この記事の執筆弁護士
弁護士 松本 洋明(弁護士法人ブライト 交通事故主任)
大阪弁護士会所属。交通事故・後遺障害認定の実務を主任として統括。労災との併用判断や、非該当からの異議申立てによる等級獲得の指揮を重ねてきた。
この記事の監修弁護士
弁護士 和氣 良浩(弁護士法人ブライト 代表)
大阪弁護士会所属。弁護士法人ブライトを設立し、交通事故・労災・企業法務の3本柱を統括。法律実務の現場感とWeb発信の両立を実践する。
最終更新日:2026年8月10日
この記事の結論(30秒でわかる)
- 後遺障害とは、交通事故で残った後遺症のうち 自賠責保険から「等級」を認定されたものです。
- 等級は 1級〜14級。等級が1つ違うだけで賠償金が 数百万〜数千万円 変わります。
- 申請方法には 「事前認定」と「被害者請求」 の2種類があり、後者の方が一般に有利です。
- 非該当でも諦めない。異議申立て・紛争処理機構・訴訟という3つの争い方 が残されています。
- 症状固定のタイミング・診断書の整え方・労災との併用判断は、後遺障害に習熟した弁護士への早期相談 をお勧めします。
交通事故で治療を続けても症状が完全には治らない——。そうしたとき、被害者の方を守るために用意されているのが「後遺障害認定」という制度です。後遺障害として等級が認定されると、慰謝料・逸失利益・将来介護費など、賠償金の総額が大きく変わります。
しかし、後遺障害認定は 「症状の重さ」だけ では決まりません。診断書の記載・通院の頻度・申請方法の選択・提出資料の組み立て——これらすべてが噛み合って、初めて等級が認められます。「同じ症状でも、被害者請求に切り替えて立証資料を補強したことで等級が変わった」という事例は、実務では珍しくありません。
この記事では、大阪・梅田を拠点に交通事故を取り扱う 弁護士法人ブライト が、後遺障害の全体像——等級の仕組み・認定の流れ・争い方・賠償金が増える構造——を1ページで整理し、部位・症状・等級ごとの詳しい解説記事へご案内します。
この記事の目次
後遺障害とは何か(後遺症との違い)
後遺障害とは、交通事故によるケガが治療を続けても完全には回復せず、将来にわたって残ってしまった機能障害や神経症状のうち、自賠責保険(または労災保険)の審査機関から「等級」が認定されたものを指します。
後遺症と後遺障害の違い
日常会話で「後遺症」と言うとき、それは「治療しても残った症状」全般を意味します。しかし法律上・賠償実務上は、「後遺症」と「後遺障害」は別物です。
- 後遺症:治療を尽くしても残った症状の総称(医学的概念)
- 後遺障害:後遺症のうち、自賠責保険が「等級」を認めたもの(賠償法上の概念)
つまり、後遺症が残っても 後遺障害として認定されなければ、後遺障害慰謝料も後遺障害逸失利益も請求できません。逆に言えば、後遺障害として認定されるかどうかで、賠償金の額は劇的に変わります。
なぜ等級を認定してもらう必要があるのか
後遺障害として認定されると、次の3種類の損害賠償を上乗せして請求できるようになります。
- 後遺障害慰謝料:後遺障害が残ったこと自体に対する精神的損害
- 後遺障害逸失利益:後遺障害がなければ得られたはずの将来の収入の減少分
- 将来介護費用(重度の場合):介護が必要な場合の将来の介護費用
見落とされがちな2つのメリット(示談前の先取りと、自分の保険)
後遺障害等級の認定には、慰謝料・逸失利益の請求権が生まれること以外にも、実務上きわめて大きな意味が2つあります。
① 示談が終わる前に、自賠責分だけを先に受け取れる。 後遺障害等級が認定されると、その等級に対応する自賠責保険金を 被害者請求 によって受け取ることができます。相手方任意保険会社との示談交渉がまとまるのを待つ必要はありません。自賠責の保険金額は等級ごとに定められており、たとえば 14級で75万円、12級で224万円、9級で616万円(いずれも後遺障害部分の限度額)です。この金額を超える部分について、改めて任意保険会社と交渉していくことになります。治療で家計が苦しくなっているご家庭にとって、示談前にまとまった金額が入るかどうかは切実な違いです。なお、事前認定(相手方保険会社に申請を任せる方法)で等級の認定を受けた場合でも、後遺障害部分について被害者請求を行い、示談前に受け取れることがあります。ただし相手方任意保険会社が一括対応のなかで既に自賠責分を回収している場合など、事案によって取扱いが異なります。ご自身のケースでどの方法が使えるかは、弁護士にご確認ください。
② 加害者への賠償とは別に、ご自身の保険から保険金が出ることがある。 ここまでは加害者側(相手方任意保険会社)への請求の話ですが、後遺障害等級が認定されると、被害者ご自身が加入している保険から別途保険金を請求できる場合があります。自動車保険の人身傷害補償保険・搭乗者傷害保険のほか、生命保険・医療保険・県民共済などの特約が該当することがあります。ご自身とご家族の保険証券・約款を一度確認されることを強くお勧めします。請求できるのに気づかないまま時効を迎えてしまう例は、実務上少なくありません。
