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通勤中の事故で労災はおりる?通勤災害の認定基準・会社報告・加算補償(労災+加害者賠償)

笹野皓平 弁護士

この記事の監修者

笹野 皓平(ささの こうへい)

弁護士法人ブライト|労災部部長/パートナー弁護士

弁護士歴14年以上(2011年登録)/大阪弁護士会/京都大学法学部卒・立命館法科大学院修了

専門:労災事故・交通事故・会社関係争訟・M&A・事業再生

労災で会社の責任も追及したいとお考えですか?

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通勤中の事故でも、一定の条件を満たせば労災保険から給付(補償)を受けることができます。これは労働者災害補償保険法に「通勤災害」として規定された制度であり、仕事への行き帰りの災害も労災の対象に含まれているためです。

ただし、「通勤」と認められる要件を外れてしまうと労災認定されないケースもあります。以下では、通勤中の事故が労災認定されるための基準と、労災が認められない場合の典型例、そして労災申請時のポイントを詳しく解説します。

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目次

⚠️ 通勤中の事故で労災が降りるか不安ですか?

通勤中の交通事故は、労災(通勤災害)と相手方への損害賠償の二重で補償を受けられる可能性があります。労災が認定されないと言われた場合でも、認定基準や反証の余地があるため、自己判断で諦めずに弁護士へ相談することが重要です。

▼ 通勤中の事故が労災認定される基準を本文で読む

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通勤中の事故だと労災おりない?

✅ この記事の結論

  • 通勤中の事故は原則として労災(通勤災害)の対象になります
  • ただし「逸脱・中断」があると認定されない場合があります
  • 加害者がいる場合は加算補償(労災給付+加害者賠償)を両方受け取れます
  • 通勤中・退勤中・出勤中・帰宅途中はすべて「通勤災害」として扱います

「通勤中の事故では労災はおりないのでは?」と不安に感じる方もいるかもしれません。しかし、労災保険は業務上の災害だけでなく通勤途上での災害(通勤災害)もカバーします。通勤中に被った怪我や死亡等は、法律上「業務災害とはみなされない」ため、労災保険がおりないのが原則でしたが、通勤途上の交通事故などが頻発したことから、1970年代以降は通勤災害にも労災保険による補償が行われるよう法改正されました。

【参考:国立社会保障・人口問題研究所「労働者災害補償保険」

したがって、通勤中の事故でも条件を満たせば労災認定され、治療費や休業補償などの給付を受けることができます。

ただし重要なのは、「どんな通勤中の事故でも無条件に労災がおりるわけではない」という点です。労災認定されるためには通勤災害として認められる一定の基準があります。逆に言えば、その基準から外れる場合には「通勤中の事故でも労災はおりない」ことになります。次章では、その通勤災害が労災認定されるための3つの基準を説明します。

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通勤中の事故が労災認定される基準

では、通勤中の事故が労災(通勤災害)として認定されるための基準を確認しましょう。労働者災害補償保険法第7条で定められた要件をまとめると、「就業に関連した移動であり、住居と就業場所の往復等の合理的経路を通り、私的な逸脱・中断がないこと」がポイントとなります。これから、この3つの基準を順に説明します。

基準1:通勤が「就業に関し」行われていること

まず重要なのは、事故当時の移動が仕事に就くため、または仕事を終えて帰るためのもの(就業に関連した移動)であることです。言い換えれば、その日は就業日であり、出勤の途中または退勤の途中であったことが必要です。たとえば出勤前・退勤後に仕事とは無関係の用事のため移動していた場合や、休日に職場へ私用で向かった場合などは、この要件を満たさないため労災とは認められません。

ただし、通勤時刻に多少の余裕をもって早出・遅出することは問題ありません。ラッシュ回避のため通常より早く家を出ていた場合など、一定の時間的ズレがあっても就業との関連性が保たれていれば通勤と認められます。反対に、就業との関連性が切れるほど長時間にわたり別の目的で移動していた場合は、通勤とみなされなくなるので注意が必要です。

