元トラック運転手から約500万円台の未払残業代請求——雇用契約書がない状態から約200万円台まで減額して解決した事例

元トラック運転手 未払残業代請求 減額解決

① 事案の属性

  • 業種:運送業(関西の中堅企業・従業員100名規模)
  • 相談ジャンル:労務(使用者側)/未払残業代請求への対応
  • 解決方式:示談(合意書締結)
  • 解決までの期間:約10ヶ月

② 相談時の状況

「退職した元トラック運転手の代理人弁護士から、過去3年分の未払残業代を請求する内容証明が届いた——。」

このようなご相談の解決例です。請求額は概算で約500万円台。しかも相手方からは、短い期限を区切って勤怠関係資料の開示を求められていました。

会社には顧問弁護士がおらず、これまでのトラブルは都度その場で対応してきた状態。さらに、長年勤務してきた従業員だったため、雇用契約書がそもそも存在しない可能性が高いという事情も重なっていました。「資料を出せと言われているが、応じてよいのか」「契約書がない状態で、会社の言い分は通るのか」——初動の一手から判断に迷う状況でのご相談でした。

③ 争点・難しさ

  • 労働時間の範囲:日報や点呼簿に記載された時間のうち、どこまでが実労働時間か。特に、運送前後の荷役準備や待機時間を休憩時間と評価できるかが大きな争点でした。
  • 休憩時間の立証:休憩の客観的な記録がない中で、会社が主張する休憩時間(始業後・帰社後の一定時間など)が法的に認められるか。
  • 割増賃金の基礎となる賃金の範囲:「奨励手当」等の各種手当が、割増賃金計算の基礎に含まれるか、それとも既に支払済みの時間外手当と評価できるか。相手方は家族手当・通勤手当以外のすべての手当を基礎に算入すべきと主張していました。
  • 消滅時効への対応:相手方代理人から「時効完成猶予の合意」を求められており、これに応じるか否かが交渉全体の駆け引きに直結しました。

④ ブライトの方針・対応

初動——先に金額を確定させない。受任後まず、受任通知とともに勤怠関係資料を開示し、相手方に請求内容を具体的に特定させる方針を採りました。資料を隠さない姿勢を示すことは、交渉の信頼性を保つと同時に、膨大な運行記録の精査という負担を相手方にも負わせることになります。会社側から慌てて金額を提示したり、安易に支払いに応じたりする選択肢は当初から採りませんでした。

複数シナリオの試算で「振れ幅」を見える化。相手方の主張を前提とした場合・会社の主張が合理的に認められた場合など、複数のパターンで残業代を試算し、争点ごとに金額がどれだけ動くかを整理しました。着地点の相場観を先に固めておくことで、交渉の各局面で「どこまで譲ってよいか」を迷わず判断できる状態を作りました。

交渉方針——客観資料に基づく淡々とした反論。荷役・待機時間の評価や手当の性質について、日報・点呼簿等の客観資料に基づき算定の誤りを一つずつ指摘しました。時効完成猶予の合意についても安易には応じず、全体を一括で解決する方向へ交渉を誘導。相手方は膨大な資料の計算を避けて訴訟よりも交渉での早期解決を望んでいたため、その意向も踏まえて現実的な着地点を探りました。

⑤ 結果

  • 当初概算約500万円台の請求に対し、約200万円台の支払いで示談解決(大幅な減額)
  • 経営者が当初覚悟していた水準をさらに下回る金額での決着
  • 解決までの期間:約10ヶ月

合意書の内容にも速やかにご同意いただき、結果にご満足いただけた様子でした。

⑥ 担当弁護士のコメント(和氣良浩・代表弁護士)

運送業は、荷待ち・荷役・点呼といった業務の性質上、「どこからどこまでが労働時間か」の線引きが他業種以上に争いになりやすい業界です。雇用契約書や休憩の記録が整っていない会社ほど、退職者からの残業代請求に弱い構造を抱えています。本件のポイントは、請求が届いた直後に慌てて金額の話をせず、資料の開示と複数シナリオの試算で交渉の土台を先に固めたことでした。内容証明が届いた段階の初動によって、その後の展開は大きく変わり得ます。同じ構造のリスクは、いわゆる「2024年問題」以降の運送業全体に共通するものだと考えています。

⑦ 関連リンク

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元従業員からの残業代請求は、内容証明が届いた直後の初動がその後の展開を大きく左右します。弁護士法人ブライトは「みんなの法務部」として、顧問先130社以上・企業法務部の弁護士歴平均14年以上のチームで中小企業の労務問題を支援しています。

※本事例は当時の個別事情に基づく解決例であり、結果を保証するものではありません。