等級が1つ違うだけで、賠償金の総額が 数百万円から数千万円 単位で変わることも珍しくありません。だからこそ、後遺障害認定は「症状の重さ」と同じくらい 「申請の戦略」が結果を左右 するのです。
後遺障害等級の全体像【1〜14級 早見表】
後遺障害等級は、自動車損害賠償保障法施行令の別表に基づき、第1級から第14級まで、症状の重さに応じて14段階に区分されています。
別表第1と別表第2
- 別表第1:介護を要する後遺障害(第1級・第2級)。要介護状態の重度後遺障害が対象。
- 別表第2:それ以外の後遺障害(第1級〜第14級)。可動域制限・神経症状・外貌醜状などが対象。
同じ「1級」でも、別表第1の1級(要介護)と別表第2の1級では、自賠責保険から支払われる金額や、将来介護費用の認定の有無が大きく異なります。重度の脊髄損傷や高次脳機能障害の方は、別表第1の認定を目指すかどうかで賠償額が変わってきます。
1〜14級の早見表(各等級の詳しい解説へ)
各等級の代表的な症状と、等級ごとの詳しい解説記事は次のとおりです。ご自身の症状に近い等級から読み進めてください。
| 等級 | 代表的な後遺障害の例(別表第2より抜粋) | 後遺障害慰謝料 (弁護士基準) |
労働能力 喪失率 |
詳しい解説 |
|---|---|---|---|---|
| 1級 | 両眼の失明(別表第2)/神経系統・精神の著しい障害で常に介護を要するもの(別表第1)など | 2,800万円 | 100% | 1級の解説 |
| 2級 | 1眼が失明し他眼の視力0.02以下になったもの(別表第2)/神経系統・精神の著しい障害で随時介護を要するもの(別表第1)など | 2,370万円 | 100% | 2級の解説 |
| 3級 | 神経系統・精神の著しい障害で終身労務に服せないものなど | 1,990万円 | 100% | 重度後遺障害(1〜3級)の解説 |
| 4級 | 両眼の視力0.06以下、両手の手指の全部を失ったものなど | 1,670万円 | 92% | 4級の解説 |
| 5級 | 1下肢を足関節以上で失ったもの、特に軽易な労務以外に服せない神経障害など | 1,400万円 | 79% | 5級の解説 |
| 6級 | 1上肢の3大関節中2関節の用廃、咀嚼・言語機能の著しい障害など | 1,180万円 | 67% | 6級の解説 |
| 7級 | 軽易な労務以外に服せない神経系統の障害、1手の5指喪失など | 1,000万円 | 56% | 7級の解説 |
| 8級 | 脊柱の運動障害、1上肢の3大関節中1関節の用廃、上下肢の偽関節など | 830万円 | 45% | 8級の解説 |
| 9級 | 服せる労務が相当程度制限される神経系統の障害(10号)、外貌の相当程度の醜状(16号)など | 690万円 | 35% | 9級の慰謝料相場・逸失利益 完全解説 |
| 10級 | 1眼の視力0.1以下、1上肢の3大関節中1関節の著しい機能障害など | 550万円 | 27% | 10級の解説 |
| 11級 | 脊柱の変形、1耳の聴力低下など | 420万円 | 20% | 11級の解説 |
| 12級 | 局部の頑固な神経症状(13号)、外貌の醜状(14号)など | 290万円 | 14% | 12級13号 完全解説/12級の慰謝料相場/12級と14級の差額 |
| 13級 | 1眼の視力0.6以下、1手の小指の用廃など | 180万円 | 9% | 13級の解説 |
| 14級 | 局部の神経症状(9号・むちうち等)、3歯以上の歯科補綴など | 110万円 | 5% | 14級9号 完全解説(むちうち)/14級の解説 |
※ 慰謝料は『民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準』(日弁連交通事故相談センター東京支部編・いわゆる赤本)2026年版による目安です。労働能力喪失率は労働基準局長通牒別表の一般的な基準で、実際の認定では職業・年齢・症状の内容により増減します。1級・2級のうち別表第1(要介護)に該当する場合は、これに将来介護費用が加わります。
等級は「号」でさらに細分化される
たとえば 14級9号(局部に神経症状を残すもの)、12級13号(局部に頑固な神経症状を残すもの)のように、各等級はさらに「号」で細分されています。むちうちで多いこの2つは、症状が同じように見えても 他覚的所見の有無 で大きく分かれます。異議申立てで主張する等級を書き間違えないためにも、「何級か」だけでなく「何号か」まで特定することが出発点になります。