また、「就業の場所」が必ずしも本社オフィスとは限らない点にも留意しましょう。直行直帰の営業などで自宅から直接取引先へ向かう場合、その取引先が就業の場所となり、自宅→取引先の往路も通勤と認められます。同様に、複数の勤務地がある人が一つ目の職場から二つ目の職場へ移動中に事故に遭った場合も、それは就業に関連した移動(通勤)として扱われます。

基準2:移動が「合理的な経路および方法」で行われていること

次に、通勤経路や通勤手段が社会通念上「合理的」といえることも労災認定の基準です。合理的な経路とは、一般的に労働者が利用すると認められる経路を指し、通常自宅から職場へ行くのにふさわしいルートであることを意味します。たとえば職場までの経路が複数考えられる場合は、どれを通っても合理的な経路とされますし、当日の交通事情でやむを得ず遠回りした場合や、マイカー通勤者が職場の駐車場を経由する場合なども合理的な経路に含まれます。しかし、特段の理由もなく明らかに大回りな遠回りをした場合などは合理的な経路とは認められません。

また合理的な方法(手段)についても確認しましょう。一般に用いられる交通手段(電車・バス等の公共交通機関、自家用車、自転車、徒歩など)であれば、普段使っているかどうかに関わらず労災上「合理的な通勤手段」として認められます。

したがって、会社に届け出ている通勤手段と違っていても、社会通念上妥当な方法であれば労災申請上問題ありません。例えば普段は電車通勤の人が事情により自転車で通勤している途中で事故に遭った場合なども、自転車という手段自体は合理的な通勤方法と評価されます(※ただし会社から禁止されている手段の場合は、別途就業規則上の問題とはなり得ますが、労災保険の適用そのものは「合理的な方法」であれば受けられます)。

基準3:通勤途中に私的な「逸脱」や「中断」がないこと

3つ目の基準は、通勤経路上で仕事と無関係の寄り道や用事による中断をしていないことです。労災保険法上、通勤途中で合理的な経路を外れて別目的地へそれたり(逸脱)、通勤をいったん止めて無関係な行為を行ったり(中断)すると、その逸脱・中断の間とその後の移動は通勤とはみなされないと規定されています。

例えば、退勤途中に職場から大きく離れた場所にある店に回り道して買い物に行った場合や、一度自宅に戻った後に再び別の用事で外出したような場合、これらは通勤の逸脱・中断に当たります。その結果、その時点から先の移動中に起きた事故は通勤災害とは認められなくなってしまいます。

もっとも、法律には一定の例外も設けられています。通勤途中のささいな用事や生活上やむを得ない行為であれば、最小限度で行う限り通勤の継続性が保たれるのです。具体的には、通勤経路から少しそれて日用品の買い物をする、夕食の惣菜を購入する、経路上のコンビニに立ち寄るといった日常生活上必要な行為や、選挙の投票、通院・診療、要介護家族の介護などは「やむを得ない事由による最小限度の行為」として認められます。

このような日常生活に必要な範囲内の立ち寄りであれば、その用事を済ませた後に合理的な経路に復帰した時点から通勤が再開し、以降の移動は引き続き通勤とみなされます。例えば、退勤途中に経路上のスーパーで夕食の食材を短時間購入し、そのまま元の道に戻って帰宅する場合などは、買い物中の時間を除いて前後は通勤として扱われ、万一事故に遭っても通勤災害として認定される可能性が高いでしょう。

以上が通勤災害と認められるための3つの主な基準です。まとめると、「仕事の行き帰りであること」「常識的な通勤ルート・手段であること」「大きな寄り道をしていないこと」の3点を満たしていれば、通勤中の事故は原則として労災保険の対象(通勤災害)となります。

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通勤中の事故でも労災認定されないケース

それでは逆に、通勤中の事故でも労災(通勤災害)と認定されない典型的なケースを見てみましょう。前章の基準を外れてしまう場合がこれに該当します。ここからは、労災認定されない可能性が高い代表的な3つのケースを説明します。

ケース1:合理的経路から明確に「逸脱」して私用を行った場合

通勤途中に私用目的で通勤経路を明確に外れて移動した場合、労災としては認められない可能性が高くなります。これは労災保険法上「逸脱」に該当し、その逸脱の開始時点から通勤とはみなされなくなるためです。

