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事業譲渡と株式譲渡の違い|売り手・買い手別のメリット・税務インパクト・選択軸を弁護士解説

「会社の事業を売却したいが、事業譲渡と株式譲渡のどちらが良いのか分からない」「買い手側として検討しているが、それぞれの違いを整理したい」——M&Aを検討する経営者から、最も多く寄せられるご相談のひとつです。

このページでは、約120社の顧問契約を担当する弁護士法人ブライトが、事業譲渡と株式譲渡の構造の違い・選択軸・税務インパクト・実務での落とし穴を、売り手・買い手双方の目線で解説します。

事業譲渡と株式譲渡は、見た目は「事業の売買」ですが、法的構造・承継範囲・税務取扱い・スピード・リスク移転の全てで根本的に異なります。スキーム選択を誤ると、想定外の税負担や、引き継いだはずの権利義務が承継できていない事態が発生します。

この記事でわかること

  • 事業譲渡と株式譲渡の法的構造の違い
  • 売り手・買い手それぞれの視点でのメリット・デメリット
  • 税務インパクトの比較(譲渡所得・消費税・繰越欠損金)
  • スキーム選択の判断軸(簿外債務・許認可・従業員・事業規模)
  • 実務での落とし穴と予防策

この記事のポイント

  • 事業譲渡=個別の権利義務を売買、株式譲渡=会社丸ごと売買
  • 事業譲渡は簿外債務リスクを切り離せる代わりに、契約・許認可の個別承諾が必要
  • 株式譲渡はスピードが速い代わりに、潜在債務リスクを買い手が引き受ける

和氣良浩 弁護士

この記事の監修者

和氣 良浩(わけ よしひろ)

弁護士法人ブライト|代表弁護士/パートナー弁護士

弁護士歴20年(2006年登録)/大阪弁護士会/大阪大学法学部卒

専門:顧問弁護士・企業法務・M&A・経営権紛争・事業再生

事業譲渡と株式譲渡の法的構造

事業譲渡とは

事業譲渡は、売り手会社が保有する「事業」を構成する個別の権利義務(資産・負債・契約・知的財産・許認可・人材等)を、買い手側に売買契約により譲渡するスキームです。会社法第467条以下に規定されています。

事業譲渡の本質は「個別承継」です。譲渡対象として何を含め何を含めないかを、契約書の中で具体的に列挙する必要があります。逆に言えば、特定の負債(例えば訴訟係属中の損害賠償債務、税務リスク、潜在的な労務リスク)を除外して譲渡することができます。

株式譲渡とは

株式譲渡は、売り手会社の株主が保有する株式を、買い手側に売買するスキームです。買い手は会社の株主となり、結果として会社が持つ全ての権利義務を間接的に支配します。

株式譲渡では、会社自体は変わらず、ただ株主が変わるだけです。会社が結んでいる契約・保有する許認可・従業員との雇用関係・債権債務関係は全てそのまま継続します。

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売り手視点でのメリット・デメリット

売り手×事業譲渡

売り手にとって、事業譲渡には以下のメリットがあります。

  • 会社自体は維持され、譲渡対象としなかった事業・資産は引き続き保有できる
  • 会社のガラ(法人格)を残し、別事業を継続したり清算したりできる
  • 譲渡対価が会社に入るため、株主は会社経由で配当または資本剰余金として受け取る

一方、デメリットは以下の通りです。

  • 会社が譲渡対価を受け取るため、譲渡益に対して法人税が課税される
  • その後株主が配当または清算で受け取る際、二重課税となる可能性がある
  • 個別承継のため、契約・許認可・従業員の同意取得に時間がかかる

売り手×株式譲渡

売り手にとって、株式譲渡には以下のメリットがあります。

  • 株主が直接対価を受け取るため、譲渡所得税のみで完結(個人株主は20.315%の分離課税)
  • 会社の権利義務がそのまま承継されるため、移転手続の時間が短い(最短数週間)
  • 表明保証等で潜在リスクは契約上開示すれば、簿外債務の責任は買い手に移転