障害が2つ以上残ったとき——「併合」で等級が繰り上がる
系列の異なる後遺障害が2つ以上残った場合、原則として重い方の等級によりますが、一定の条件を満たすと等級が繰り上がります。これを 併合 といいます(自賠法施行令2条)。
| 残った障害の組み合わせ | 取り扱い | 例 |
|---|---|---|
| 5級以上に該当する障害が2つ以上 | 重い方を 3級 繰り上げ | 5級+5級 → 併合2級 |
| 8級以上に該当する障害が2つ以上 | 重い方を 2級 繰り上げ | 8級+8級 → 併合6級 |
| 13級以上に該当する障害が2つ以上 | 重い方を 1級 繰り上げ | 10級+12級 → 併合9級/12級+12級 → 併合11級 |
| 上記に当たらない場合(14級が複数など) | 繰り上がらない(重い方の等級のまま) | 14級+14級 → 14級 |
骨折系の後遺障害では、変形・可動域制限・神経症状といった複数の障害が同時に残ることが多く、併合を意識して申請を組み立てられたかどうかで結果が変わります。「12級が2つあるから9級になるはず」といった誤解も実務ではよく見かけますが、上記のとおり12級+12級は併合11級です。
等級表に載っていない症状でも「相当等級」で認められることがある
自賠責の等級表に明記されていない症状であっても、表に掲げられた障害に相当すると評価できる場合には「相当等級」として認定されることがあります。表に無いからと諦めてしまう方が多い領域です。実務上、次のような症状が問題になります。
| 部位 | 症状 | 認定されうる等級の例 |
|---|---|---|
| 眼 | 外傷性散瞳 | 片眼:12級または14級/両眼:11級または12級 |
| 流涙(涙が止まらない) | 片眼:14級/両眼:12級 | |
| 鼻 | 鼻呼吸困難 | 12級 |
| 嗅覚の脱失 | 12級 | |
| 嗅覚の減退 | 14級 | |
| 耳 | 耳鳴り | 12級または14級 |
| 耳漏(耳だれ) | 12級または14級 | |
| 口 | 嚥下障害 | 3級・6級または9級 |
| 咀嚼に相当な時間を要するもの | 12級 | |
| かすれ声(嗄声) | 12級 | |
| 味覚の脱失 | 12級 |
※ 上記は認定されうる等級の一般的な目安であり、症状の程度・検査結果・事故との因果関係の立証状況によって判断は変わります。いずれも 専用の検査(嗅覚検査、味覚検査、聴力・耳鳴検査など)を受けていなければ立証できない のが実情で、通常の通院だけでは診断書に記載されないまま終わってしまいます。
【CTA①】等級認定が複雑で分からないと感じたら
弁護士法人ブライトでは、症状をお聞きしただけで 「どの等級を狙うべきか」「どの資料を揃えるべきか」 を初回相談で具体的にアドバイスします。
部位・症状別の後遺障害ガイド
後遺障害は、部位・症状によって「狙える等級」「立証に必要な検査」「認定の分かれ目」がまったく異なります。ご自身の症状に当てはまる解説記事からお読みください。
骨折・関節・脊椎の後遺障害
骨折系の後遺障害は、変形・可動域制限・神経症状という複数の観点から等級が決まり、複数の障害が残ると「併合」で等級が繰り上がるのが特徴です。労災と併用できるケースも多い領域です。
- 脊椎(腰椎)圧迫骨折の後遺障害 完全ガイド|6級〜14級・8級と11級の分岐・労災併用戦略
- 胸椎圧迫骨折の後遺障害|腰椎との違い
- 大腿骨骨折 完全解説|可動域制限・短縮障害・人工関節置換
- 鎖骨骨折・肩関節可動域制限 完全解説|変形治癒+可動域制限の併合認定
- 骨盤骨折 完全解説|変形・神経・尿路系の併合認定
- 手首骨折(橈骨遠位端骨折・TFCC損傷)完全解説|8〜12級の認定基準
- 肋骨骨折の後遺障害/手首骨折(基礎編)/顔の傷(外貌醜状)
- 脊椎・脊髄損傷の等級別解説|麻痺の重さで1級〜9級/脊髄損傷の賠償戦略(重度後遺障害)
神経・精神系の後遺障害(むちうち・高次脳・PTSD・CRPS)
外から見えづらく、認定難易度が高い領域です。神経学的検査・画像所見・生活実態の客観化という立証の組み立てがそのまま結果を分けます。ブライトが特に注力している分野の一つです。
- むちうちの等級の分かれ目 完全解説|他覚的所見の立証戦略
- 神経・感覚系後遺障害 完全ガイド(CRPS・嗅覚障害・末梢神経・PTSD・高次脳・脊髄損傷の総合案内)
- 高次脳機能障害 完全解説|画像所見・神経心理学検査・生活実態の3要素
- 高次脳機能障害で「認定されない」と言われた方へ|MRI正常でも認定された立証パターン
- 高次脳機能障害で1〜5級が認定された方へ(将来介護費用)
- 交通事故後のPTSD・うつ病で「後遺障害にならない」と言われた方へ
