この記事の監修者和氣 良浩(わけ よしひろ)弁護士法人ブライト|代表弁護士弁護士歴20年(2006年登録・修習59期)/大阪弁護士会専門:企業法務・顧問弁護士・労務問題・契約交渉・M&A 📝 この記事の3秒結論在留資格ごとに従事できる業務範囲が明確に区切られている不法就労助長罪は「知らなかった」では済まない採用前の在留カード確認・更新管理・退職時対応の仕組み化が鍵無料で問い合わせ この記事でわかること 飲食・宿泊業で活用できる在留資格の種類と業務範囲の境界 外国人雇用契約書で押さえるべき多言語化・労務条件・社会保険の要点 不法就労リスクと、解雇・退職時の在留資格管理の実務 この記事のポイント 在留資格ごとに「できる業務」「できない業務」が明確に区切られている 不法就労助長罪は知らなかったでは済まされず、雇用主にも罰則がある 採用前の在留カード確認・更新管理・退職時対応を仕組み化することが鍵 「ホールスタッフを募集してもなかなか集まらない」「特定技能の制度を使いたいが手続きが複雑」「外国人スタッフが急に退職した場合、何をすればよいか」。飲食・宿泊業の経営者から、外国人雇用に関するご相談が急増しています。 結論からお伝えすると、飲食・宿泊業の外国人雇用は「在留資格の選択」が経営判断の最重要ポイントです。在留資格ごとに従事できる業務範囲、雇用形態、家族帯同の可否が異なり、選択を誤ると採用しても本来やってほしい業務に従事させられない、あるいは不法就労となるリスクがあります。 本記事では、経営者の意思決定目線で、在留資格の整理から雇用契約の実務、不法就労リスク、退職時対応までを整理します。 目次 外国人雇用の前提:在留資格の全体像 飲食・宿泊業で使える在留資格と業務範囲 雇用契約書の必須事項(多言語化・労働条件・社会保険) 不法就労リスクと事業者の責任 在留期間の管理と更新サポート 解雇・退職時の在留資格管理と帰国費用 まとめ FAQ:よくある質問 外国人雇用の前提:在留資格の全体像 外国人を雇用する際にまず押さえるべきは「在留資格」です。在留資格は出入国管理及び難民認定法(入管法)で定められており、それぞれに従事できる業務範囲、在留期間、家族帯同の可否などが詳細に決まっています。 飲食・宿泊業に関わる主な在留資格は、(1) 特定技能1号・2号、(2) 技術・人文知識・国際業務(技人国)、(3) 技能実習、(4) 留学(資格外活動)、(5) 永住者・日本人の配偶者等の身分系資格です。 これらの資格は性格が大きく異なります。たとえば、特定技能は人手不足分野で実務に従事できる資格、技人国は専門知識を要するホワイトカラー業務向け、技能実習は技能移転を目的とした制度、留学はあくまで学業が主で就労は副次的、身分系は就労内容に制限がない、といった違いがあります。 採用前に「どの在留資格の人材を採用するのか」を明確にすることで、その後の手続き・契約条件・労務管理の方針が決まります。「とりあえず採用して在留資格はあとで」は最もリスクが高いアプローチです。 飲食・宿泊業で使える在留資格と業務範囲 飲食・宿泊業で活用できる在留資格を、業務範囲とともに整理します。 特定技能1号(外食業・宿泊):外食業分野では、飲食物調理、接客、店舗管理に関する業務に従事できます。宿泊分野では、フロント、企画・広報、接客、レストランサービス等に従事できます。在留期間は通算5年が上限、家族帯同は原則不可です。受入れ機関には、支援計画の策定・実施が義務付けられます。 特定技能2号:2023年に対象分野が拡大され、外食業・宿泊業も2号の対象となりました。在留期間の上限がなく、要件を満たせば家族帯同も可能です。長期的な戦力として位置づける場合の選択肢となります。 技術・人文知識・国際業務(技人国):宿泊業の場合、フロントでの語学を活かした業務、海外向け広報、企画業務などが対象になり得ますが、清掃・配膳・調理といった単純労働は原則対象外です。実務上、宿泊業で技人国を取得するには「業務全体の中で語学・専門知識を活かす業務の割合」が重要視されます。 技能実習(飲食料品製造業・宿泊):技能移転を目的とした制度のため、店舗での接客・調理は原則として対象外で、飲食料品製造業(弁当・惣菜製造など)が中心です。