デメリットは以下の通りです。

  • 会社の全ての権利義務が買い手側に移るため、特定事業のみを切り出せない
  • 表明保証違反で売り手に補償責任が残るリスク
  • 株主が複数いる場合、全員の合意取得が必要

買い手視点でのメリット・デメリット

買い手×事業譲渡

買い手にとって、事業譲渡には以下のメリットがあります。

  • 譲渡対象を限定できるため、簿外債務・潜在リスクを切り離せる
  • のれん相当額を税務上償却できる場合がある(5年均等償却)
  • 承継したくない契約・従業員を除外できる

デメリットは以下の通りです。

  • 契約・許認可の個別承諾取得に時間がかかる
  • 従業員は新規雇用扱いとなるため、勤続年数・有給休暇等のリセットを巡る労働組合・従業員との交渉が発生
  • 不動産取得税・消費税等の取引税が発生

買い手×株式譲渡

買い手にとって、株式譲渡には以下のメリットがあります。

  • 会社まるごと取得のため、契約・許認可・人材を一括承継できる
  • 取引税が発生しない(株式取得は消費税非課税)
  • クロージングまでのスピードが速い

デメリットは以下の通りです。

  • 会社の簿外債務・潜在的な税務リスク・労務リスクを丸ごと引き受ける
  • のれん相当額を税務上償却できない(株式取得は資本的支出)
  • デューデリジェンス(DD)の範囲が広く、調査コストが高い

税務インパクトの比較

同じ「事業を売買する」でも、税務上の取扱いは大きく異なります。一般的な傾向を整理すると以下の通りです。

譲渡所得課税

  • 事業譲渡:会社に法人税が課税(譲渡益×実効税率約30%)。その後配当時にさらに課税
  • 株式譲渡:個人株主の場合は分離課税20.315%で完結。法人株主の場合は法人税課税

消費税

  • 事業譲渡:譲渡対象資産のうち課税対象資産分に消費税課税
  • 株式譲渡:消費税非課税

繰越欠損金

  • 事業譲渡:売り手会社の繰越欠損金は買い手側に承継されない
  • 株式譲渡:買い手側で買収後の業績次第で繰越欠損金を活用可能(一定の制限あり)

赤字会社の救済型M&Aでは、繰越欠損金の活用可否が買収価格や買収意欲に直結します。スキーム選択時に税理士・弁護士で連携した試算が必須です。

スキーム選択の判断軸

① 簿外債務リスク

売り手会社に潜在的な簿外債務(係争中の訴訟、未払残業代、税務リスク等)が大きいと判断される場合、買い手は事業譲渡を選好します。逆に、売り手会社の財務内容が透明で簿外債務リスクが低い場合、株式譲渡のスピードメリットが活きます。

② 許認可・契約の重要度

事業の根幹に許認可(建設業許可・宅建業免許・古物商許可・産業廃棄物処理業許可等)が紐づいている場合、事業譲渡では許認可を新規取得する必要があるため、株式譲渡が有利です。同様に、長期にわたる重要契約(販売代理店契約・OEM契約等)の継続性が重要な場合も株式譲渡が選好されます。

③ 従業員の処遇

事業譲渡では従業員は新規雇用扱いとなり、勤続年数・有給休暇・退職金算定基礎等がリセットされます。買い手側では、これらの条件を引き継ぐ「継続雇用契約」を個別に提示することが多いですが、従業員側の同意が前提となるため、優秀人材の流出リスクが伴います。

株式譲渡では雇用関係はそのまま継続するため、従業員側の手続的負担はありません。ただし、株主交代を契機とした「キーパーソンの離職」は両スキームで発生し得るため、ロックアップ条項・退職一時金等の手当てが必要です。