- CRPS・RSD・カウザルギーの後遺障害|難治性疼痛の立証方法
認定手続きの全体像(事故→症状固定→申請→認定)
後遺障害認定のおおまかな流れは次のとおりです。
① 症状固定まで治療を続ける
後遺障害認定の土台は 通院の継続性・頻度 です。事故後すぐに通院をやめてしまったり、通院間隔が空きすぎたりすると、「症状はそれほど重くない」と判断され、認定が遠のきます。症状固定(これ以上良くも悪くもならない状態)の判断は 医師が医学的に行う もので、保険会社が決めるものではありません。早期に症状固定を促されても、治療継続が必要であれば医師と相談しながら判断します。
② 主治医に自賠責所定様式の診断書を書いてもらう
症状固定の判断が出たら、主治医に自賠責保険の所定様式による診断書(後遺障害診断書)を作成してもらいます。この書類の記載内容が等級認定を左右する最重要書類です。記載すべき項目・医師への依頼の仕方・費用の扱いは、後遺障害診断書の書き方 完全ガイド で詳しく解説しています。
③ 自賠責保険へ申請し、損害保険料率算出機構が審査する
申請を受けた自賠責保険会社は、損害保険料率算出機構(自賠責損害調査事務所) に調査を依頼し、その調査結果をもとに認定結果が通知されます。審査は原則として 書面のみ。面談はなく、提出した書類と画像がすべてです。結果が出るまでの日数の目安や遅い場合の対処は 等級認定にかかる期間の解説 をご覧ください。
④ 結果通知:等級の有無・認定等級・認定理由が開示される
認定結果では、①後遺障害等級の有無、②認定された等級、③認定理由が開示されます(『後遺障害の認定と異議申立』加藤久道・参照)。この「認定理由」を読み込むことが、結果を争うかどうかの出発点になります。納得できない場合の3つの争い方は §7 で解説します。
認定を左右する8つのチェックポイント
実務上、認定結果に影響する主な要素は次の8つです。事故直後からこれらを意識できるかどうかで、結果は大きく変わります。
- 通院回数・通院頻度(間隔が空くと不利に働きやすい)
- 通院先:整形外科(病院)か、整骨院・接骨院のみか
- 年齢(加齢性変化との切り分けが問題になりやすい)
- 事故態様(衝撃の程度と症状の整合性)
- MRI撮影等の画像所見(撮影時期が重要。急性期を逃すと所見が得られにくい症状もある)
- 症状固定までの期間
- 経過診断書・施術証明書の記載内容(症状の一貫性)
- 後遺障害診断書の記載内容(自覚症状・他覚所見・可動域測定)
【CTA③】症状固定を保険会社から急かされていませんか
通院打ち切り・症状固定の押し付けは、後遺障害認定の結果に直結します。迷ったらまず弁護士に相談を。
申請方法は2種類(事前認定 vs 被害者請求)
後遺障害認定の申請方法には、「事前認定」 と 「被害者請求」 の2種類があります。どちらを選ぶかで、提出資料の中身・透明性・成功率が変わります。
事前認定と被害者請求の違い(比較表)
| 項目 | 事前認定 | 被害者請求 |
|---|---|---|
| 申請主体 | 相手方(加害者側)任意保険会社 | 被害者本人(または代理人弁護士) |
| 資料準備 | 相手方保険会社が行う | 被害者側で揃える |
| 資料の中身 | 不透明(保険会社任せ) | すべて被害者側で確認可能 |
| 有利な追加資料 | 付けにくい | 意見書・MRI画像・陳述書を自由に添付可 |
| 手間 | 少ない | 多い(弁護士介入で軽減) |
| 等級認定の有利度 | △ | ◎(弁護士が補強できる) |
| 推奨度 | △ | ◎ |
2つの方法の詳しい違い・切り替えのタイミングは 事前認定と被害者請求の違い 徹底比較 で解説しています。
ブライトが「被害者請求」を強く推奨する理由
事前認定は手続きが楽な反面、相手方保険会社が用意した資料だけ で審査されます。後遺障害認定は書面審査ですから、資料の中身が「等級を取りに行く構成」になっていなければ、本来取れるはずの等級も取れません。
ブライトでも、保険会社主導の事前認定では十分な立証が見込めないと判断し、途中から被害者請求に切り替えて弁護士主導で資料整備を行った事案が複数あります。切り替えは早いほど選択肢が広がります。
【CTA④】事前認定か被害者請求か、迷ったら弁護士に
どちらの方法が有利かは、症状・診断書の記載・既存資料の質によって変わります。判断を誤ると等級が下がるリスクがあります。
認定に必要な3つの条件
後遺障害として認定されるためには、概ね次の3つの条件を満たす必要があります。
条件① 医学的所見
症状の存在が 医学的に裏付けられている ことが必要です。骨折・脱臼・神経損傷など、MRI・CT・レントゲンなどの画像所見で確認できる場合は「他覚的所見あり」となり、上位等級(たとえば12級13号)に届きやすくなります。