たとえば、退勤途中に自宅とは反対方向にある大型ショッピングモールに寄り道し、その往復の途中で事故に遭ったケースを考えてみましょう。この場合、「ショッピングモールでの買い物」は業務とも生活上の必要性とも無関係な私的行為であり、しかも「職場→自宅」という合理的な経路から明確に外れた移動に該当します。

このような場合は、ショッピングモールに向かった時点から「通勤の逸脱」と判断され、その後に合理的経路に戻っても、逸脱の理由が日常生活に必要な最小限度の行為にあたらない限り、事故が起きた時点での移動全体が「通勤」から除外されてしまいます。

この点、「中断」とは異なります。中断とは合理的経路上にとどまりつつ、そこで一定時間その場に滞在して別の目的の行為を行うケースを指しますが、逸脱は「経路そのものを外れて別の場所に向かう行為」です。
今回のように、通勤経路を逸れて物理的に離れた地点に向かう場合は、たとえその後再び自宅に向かっていたとしても、「通勤の継続」とは評価されにくいのです。

一方で、たとえば帰宅途中に経路上のコンビニで日用品を購入する程度の立ち寄りであれば、「最小限度の生活上必要な行為」にあたり、逸脱には該当せず、引き続き通勤として扱われます。

このように、「逸脱」とは合理的経路からの物理的な外れ方に焦点がある点で、「中断」との違いを理解することが通勤災害の判断では極めて重要です。

ケース2:通勤途中に通勤と無関係な用事で長時間中断した場合

通勤経路上で通勤と無関係の行為のために長時間立ち止まったり滞在した場合も、労災認定が困難になります。例えば、退勤後に同僚と居酒屋で飲酒するために立ち寄り、その後帰宅する途中で事故に遭ったケースを考えます。飲酒目的の立ち寄りは日常生活上必要な行為とは言えず、また合理的な経路からの逸脱にあたるため、その居酒屋に入った時点で通勤は中断しています。飲み会が終わった後の帰宅路で起きた事故は、もはや「通勤途中の災害」とはみなされません。

同じく、仕事帰りに映画館で映画を鑑賞してから帰宅した場合や、趣味の習い事の教室に立ち寄ってから帰った場合なども、それらの行為が業務に必要な用務ではなく単なる私的行為であれば、通勤の中断と判断される可能性があります。こうした娯楽や趣味のための立ち寄りによって通常の帰宅を大幅に遅らせた場合、その後の移動中に起こった事故は通勤災害に該当しないと考えられるでしょう。

ケース3:就業に関連しない移動中に起きた事故の場合

通勤災害が認められるためには「就業に関する移動」であることが必要だと述べましたが、そもそも就業とは関係ない移動中の事故は労災の対象にはなりません。極端な例ですが、テレワーク(在宅勤務)の日に自宅で過ごしていた際のケガは通勤によるものではないため通勤災害とは言えません(※テレワーク中の災害は通勤災害ではなく業務災害に該当する可能性がありますが、ここでは通勤災害としての労災に限定して説明しています)。また、非番の日や休日に私用のため職場へ出向いたような場合、その往復中で事故に遭っても「就業のための移動」とは認められず労災保険は適用されません。

さらに微妙なケースとして、勤務終了後に職場で業務と無関係の活動(社員の部活動や自主的な勉強会など)をしてから遅れて帰宅した場合も挙げられます。この場合、会社で仕事以外の目的に時間を費やしたことで「通勤に直接起因する移動」ではなくなっていると判断され、たとえ経路自体は通常と同じでも労災と認められない可能性があります。

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労災の手続き以外に、会社の責任を問える可能性があります

労災保険は最低限の保障です。会社側の安全配慮義務違反(設備不備・人員不足・過重労働強制など)がある場合、別途損害賠償請求できます。笹野皓平弁護士(労災部部長・弁護士歴14年以上)に相談ください。

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通勤中の事故で労災を申請する時のポイント

最後に、通勤中の事故について労災申請を行う際に押さえておきたいポイントを3つ紹介します。通勤災害の労災手続きは、業務災害の場合と若干異なる点もあります。適切に対応することで、スムーズに労災保険の給付を受けられるようにしましょう。