④ 売り手の事業継続意欲

売り手が会社の他事業を引き続き経営したい場合は、事業譲渡が選好されます。一方、会社丸ごと売却して引退・転換する意向の場合は株式譲渡が自然です。

実務での落とし穴と予防策

① 表明保証範囲の設定不足

株式譲渡では、売り手による表明保証の範囲が買い手のリスクヘッジの中核です。表明保証の項目(財務・税務・労務・知財・契約・コンプライアンス等)と、違反時の補償上限・期間・知見除外の設計を、初期段階で慎重に詰める必要があります。

② 事業譲渡の対象資産・負債リストの精度

事業譲渡では、譲渡対象の資産・負債・契約・許認可・人材等を契約書の別紙として詳細に列挙します。リストから漏れた項目は譲渡されないため、後日「これも引き継いでいるはずだった」とのトラブルが頻発します。デューデリジェンス時に売り手協力を得て、抜け漏れのないリスト作成が必須です。

③ 競業避止義務の地理的・時間的範囲

会社法第21条は事業譲渡時の売り手側の競業避止義務を法定していますが、株式譲渡では法定の競業避止はなく、契約で個別に定める必要があります。買い手側にとって、譲り受けた事業の価値を守るためには、売り手側の役員・キーパーソンとの個別の競業避止合意が極めて重要です。

④ 反社会的勢力チェック

株式譲渡で会社丸ごと取得すると、過去の反社会的勢力との取引履歴も承継するリスクがあります。デューデリジェンスで反社チェックを徹底することと、表明保証で反社条項を明記することで予防します。

顧問弁護士によるM&A支援

事業譲渡・株式譲渡の選択は、その後の数年〜数十年の事業運営に影響する重要な意思決定です。スキーム選択・契約書ドラフト・デューデリジェンス・表明保証交渉・クロージングまで、専門家チームのリードがなければ進められない領域です。

弁護士法人ブライトでは、顧問契約の延長としてM&A初期相談からスキーム選択・実行支援までを伴走しています。M&A実務に精通した弁護士、税理士、公認会計士のチーム体制で、売り手・買い手いずれの立場でも対応可能です。スモールM&Aの落とし穴顧問弁護士の選び方 も併せてご覧ください。

まとめ

事業譲渡と株式譲渡は、表面的には似ていても、法的構造・税務・スピード・リスク移転の全てで根本的に異なるスキームです。「どちらが正解」というものではなく、売り手・買い手の事情、事業の特性、簿外債務リスクの程度、税務インパクト等を総合的に検討して選択する必要があります。

初期検討段階から専門家のリードを受けることで、選択ミスによる後日のトラブルを大きく減らせます。M&Aをご検討の経営者様は、ぜひ顧問契約の中で継続的にご相談いただくことをお勧めします。

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本記事は、一般的な情報の提供を目的とするものであり、個別案件に関する法的助言を目的とするものではありません。また、情報の正確性、完全性及び適時性を法的に保証するものではありません。
なお、本記事の内容に関する個別の質問や意見などにつきましては、ご対応できかねます。ただし、当該記事の内容に関連して、当事務所へのご相談又はご依頼を具体的に検討されている場合には、この限りではありません。

事務所概要

事務所名 弁護士法人 ブライト(大阪弁護士会所属)
開 業 平成21年(代表弁護士独立開業)
設 立 平成24年11月設立、平成27年1月に法人化
所在地 〒530-0057 大阪府大阪市北区曽根崎2丁目6番6号 コウヅキキャピタルウエスト12階
TEL 0120-931-501(受付時間9:00~18:00)
FAX 06-6366-8771
事業内容 法人向け(法律顧問・顧問サービス、>M&A・事業承継、M&A・事業承継、私的整理・破産・民事再生等、契約交渉・契約書作成等、売掛金等の債権保全・回収、経営相談、訴訟等の裁判手続対応、従業員等に関する対応、IT関連のご相談、不動産を巡るトラブルなど)、個人向け(>M&A・事業承継・労災事故を中心とした損害賠償請求事件、債務整理・破産・再生等、相続、離婚・財産分与等、財産管理等に関する対応、不動産の明渡し等を巡る問題など)

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