一方、むちうちのように画像所見では明確に示せない症状でも、神経学的検査(スパーリングテスト、ジャクソンテスト等)の異常、症状の一貫性、通院記録 など、客観性が裏付けられれば14級9号の認定が可能です。実務の分水嶺もここにあります。非該当と判断される典型は「神経学的検査所見や画像所見などから自覚症状を裏付ける客観的な医学的所見がみられない」場合であり、逆に12級は「他覚所見により医学的に証明される」場合に認められます(『後遺障害の認定と異議申立』加藤久道・参照)。
注意すべきは 画像検査のタイミング です。受傷直後の浮腫や微小出血などの一過性の変化は、時間の経過とともに消失・変化していきます。事故から時間が空いてからのMRIでは、写った所見が「本件事故によるもの」なのか「加齢性の変化」なのかの切り分けが難しくなり、因果関係の立証が格段に困難になることが実務でも指摘されています(『交通事故外傷と後遺障害 全322大辞典』参照)。「あとで撮ればいい」では立証の機会そのものを失いかねません。
条件② 通院の継続性
事故直後から症状固定まで、継続的に通院しているかが重要です。通院間隔が空きすぎたり、途中で通院をやめたりすると、「症状はそれほど重くない」と判断されます。むちうちの14級認定では、通院期間6ヶ月以上・実通院日数100日前後 が一つの目安とされる実務感覚があります(断定はできません)。
条件③ 労働能力・日常生活への影響
後遺障害は 「労働能力の喪失」 という観点でも評価されます。家事従事者であれば家事の制限、自営業者であれば業務継続の困難など、症状が生活・労働に与える影響を具体的に伝えられるかが鍵です。
認定結果に納得できないとき:3つの争い方
最初の認定結果が「非該当」「思っていた等級より低い」だった場合でも、打つ手は残されています。認定結果を争う方法は、大きく次の3つです(『後遺障害の認定と異議申立』加藤久道・参照)。
- 異議申立て:自賠責保険に対して再審査を求める。回数制限はなく、新たな医学的所見(追加画像・神経学的検査・医師の意見書)や陳述書 を補強できるかが勝負どころ。
- 自賠責保険・共済紛争処理機構への申請:中立の紛争処理機関による審査・裁定。同一内容での申請は原則1回。
- 訴訟:裁判所は自賠責の認定結果に拘束されず、証拠に基づいて等級相当性を独自に判断します。
どの方法を選ぶにしても、出発点は「認定理由の読み込み」です。何が足りないと判断されたのかを特定し、それを埋める資料(追加のMRI撮影・専門医の意見書・可動域の再測定・日常生活の陳述書)を組み立てられるかで結果が変わります。具体的な戦略の立て方は 異議申立て3つの戦略 完全解説 を、異議申立書の書式・書き方は 後遺障害の異議申立書の書き方とコツ をご覧ください。前者が「どう戦うか」、後者が「どう書くか」を扱っています。
後遺障害の損害賠償請求と時効(2つの時効を混同しない)
後遺障害の案件で最も取り返しがつかないのが 時効 です。異議申立てを繰り返しているうちに請求権が消滅してしまえば、どれだけ立証を積み上げても意味がありません。そして実務上いちばん多い誤解が、時効は1種類だと思ってしまうことです。後遺障害の場面では、性質の異なる2つの時効が並行して走っています。
| 加害者への損害賠償請求権 | 自賠責保険への被害者請求権 | |
|---|---|---|
| 相手 | 加害者本人・相手方任意保険会社 | 加害者の自賠責保険会社 |
| 根拠 | 民法724条・724条の2 | 自賠法19条 |
| 期間(人身) | 5年(2020年4月1日以降の事故) | 3年 |
| 起算点 | 損害および加害者を知った時(傷害分は事故日、後遺障害分は症状固定日が実務上の起算点) | 同左(傷害分は事故日、後遺障害分は症状固定日) |
| 物損部分 | 3年(改正の対象外) | ― |
2020年4月1日の民法改正で何が変わったか
改正前は、不法行為による損害賠償請求権は「損害および加害者を知った時から3年」で時効消滅するとされていました(旧民法724条)。改正により、人の生命または身体を害する不法行為——つまり人身事故については、この期間が 3年から5年に延長 されました(民法724条の2)。物損部分は従来どおり3年のままです。
また、従来は「事故日から20年」の 除斥期間 とされ、当事者が主張しなくても当然に権利が消滅すると解されていた部分が、改正後は 消滅時効 として扱われることになりました。時効の完成猶予・更新の余地が生まれた点で、被害者にとって有利な改正です。
2020年3月31日以前の事故はどうなるか(経過措置)
原則として旧法が適用され、3年の時効です。ただし経過措置があり、2020年3月31日以前に発生した事故であっても、施行日(2020年4月1日)の時点で3年の期間がまだ経過していなかった場合には、5年の時効が適用されます(改正法附則35条2項)。「自分の事故は改正前だから3年で終わり」と早合点する前に、必ず起算点と施行日の関係を確認してください。