ポイント1:事故直後の対応と記録をしっかり行うこと

通勤途中で事故に遭ったら、まず怪我の治療と事故の記録が最優先です。交通事故であれば警察を呼んで事故証明を作成してもらいましょう。相手のいる交通事故の場合は後々「第三者行為災害届」の提出も必要になるため、警察の届出と記録は重要です。また、可能であれば会社にも早めに事故発生を連絡してください。通勤災害は会社の業務中の災害ではありませんが、労災保険を使う場合は会社にも事後で構わないので報告しておく方が望ましいです。労災申請時に会社の協力があれば手続きがスムーズに進むことも多いためです。

次に、医療機関で受診します。労災指定病院であれば、窓口で「通勤中の事故である」ことを伝えれば労災保険で治療を受けられます。指定病院以外でも、後から労災療養給付の請求を行えば治療費の支給を受けられるので、診断書や領収書を保管しておきましょう。

医師には必ず「通勤途上の事故で負傷した」と事情を説明して診断書にその旨を記載してもらうことも大切です。これにより、後日の労災申請の際に負傷と通勤災害との因果関係を裏付けやすくなります。

ポイント2:必要書類を準備し労働基準監督署に申請すること

労災の請求には所定の必要書類を揃えて提出する必要があります。主な書類は、治療費の請求であれば「療養給付たる療養の給付請求書」または「療養補償給付たる療養の費用請求書」、休業補償を受けるなら「休業(補償)給付支給請求書」等です。

これらの申請書は労働基準監督署で入手するか、厚生労働省の公式サイトからダウンロードできます。会社が用意してくれる場合もありますが、通勤災害の場合は基本的に被災労働者本人(または遺族)が自ら労働基準監督署へ提出する流れになります。

申請書には事故発生状況を具体的に記載します。例えば「〇〇市〇〇町△丁目△番地付近の交差点で右折車と衝突」といった具合に、どこでどのように事故に遭ったかを詳しく書きます。通勤経路上のどの地点で起こった事故かを明確に示すことで、労基署の担当官もそれが合理的経路上で起きた通勤災害かどうか判断しやすくなります。会社に提出している通勤経路図や定期券区間などがあれば、それも参考資料として添付すると良いでしょう。

作成した書類一式は、管轄の労働基準監督署に提出します(郵送提出も可)。通勤災害の場合、会社の証明印は必須ではないため、会社が書類作成に協力してくれない場合でも自分で申請を進めることができます。労基署に書類が受理されると、労働基準監督署の調査官が内容を調査し、労災認定すべきか判断します。この調査には通常1ヶ月程度かかり、通勤災害と認められれば通知が届き、その後保険給付が支給されます。

ポイント3:会社が認めなくても労基署が判断することを知り、専門家への相談も検討すること

通勤中の事故について会社に報告した際、稀に会社側が「それは労災にならない」と否定的な対応をするケースがあります。しかし、通勤災害に該当するかどうかを最終的に判断するのは労働基準監督署であり、申請時に会社の同意や証明は不要です。

会社が渋っても自分で労基署に申請すれば審査してもらえますので、泣き寝入りせずしかるべき手続きを取りましょう。実際、通勤災害は業務上の災害と異なり会社の過失責任を問われるケースは少ないため、多くの会社は協力的ですが、万一非協力的な場合でも労災申請は可能です。

また、労災申請の手続きに不安がある場合や認定が下りるか微妙なケースでは、社会保険労務士や労災に詳しい弁護士など専門家に相談することも検討してください。労災手続き自体はご自身でもできますが、専門家に依頼すれば必要書類の作成や証拠の整理、労基署とのやり取りを代行してくれるため安心です。

特に、労基署の判断に不服がある場合(労災と認められなかった等)には、異議申立てや行政訴訟といった法的手続きが必要になることもあります。その際は専門家の力が不可欠となるでしょう。通勤災害の認定が得られなくても、加害者に対する損害賠償請求(例えば交通事故の相手への請求)によって治療費や慰謝料をカバーできる場合もあります。こうした総合的な対応についても含め、プロの助言を仰ぐ価値は大きいと言えます。

