このページは、従業員が通勤中の交通事故で負傷したらを、企業の人事・労務・経営者の方向けに、弁護士法人ブライトの笹野皓平弁護士が実務観点から整理したものです。
📝 この記事の3秒結論
- 通勤災害は労災保険の対象、会社は労基署への申請手続きをサポートする義務
- 事業主証明欄が空欄でも従業員は労災申請できる、会社は妨げない
- 休業中の給与は労災給付60%+特別支給金20%が国から、会社負担はゼロが原則
- 加害者保険会社との連絡窓口は本人または弁護士、会社が間に入る必要はない
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通勤災害は「労災保険の対象」が大前提
従業員が通勤途中に交通事故に遭った場合、これは「通勤災害」として労災保険の対象になります。会社は労基署への申請手続きをサポートする立場ですが、賠償責任を直接負うわけではありません(加害者側に賠償責任がある)。
ただし、会社が適切に対応しないと従業員から不信感を持たれたり、後々の労務トラブルに繋がるリスクがあります。初動対応のマニュアル化が重要です。
【発生当日〜3日以内】会社がやるべき5つのこと
- 従業員の安否確認・お見舞い:直属上司が病院や自宅に連絡を入れる
- 事故の概要をヒアリング:いつ・どこで・誰と・どのような事故か
- 労災申請の案内:通勤災害扱いで労災給付を受けられる旨を説明
- 就業規則上の扱い確認:休業中の給与・賞与・有給の扱いを整理
- 加害者連絡対応の整理:会社が間に入るか、本人または弁護士が直接対応するか
労災(通勤災害)申請の手続き
通勤災害の労災申請は、従業員本人または家族が労基署に申請するのが原則です。会社は次のサポートを行います。
- 労災申請書の様式16号の3(通勤災害用)を準備
- 事業主証明欄に署名・押印(記入が困難な場合は空欄でも申請可能)
- 第三者行為災害届を労基署に提出
- 休業補償給付請求書(様式16号の6)の事業主証明
注:会社が事業主証明を拒否しても従業員は申請できますが、これは「労災隠し」と疑われ、労働安全衛生法違反となる可能性があります。必ず協力してください。
休業中の給与・賞与の扱い
労災(通勤災害)認定で休業した場合、次の給付が出ます。
| 労災休業補償給付 | 給与の60% |
| 休業特別支給金 | 給与の20% |
| 合計 | 給与の80%相当 |
残り20%は加害者側の保険会社(自賠責・任意保険)からの賠償で補填されるのが通常です。会社負担はゼロが原則です。
ただし、会社の就業規則で「業務外の事故も賃金保証あり」と定めている場合や、有給休暇を使う場合は別途調整が必要です。
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加害者保険会社との連絡窓口
会社が加害者側保険会社の窓口になる必要は基本ありません。窓口は次のいずれかが担当します。
- 従業員本人
- 従業員の家族
- 従業員が依頼した弁護士
会社が窓口になると、後々の交渉で「会社が勝手に示談した」「会社のせいで賠償額が低くなった」と従業員から責任追及されるリスクがあります。対応窓口は本人・弁護士に任せるのが安全です。
復職時の配慮事項
従業員が治療を経て復職する際の配慮ポイント:
- 軽作業への配置転換:症状に応じて業務を調整
- 通院・リハビリの時間確保:勤務時間内の通院も認める柔軟性
- 後遺障害が残った場合の業務再設計:労働能力に応じた業務
- 解雇制限:労災休業中+復帰後30日間は原則解雇禁止(労基法19条)
就業規則の整備が予防策
事故が起きてから慌てないため、就業規則に「労災・通勤災害時の対応規定」を整備しておくのが理想です。
- 労災時の届出義務(従業員 → 上司への報告タイミング)
- 休業中の連絡義務・診断書提出義務
- 休業中の賃金・賞与の取扱い
- 復職時の手続きと配慮事項
- 労災と私傷病の区別と各種手当の関係
ブライトでは、企業の顧問契約の中で就業規則の整備・改訂もご支援しています。
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顧問弁護士の活用
従業員の交通事故対応は、年に1回起きるかどうかの非定型業務です。社内に労務専門スタッフがいない中小企業では、顧問弁護士に都度相談できる体制が安心です。
ブライトでは月額制の顧問契約「みんなの法務部」で、こうした突発的な労務トラブルへの対応をサポートしています。
まとめ
従業員の通勤交通事故は、適切な初動と労災申請のサポートで、会社・従業員双方が大きなトラブルなく乗り切れる事案です。就業規則の整備+顧問弁護士の活用で、突発時の対応コストを大幅に下げられます。
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監修:笹野 皓平 弁護士(弁護士法人ブライト パートナー弁護士)
京都大学法学部卒・弁護士歴15年・修習64期。労災事故・労務問題・企業法務の多数の解決実績を持ち、特に「会社側」と「従業員側」両方の視点を理解した上で、企業の労務リスクマネジメントを支援。本件もブライトの実務知見をもとに整理(守秘のため一部を匿名化)。
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