宿泊については、技能実習でも限定的に対象となっています。 留学(資格外活動):留学生が「資格外活動許可」を取得すれば、原則週28時間以内(夏休み等は1日8時間以内)の就労が可能です。アルバイトとして活用できますが、風営法の対象施設での就労は禁止されています。 身分系資格(永住者・日本人の配偶者等・定住者):就労内容に制限がなく、日本人と同様に雇用できます。ただし永住者は在留カードの有効期限管理だけは必要です。 雇用契約書の必須事項(多言語化・労働条件・社会保険) 外国人を雇用する際の雇用契約書は、日本人雇用と同等以上の労働条件を満たすこと、本人が理解できる言語で作成・説明することが原則です。 多言語化:労働基準法上の労働条件明示義務(賃金・労働時間・休憩・休日・休暇・退職等)は、外国人労働者にも適用されます。本人が日本語を十分理解できない場合、母国語・英語等での書面交付や、通訳を介した説明が望ましい運用です。特定技能では、雇用契約と支援計画の母国語訳が事実上必須となります。 労働時間・最低賃金:日本人と同等以上の労働条件であることが在留資格取得の要件です。特に、最低賃金法、労働基準法(時間外労働の上限規制、割増賃金)、安全衛生法は当然適用されます。「外国人だから少し安く」は違法であり、在留資格更新も認められません。 社会保険:常時雇用される場合は、厚生年金・健康保険・雇用保険・労災保険の加入が必要です。短時間労働者であっても、要件を満たせば加入義務があります。社会保険未加入の状態で在留資格更新を申請すると、不許可となる事例も増えています。 家族帯同:特定技能2号、技人国、身分系資格の場合は、家族滞在ビザでの帯同が可能です。特定技能1号と技能実習は原則家族帯同不可です。長期戦力として育成する場合、家族帯同の可否は本人の定着率に大きく影響するため、採用時に在留資格の選択基準として考慮することをお勧めします。 不法就労リスクと事業者の責任 外国人雇用で最も警戒すべきは「不法就労助長罪」(入管法73条の2)です。これは、(1) 不法滞在者・不法上陸者を雇用すること、(2) 在留資格の範囲外の業務に従事させること、(3) 業として外国人に不法就労活動をさせること、を行った場合に成立し、3年以下の懲役または300万円以下の罰金(またはこれらの併科)が科されます。 重要なのは「知らなかった」では免責されないという点です。在留カードの確認を怠っていた、偽造カードを見抜けなかった、といった場合でも過失責任が問われます。雇用前に必ず、(1) 在留カードの原本確認、(2) 在留資格・在留期間・就労制限の有無の確認、(3) 出入国在留管理庁の「在留カード等読取アプリ」での真贋確認、を行うことが必須です。 また、留学生のアルバイトでは「週28時間制限」を超えて働かせると不法就労となります。複数のアルバイトを掛け持ちしている場合、合計時間で判断されるため、本人申告の確認も重要です。試験期間中にシフトを増やしたい、長期休暇中に集中して働きたいなどの希望があっても、上限を超えれば違法です。 さらに、外国人雇用状況届出(ハローワークへの届出)は、雇入れ・離職のたびに必要です。怠ると30万円以下の罰金が科されます。 在留期間の管理と更新サポート 在留資格には在留期間(1年・3年・5年など)が設定されており、期間満了前に更新申請が必要です。更新は本人申請が原則ですが、企業として更新時期の管理と、必要書類の準備サポートを行うのが望ましい運用です。 更新手続きは、出入国在留管理庁(旧入管)に対し、在留期間満了の3か月前から申請が可能です。更新時には、雇用契約書、所属機関による証明書、納税証明書、社会保険加入の証明など、企業側の協力が必要な書類が多数あります。 特に、特定技能の場合は受入れ機関(企業)の支援計画の実施状況、技能実習の場合は技能実習計画の進捗状況、技人国の場合は実際の業務内容と申請内容の整合性が審査されます。「申請時の業務内容と実際の業務が違う」状態だと、更新不許可となるリスクがあります。 更新不許可となった場合、本人は在留期間満了後30日以内に出国するか、特定活動(出国準備)への変更が必要となります。企業としても急な人員減となるため、更新時期は社内のシステムで管理し、3〜6か月前から準備を始めることをお勧めします。 