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通勤中の交通事故は「労災給付」に「加害者賠償」が加算される

通勤中の事故の中でも、相手方(加害者)がいる交通事故の場合、労災(通勤災害)の給付に、加害者への損害賠償が加算される形で補償を受けられる可能性があります。労災ルートと加害者賠償ルートを併用する「加算補償」の仕組みです。

この仕組みを知らずに労災だけ・自賠責だけで処理してしまうと、本来受け取れたはずの補償を取り逃すことになります。逆に「労災と加害者賠償の両方を受けたら二重取りになるのでは?」と誤解して請求を諦める方もいますが、法律上、求償・控除等の適切な調整のもとで両方を受け取ることが認められた仕組みです(不当利得には当たりません)。

労災給付では補えない損害がある

労災保険は手厚い制度ですが、慰謝料は支給対象になっていません。また、休業給付は給付基礎日額の60%(休業特別支給金20%を加えても80%)が上限であり、減収を完全には補填できません。これらの不足分は、加害者側に対して損害賠償として請求する必要があります。

損害項目労災給付加害者への賠償請求
治療費○ 全額(療養補償給付)○(労災で受けた分は調整)
休業損害△ 60%+特別支給金20%○ 100%との差額を請求可能
後遺障害逸失利益△ 障害給付(一時金または年金)○ 不足額を請求可能
慰謝料(傷害・後遺障害・死亡)✕ 対象外○ 加害者から受け取る
物的損害(バイク・自転車修理など)✕ 対象外○ 加害者から受け取る

「加害者賠償だけ」だと損をしやすい3つの理由

  • ① 過失相殺で減額される:交通事故では被害者にも一定の過失が認められると賠償額が減らされます。一方、労災給付は被害者の過失で減額されません。
  • ② 治療費打ち切り通告に弱い:相手方の任意保険会社は、自賠責の傷害枠120万円に近づくと「治療費の対応を打ち切る」と通告してくるのが通例です。労災を併用していれば、その後も療養補償給付で治療を継続できます。
  • ③ 加害者が無保険・自賠責のみだと回収困難:任意保険未加入の加害者の場合、自賠責の120万円を超える部分は加害者個人への請求となり、回収不能となるリスクがあります。労災があれば確実に給付が受けられます。

労災給付には「特別支給金」という上乗せがある

もう一つ重要な点として、労災保険には「特別支給金」という上乗せ給付があります。代表的なものに次のものがあります。

  • 休業特別支給金:給付基礎日額の20%(休業給付60%とあわせて計80%が支給される)
  • 障害特別支給金:後遺障害等級に応じた一時金(8〜342万円)
  • 遺族特別支給金:遺族補償と別に300万円の一時金

これら特別支給金は、最高裁判例(最判平成8年2月23日)により損害賠償との損益相殺の対象外と判断されています。つまり、加害者から損害賠償を受けても、労災の特別支給金は「上乗せ」として残ります。

ただし実務では、加害者側の保険会社が特別支給金まで控除した金額を提示してくるケースが少なくありません。被害者ご本人ではこの控除主張に気づきにくいため、結果的に本来受け取れる金額より少なく示談してしまう例があります。

⚠️ 通勤中の交通事故、労災と加害者賠償の組み合わせ方でお悩みですか?

弁護士法人ブライトは、労災事故と交通事故の両方を専門とする弁護士が在籍しています。労災申請から加害者への損害賠償請求まで一気通貫でサポートできるため、被害者の手取りを最大化しやすい体制が整っています。

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弁護士法人ブライトの実例|通勤災害×交通事故クロス

事例1|30代男性会社員・通勤中バイク事故(労災+自賠責+示談金の加算受給)

通勤途中にバイクで直進中、車と衝突した依頼者の事案。通勤災害として労災申請し12級認定を取得、並行して自賠責への被害者請求と訴訟提起を行いました。和解時の損害計算では、「労災休業給付の特別支給金(給付基礎日額の20%)は損益相殺の対象から除外」として算定したため、労災給付+自賠責保険金+示談金の合計で被害者の手取りを最大化することができました。

