紐付けによって「同一人物の複数アカウント」と判断されることがあります。

出品者情報の不一致

銀行口座情報、住所、電話番号などが前オーナーの情報のまま残っている場合、本人確認の不一致としてフラグが立てられます。

前オーナーの過去の違反履歴の引き継ぎ

前オーナーが過去に苦情や警告を受けていた場合、そのアカウントには「リスクフラグ」が付いており、新オーナーが違反していなくても停止対象になることがあります。

真贋問題の引き継ぎ

前オーナーが特定ブランドとトラブルを抱えていた場合、そのブランドへの出品禁止措置がアカウントに引き継がれていることがあります。

「規約違反だから仕方ない」では済まない法的問題

アカウントが停止された際にAmazonから届くメッセージには「規約違反のため」という文言が使われますが、規約上の判断と法律上の判断は必ずしも一致しません。

特に問題になるのが売上金の凍結です。Amazonはアカウント停止と同時に、それまでの売上金を凍結(留保)することがあります。この売上金は、すでに商品を購入者に届けた取引に対する代金であり、本来はセラーが受け取るべき資金です。

プラットフォームの規約がどう定めていようとも、すでに履行済みの取引に対する代金を無期限に凍結し続けることが法律上も正当かどうかは、別の問題として検討できます。具体的には、不当利得返還請求(民法703条)の観点から、凍結された売上金の返還を求める法的手段が考えられます。実際に弁護士が介入することで、Amazonの対応が「サポートによる定型回答」から「法務部門による個別交渉」に変化するケースが見られます。

アカウント売買に潜む「二重の法的リスク」

Amazonとのポリシー問題に加え、アカウントを売った前オーナーとの間にも法的トラブルが発生するケースがあります。この「二重のリスク」を把握しておくことが、トラブル対応の第一歩です。

前オーナーの口座への売上金振込問題

アカウントに登録された銀行口座が前オーナーのものであった場合、Amazonからの売上金振込先が前オーナーの口座のままになるリスクがあります。前オーナーが適切に送金してくれれば問題ありませんが、連絡が取れなくなったり、送金を拒否されるケースも実際に起きています。

アカウント売買契約の有効性

規約違反であることを知りながらアカウントを売買した場合、その売買契約自体の有効性が問題になることがあります。また、前オーナーが「アカウントに問題がない」と偽って売却していた場合には、詐欺または錯誤による契約取消・損害賠償請求の余地があります。

売上金の帰属をめぐる争い

アカウント停止後、Amazonが凍結した売上金を「誰に返還するか」が争点になることもあります。この場合、法律上の売上金の帰属を明確にする債権譲渡の手続きが事前にとられていたかどうかが重要な鍵になります。

弁護士が関与することで状況が動いた解決事例3件

以下は、いずれもAmazonセラーアカウントの譲渡・売買に起因するアカバントラブルについて、弁護士法人ブライトが対応した事例です。

事例1. 複数アカウント疑いで売上金が凍結(日用品・輸入販売)

日用品・雑貨の輸入販売を手がけるEC事業者が、実績のあるセラーアカウントを前オーナーから購入し、半年ほど運用していたところ、「複数アカウントの疑い」を理由にアカウント停止・売上金凍結に遭いました。

自力でAmazonサポートに改善計画書を提出しましたが、「ポリシー違反の可能性があるため対応できません」という回答が繰り返されるばかり。弁護士法人ブライトが介入し、売上金凍結の法的根拠を問う通知書をAmazonに送付したことで、法務部門が窓口となり交渉が進展。最終的には、凍結されていた売上金の一部返還と、アカウント状態の整理という形で解決に至りました。

事例2. 前オーナーのブランド真正性問題を引き継いで出品停止(アパレル・ブランド品販売)

国内外のアパレルブランド品を扱うEC事業者が、出品実績の豊富なセラーアカウントを入手して運用を始めたところ、「ブランド真正性の確認が必要」という理由で複数ブランドの出品が一斉停止されました。

調査の結果、前オーナーが過去に複数ブランドから真贋問題で警告を受けており、そのフラグがアカウントに残っていたことが判明。新オーナーは正規ルートで仕入れを行っていたにもかかわらず、仕入れ証明書を提出しても審査が通らない状態が続きました。弁護士が前オーナーとの売買契約の問題点を整理し、Amazonへの法的通知と並行して前オーナーへの損害賠償請求を検討することで、交渉が動き出しました。

事例3. 前オーナーが売上金を着服し二重のトラブルに発展(雑貨・転売事業)

雑貨の転売事業を行っていた個人事業主が、個人間取引でセラーアカウントを購入しました。アカウントに登録された銀行口座の変更が完了する前に売上金の振込が発生し、前オーナーの口座に入金されてしまいました。その後、前オーナーとの連絡が途絶え、Amazonサポートへ状況を説明しても「規約上の問題」として対応を拒否されました。

弁護士が介入し、前オーナーへの不当利得返還請求(民法703条)を行うとともに、Amazon側に対して売上金帰属に関する証拠保全と説明を求めました。前オーナーへの内容証明郵便送付と法的手続きの開始を通知したことで、前オーナーから売上金相当額の返還に応じる和解案が提示され、解決に至りました。

アカウント停止後のポリシー違反対応策――やるべきことの優先順位

アカウント停止を受けた後の対応として、まず次のことを確認してください。

STEP 1:停止通知の内容を正確に把握する

Amazon Seller Centralに届いている通知メール・パフォーマンス通知の内容を確認し、具体的な停止理由を把握します。「複数アカウント」「ポリシー違反の疑い」「真贋問題」など、理由によって対応策が変わります。