後遺障害が残った場合の起算点は「症状固定日」
後遺障害分の損害は、症状固定によって初めて内容が確定します。そのため 後遺障害部分の時効の起算日は症状固定日 と扱うのが実務です。傷害分(治療費・入通院慰謝料・休業損害)は事故発生日が起算点となるため、同じ事故のなかで起算点が2つあることになります。
実務上いちばん危ないパターン。 「賠償請求は5年あるから大丈夫」と考えて異議申立てを重ねているうちに、自賠責への被害者請求権(3年)だけが先に消滅する——これが最も多い事故です。異議申立てには回数制限がなく、1回あたり数か月かかるため、2回・3回と重ねると3年はあっという間に到来します。時効が近い案件では、時効中断申請書の提出などを異議申立てと並行して進める必要があります。ブライトでも、重症事案で異議申立てを継続しながら時効管理の手続きを並行させた実例があります。
後遺障害慰謝料の相場【1〜14級 全等級表】と増額の構造
後遺障害が認定されると、後遺障害慰謝料 と 後遺障害逸失利益 が上乗せされます。ここで知っておくべきなのは、慰謝料には 3つの算定基準 があり、どの基準で計算するかで金額が大きく変わるという構造です。
- 自賠責基準:法律で定められた最低限の補償ライン
- 任意保険基準:各保険会社の社内基準(多くは自賠責基準に近い水準)
- 弁護士(裁判)基準:裁判実務で用いられる基準(いわゆる「赤本基準」)。3基準の中で最も高い
保険会社の提示額は自賠責基準・任意保険基準に近いことが多く、弁護士が介入して弁護士基準で交渉し直すことで大きく増額する——これが「弁護士に依頼すると賠償金が増える」ことの正体です。
後遺障害慰謝料の相場一覧(1〜14級・自賠責基準と弁護士基準)
任意保険基準は各社の社内基準で非公開のため、ここでは 自賠責基準 と 弁護士(裁判)基準 を並べます。任意保険基準は、自賠責基準に多少上乗せした水準にとどまることがほとんどです。
| 等級 | 自賠責基準の慰謝料 | 弁護士(赤本)基準の慰謝料 | 労働能力喪失率 |
|---|---|---|---|
| 1級 | 1,650万円(要介護・別表第1) 1,150万円(別表第2) |
2,800万円 | 100% |
| 2級 | 1,203万円(要介護・別表第1) 998万円(別表第2) |
2,370万円 | 100% |
| 3級 | 861万円 | 1,990万円 | 100% |
| 4級 | 737万円 | 1,670万円 | 92% |
| 5級 | 618万円 | 1,400万円 | 79% |
| 6級 | 512万円 | 1,180万円 | 67% |
| 7級 | 419万円 | 1,000万円 | 56% |
| 8級 | 331万円 | 830万円 | 45% |
| 9級 | 249万円 | 690万円 | 35% |
| 10級 | 190万円 | 550万円 | 27% |
| 11級 | 136万円 | 420万円 | 20% |
| 12級 | 94万円 | 290万円 | 14% |
| 13級 | 57万円 | 180万円 | 9% |
| 14級 | 32万円 | 110万円 | 5% |
※ 自賠責基準は2020年4月1日以降に発生した事故に適用される金額です(それ以前の事故は各等級とも数万円低い旧基準が適用されます)。弁護士基準は『民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準』(赤本)2026年版による目安で、実際の金額は事案により増減します。
大阪の裁判実務では「緑本」も使われます。 大阪地裁の交通事故事件では、大阪地裁民事交通訴訟研究会『交通事故損害賠償額算定のしおり』(いわゆる緑本)が用いられることがあり、赤本と金額が一部異なります。たとえば 2級2,400万円・5級1,440万円・9級670万円・12級280万円 といった具合です(1級2,800万円・8級830万円・13級180万円・14級110万円は赤本と同額)。大阪・梅田を拠点とするブライトは、どちらの基準で主張・反論すべきかを事案ごとに検討しています。
むちうちの後遺障害慰謝料(12級・14級)
むちうち(頚椎捻挫・外傷性頚部症候群)で認定されうるのは、症状の程度に応じて 12級13号 または 14級9号 です。両者を分けるのは他覚的所見の有無で、慰謝料の差は次のとおりです。
| 等級 | 自賠責基準 | 弁護士(赤本)基準 | 差額 |
|---|---|---|---|
| 12級13号 | 94万円 | 290万円 | 196万円 |
| 14級9号 | 32万円 | 110万円 | 78万円 |