事例2|50代男性会社員・通勤中の死亡事故(労災先行を選択)

通勤中の交通事故でご本人が亡くなられた事案。労基署から「自賠責先行・労災先行どちらにしますか」と確認があった際、過失割合が争点となる見込みだったため、弁護士判断で「労災先行」を選択。労災の遺族補償年金で遺された配偶者の生活基盤を先に確保したうえで、加害者側に対する損害賠償請求を進めました。

─ 監修:笹野皓平 弁護士(労災部部長)

労災と自賠責、どちらを先に使うべきか

通勤中の交通事故では、労災(通勤災害)と自賠責保険・任意保険のどちらに先に請求すべきか、という実務上の論点があります。労基署からも「自賠責先行か労災先行か」を確認されることが少なくありません。結論から言うと、多くのケースで「労災先行」のほうが被害者にとって有利です。

⚖️ 判断フロー:労災先行 vs 自賠責先行

観点 労災先行(推奨) 自賠責先行
過失相殺の影響 受けない 受ける
特別支給金(上乗せ20%) 受け取れる なし
自賠責120万円枠 慰謝料に充てられる 治療費で消費
加害者が無保険・任意保険なし 労災給付で確実に補償 困窮リスクあり

▶ 任意保険会社が「労災を使わないで」と言うケースがありますが、これに従う義務はありません。労災と損害賠償の両方を受け取ることができます(二重取りにはなりません)。

Uber Eats・配達員・営業中・マイカー通勤の事故はどう扱われるか

Uber Eats・フードデリバリー配達員(特別加入者)、営業中ドライバー(業務災害扱い)、マイカー・自転車通勤者(通勤災害扱い)の各ケースは、「通勤災害」か「業務災害」かの判定が重要になります。ご自身の働き方に応じた適用可否は、個別の事情によって異なるため、弁護士への無料相談でご確認ください。

ケース 労災区分 特別加入要否
Uber Eats配達員(個人事業主) 業務災害 (任意加入)
営業中ドライバー(会社員) 業務災害 不要(通常加入)
マイカー・自転車通勤者 通勤災害 不要(通常加入)
配偶者送迎で通勤中 通勤災害 不要(通常加入)

手続きでお困りのことがあれば、労災専門弁護士に相談できます

「会社が協力してくれない」「申請書類が複雑でわからない」「会社から不当な扱いを受けている」—そのような状況でも、弁護士法人ブライトがサポートします。

労災部の取扱事例パターン|通勤中の事故が「労災と認められない」と言われた3ケース

弁護士法人ブライト労災部部長 笹野皓平 弁護士が日常的に取り扱っている通勤災害の典型ケースを、依頼者特定情報を伏せた一般化パターンとして3例ご紹介します。実在の事案を再構成した教育用ケーススタディです。

📋 ケース1:30代男性/会社員/自転車通勤中の自損事故

状況:朝の通勤中、勤務先から約1.5kmの交差点で自転車のタイヤが側溝に挟まり転倒、左手首骨折。会社に報告したところ「自損事故は労災にならない」と言われた。

依頼者の不安:「自損事故でも労災になるのか」「会社が認めてくれない」

当事務所の対応:通勤災害の認定は「合理的な経路・方法」で行われたかが基準であり、自損事故であっても通勤途中の事故であれば労災認定の対象であることを説明。会社の事業主証明欄が空白でも様式16号の3を労基署に提出できることを示し、申請を当事務所で代理。

結果:通勤災害として認定され、療養補償給付・休業補償給付(給付基礎日額の60%+特別支給金20%)を受給。会社の誤解(自損事故=労災対象外という思い込み)も解消された。

📋 ケース2:40代女性/パート勤務/退勤後にスーパー立ち寄りでの転倒事故

状況:退勤後、自宅最寄り駅近くのスーパーで日用品を購入し、店を出た直後に転倒し腰椎を負傷。労基署で「日常生活上必要な行為のための逸脱・中断後の通勤と認められるか」が論点となった。