STEP 2:証拠となる資料を整理する

仕入れ伝票・納品書・輸入証明・商品画像・前オーナーとの取引契約書など、商品の正規性と取引の正当性を証明できる資料を揃えます。

STEP 3:改善計画書(Appeal)を作成する

違反が認められる場合は、具体的な改善策を示した改善計画書(Appeal)を提出します。ただし、アカウント売買に起因する停止の場合、標準的なAppealでは対応が困難なケースが多いです。

STEP 4:法的対応を検討する

サポートへの問い合わせや改善計画書の提出を繰り返しても状況が改善しない場合、または凍結売上金の額が大きい場合は、弁護士への相談を早期に検討することを推奨します。

EC事業を守るためのアカウント取得前の法務チェック

アカウント譲渡・売買のトラブルを防ぐためには、事前の法務的チェックが不可欠です。

デューデリジェンスの実施

アカウントを取得する前に、そのアカウントの過去の違反履歴、停止・警告記録、紐付けられている銀行口座・住所・電話番号を確認します。前オーナーに開示を求め、虚偽があった場合の責任を契約書に明記することが重要です。

正規の法人アカウント移行の検討

個人アカウントの売買ではなく、アカウントを保有する法人の株式または持分を譲り受けるスキームを取ることで、アカウントの法的帰属を変えずに事業を引き継ぐ方法もあります。ただしこの場合も法的リスクが伴うため、弁護士の関与のもとで進めることが重要です。

売上金の債権譲渡手続き

アカウント上の未払い売上金の権利(債権)を明示的に譲渡する手続きを、アカウント取得と同時に取ることで、資金帰属をめぐるトラブルを防ぐことができます。

顧問弁護士による継続的なリスク管理

EC事業は規約変更・プラットフォームの方針変更が頻繁に起きる業種です。法務の専門家を早期から事業に組み込むことが、長期的なリスク管理の鍵となります。

まとめ

  • 他のセラーからAmazonアカウントを購入・譲渡を受けて運用することは、Amazon規約上のリスクを伴う
  • 前オーナーの違反履歴や情報不一致が原因で、新オーナーが不当にアカバンに遭うケースがある
  • ポリシー違反とAmazonに判断されても、売上金凍結が法律上も正当かは別問題として検討できる
  • アカウント売買にはAmazonとのトラブルだけでなく、前オーナーとの民事紛争リスクもある
  • 弁護士介入によって交渉が動き、凍結売上金の返還やアカウント問題の解決に至るケースがある
  • 事前の法務チェックとデューデリジェンスが、EC事業のリスク管理において不可欠

よくある質問:Q&A

Q1. 前のオーナーのせいでアカバンされた場合、Amazonに抗議することはできますか?

停止に正当な理由がなく、凍結された売上金の返還が行われない場合は、法的な観点から対応を検討できる可能性があります。規約違反という評価が必ずしも法律上の正当性を意味するわけではないため、弁護士に相談することをおすすめします。

Q2. アカウント売買は犯罪になりますか?

Amazonの規約違反にはなりますが、アカウント売買それ自体は現行法上の犯罪行為として定義されているわけではありません。ただし、取引の内容によっては詐欺・不正競争防止法違反・商標権侵害などに該当するリスクがあるため、個別に法律の専門家に確認することが重要です。

Q3. 前オーナーの口座に売上金が振り込まれてしまった場合はどうすればよいですか?

まず前オーナーへの送金要求を書面で行い、応じない場合は不当利得返還請求(民法703条)を根拠に法的手続きを取ることが考えられます。早期に弁護士に相談することで、証拠保全や請求の対応をスムーズに進めることができます。

  • この記事を書いた人

笹野 皓平

弁護士法人ブライト パートナー弁護士: あなた自身や周りの方々がよりよい人生を歩んでいくために、また、公正な社会を実現するために、法の専門家としてサポートできることを日々嬉しく感じています。

本記事は、一般的な情報の提供を目的とするものであり、個別案件に関する法的助言を目的とするものではありません。また、情報の正確性、完全性及び適時性を法的に保証するものではありません。
なお、本記事の内容に関する個別の質問や意見などにつきましては、ご対応できかねます。ただし、当該記事の内容に関連して、当事務所へのご相談又はご依頼を具体的に検討されている場合には、この限りではありません。

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顧問弁護士担当弁護士

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    笹野 皓平

    2008年

    京都大学 法学部(Kyoto University Faculty of Law)卒業

    2010年

    司法試験合格・立命館法科大学院修了

    2011年

    弁護士登録(大阪)

    2019年

    大阪弁護士協同組合 総代

    法人向け・個人向けを問わず、幅広い業務に取り組んできました。その場しのぎの単なる助言だけで終わるのではなく、最終的な局面を見据えた「真の問題解決」を目指す姿勢を大切にしています。

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事務所概要

事務所名 弁護士法人 ブライト(大阪弁護士会所属)
開 業 平成21年(代表弁護士独立開業)
設 立 平成24年11月設立、平成27年1月に法人化
所在地 〒530-0057 大阪府大阪市北区曽根崎2丁目6番6号 コウヅキキャピタルウエスト12階
TEL 0120-931-501(受付時間9:00~18:00)
FAX 06-6366-8771
事業内容 法人向け(法律顧問・顧問サービス、経営権紛争、M&A・事業承継、私的整理・破産・民事再生等、契約交渉・契約書作成等、売掛金等の債権保全・回収、経営相談、訴訟等の裁判手続対応、従業員等に関する対応、IT関連のご相談、不動産を巡るトラブルなど)、個人向け(交通事故・労災事故を中心とした損害賠償請求事件、債務整理・破産・再生等、相続、離婚・財産分与等、財産管理等に関する対応、不動産の明渡し等を巡る問題など)

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