慰謝料だけでも12級と14級では180万円の差がありますが、労働能力喪失率(14%対5%)と喪失期間の違いから、逸失利益を含めた総額では数百万円規模の差になります。詳しくは 12級と14級の慰謝料はなぜ180万円違うのか、むちうちの等級の分かれ目 をご覧ください。
逸失利益の計算式(簡易)
後遺障害逸失利益 = 基礎収入 × 労働能力喪失率 × 労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数
たとえば、年収500万円のサラリーマン(35歳)が12級13号の後遺障害を残した場合、ライプニッツ係数(67歳までの32年分・年利3%)が約20.39。労働能力喪失率14%として、500万円 × 14% × 20.39 ≒ 約1,427万円 が逸失利益の概算となります。これに後遺障害慰謝料290万円(赤本基準)を加えると、約1,717万円 の上乗せです。
等級が1つ違うとどう変わるか。同じ条件で14級9号(喪失率5%・喪失期間5年・ライプニッツ係数4.58)になると、500万円 × 5% × 4.58 ≒ 約115万円 + 慰謝料110万円 = 約225万円。1,500万円近い差が生まれます。詳しい計算方法は 後遺障害逸失利益の計算方法 をご覧ください。
なお、弁護士費用が心配な方へ。多くの方の自動車保険には 弁護士費用特約 が付帯しており、ご家族の保険の特約が使えることもあります。詳しくは 弁護士費用特約の使い方 完全ガイド をご覧ください。特約がなくても、ブライトの交通事故案件は着手金0円・完全成功報酬制でご依頼いただけます(実費等は別途かかる場合があります。詳細は弁護士費用のご案内をご覧ください)。
ブライトの後遺障害認定 5つの強み
強み① 交通事故主任の松本弁護士が直接担当
後遺障害案件は 経験の差が結果を分ける 分野です。ブライトでは、交通事故主任の松本洋明弁護士が事件全体を責任をもって統括します。
強み② 労災と自賠責の併用判断ができる
通勤中・業務中の事故の場合、自賠責だけでなく 労災保険 も使えます。労災と自賠責を併用すると賠償額が増えることがあり、判断には専門知識が必要です。ブライトには労災事故部統括の笹野皓平弁護士が在籍しており、労災連携のノウハウが豊富です。
関連記事:労災と自賠責の併用判断 / 労災と自賠責を併用して圧迫骨折の慰謝料を最大化
強み③ 異議申立てによる等級アップ実績
「非該当」「想定より低い等級」からの異議申立てで等級が変わった実例の経験を重ねています。最初の認定で諦めるのではなく、その先の戦略まで設計します。
強み④ 神経系・精神系の後遺障害への注力
PTSD・うつ病・高次脳機能障害・CRPSなど、立証難易度が高い症状に注力し、認定を目指す立証パターンを蓄積しています。
強み⑤ 大阪・梅田に集中、迅速な対面相談
事務所は大阪・梅田。対面相談はもちろん、遠方の方にはZoom相談も対応します。フットワーク軽く、事故直後から症状固定後の異議申立てまで一貫して伴走します。
後遺障害のモデルケース(実事例をもとに再構成)
ブライトが実際に取り扱った後遺障害事案をもとに、特定できないよう内容を再構成した例をご紹介します(金額は等級別の基準に沿ったモデル金額であり、実際の解決額そのものではありません)。
事例1:むちうちで14級9号を獲得し、提示額の2倍超で解決
停車中に追突され頚椎捻挫と診断された男性。相手方保険会社から心ない対応を受けて疲弊していましたが、受任後、通院継続のアドバイスと被害者請求での申請準備を行い、14級9号を獲得。慰謝料・逸失利益を弁護士基準で組み立て直し、介入前の想定額の 2倍以上(モデル金額:約110万円→約230万円) で示談解決しました。
事例2:複数部位の障害で「併合12級」を獲得、労災も併用して600万円超で解決
通勤中の事故で複数部位を負傷した方の事案。部位ごとの障害を丁寧に立証して 併合12級 の認定を受け、さらに労災保険の給付と自賠責を戦略的に併用。治療費・既払金とは別に 600万円超(モデル金額) の賠償金で示談解決しました。労災と自賠責の併用判断は、労災部と連携できるブライトの強みが最も活きる場面です。
事例3:労災と自賠責で等級判断が割れた事案を、両制度の給付を活かして解決
業務に関連する事故で手関節を負傷した方の事案。労災では12級13号、自賠責では14級9号 と、審査機関によって等級判断が分かれました。制度ごとに審査主体・判断枠組みが異なるために起こる現象です。両制度の一時金・給付を漏れなく受給したうえで、相手方保険会社とは弁護士基準で交渉し、追加の示談金を獲得して解決しました。
その他の事例は 交通事故の解決事例一覧 をご覧ください。
よくある質問(FAQ)
Q1. 後遺障害認定は弁護士なしでもできますか?