依頼者の不安:「スーパーに寄ったら通勤途中ではないと言われた」「働けないのに労災が下りないと困る」

当事務所の対応:労災保険法施行規則8条が定める「日常生活上必要な行為」(食料品など日用品の購入)にスーパーでの買い物が該当することを示し、逸脱・中断終了後(=店を出た時点)に通勤経路に復帰した後の事故であれば通勤災害として認定される可能性が高いことを根拠として労基署と折衝。

結果:通勤災害として認定。買い物時間(約15分)が「ささやかな逸脱・中断」と評価された。

📋 ケース3:50代男性/配達ドライバー/通勤中の交通事故(第三者行為)

状況:マイカー通勤中、交差点で対向車に追突され頸椎捻挫・腰椎捻挫。加害者の自賠責保険会社からは慰謝料が提示されたが、加害者の任意保険は未加入。

依頼者の不安:「自賠責だけで足りるのか」「労災と自賠責は併用できるのか」「どちらを先に使うべきか」

当事務所の対応:通勤災害(労災)と自賠責の両方が利用可能であることを説明。被害者の選択により「労災先行」を選び、自賠責の慰謝料は休業損害・後遺障害慰謝料に充当する戦略をとった。第三者行為災害届(様式は労基署所定)を提出し、政府による求償手続もフォローした。詳細は第三者行為災害届の書き方を参照。

結果:労災で治療費・休業補償を確保しつつ、自賠責から慰謝料を獲得。さらに加害者本人への損害賠償請求も並行受任し、加算補償(労災給付+加害者賠償)の最大化を実現。

通勤災害の認定をめぐる重要判例3選

「合理的な経路・方法か」「逸脱・中断後の通勤性は復活するか」という通勤災害の核心論点について、押さえておくべき判例を3件紹介します。

⚖️ 判例1:大阪地方裁判所 令和7年11月20日判決

令和元年(行ウ)第170号 労災保険不支給処分取消請求事件/LIC番号:L08050837(判例秘書INTERNET収録)

事案:通勤災害として申請された事故について、労基署が業務起因性または通勤性を欠くとして不支給処分とした事案で、その取消が争われた近時下級審判例。

判示要旨:通勤性の判定は「住居と就業の場所との往復」「合理的な経路及び方法」を客観的に判定すべきであり、形式的に経路から外れた事実があっても「逸脱・中断」の例外規定(日常生活上必要な行為)に該当する場合は通勤性が中断されないと判示。

⚖️ 判例2:大阪地方裁判所 令和6年7月18日判決

労働者災害補償保険給付等支給決定の変更決定処分取消請求事件/LIC番号:L07950588(判例秘書INTERNET収録)

事案:労災給付の支給決定後、通勤逸脱・中断の有無について再評価され、変更決定処分(不支給化)がなされた事案。

判示要旨:労災保険法7条2項の「逸脱」「中断」の判定にあたり、社会通念上の必要性および当該行為の所要時間を総合考慮すべきとした。日常生活上必要な行為(労災保険法施行規則8条1〜5号)に該当すれば、終了後の経路復帰時から通勤性が復活する。

⚖️ 判例3:東京地方裁判所 令和6年6月27日判決

療養補償給付不支給処分取消決定請求事件/LIC番号:L07931110(判例秘書INTERNET収録)

事案:通勤途中の事故について療養補償給付の不支給処分を受けた労働者がその取消を求めた事案。経路の合理性・移動方法の合理性が論点となった。

判示要旨:通勤の「合理的な経路」とは、最短経路に限定されず、社会通念上合理的とみなされる代替経路を含む。マイカー通勤・自転車通勤などの移動方法の合理性も、住居と職場の位置関係から客観的に判定すべきと示された。

※ 判例の引用にあたっては、判例秘書INTERNETで実在を確認しています。各判例はLIC番号で同データベース上から原文確認可能です。

通勤災害に関するよくある質問10選

Q1. 通勤中の自損事故でも労災はおりますか?

おります。通勤災害の認定は「合理的な経路・方法」で通勤しているかが基準であり、加害者がいない自損事故(自転車転倒・徒歩での転倒など)でも労災(通勤災害)の対象です。会社が「自損事故は労災対象外」と説明することがありますが誤りです。

Q2. 退勤後にスーパーや病院に寄ってからの事故も労災になりますか?