解雇・退職時の在留資格管理と帰国費用 外国人労働者の解雇・退職時には、日本人とは異なる対応が必要です。 就労資格の影響:技人国・特定技能などの就労系資格は、原則として「特定の所属機関での就労」を前提としています。退職後3か月以上、在留資格に応じた活動を行わないと、在留資格の取消し対象となります(入管法22条の4)。本人は退職後、3か月以内に転職するか、在留資格の変更・出国の選択を迫られます。 所属機関等に関する届出:就労系資格の外国人が転職・退職した場合、本人は14日以内に出入国在留管理庁への届出が必要です。企業側も、外国人雇用状況届出(ハローワーク)を遅滞なく行う必要があります。 解雇の慎重性:在留資格を有する外国人にとって、解雇は単なる失職ではなく、日本に滞在し続けられるかという身分問題に直結します。日本人以上に解雇の有効性(客観的合理性・社会的相当性)が問われやすく、不当解雇として争われた場合の影響は大きくなります。整理解雇・普通解雇とも、慎重な手続きが必要です。 帰国費用:技能実習・特定技能の場合、本人の帰国費用について、契約や告示で受入れ機関側の負担とされる場面があります。雇用契約締結時に「帰国費用の負担者」を明確にしておくことで、退職時のトラブルを回避できます。技能実習法では、帰国旅費は実習実施者または監理団体が負担することが原則とされています。 FAQ:よくある質問 Q1. 留学生のアルバイトを週28時間以上働かせるとどうなりますか? 本人は不法就労、雇用主は不法就労助長罪となり、3年以下の懲役または300万円以下の罰金の対象です。本人の在留資格更新も不許可となる可能性が高くなります。シフト管理表で時間を厳格に管理し、複数バイト掛け持ちの確認も必要です。 Q2. 技人国の外国人にホールスタッフをさせるのは違法ですか? 技人国は専門知識・技術や国際業務を活かす業務が前提です。単純な接客・配膳のみに従事させる場合は資格該当性が疑われ、在留資格更新が不許可となるリスクがあります。語学を活かした接客や、企画・広報業務との組み合わせなど、業務全体の設計を見直す必要があります。 Q3. 在留カードの真贋確認はどう行えばよいですか? 出入国在留管理庁が提供する「在留カード等読取アプリ」を使用すれば、ICチップの情報と券面情報の照合ができます。原本確認に加え、このアプリでの真贋確認を採用フローに組み込むことをお勧めします。 Q4. 特定技能の社員が退職する場合、企業側の手続きは何が必要ですか? 外国人雇用状況届出(ハローワーク)と、特定技能の場合は受入れ機関としての届出(出入国在留管理庁への中長期在留者の受入れに関する届出)が必要です。本人にも所属機関等に関する届出義務があるため、退職時の案内をお勧めします。 この記事の監修弁護士 弁護士 和氣 良浩 弁護士法人ブライト 代表 弁護士法人ブライト代表。労災・交通事故で、高度・複雑な事案を担当。 まとめ 飲食・宿泊業の外国人雇用は、在留資格の選択が経営判断の中心です。特定技能1号・2号、技人国、技能実習、留学、身分系それぞれの特性を理解し、自社の人材戦略(短期戦力か長期戦力か、家族帯同を見越すか)に合わせて選ぶことが重要です。 在留資格ごとの業務範囲を理解し、採用時に明確にする 雇用契約は多言語化・社会保険加入・最低賃金遵守を徹底する 在留カード確認・更新管理・退職時届出を社内フローに組み込む 不法就労助長罪は「知らなかった」では済まされず、雇用主に重い責任 弁護士法人ブライトでは、飲食・宿泊業を中心に外国人雇用の在留資格選択、契約書整備、労務管理、トラブル対応まで幅広く支援しています。お気軽にご相談ください。 無料相談はこちら 関連記事 業種別 顧問弁護士の選び方 顧問弁護士の料金体系完全ガイド 副業・兼業時代の競業避止 企業法務・労務問題のご相談は初回無料です(平日9:00〜18:00/時間外はメール・LINEへ)顧問契約について相談する 関連記事 ホテルや旅館の就業規則についてホテル・旅館のクレーム対応契約書レビューは弁護士に頼むべき?「みんなの法務部」サービス資料ダウンロード 企業法務・労務問題のご相談は初回無料です(平日9:00〜18:00/時間外はメール・LINEへ)企業法務でお悩みの経営者様へ