A. 制度上は被害者本人だけでも申請可能です。ただし、被害者請求では資料準備の負担が大きく、診断書の記載・追加資料の整理など実務面で弁護士の関与が成功率を大きく押し上げます。費用が心配な方は弁護士特約をご確認ください。
Q2. 通院が少ないと14級も取れませんか?
A. 通院頻度・期間は重要な判断要素です。通院が極端に少ないと「症状が軽い」と判断されやすくなります。ただし、通院回数だけで一律に決まるわけではなく、症状の一貫性や他覚的所見との総合判断です。「○回以上通院すれば確実」というような目安は申し上げられません。
Q3. むちうちで12級は取れますか?
A. 12級13号は「局部に頑固な神経症状を残すもの」とされ、他覚的所見(MRIでの神経圧迫所見など)が必要とされる実務感覚があります。MRI所見が乏しいと14級9号にとどまるケースが多く見られます。
Q4. 一度非該当になったら諦めるしかないですか?
A. いいえ。異議申立てに回数制限はありません。「認定理由」を読み込んで、何を補強すれば等級が取れるかを再設計することが重要です。詳しくは §7 認定結果に納得できないとき をご覧ください。
Q5. 症状固定はいつ判断されますか?
A. 症状固定は 医師が医学的に判断 するもので、保険会社が決めるものではありません。むちうちであれば事故から6ヶ月以上経過してからが一般的です。保険会社から早期の症状固定を促されても、治療継続が必要であれば主治医と相談を。
Q6. 後遺障害認定までいくらかかりますか?
A. 後遺障害診断書の作成料5,000〜10,000円程度、画像・診療記録のコピー代数千円〜1万円程度です。被害者請求で認定された場合、これらの費用は自賠責から精算されることがあります。弁護士費用は弁護士特約の利用や、賠償金からの清算が一般的です。
Q7. 労災と自賠責はどちらを先に申請すべきですか?
A. 通勤災害・業務災害の場合は、労災と自賠責のどちらを先行させるかで結果が変わることがあります。労災を先に使うと自賠責の慰謝料が温存できる場合があり、戦略的に重要な判断です。ブライトでは労災事故部統括の笹野弁護士と連携して併用判断を行います。
まとめ:迷ったら早めに弁護士に相談を
後遺障害認定は、症状の重さだけでなく 「申請の戦略」 が結果を大きく左右します。診断書の書かせ方・申請方法の選択・追加資料の整え方——これらは経験のある弁護士でなければ気付かないポイントが多くあります。
「症状固定を急かされている」「保険会社の提示額に納得がいかない」「非該当の通知が届いた」「異議申立てを考えている」——どの段階でも構いません。早ければ早いほど、取れる選択肢は増えます。
弁護士法人ブライトは、大阪・梅田を拠点に、交通事故主任の松本洋明弁護士・労災事故部統括の笹野皓平弁護士をはじめとする弁護士チームが、後遺障害認定を含む交通事故案件に 事故直後から示談・訴訟まで 一貫してサポートします。
交通事故・後遺障害の無料相談
大阪・梅田の弁護士法人ブライト 交通事故主任 松本洋明 弁護士が初回相談を担当します。
- 電話:06-4965-9590(交通事故専用・24時間受付)
- 相談の流れ・費用:後遺障害の無料相談のご案内
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※弁護士特約をお持ちの方は自己負担なしで弁護士に依頼できる場合があります。お気軽にご確認ください。
【参考文献】
・『民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準』(日弁連交通事故相談センター東京支部編・令和8年版)
・加藤久道『後遺障害の認定と異議申立』
・『後遺障害等級認定と裁判実務』
・『交通事故外傷と後遺障害 全322大辞典』
・自動車損害賠償保障法施行令 別表第1・別表第2