場合によります。労災保険法施行規則8条が定める「日常生活上必要な行為」(食料品など日用品の購入、医療機関での診察等)に該当する立寄りであれば、終了後に通勤経路に復帰した時点で通勤性が復活します。長時間の飲食・娯楽目的の立寄りは通勤性が中断されます。

Q3. マイカー通勤中の事故も労災になりますか?

なります。会社が公式にマイカー通勤を許可していなくても、住居と職場との合理的な往復ルートでの事故であれば通勤災害の対象です。許可の有無は通勤性の判定に直接影響しないと判例上扱われています。

Q4. 通勤中に交通事故にあった場合、労災と自賠責のどちらを使うべきですか?

被害者は労災と自賠責のどちらを先に利用するかを選択できます。重傷で治療費が高額になる場合は労災先行(自賠責限度額120万円超への対応)、慰謝料を早く受け取りたい場合は自賠責先行が一般的です。詳しくは第三者行為災害届の書き方を参照してください。

Q5. 会社が「労災を使わない方がいい」と言いますが本当ですか?

誤りです。通勤災害も含めて労災保険給付は労働者の権利であり、健康保険で代用すると後で精算が必要になります。詳しくは仕事中・通勤中の怪我に労災を使わない方がよい?を参照してください。

Q6. 会社の事業主証明をもらえない場合、通勤災害申請はできますか?

できます。様式16号の3(休業補償給付支給請求書/通勤災害用)の事業主証明欄が空白でも、労基署で受理されます。事業主が証明拒否した場合は申請書に経緯を記載するか、別途上申書を添付してください。

Q7. 寄り道(コンビニ・ジム等)に立ち寄った後に事故にあった場合は?

立寄り内容により判断が分かれます。コンビニで日用品を買う程度(5〜15分以内)は「日常生活上必要な行為」として通勤性が復活する可能性が高いです。一方ジム・娯楽施設での長時間滞在は「逸脱・中断」と評価され、通勤性は復活しません。判断が微妙な場合は弁護士に相談を推奨します。

Q8. 通勤途中に同僚を送るために遠回りした場合の事故は?

原則として「合理的な経路」を外れた状態となり、通勤性が中断されます。ただし送迎が業務の一環(業務命令や慣行)であれば、業務遂行性が認められ業務災害として扱われる可能性があります。状況に応じた個別判断が必要です。

Q9. 通勤災害が認定されないと言われた場合、どうすればいいですか?

不支給決定通知から3ヶ月以内に審査請求が可能です。さらに2ヶ月以内に再審査請求、最終的に取消訴訟へと進めます。「通勤性なし」の判断は事実認定によるため、医師の診断書・現場写真・タイムスタンプ等の客観証拠を整えて再申請することを推奨します。

Q10. 通勤災害でも休業補償と慰謝料は加算してもらえますか?

第三者行為災害(加害者がいる事故)の場合、労災給付と加害者からの賠償の両方を受け取ることができます(加算補償)。両者で重複する部分(治療費・休業損害)は調整されますが、慰謝料は労災給付からは出ないため、加害者賠償請求で別途獲得可能です。

まとめ:諦める前にプロに相談しよう

通勤中の事故であっても、条件を満たせば労災保険(通勤災害)の適用を受けられることをご説明しました。逆に、明らかな寄り道や私用が含まれる場合など基準から外れるケースでは労災認定が難しい点にも注意が必要です。しかし、「通勤中だから労災はおりない」と早合点して諦める必要はありません。

実際には通勤災害として認められるケースも多いため、疑問があればまず労働基準監督署や労災に詳しい専門家に相談することをおすすめします。労災の制度や基準は法律で細かく定められており一般の方には分かりにくい部分もありますが、専門家に相談すれば自分のケースで労災が適用できるか適切なアドバイスが得られます。

通勤中の事故で負ったケガについて、泣き寝入りする前にぜひプロの力を借りてみてください。適切な手続きを踏めば、しかるべき補償を受け取れる可能性があります。困ったときは一人で抱え込まず、遠慮なく公的機関や専門家へ相談しましょう。

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